あらすじ
愛衣は隠しごとの「匂い」を感じる。そのため人間関係が築きにくい。小中高大、そして30歳を過ぎてからの五つの年代を切りとり、その時々の友情の変化と当時の事件を絡めながら、著者の育った年代に即した女性の成長を描く連作短編。
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愛衣が小中高と大人になる過程を一緒に追える作品。他人が嘘をついているのが匂いで分かってしまうせいで、友人と本物の関係を模索しすぎて空回りしていた。私たちは普段、友達や家族の本音を知りたいと思うが、本音や嘘が全て分かってしまったら、他人と関係なんて築けないのだろう。隠しておいた方が良いこと、嘘をつかなければいけないこと、それがあることを大人になる過程で学んでいく愛衣だった。吉乃の自分を自分だと主張できるところに憧れを抱き、少しでも吉乃に近づきたいと思う。憧れの人だからこそ、タバコを吸う吉乃が見られたことは嬉しいが、そうやって理想の人も何かと裏があり、自己を保っているということを知る。憧れとは程遠く、友達を作ることに精一杯になり、関係を拗らせてしまう。なりたい自己との乖離はなかなか埋められないものであり、ときに自分を苦しめるものになる。大人になっても周りの人との関係は続き、誰もが誰かと関わらなければ生きていけないのだと思った。愛衣の子どもの優里が私の幼少期にそっくりで、私の親もこんなこと思っていたのかなと思った。
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クレイジー・フォー・ラビット。奥田 亜希子先生の著書。嘘や秘密の匂いがわかる主人公。嘘や秘密の匂いがわかることは便利なところもあるけれどつらいところもあるのかも。自分が信頼している人が嘘まみれ秘密まみれだったらつらいだろうし。嘘まみれ秘密まみれであることを知らないほうが幸せなこともあるし。不思議な展開と意外な結末が楽しめるクレイジー・フォー・ラビット。奥田 亜希子先生の個性を堪能できる一冊。
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友達になる相手は案外自分では選べない
今は友達ではないかもしれないけれど
いつか友達になるかもしれない誰か
誰とだっていつかは友達になるかもしれない
学生時代の友人関係でのモヤモヤ
大きないじめとかではなくても
沢山の悩みや悲しみ、不安があったなぁ
と読みながら思った
この連作短編集
小学生だった亜衣が
中学、高校、大学、主婦
になった時の物語
私自身よりも主人公は年下だけれど
その当時も思い出してセンチメンタルな気分になった
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人が嘘をつくと、匂いで敏感に察知してしまい、距離を置いてしまう。
そんな特質をもつ愛衣の、小学生時代から大人、そして母親になるまでの物語。
仲良くなりたくて嘘をついたこと。
デザインじゃなくてブランドを重視するようになること。
独りが嫌で”友人ごっこ”をすること。
友達になりたいけどなれない、遠い存在で憧れの女の子のこと。
ショッピングモールは「なかなかいけない夢の楽しい場所」から「遊ぶにはダサい場所」になること。
「学校以外の場所で会う友だち」という、宝石のような存在。
それぞれの世代での女の子の友情の「あるある」が描かれていて、それぞれに共感した。
「本物の友だち」を、幼い頃の私もずっと切望していた。
いや、大人になったはずの今もなお、求めている。
流行やニュースから、各時代がわかって、あの曲だとかあの事件のことだとかピンとくるのも楽しかった。
短編の中では、「ブラックシープの手触り」が好きだった。
この作者のほかの著書も読んでみたい。
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タイトルと表紙に惹かれて手に取りました。
細かい描写が丁寧に書かれていて、その時の心情、情景がとても伝わってきました
読み終わったあと、何か懐かしい気持ちになりました
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時の流れとともに友達との距離が近づいては離れてを繰り返すところが現実的だと感じた。自分は小学生の時に仲が良かった人とは今では疎遠だし、中学生の時の友達とはたまに連絡を取ったり、高校生の時の友達はあまり連絡を取れていなかったり...。人間関係で悩むのって一生なのかもしれない。
Posted by ブクログ
隠し事の匂いをかぎとってしまう主人公。
私はそんなの能力は無いけど、友人関係の距離感とかふと湧き立つ緊張感とか、リアルでヒリヒリした。ほぼ主人公とは同年代なので、時事的な内容とか凄くリンクして読めました。
Posted by ブクログ
「友達」とはなんなのか、自身がいろんなステージで「友達」地獄に息苦しさを感じていた少女であったことを思い出した。いつの日か、そこから逃れられるのか、という淡い期待は、大人になってあっさり打ち砕かれたことも。でも大人になったから割り切れたこともたくさんあるなと。
Posted by ブクログ
「他人の嘘が匂いで分かってしまう」
自分がそんな能力を持っていたらどうでしょう…!
子ども、ましてや思春期の頃は、人と関係を築くのに苦労すること間違いなしだよね。
愛衣がどんな大人になるのかな…?と少し心配しつつ読みました。
物語が進むごとに、時代が移っていっている様子が描写から感じられ、なんとなく同世代の親近感を感じる(笑)
どの章も、深いところまでは掘り下げられることなく柔らかに進み…
ちょっぴり物足りない気もするけど、読みやすい1冊でした。
Posted by ブクログ
「クレイジー・フォー・ラビット」「テスト用紙のドッグイア」
「ブラックシープの手触り」「クラッシュ・オブ・ライノス」「私のキトゥ」
噓や秘密を敏感に嗅ぎ取ってしまう主人公・愛衣の五つの年代を切り取った連作短編集。
実際に起きた事件や事故、音楽などを絡めながら愛衣の成長が描かれる。
甘酸っぱい香りが立ち込めると人の嘘に気付いてしまう。
こんな特殊能力は悲劇だ。
そのせいで愛衣は小学生の頃から人間関係が上手く築けない。
愛衣の悩みは誰もが経験して来た事で懐かしさと共に苦みが込み上げる。
だが失敗もきっと成長の糧となるはずだ。
Posted by ブクログ
同世代だなぁーって。そうそう、消しゴムの交換とか、ウサギのお世話とか、SPEEDとか酒鬼薔薇聖斗とか、三木道三とか全部同じ時代に生きたので思わず唸るほど懐かしい。そして現代のポケモンGO。。わたしもハマったから、ここに飛んだかって。
本当に思ったよりも友達って選べない。いつの間にか友達になってるしなくなってる。失う方が多かったような気もするし、意外なあの人とまだ繋がってるってことも多い。
ウソの香り、さぞかし香ばしいんだろな。しんどいだろうな。
人付き合いの難しさをすごく丁寧に描いていて読んでいて苦しくなりながらもわたしは大好きでした。
Posted by ブクログ
思ったより起伏なく、読み終わった。
多感な時期ってある、神経がピリピリむき出しになってる時期。
大人になってもSNSとは(こうして)縁が切れない。
依存性。。。
勝ち負けに、こだわる姿は美しいね。
みんな友だち、公園で初めて会っても友だち。
次の待ってるお友だちにブランコは代わってあげましょう。
たしかに寒気だね。
みんなとは友だちにはなれない。
あの時、声をかければ良かったなぁと思うことはある。
Posted by ブクログ
私の中で、奥田亜希子さん2作品目。
各章ごとに、主人公が成長していっていて、おそらく私と同世代。其々に起こる実際のニュースや流行にも似たような関わり方をしていて、あー、そんなこともあったなぁと思いながら読んだ。
「求めよ、さらば」でゾワゾワさせられたミクシィにまた出会わされる笑
けど、本の半分、高校までくらいかなぁ、自分の記憶が曖昧な頃の話はなぜか全部夢の中みたいでフワフワしてつかめなくて、何の話を読んでるんだったっけと、浮いていた。
大学くらいから、ああ、そうかと思えるようになって、それまでのことも不思議とつながった。
だから最後まで一気に読めるときに読んで良かったかもしれない。
女子のあるあるだよなー。人間関係小さいことで悩んだり壊れたり修復したりする。
みんな似たようなこと経験して大人になったんだろうな。全部を打ち明けることはないけど。
勝手に被害者になった気分でいることのほうが多いよね。いいことなんてないのに。
最後、母親になったときの話が救いがあって良かった。ここでもママ友とかでグダグダなってたら辛かったから。
Posted by ブクログ
愛衣という1人の女性の物語。
各章でそれぞれ年代ごとに愛衣の物語が綴られていく。
①クレイジー・フォー・ラビット
愛衣小学6年生。ウサギが好きな愛衣は当番でもないのに同級生の珠紀と毎日のようにウサギ小屋に行っている。
愛衣はその人が放つ匂いで嘘をついていることを感じることができた。嘘を感じさせない珠妃と友だちになりたいと思っていた愛衣は珠妃の話に合わせてしまうが、その時に感じたのは自分から漂う嘘の匂いだった。
②テスト用紙のドッグイア
愛衣中学2年生。美術部に所属する愛衣は、時々嘘の匂いを放つ仲良しグループのメンバーよりも、絵が上手な吉乃と仲良くなりたかった。
③ブラックシープの手触り
愛衣高校3年生。思春期から両親との距離ができた愛衣は、たまたま出会ったエミと毎晩のようにファミレスに入り浸るようになる。そこでバイトしていた男性が同じ高校を退学した京介であることを知る。
④クラッシュ・オブ・ライノス
愛衣大学3年生。大手新聞社でバイトをする愛衣。バイト先の先輩が旅行先で津波の被害に遭ったことを知る。
⑤私のキトゥン
愛衣30代。結婚し、石川県で暮らす愛衣は専業主婦だ。一人娘の優里は夫にも愛衣にも似ず、負けず嫌いで活発な女の子。優里が通う保育園には発達が遅い明奈ちゃんという女の子がいる。
保育園の運動会。愛衣たちが見守る中、リレーで大活躍する優里。しかし、明奈ちゃんにバトンが渡ってから順位は落ちて結果、3組中3位に。大泣きする優里に愛衣がかけた言葉は。
どこにでもいるような目立たない1人の女性の物語なので、各章でドラマチックな展開が待ち受けているわけではないのだが、だからこそどの章も切なくて愛おしい。
読後感も良かった。ほんの少し心を前向きにさせてくれる物語。