【感想・ネタバレ】透明人間は204号室の夢を見るのレビュー

あらすじ

コミュニケーション能力皆無の実緒は、高校3年生の時、ある出版社の小説の新人賞を受賞する。ペンネームは「佐原澪」。デビュー当時は話題になったが、6年経った今、佐原澪の名前を覚えている人間は少ない。実緒はデビュー以降、スランプに陥り一作も小説を書けなくなっていた。自分のデビュー作が未だに置かれている書店へ行っては、誰か手に取らないかと監視する日々。するとある日、実緒の本を手に取る大学生風の男の姿を確認する。思わずあとをつけ、彼の家を特定する。部屋の番号を確認し、ポストに手を突っこみ郵便物を抜き取ると、そこには大学からの封筒と彼の名前・春臣の文字が。それからというもの、今まで一行も書けなかったことが嘘のように、実緒は春臣のことを連想した小説を書くようになる。その小説を春臣のポストに投函することで実緒は満足感を得ていた。ひょんなことから実緒は春臣の恋人と仲良くなるが――。第三十七回すばる文学賞受賞第一作。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

夢と現実と、各者の中で混じり合っている感覚が好き。

実緒の言動が、犯罪的な部分もおかしいことは理解しつつ、それを興味深く読み進められた。

奥田さんの作品は2作目だけれど、人間誰しもある自分の嫌な部分と認めてもいいのかなっていう部分の表現が絶妙で、私は前向きになれる作品だった。
全部きらきらしていなくてもいいんだと思える。

0
2020年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高校生で小説新人賞を受賞したが、それから6年間、小説が書けないままの実緒。書店で自分の著書を手にする青年を目撃し、思わず後をつけ、家と名前を特定する。

それ以来、嘘のように書けるようになった掌編を彼(春臣)の郵便受けに投函し続けていた実緒だが、やがて彼の恋人(いづみ)とも知り合い、3人で交流するにようになり…。



実緒が一方的に送り付け続けていた掌編を、春臣がいづみに見せて(もしくはいづみが偶然見つけて)、その内容に非凡なものを感じたいづみが、自分名義の作品に仕上げて新人賞に応募。実緒はいづみのゴーストライターとして、歪な三角関係を続けていく…みたいな展開を想像していたが(実緒の場合、その展開でも喜びそう)、春臣が物凄く冷静でまっとうなリアリストだった為、そうはならなかった。

春臣が実緒の本を手に取ったのなんて、本当に偶然と言うか、意味の無い流れの中の一瞬の行動で、たぶん彼は、実緒の紡ぎだす全てが、不可解で気持ち悪くてたまらなかったんだと思う。

一番相容れない相手に希望を見出してしまった実緒の、突っ走り方がリアル。
「こじらせ女子×SNS」系ストーリーを書かせたら、この作家さんに敵う者はいないんじゃないかと思う。

そんな純度の高い青春ゾンビである実緒も、ひと夏の全裸生活とストーキングを経て、次の段階に向かう。本来向けるべき矛先・向かうべき居場所へと、変態を遂げる。

人に見つけて貰うんじゃない。
自分は自分にしか見いだせない。
ラスト、透明人間の気づきが、鮮やかな輪郭を象った。

0
2020年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

実緒が小説を書けなかったのは、圧倒的な経験不足かなと思った。
実際に経験したことから着想を得て書いていくタイプのようだから、高校を卒業して、人との関わりがぐっと少なくなって、それでインプットされないからアウトプットもできなかったのではないかな。
春臣といづみとの関わりは、実緒にとって今までにないものだったし、きっと今までにないものが書けるようになったんじゃないだろうか。

春臣へのストーキングはもちろん客観的に見たら気持ち悪いしダメなことだけど、読んでいる間は不思議と嫌悪感がわかない。実緒の視点で当たり前のことのように書かれているからだと思う。
実緒は、相手がそれをどう思うかわからない、というより、想像していない。小説を書くくらいだから、人の機微が全くわからないわけではないだろうに、多分、普段の生活でそれを使わないからできないんじゃないかな。
春臣が掌編を読もうが読むまいが、それをどう思おうが、そこは実緒にとって自分の想像でしかなくて、現実の春臣ことは考えていないんだと思う。

飴の包みをとっておいたり、二人の髪の毛をとっておいたり、車内の会話を録音したり、気持ち悪いんだろうけど、私は気持ちがわかってしまった。
大切な思い出をはっきり残しておきたい気持ちはすごくわかる。
さすがに髪の毛は捨てるし、録音も実際にはしないけど、私も良い思い出が薄れていってしまうのがすごく嫌だった。全部録音録画したい。それが無理なら書き留めておきたいと思ってた。
実緒にとってはずっと憧れてたことだから、なおさらだったと思う。

いづみに接触したのは純粋な善意だと思う。それがなければ春臣とも関わるなんて思ってもみなかったんじゃないかな。
春臣といづみは育ちが良くて、誠実で真面目で、実緒が幻滅するような子たちじゃなかったのがよかった。
いづみは下心もあって近づいてきているんだろうなとは思っていたけど、ちゃんと仲良くなってから、という気遣いや、あんなふうにありがとうと言われたらもう言えない、というまともさがあってよかった。
春臣が出来過ぎなくらい実緒に合っていた。いづみほど純粋じゃなくて、どこか何かをあきらめている雰囲気とか、本の趣味とか。実緒の言ったちょっとしたことを覚えていて、手紙の犯人がわかってしまうところも。

0
2023年01月12日

Posted by ブクログ

「書かなくては、自分の言葉を書かなくては、いつか本当に消えてしまう」
小さい頃から孤独だった実緒の側にずっとあった本。自分も賞を取ることができて注目されたのに、時間が経ち忘れられて誰も読まなくなってまた孤独になる
生きづらさを抱えながら、クラスの人気者のあの子のようにキラキラした青春を夢見ていた実緒の前に現れたのはいづみと春臣。
楽しい時間も束の間、実緒の行動によって3人の関係に陰りが見え始め、、
孤独であったが故に人との関わり方がちょっと常識からズレてたり、生きづらさを感じてるのに結局孤独である方が生きやすかったりするのかな⁇と感じました
この作品を読んで、本屋さんでいろんな本を手に取って一冊一冊の出会いを大切にしたいなと思える作品ですぜひ読んでみてください。

0
2022年07月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小説家としてスランプ真っ只中の実緒はずっと孤独を生きてきて、もう友達や恋人ができることはないだろうと諦めている。人との距離がわからない実緒はストーカー紛いな行為を繰り返してしまう。孤独は恐ろしいけど孤独であればあるほど、実緒は小説家としての勢いを取り戻していくのが切なかった。

0
2021年03月21日

Posted by ブクログ

妄想と孤独、その先にあるかもしれない何か。「普通」が難しい女性の、イタくて切ない物語。すばる文学賞受賞第一作。
早熟の天才児の行く末は不幸の道を歩むことが多い。結局は経験値不足が年齢相応な言動に至らず、また創作者であれば作品に深みがない。本作の主人公・美緒もコミュ障からくる大スランプに陥った作家だが、ほぼ犯罪的行為から始まって何かを掴みとる。きっかけは経験、周囲ははた迷惑だけどね。

0
2020年09月28日

「小説」ランキング