杉之尾宜生のレビュー一覧
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2012年7月に書かれた本で、1984年に書かれた「失敗の本質」に対して多面的な検証とさらなる考察が実施された本、「失敗の本質」はずっと読みたかった本なのですが、まだ読めておらず、先に新しい版を読むことになりました。
相応の歴史知識や、太平洋戦争時代の人物像に関する情報がもともとないと、やはり難解であるとは思うが、それなりに長い間勉強してきてから読んだので、僕にはさらに造詣が深まったと思う。
『戦場のリーダーシップ』という観点では、僕もこれまでいくつか勉強してきてましたが、「キスカ撤退の木村」や「組織人になれなかった天才参謀 石原莞爾」、「独断専行はなぜ止められなかったのか 辻 政信」など、これまで知らなかったことも新たに知ることができました。
後半には、大和特攻の伊藤長官の
「我々(大和)は死に場所を与えられたのだ」の名言による戦艦大和特攻作戦における意思決定プロセスに関しても記載あり、大変興味深い。 山本七平の『空気論』という部分も大変勉強になった。
(山本七平:『「空気」の研究』1977年)
→ 伊藤長官の論理的思考は空気で説明できない
→ 「空気」の本質を科学的に分析する
2009年度ノーベル経済学賞を受賞した、
オリバー・E・ウィリアムソンの取引コスト理論に従って分析
→ いかにして、空気に水を差すか
カントの人間学的道徳哲学を引用して「自律的な意思を実践できる人間:啓蒙された人」と
以下、引用 P277
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日本軍は、設立当初はメンバー同士が自由闊達に議論する組織であった。 ところが時間の経過とともに制度が完備され、特に人事制度が明確になると、制度上、どうすれば昇進できるのかが明確になった。 こうした状況で、昇進制度に忠実な他律的エリートたちが育成され、実権を握っていった。 (中略)
こういう他律的エリートが統率する組織では、メンバーは容易に取引コストを計算し、合理的計算のもとに全員一致で「空気」を読み取ることになる。 そして、合理的に非効率で不正な結論に導かれることなる。
この意味で、海軍は、不条理に陥ったエリート集団の典型であった。 取引コストにとらわれた人々の、他律的な意思決定に対し、一石を投じることのできる人物、それが自律的な意思を実践する「啓蒙された人」である。このようなリーダーが帝国海軍に数人いれば、組織の不条理から救われたはずである。
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戦史ものが書かれるのは、二度と失敗しないための教訓を残すため。帝国陸海軍のデタラメっぷりがよく分かる一冊だ。でも、きっと同じ失敗を繰り返すのだろう。近年ますますそう感じる。それは最近の選挙結果やネットの動き、マスコミ報道から感じられるものだ。声の大きい意見だけが取り上げられる、見たい情報だけを受け入れる、皆んながそういうから、そうしようよ。
これが一番危ないのに。
大局的な判断から、この10年はガマンしましょうなんて、誰も支持しない。今の生活が大切なんだ。でもその結果がとんでもないことになったりする。実は大東亜戦争に突入したのもこれが根本原因だったりするんだ。 -
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日本が大東亜戦争で敗戦したことは知っていても,なぜ負けたのかということまでは,なかなか歴史の授業で学ぶことはないと思います。
敗戦の原因はどこにあるのか,将来にいかすべき教訓は何かということを研究したのが本書です。
文章が読みにくいということはありませんが,出来事や人物に馴染みがないので,やや読み進めるのに苦労しました。
私は自分の仕事や生活にどう活かしていくかということを考えながら読みました。
本書を読んでの私なりに得た教訓ですが,
・成功体験ばかりでもそのことだけに囚われて,視野が狭くなってしまい,そのことが大きな失敗を招く。それゆえ,失敗も貴重な経験。
・帰納的思考を大切に。経験から知識を得,それを実践しながら知識を修正していく。トライアル&エラーが重要。
失敗を取り上げることは,ともすれば当事者を非難するように受け止められ,取り上げること自体をやめさせようとすることもあるようです。しかし,責任追及という視点ではなく,何が起こったのか,その何が良くなかったのか,今後どうすべきかということは,たとえ失敗に目を向けることに気が進まないとしても,臭い物に蓋をするという姿勢ではいけないと思いました。
この本を読んでいる最中に,身近にそのような話を聞き,歴史を学ぶ姿勢は重要だと改めて認識した次第です。
本著の先駆けとなる「失敗の本質」も読んでみる予定です。 -
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ネタバレ本書は多くのビジネスパーソンに愛されている野中郁次郎の代表作「失敗の本質」の続編にあたる。前作がいわば状況の
分析を通じて、日本軍という組織の特徴を洗い出し、その延長線上として日本式の組織と米系組織の退避を行うといった構造だったのに対し、本作はより直接的に、その組織でリーダーシップを振るっていた人間の分析を行おうとしている。これは野中の興味関心が組織そのものから、後年になるにつれてよりリーダーシップに移っていたことを反映しているだろう。
ただし本書の場合、野中一人で書いているのではなく実質者が複数にいるということで、ややテーマがぼんやりしてしまっているところがあるのは否めない。また、前作はかなりの時間をかけられて執筆されたことが伝わってきていたが、今作については出版社の企画ありきだったと思えるようなところもあり、完成度としては世の中の本の中では低い方に入るだろう。
特に第三章「リーダー像の研究」は、著者の思い入れがある人物を対象としたのか、取り上げられている石原莞爾も山口多聞も、神聖化されすぎている嫌いがある。
これでは研究というよりもむしろファンブックという感じで、かなり強引だったというのが本音だ。
もし、野中の後期の他の本を手にしていないのであれば、本作も読む価値はあると思うが、この代表作を既に手に取っているのであれば、無理して読む必要はないと感じてしまった。 -
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太平洋戦争における日本の敗北については、様々な書籍で相当の分析が行われてきたであろうし、かの有名な「失敗の本質」などは学生時代から繰り返し読んできた。各界の著名人、政治家、企業家にも愛読されてきた同書であり、そこから学ぶべき事は、組織に於ける失敗は繰り返され、失敗を知り、同じ轍を踏まない様にする事の大切さであった。
本書もそのタイトルが示す様に、帝国陸海軍、日本という国家そのものが「敗北」に至るまでの経緯と原因について述べられている。前述の失敗の本質が、失敗を招く人の心理や組織の風土に着目されているのに対し、本書は敗北そのものに焦点を当てている為、日本が戦争に突き進む流れや、敗北に傾くキーとなった出来事、加えてそれを現実化させて行く人々の心理や組織の病理を総合的に理解できる点で優れていると感じた。
今も世界では内戦や国家同士の戦争が繰り返されているが、ニュースやネットで局所的にしか把握できない状況の中にも若干ながら通ずる部分があり、何より現代のビジネスシーンで見られる様な、人間心理や組織の空気などは日々の仕事の中で容易に眼にする事ができる内容も多い。
本書で繰り返し原因として述べられる、情報と兵站の軽視については、どの書籍でも語られる原因の一つとなっているが、開戦前のあまりに楽観的で見通しの甘い当時の考え方は、正に始める前に既に敗北していたと思わざるを得ない。対アメリカに国力では遥かに及ばない日本。石油をアメリカからの輸入に頼り、それがなければ国家国民の生活自体がおぼつかない。それでもマレーシア、インドネシアなど南方から手に入れるとなれば、当然船舶が必要になるわけで、シーレーンが絶対的に確保できている(守られている)事は絶対条件である。逆を言えばそれを叩いて仕舞えば、日本の生命線は絶たれる。誰がみても簡単に想像できる事だが、日本はそのシーレーンを破壊され、かつ船腹数の見通しが全く甘く、アメリカ潜水艦の格好の餌食となる事で誰もが知る「油不足」にあっという間に陥る。
戦争という国家の存亡を左右する事態に対して、政治が軍事に口を出せない状況や、戦争目的も定まらない状況だったからこそ、アメリカの行動や考え方に対してもチグハグでその場凌ぎ、逐次的な対応しか打てない。見通しが楽観的に成らざるを得ないのも、明確な戦争目的の下で政府と陸海軍、統帥部が一致団結し、共通の目的の元に整合性のある対策を打つ。これこそが最大の力の発揮に繋がる。それにも関わらず、「自存自衛」なのか「大東亜共栄圏の解放」なのか「侵略による植民地化」なのか、表面上の建前と深い所にある本音が入り乱れ、現場も指揮も統一されない。何より始めた戦争をどの様に終結させるか、こればかりは開戦前に、明確な目的のもとに設定した目標地点が無ければ、見当もつかない、若しくは安易な想像上のゴールにしかならない。
今次の戦争が見事に示している様に、戦術面を支える技術面での見通しも更に甘い。成功事例を過度に信じる体質、日露戦争の経験から得てしまった白兵銃剣突撃主義と大艦巨砲主義。銃撃や砲撃の威力、スピードが劇的に向上する中、夜間の銃剣突撃による攻撃の一点張り。更には戦艦大和、武蔵の建造などで航空戦力に充分な資源が回せないなど、その後の経緯を知る我々からすると滑稽でしかない。
最後は精神主義と、最早ビジネスの中でも精神論だけで押し通す様な企業すら最近は見かけないが、当時最高の頭脳集団が考えたにしては余りにも稚拙すぎる。確かに技術力や資源量では遥かに敵わない事は理解した上で、そこに頼らざるを得なかった(精神力で押し通せ)状況があったのだろう。そして、それでも戦争をしなければならなかった理由については、本書を読み、開戦の経緯、組織同士の対立、政治と軍事の分離など、あらゆる箇所からヒントを得られる。
その様な中にも僅かに存在する冷静な分析や現実的な予測は、全体の意見の中に簡単に握り潰されて行く。こうしたシーンはビジネスの中にもよく見られるが、会議内で声の大きな意見に傾いて行く様にも似ている。本来なら現場を知っている人間の意見が正しい事が多いが、それは活かされず、上位層の過去の成功体験に基づく主張や指示にかき消されて行く。
後半は海軍乙事件を題材に、福留繁中将が機密文書を廃棄したと言い張るような海軍の隠蔽体質。正に私の仕事現場でも日常的に見られる光景だ。
まだまだ多くの敗北原因が本書では詳細に語られていくが、何よりも戦争指導の不徹底に始まり、海軍陸軍意見対立などの組織同士の不和、作戦目標が共有されない点など、異なる目標地点に向かう組織が会社を発展させる事が無いように、戦争に「敗北しない」事も難しい事が容易に理解できる一冊である。
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ネタバレフランスが犯した失敗の本質を的確にした指摘した上で、物は、祖国フランスの救済策を次のように書いている
強くなること
敏捷に行動すること
世論を指導すること
国の統一を保つこと
外国の政治から世論を守ること
祖国の統一を撹乱しようとする思想から青年を守ること
治めるものは高潔のある生活をすること
汝の本来の思想と生活方法を情熱的に信じること
戦時体制のアメリカ政府は、統合参謀本部を始め、軍のポストに多くの民間人を起用した。それが知のバラエティーを豊かにし、組織にバランス感覚を植え付けたのだ
学校での成績が重視される10日システムに象徴されるように、日本軍の組織人事は極めて硬直的なものであった
羽を和ませ、気分を一新させる場合、ジョークやユーモアも必要だ。いざと言う時、こうした知の潤滑油を使うことができるかどうか。
失敗からいかに学ぶかこれは軍隊に限った課題ではない。贈収賄や談合、粉飾決算、個人情報流出問題等と、今なお企業不祥事が後を絶たないのは、組織の失敗の拡大再生産と言う負の連鎖に陥っているからだ -
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太平洋戦争の日本軍の失敗に学ぶ本
組織論などで現代にもじゅうぶん通じる、ということは普遍的、本質的な話なんだろう
日本企業の組織あるあるではあった
作戦が失敗した
アメリカ→原因を分析、次の作戦に反映
日本→「気合が足りない」「次は勝てる」
無謀な意見が出た
アメリカ→ロジカルに考えて判断
日本→「あいつは本気だ、やらせてやろう」
第一陣が敗退したら、、、
アメリカ→コンティンジェンシープランを持っている
日本→「失敗するわけない」「失敗を考えるのは異端だ」
今時こんな古い考えの組織もなかなかないとは思うが、
ゼロではないだろうと思う。
少なくともうちの会社も忖度とかあるし、「あいつがあそこまで本気なんだから、一度やらせてみよう」みたいなのはあると思う。
ただ企業であれば、最悪倒産で済むけど、
こと戦争では、そのしょうもない判断で、何千男万の人間を殺すことになる点は忘れてはいけないと思った。
戦史の勉強にもなってとても良い本だと思います。
ただ、かなり難解な文章も含むので眠くはなる。 -
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第二次大戦時の帝国陸海軍が犯した数々の失敗を、個別の事例の丁寧な調査と解説で分析してくれている。この手の本の中でもとてもわかりやすいものだと思う。何を読んでも当時のお粗末な意思決定や視野の狭さに呆れるが、やはり他人事ではない。特に戦艦大和の特攻にあたっての意思決定では、米国留学経験のある知性派でさえ、今考えれば合理的でない決定をしている。本書の分析によれば、「敗戦が濃厚な状況で、大和を温存しておくことは、臆病者のレッテルを貼られるだけでなく、終戦後に大和が敵国の実験などに使用されることになり、これらを何より恐れた」とされている。当時のその立場であれば当然の意思決定かもしれないが、そのせいで数千人の戦死者を出したとなれば、同情できる話ではない。ただ、こういう「空気感」のなかで誤った判断をしていないかについては常に自省する必要があると感じた。
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孫子とクラウゼヴィッツのテキストを比較し、戦争の目的や達成目標などの共通点と相違点を明らかにした一冊。
両者の思想の違いは表にまとまっていて、それを見れば一目瞭然ではあるものの、実際は両者の著書を紐解いて読み解いていくので読んでいておもしろいし、両者は対象とする範囲が異なる、という説明があり、また時代背景からその戦略の妥当性を探るなどの試みは新鮮。
特に孫子については儒教の影響を受けており、その点を注意して読む必要があるという解説はなるほどという感じ。
結論としては「盲目的にどちらかの言葉に心酔することなく、うまく組み合わせて自身の思想を強化せよ」にまとめられている。 -
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▼調べた単語
・翻って(ひるがえって):1 反対の面が出る。さっと裏返しになる。「裾が―・る」2 態度・説などが、急に変わって反対になる。「評決が―・る」
・賢慮(けんりょ):賢明な考え。すぐれた考え。
・コンテクスト:文脈
・プラグマティズム:思考の意味や真偽を行動や生起した事象の成果により決定する考え方。19世紀後半の米国に生まれ、発展した反形而上学的傾向の哲学思想。
・涵養(かんよう):水が自然に土に浸透するように、無理をしないでゆっくりと養い育てることを意味する。「読書力を―する」
・インフォーマル:公式でないさま。形式ばらないさま。略式。
・逡巡(しゅんじゅん):(スル)決断できないで、ぐずぐずすること。しりごみすること。ためらい。「大学に進むべきか否か逡巡する」
・帰趨(きすう):(スル)物事が最終的に落ち着くこと。行き着くところ。帰趣。「勝敗の帰趨を見とどける」「人心の帰趨するところを知らない」
・フロネティック・リーダー:アリストテレスのフロシネス(賢慮)という概念に基づいて野中郁次郎一橋大学名誉教授が提唱したものです。この賢慮型リーダーシップには、①「善い」目的をつくる能力、②場をタイムリーに作る能力、③ありのままの現実を直観する能力、④直観の本質を概念化する能力、⑤概念を実現する政治力、⑥実践知を組織化する能力、の6つの能力が必要とされます。
・フロネシス:理念と実践の相互作用がなくして生成されることはあり得ず、その方法論は実践的推論です。実践的推論による結論は、演繹的三段論法のように論理的真偽ではなく、仮説検証型フィールドワークなどにより、仮説設定と修正を反復することにより導かれます。
・演繹(えんえき):普遍的命題から特殊命題を導き出すこと。一般的に、組み立てた理論によって、特殊な課題を説明すること。
・帰納(きのう):推理・思考の手続きの一つ。個々の具体的な事柄から、一般的な命題や法則を導き出すこと。
・拙劣(せつれつ):(技術や出来具合が)へたなこと。つたないこと。
・軍事テクノクラート:政治経済や科学技術について高度の専門的知識をもつ行政官・管理者。技術官僚。テクノクラット。
・狭隘(きょうあい):せまいこと。
・セクショナリズム:一つの部門にとじこもって他を排斥する傾向。なわばり根性。
・法匪(ほうひ):《匪は悪者の意》法律の文理解釈に固執し、民衆をかえりみない者をののしっていう語。
・悪弊(あくへい):悪い習わし。悪習。悪風。「悪弊を断ち切る」
・兵站(へいたん):戦闘部隊の後方にあって、人員・兵器・食糧などの前送・補給にあたり、また、後方連絡線の確保にあたる活動機能。ロジスティクス。「兵站部」
・拙速(せっそく):できはよくないが、仕事が早いこと。また、そのさま。
・巧遅(こうち):出来ばえはすぐれているが、仕上がりまでの時間がかかること。
・俊英(しゅんえい):学問・才能などが人より秀でていること。また、その人。
▼付箋をした箇所
P.15
実践知を形成するための基盤の一つは経験である。とりわけ重要なのは修羅場経験、そして成功と失敗の経験だ。
論理を超えた多様な経験が欠かせない。
手本となる人物との共体験も、リーダーシップの形成に大きな影響を与える要素であろう。
もう一方では教養(リベラル・アーツ)も重要な要素である。哲学や歴史、文学などを学ぶなかで、関係性を読み解く能力を身につけることができる。
そんな弁論術も含めた政治力は、フロネティック・リーダーの重要な要素である。
P.17
直観を概念化する能力を挙げた。換言すれば、暗黙知を形式知化する能力である。概念化、言語化できて初めて、組織的な共有が可能になる。それにより、組織からのフィードバックを得て、直観をさらに磨くことができる。このスパイラルアップのサイクルは、言葉によって起動されるのだ。
P.20
いま実行すべきは、サイロの破壊とタスクフォースの創設を通じた機動的な知の総動員である。それが日本企業復活のカギだと私は確信している、
P.44
哲学は「どうあるか」という存在論と、「どう知るか」という認識論で構成され、その両面から、真・善・美について徹底的に考え抜く。それによって、モノではなくコトでとらえる大局観、物事の背後にある関係性を見抜く力、多面的な観察力が養えるのだ。
P.45
フロネシスを備えたリーダーを、私はフロネティック・リーダーと名づけた。そうしたリーダーは、以下六つの能力を備えている。
①「善い」目的をつくる能力
②場をタイムリーにつくる能力
③ありのままの現実を直観する能力
④直観の本質を概念化する能力
⑤概念を実現する政治力
⑥実践知を組織化する能力
P.52
イノベーションは、ある理論を前提とし、そこから論理分析的に正しい答えを引き出す演繹的思考では実現しない。完全競争状態の市場という理想郷を不完全状態に変えることで、企業は利潤を手にすることができるという考えをモデル化したのがマイケル・ポーターだが、そういうやり方では現実の延長線上にある戦略や革新ならぬ改善しか生まれない。
それに対して、個別具体の現実から出発し、新しいコンセプトや物事の見方を打ち立てようという強い思いから生まれる帰納的思考が、イノベーションには不可欠となる。帰納的思考は最後には必ず行動につながる。行動によってみずからの考えや判断の正否がわかるからだ。
P.217
「ああ、兵は拙速を尊ぶ。巧遅に堕して時機を失うよりは、最善でなくとも、次善の策で間に合わせなければならない」
P.218
「目前の悲惨に覆われて全局を忘れてはならない。これは洋の東西を通じ、いつの世にも変わることのない指揮官の統率である」
P.230
彼らに共通するのは、戦に臨む不動の信念であり、臨機に重大決断を下せる柔軟な頭脳であった。そのうえ闘魂と敢闘精神はアメリカ人さえたじろがせるほどだった。彼らなら、南雲のように優柔不断を繰り返すことも、致命的な判断ミスを何度も犯すこともなかったろう。
P.249
インフォメーションがあったことはほぼ間違いない。問題は、それを適切に分析し、情報(インテリジェンス)に転換して有効に活用したかどうかである。