奥田亜希子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
どこを切り取っても文章の全てが美しかった。花と空気と気温と匂いと風と光。いろんな場面をたくさん感じられた、美しい映像のような読書体験だったな。花の香りもたくさん感じた。こうも五感を刺激されるこの文体はなんなんだろう。あっという間に読み終えた
日々、わたしの今の現状の不満は、過去満足して選んだものの延長線上なのだということに絶望すること、よくある。
でもそれはあの過去立派に咲いた花が枯れてしまったのだと割り切るのではなくて
枯れ行くその花の変化に、その変化する瞬間それぞれにきっと美しさがあるんだという 新しい視点。
あの時信じて進んだから、それが結果的に間違っていたわけじゃなくて、美しく枯れただけなんだと。
よく経年変化という言葉があって、その変化を『味』と言って楽しむけれど、人生自体がそういうものなのかもしれない。
美しいものを美しいままで保ちたくて、でもうまく行かなくて、悲しくなって無茶する必要はなくて。
変化して美しく枯れ行く我が人生を、この先楽しみにしていけそうだなって気持ちになれた。
たまたまこれを読む前に『大豆田とわ子と三人の元夫』を鑑賞していたからか、なんとなく坂元裕二作品のような演出で、脳内再生してしまった気がする(笑)
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Posted by ブクログ
ネグレクトといえる環境で育ち、一人で自立して生きていくため中学校教師という職業を選んだ主人公葉奈子。ゆえに、子供たちにはそれほど関心はなく、あまり熱心な教師ではない。彼女は、受け持ちのクラスの女子が、夏休みに三日間、家出をしたことによって、過去の傷を思い出す。教え子はSNSで知り合った成人男性の家に泊まっていたのだが、葉奈子にも中学時代、見知らぬ男性の家に泊まっていた経験があった。危険なことはなかった、男はいい人だったと思い込もうとしていた記憶と、改めて対峙することで、それが間違っていたことだとわかる。彼女とコンビを組んでいる副担任とともに、教え子の相手を探り、実際に会いにいって、罪を認めさせる。
副担任というのが、一度教師を辞めてから、再就職してきた五十代の溝渕という男で、葉奈子はその率直な物言いに反感を覚える。その書きようが、ずいぶんひどい。
「葉奈子は表向きの顔を持たない奴が嫌いだ。そのままの自分を受け入れてもらおうという態度は傲慢で、かつ怠惰だと思う。特に溝渕の配慮に欠けた言動には、畑から引っこ抜いた泥つきの人参をそのまま相手の口につっ込んでいるような暴力性を感じた。」
が、休職する前は熱心ないい教師だったこと、そして休職した理由を知ることで、印象が変わる。溝渕は言う。
「世間から見れば間違いだらけのことに救われる人間もいるってことですよ」
葉奈子はかつて、自分の機嫌で娘を放置する母親から逃れるため、見知らぬ男を頼った。教え子も、優秀で、教育熱心な両親の圧から逃れようとしていた。そして溝渕も、休職期間、他に縋るところがなくて縋っていた場所があった。
幼い中学生は、自分に向けられた欲望に気づかず、時に危険なことをしでかす。溝渕は、そして葉奈子は、彼女を責めるのではなく、そんなときに、頼れる場所になれなかった自分を責める。 -
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奥田亜希子さんの新刊、迷わず購入(笑)
「運命の人」と思い、周囲の反対を押し切って結婚したけれど、「運命」と思っていたが故に、縛られていた自分に気付いていく。
未亡人になり、娘も自立したあとの、人生。
かつての自分を思い出しながら、「気楽な恋愛」に歩を進めてみるのだが。
以下割とネタバレあります。
夫を喪うことや、二人の関係性という前提が大きいからか、始まってみると起伏の少ないストーリーなのに、読み終わって考えることが多いのは、さすがという感じがする。
20歳上の元教師の夫のことを「対等でない」と思い、自分の人生の中で失ったものを考える日々。
なのに、夫との生活が鮮やかに蘇ると、涙が溢れてくるシーンが描かれる。
この感情って、何なんだろうなと思う。
運命という形容に盲目になっていた。
でも、娘を産み育てた時間を間違いとも言いたくない、そんなセリフがあったこととも重なる。
そんな「私」にとって、軸となるのは、花屋で仕事をするということだったのかもしれない。
ドライフラワーに始まり、レジンで花を残していく作業は、過ぎていくはずの時間を固めることに似ている。
けれど、ドライフラワーも、レジンのアクリルパーツも、やがては劣化し色褪せてしまう。
そんな中で、結婚式の装花をデザインするという仕事に手を伸ばす「私」。
最後に、このシチュエーションを持ってくることが、ああそうだなって、しっくりハマる気がした。
娘や娘の友人たち、これから、誰かと結ばれ、幸せを感じる人たちを前にして。
ようやく「私」が、自分自身の運命に拘ることから外れられた気がした。
他にも色々考えたポイントはあるのだけど、ひとまずこんな所で!(笑) -
Posted by ブクログ
主人公は20代で結婚しその結婚生活のなかで、
生きてきた時間が倍近く違う相手と、対等な気持ちで過ごすのはすごく難しいと思っていて(死別する)
次に出会った男性と
すべてを求めず、すべてを明け渡さない、対等な関係を築きたかったけど、
相手の嘘に不信感を抱き、わだかまりを持ってしまった。信頼することが出来るところまでいかなかった…
ということかな。
花が枯れてドライフラワーにしてレジンに加工してく日常と、どこが終わりどきなのかを決めかねる自身の恋愛とが対照をなしていて、
高校生の頃の恋愛、その延長線での結婚、子供、実の親、義理の親との関係性、職場での活躍等織り混ぜて書かれている。
なげやりな姿勢から始まった割には
最後冷静な判断をくだすあたりが
大人の女性の恋愛なのかな と思う。
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Posted by ブクログ
新刊情報で見掛けて気になり、手に取った作品。
装画とテーマがとても好みだった。
「恋と食」をテーマに描かれた小説、掌編、エッセイのアンソロジー。
作家さん以外にお笑い芸人さん、料理コラムニストさん、コピーライターさんが参加されていて豪華メンバー。
山本ゆりさんのレシピには大変お世話になっている。
本書のタイトルを見て、「心温まる話が多いのかな」と思っていたら、いろんな意味で衝撃的な話が多く、それも含めて楽しめた。
どの作品も出てくる料理がとてもおいしそうー!
パエリア、ロールキャベツ、カニクリームコロッケ…食べたい…!
食欲を刺激されまくりの一冊だった。
︎✿「わたしたちは平穏」一穂ミチさん
性格や食の好みが合い、同棲している2人。一見平穏に見える2人の間に潜んでいる不穏さが怖い。ラストは若月さん、まさか…?この2人、この先どうなっちゃうんだろう…。
︎✿「ワタシノミカタ」古内一絵さん
家庭内には味方が必要だよね。この3人には世間の目に負けず幸せに暮らしていってほしい。昴の例え方が秀逸!昴が作ったキャンプ飯、私も食べたい♡
︎✿「初恋と食事」田辺智加さん
「ぼる塾」の田辺さん。描かれていること全てに共感しかない。私もしんどい時はとりあえずおいしい物を食べて、乗り切っている。
︎✿「ヴァンパイアの朝食」君嶋彼方さん
目次を見て一番気になっていた作品。タイトルだけ見てファンタジーなのかと思いきや、ヴァンパイアって、そういうこと…!恋愛の甘さと苦さが詰まった作品。
︎✿「くちうつし」錦見映理子さん
人生にどれだけ絶望しても、食べることをやめなければ、いつかはきっと立ち上がって生きていける。食べることは生きることに直結するんだなぁと改めて感じた。
︎✿「ゆかりとバターのパスタ」山本ゆりさん
母が作ってくれたお弁当にはいつもゆかりご飯が入っていたことを思い出した。ゆかり買ってきてパスタ作ってみよう。
︎✿「白と悪党」奥田亜希子さん
土鍋にまつわる初恋のお話。美弓の関谷への執着がなんだか怖く感じた。私は何故か小さい頃からお粥の描写にとても惹かれてしまう。土鍋でかしぐお粥、いいなぁ。
♥「SUMMER STREAMER」尾形真理子さん
野球観戦を通じて知り合う2人が絆を深めていく様が微笑ましい。自分が好きなものを一緒に楽しめる相手がいるって素敵。そして試合のシーンがとても胸熱。
︎✿「夏のカレー」原田ひ香さん
男女が知り合ってから40年間のお話。結婚はやっぱりタイミングだなぁ。人生で全てを捨ててでも一緒にいたい相手に出会えることは幸せなことだと思う。
︎✿「恩讐の彼方のトマトサラダ」山田詠美さん
序盤から衝撃すぎる…!だって、真実なんだもん。(p.348)って…!失恋のお話なのに湿っぽくないのは山田さんのお人柄なんだろうな。