ドリアン助川のレビュー一覧
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売れない構成作家の卵と過去に傷を持つ女性の淡い恋の物語。
バブル期の新宿ゴールデン街にたたずむ居酒屋・花梨花。
山崎は色弱で、希望した就職ができず、有名構成作家の元で仕事を始めたが、大勢の人に向けたメッセージを生み出すことに喘いでいた。
花梨花にふらりと入った山崎は、店員の夢ちゃんと出会う。
夢ちゃんは斜視があり、不思議な雰囲気を持つ女性で、猫好きでもあった。
その店では、店の窓に現れる猫を予想して賭けをする「猫じゃん」をしていて、夢ちゃんお手製の「猫の家族図」が張ってあった。
次第に夢ちゃんに惹かれていく山崎は、ある日、夢ちゃんの悩みを聞くことになったが、2人の間は突然引き裂かれ -
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新宿ゴールデン街。ちょっと怖くて胡散臭いけれどちょっと憧れます。
かつての捻じれた若者達が大人になった今、昔どうしてそうなったのか分からない事だらけで、どの扉を開ければ未来につながっているのか全然分からなくて、悶えていた時の気持ちは今も残っているでしょうか。
たくさんの猫がひょっこり顔を出す居酒屋。店員の女の子の書いた猫の家族図。猥雑でどこか暖かな人々。色弱というハンデを背負って夢であった映像の道を絶たれ、いつも背中を丸めてもがいているような主人公。初速は遅いけれど読んでいるうちに心に加速がついて、心が次々追い抜かしていく風景はかつて自分が見た風景だったような気がしました。
昔が懐かしく、過ぎ -
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先日亡くなった樹木希林さんに敬意を表して読みました。
映画は見ていませんが、プロログの徳江さん(おばあさん)登場の場面は希林さんの演技を彷彿させました。なるほど映画の脚本のような書きぶりの小説でもありました。
どら焼きの中身、小豆の美味しい煮方指南などは微笑ましいが、すぐに徳江がハンセン氏病完治者とわかってくるのにしたがって、じっとりと空気が重くなってくる。
登場人物の3人が3人とも、それぞれ社会から疎外されている屈託を抱えている。それをことさら怒るんではなく、恨むのでもなく淡々としているように描写しているのが、かえって胸迫るのだろう。
そういうことはみんなあるよね、といいながらそれ -
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ドリアン助川さんの書くものって、いつも心に深く食い込んでくる。短いエッセイでも、人生相談の回答でも。映画にもなった「あん」の読後感など忘れがたい。これもまた、胸の奥に沈んでずっとそこに残るに違いない一冊。
音楽で生きようとニューヨークで苦闘する三十過ぎの拓人が主人公だ。語学学校で出会う若者たちや、バンドを組む仲間たちと、ぶつかったり心をふれあわせたりしながら、なんとか道を開いていこうとする姿が語られていく。みなそれぞれに、自覚しているか否かにかかわらず国や民族を背負っていて、その軋轢やそれを苦しみながら乗り越えようとする姿に胸が痛くなる。
これだけでも異国の地でもがく若者(三十過ぎてるけど -
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多摩川、京王線、土手沿いの遊歩道の風景、これはまさに地元です。京王線沿線の啓文堂さん(これも地元の本屋さん)にお勧めのポップと一緒に平積みされてあり、思わず手にとった次第です。
8つの短いストーリーが微妙に絡み合い、そこかしこに出てくる多摩川周辺の風景に、地元ごひいきには、幾度となく”あるある”、”そう、あそこの風景”とうなずいておりました。
ストーリーはどれも仄かに切なく、じんわりと心にしみてくるお話し。中でもバードウォッチングの絡んだ「越冬」は、大栗川と多摩川の交差する知る人ぞ知る野鳥のスポットでもあり、私も幾度となく足を運んだ場所。どこかで作者のドリアン助川さんと出会っていないだろう -
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読書記録63.
#水辺のブッダ
#ドリアン助川 作
罪を犯し刑期を終えた主人公
入水自殺を図りながらも多摩川べりのホームレスに救われ、よるべなく生活
同じ水辺の地域に暮らす女子高生
父親はなく、母親と新しい家族とも疎外感を感じる日々
で危うい世界に落ちていく
2人の世界線が交わる日が…
あなたは決して一人ではない
意識する事で存在が生まれる、全ては関係性の中にある
『あん』の桜のように花のイメージを感じた本作
アカシアの花は舞い落ちる花びらを浴びる花見
作中、「ダリット」の記載
インドでのカーストにも入らない最下層の人々
強制労働や児童労働、ダリット女性への性暴力、加害者の不処罰
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足を骨折してさ母と話をしていたら、母が前に足を骨折したのもこの時期だったんだって。
もうすぐおじいちゃんの命日なの。
もしかしたらおじいちゃんがこの位で済むように守ってくれたのかもね。なんて話をしてたんだけど。
突然なにかって、そのおじいちゃんの家、つまりは母の実家は多摩川の側にあったの。
子どもの頃遊びに行くとよく多摩川沿いの公園で遊んだり散歩したりしたのよね。
そんな思い出深い多摩川を舞台にした本をなんの偶然かこんなタイミングで読んだのです。
何か事件が起こる訳でも盛り上がるでもなく、多摩川の近くに住む人たちの悩みもありながらの生活を描いてた。
それぞれの短編が微妙〜に繋がりがあったりして -
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明川哲也さんの名で出しているドリアン助川さんの短編集。今まで読んだドリアン助川さんの本と雰囲気が違って少し驚いた。
1.ジョンを背負って7000メートル。
2.ナッツ
3.プリズムの記憶
1の、ジョンレノンの大型パネルを背負って都内の街を歩く話が一番印象に残った。ジョンレノンのことも曲も、あまり知らないので、調べながら読んだ。ジョンレノンを好きな人が読めば、もっと感じるものがあるのかもしれない。
大型パネルを徒歩で強風の中運ぶと男のひとの姿が脳内でずっと再現されていたので、インパクトはすごかった。
もうドリアン助川さんの名作は、読み終わってしまっているのかもしれない…と少し残念に思った。 -
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大好きなドリアン助川さんの本。色々な種類の動物たちの目線で、哲学的な考えを盛り込んだ21話からなる。とても面白い試みで、作者の意欲を感じた。
ドリアン助川さんが、動物と哲学に夢中になった理由として、本文中に、「子供の頃から、人間社会が苦手だったので、動物たちに語りかけようとした。哲学に惹きつけられたのも、目の前の事だけで忙しくしている人間社会への反発だ。」とある。この本が、著者にとって念願の1冊だったことが伺い知れる。
溝上幾久子さんの版画も、物語への想像を掻き立て、深みをもたらしてくれ、素晴らしかった。
最初の数話は、とても心動かされ、あっという間に読んだ。また、ナマケモノを描い