山本周五郎作品一覧

  • 花杖記
    4.3
    何者かによって父を殿中で殺され、家禄削減を申し渡された加乗与四郎が、事件の真相をあばくまでの記録『花杖記』。どんな場合も二の矢を用意せず、また果し合いにもあえて弱い弓を持ってのぞむ弓の達人の物語『備前名弓伝』。ほかに『武道無門』『御馬印拝借』『小指』『似而非物語』など、武家社会の掟の中で生きる武士たちの姿に、永遠に変らぬ人間の真実をさぐった作品10編を収録。

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  • 花も刀も
    3.5
    没落した家運を剣によって再興しようと淵辺道場に入門した平手幹太郎(造酒)は、稽古おさめの試合で筆頭代師範を破るが、その夜、破門を命じられる。強い自負心と出世への野望を秘め、酒も飲まず女遊びもせずに剣ひと筋に励みながら、その努力が空回りし、ついには意味もなく人を斬るまでの失意の青春を描く『花も刀も』。ほかに『枕を三度たたいた』『源蔵ヶ原』など全8編を収める。

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  • 人情武士道
    3.5
    御用人の佐藤欽之助は、妻を通して琴の稽古友達だった女から、夫の仕官の世話を頼まれる。その女が、かつて縁談を申し込んで断られた和枝であることを知った欽之助は、思いがけない行動で依頼を果たす……。著者の鋭い人間観察眼を際立たせている表題作の他に、後年の“職人もの”の先駆をなす「しぐれ傘」や“滑稽もの”の「竜と虎」など、初期の傑作12編を収める。

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  • 火の杯
    -
    日本最大の財閥、御池家の庶子、康彦は財閥解体からのがれるための生け贄として、別人に仕立てられて公金拐帯の罪をきせられて、最後には生命までも奪われようとする。出生の秘密にまつわるニヒルな性格から、過酷な指令をただ受け入れているだけの康彦であったが、かつて自分の愛した奥勤めの娘の献身的な愛によって運命に立ち向かうようになる。山本周五郎が戦後の現実に挑んだ意欲作。

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  • やぶからし
    3.7
    生れついての放蕩がやまずに勘当され、“やぶからし”と自嘲するような前夫のもとに、幸せな家庭や子供を捨ててはしる女心のひだの裏側を抉った表題作。美しい妹の身勝手さに運命を変えられた姉が、ほんとうの幸福をさがし求めるまでを抑制された筆でたどった『菊屋敷』。ほかに、『避けぬ三左』『孫七とずんど』『山だち問答』『「こいそ」と「竹四郎」』『ばちあたり』など、全12編を収める。

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  • あんちゃん
    3.6
    妹に対して道ならぬ行為をはたらき、それを悔いてグレていった兄の心の軌跡と、思いがけぬ結末を描く『あんちゃん』。世継ぎのいない武家の習いとして、女であるにもかかわらず男だと偽って育てられた者の悲劇を追った『菊千代抄』。ほかに『思い違い物語』『七日七夜』『ひとでなし』など、人間をつき動かす最も奥深い心理と生理に分け入り、人間関係の不思議さを凝視した秀作8編を収録。

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  • 扇野
    4.4
    枯野の襖絵に点睛を加えるために、初めて会った芸妓に野原で扇を落させる流れ絵師。その後の二人の道行きと、その陰で力をつくす女のまごころを鮮やかに写し取った『扇野』。“三十ふり袖、四十島田”のたとえに流れる女の哀しみを、下町の人情と善意で救った『三十ふり袖』。なにげない会話や独白のなかに男女の機微と人生の深い意味を伝える“愛情もの”の秀作全9編を収録する。

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  • 明和絵暦
    -
    尊皇学者・山県大弐の影響をうけ、藩の進むべき道をめぐって対立を深める小幡藩の青年藩士たち。そして兄と許嫁とが敵味方に分かれることになった時、八千緒は……。大弐と苦難をともにする若者たちをとおし生涯のテーマ〈人間の真価は何を為したかではなくて、何を為そうとしたかだ〉を追究。若き周五郎が娯楽小説作家としても第一級の腕前であることを証する二作目の新聞小説。

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  • 風雲海南記
    3.7
    四国西条藩主の家系でありながら双子の弟に生まれた英三郎は、七歳で浅草の寺に預けられる。英三郎は市井の浪人として成長するが、思いがけない偶然の重なりから、知らず知らずのうちに西条藩の御家騒動に巻き込まれる。その中で英三郎は己の出自を知り、騒動を操る藤巻右京と大老・酒井雅楽頭に闘いを挑んでゆく。戦時中に刊行され、戦後長く埋もれたままとなっていた幻の大作。

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  • 風流太平記
    3.6
    紀州徳川家がイスパニアから武器を密輸して幕府転覆をはかっているらしい――前代未聞の大陰謀を解明すべく奔走をはじめた兄たちによって花田万三郎は長崎から江戸に呼びもどされる。しかし、人間への思いやりにあふれ、彼を慕う二人の女性の間で翻弄される万三郎は、事件解明第一の兄たちに叱られてばかり。独特の人間観をにじませながら、波瀾万丈の剣劇をくりひろげる長編小説。

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  • 山彦乙女
    3.9
    武田家再興――百三十余年にわたる悲願に翻弄される甲州甘利郷のみどう一族。江戸の新御番、安倍半之助は甲府勤番中に失踪した叔父の遺品を調べるうち、叔父を狂気へと導いた武田家の莫大な遺産をめぐる「かんば沢」の妖しい謎のとりことなり、己れもまた甲州へと出奔してゆく。著者の郷里甲州の雄大な自然を舞台に謳いあげた、周五郎文学に特異な位置を占める怪奇幻想の大ロマン。

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  • 五瓣の椿
    3.9
    「この世には御定法で罰することのできない罪がある」最愛の父が死んだ夜、自分が父の実子ではなく不義の子なのを知ったおしのは、淫蕩な母とその相手の男たちを、自らの手で裁く事を決心する。おしのは、母を殺し、母の男たちの胸につぎつぎに銀のかんざしを打ちこみ、その枕もとに赤い山椿の花びらを残してゆく……。ミステリー仕立で、法と人間の掟の問題を鋭くついた異色の長編。

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  • 柳橋物語・むかしも今も
    4.2
    幼い一途さで答えてしまった「待っているわ」という一言によって、一生を左右され記憶喪失にまで追いやられてしまう“おせん”の悲しい生涯を描いた「柳橋物語」。愚直な男の、愚直を貫き通したがゆえにつかんだ幸福を描いた「むかしも今も」。いずれも、苛酷な運命と愛の悲劇に耐えて、人間の真実を貫き愛をまっとうした江戸庶民の恋と人情を描き、永遠の人間像をとらえた感動の2編。

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  • 寝ぼけ署長
    4.0
    五年の在任中、署でも官舎でもぐうぐう寝てばかり。ところが、いよいよ他県へ転任が決ると、別れを悲しんで留任を求める声が市民たちからわき起った……。罪を憎んで人を憎まずを信条とする“寝ぼけ署長”こと五道三省が、「中央銀行三十万円紛失事件」や「海南氏恐喝事件」など十件の難事件を、痛快奇抜で人情味あふれる方法でつぎつぎと解決する。山本周五郎唯一の探偵小説である。

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  • 樅ノ木は残った(上)
    4.0
    仙台藩主・伊達綱宗、幕府から不作法の儀により逼塞を申しつけられる。明くる夜、藩士四名が「上意討ち」を口にする者たちによって斬殺される。いわゆる「伊達騒動」の始まりである。その背後に存在する幕府老中・酒井雅楽頭と仙台藩主一族・伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。この密約にこめられた幕府の意図を見抜いた宿老・原田甲斐は、ただひとり、いかに闘い抜いたのか。

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  • 一人ならじ
    3.4
    合戦の最中、敵が壊そうとする橋を支える丸太がわりに自分の足を使い、片足を失う『一人(いちにん)ならじ』。敵の武将を倒しても首級(しるし)を掻き取ることをせず、すばやく次の敵を求めて前進する『石ころ』。ほかに『三十二刻』『殉死』『さるすべり』など、名を求めず、立身栄達も望まず、黙々としておのれの信ずる道を生きる無名の武士たちとその妻の心ばえを描いた“武家もの”の傑作全14編を収める。

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  • 天地静大(上)
    4.0
    倒幕に揺れ動く幕末、若者たちは国の為に何をすべきかを模索していた。そんな中、東北の一小藩出身の杉浦透は、世間の流れに惑わされず昌平黌に入学し、学問の道に専念することを決意する。一方、水谷郷臣もまた、藩主の弟という立場に悩みながらも、己に忠実な生き方をしようと努力する。時代の動乱に巻き込まれながらも、懸命に生きる若者たちを描いた青春群像劇。

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  • 正雪記(上)
    3.3
    立身出世を夢見て、一介の染屋職人の伜から、侍になる野望を抱き江戸へ出奔した由井正雪は、その明晰な頭脳を武器に島原の乱で浪人たちの衆望を集める。浪人隊を結成し、幕府軍の先鋒に使うことを進言する。しかし知恵伊豆・老中松平信綱の狡猾な罠が待っていた……。支配権力への抑えがたい怒りを胸に、徳川のゆるぎない天下に挑んだ巨人を正面から見つめた本格歴史長編。

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  • 虚空遍歴(上)
    3.8
    旗本の次男、中藤冲也が余技として作る端唄は、独得のふしまわしで江戸市中のみならず遠国でももてはやされた。しかし冲也はそれに満足せず、人を真に感動させる本格的な浄瑠璃を作りたいと願い、端唄と縁を切り、侍の身分をも棄てて芸人の世界に生きようとする。冲也の第一作は中村座で好評を博するが、すぐに行き詰り、妻も友をも信じられぬ懐疑の中にとじこめられてしまう。

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  • ちいさこべ
    3.9
    江戸の大火ですべてを失いながら、みなしご達の面倒まで引き受けて再建に奮闘してゆく大工の若棟梁の心意気がさわやかな感動を呼ぶ表題作、藩政改革に奔走する夫のために藩からの弾圧を受けつつも、真実の人間性に目を見ひらいてゆく健気な女の生き方を描く『花筵』、人間はどこまで人間を宥しうるかの限界に真正面から挑んだ野心作『ちくしょう谷』など、中編の傑作4編を収録する。

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  • おさん
    4.1
    純真な心を持ちながらも、女の“性”ゆえに男から男へわたらずにはいられないおさん――世にも可愛い女が、その可愛さのために不幸にひきずりこまれてゆく宿命の哀しさを描いた『おさん』。芸妓に溺れ込んでいった男が、親友の助力で見事に立ち直ってゆくまでを描いた『葦は見ていた』。“不思議小説”の傑作『その木戸を通って』。ほかに『青竹』『みずぐるま』『夜の辛夷』など全10編を収める。

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  • 人情裏長屋
    4.0
    居酒屋でいつも黙って一升枡で飲んでいる浪人、松村信兵衛の胸のすく活躍と人情味あふれる子育ての物語『人情裏長屋』。天一坊事件に影響されて家系図狂いになった大家に、出自を尋ねられて閉口した店子たちが一計を案ずる滑稽譚『長屋天一坊』。ほかに『おもかげ抄』『風流化物屋敷』『泥棒と若殿』『ゆうれい貸屋』など周五郎文学の独壇場ともいうべき“長屋もの”を中心に11編を収録。

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  • 季節のない街
    4.2
    “風の吹溜まりに塵芥が集まるようにできた貧民街”で懸命に生きようとする庶民の人生。――そこではいつもぎりぎりの生活に追われているために、虚飾で人の眼をくらましたり自分を偽ったりする暇も金もなく、ありのままの自分をさらけだすしかない。そんな街の人びとにほんとうの人間らしさを感じた著者が、さまざまなエピソードの断面のなかに深い人生の実相を捉えた異色作。

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  • 四日のあやめ
    3.5
    武家の法度である喧嘩の助太刀のたのみを、夫にとりつがなかった妻の行為をめぐって、夫婦の絆とは何かを問いかける『四日のあやめ』。娼婦仲間との戯れに始まった恋であるが故に、一子をなしながらも、男のもとから立去ろうとする女を描いて周五郎文学ならではの余韻を残す『契りきぬ』。ほかに『ゆだん大敵』『貧窮問答』『初夜』『古今集巻之五』『燕』『榎物語』など珠玉作全9編を収める。

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  • あとのない仮名
    3.3
    江戸で五指に入る植木職でありながら、妻とのささいな感情の行き違いがもとで、職を捨て、妻子も捨てて遊蕩にふける男の寒々とした内面を虚無的な筆致で描いて、周五郎文学に特異な位置を占める最晩年の傑作「あとのない仮名」、夫婦の変らぬ愛情を、枯死するまで色を変えない竹柏に託した武家ものの好編「竹柏記」ほか、「主計は忙しい」「桑の木物語」「しづやしづ」など、全八編を収める。

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  • 松風の門
    4.1
    幼い頃、剣術の仕合で誤って幼君の右眼を失明させてしまった俊英な家臣がたどる、峻烈な生き様を見事に描いた“武道もの”の典型「松風の門」、しがない行商暮しではあるけれども、心底から愛する女房のために、富裕な実家への帰参を拒絶する男の心意気をしみじみと描く“下町もの”の傑作「釣忍」、ほかに「鼓くらべ」「ぼろと釵」「砦山の十七日」「醜聞」など全13編を収録する。

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  • おごそかな渇き
    4.3
    長年対面しつづけた宗教的課題を取り上げ、“現代の聖書”として世に問うべく構想を練りながらも絶筆となった現代小説「おごそかな渇き」。ほかに“下町もの”の傑作「かあちゃん」「将監さまの細みち」「鶴は帰りぬ」、“武家もの”の名品「紅梅月毛」「野分」「蕭々十三年」、“こっけいもの”の「雨あがる」、“メルヘン調の「あだこ」「もののけ」と、周五郎文学のさまざまな魅力を一冊に収めた。

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  • 深川安楽亭
    4.0
    抜け荷(密貿易)の拠点、深川安楽亭にたむろする命知らずの無頼な若者たちが、恋人の身請金を盗み出して袋叩きにされたお店者に示す命がけの無償の善意を、不気味な雰囲気をたたえた文章のうちに描いた表題作。完成されたものとしては著者最後の作品となった「枡落し」。ほかに「内蔵允留守」「おかよ」「水の下の石」「百足ちがい」「あすなろう」「十八条乙」など全12編を収録する。

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  • ひとごろし
    3.6
    藩中きっての臆病者と評判をたてられた若侍が、それを逆用し奇想天外な方法で誰も引受け手のなかった上意討ちを果すまでを描いた「ひとごろし」、“無償の奉仕”という晩年最大の命題をテーマに著者の人間肯定がみごとに定着した「裏の木戸はあいている」をはじめ、戦前の作品から最晩年の表題作まで、“武家もの”“岡場所もの”“こっけいもの”等々の代表的短編10編を収める。

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  • 大炊介始末
    4.2
    自分の出生の秘密を知った大炊介が、狂態を装って藩の衆望を故意にうらぎらねばならなかった悲劇を描く表題作。自分たちはおたふくであるときめこんでしまっている底抜けに明るく情味豊かな姉妹の物語「おたふく」。奇抜な視点と卓抜な文体で「剣聖」宮本武蔵を描き、著者の後半期の出発点となった意義深い作品「よじょう」など。さまざまな傾向の短編から代表作10編を選りすぐった。

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  • ながい坂(上)
    4.2
    徒士組という下級武士の子に生まれた小三郎は、八歳の時に偶然経験した屈辱的な事件に深く憤り、人間として目ざめる。学問と武芸にはげむことでその屈辱をはねかえそうとした小三郎は、成長して名を三浦主水正と改め、藩中でも異例の抜擢をうける。若き主君、飛騨守昌治が計画した大堰堤工事の責任者として、主水正は、さまざまな妨害にもめげず、工事の完成をめざす。

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  • 栄花物語
    3.9
    徳川中期、時の先覚者として政治改革を理想に、非難と悪罵の怒号のなか、頑なまでに己れの意志を貫き通す老中田沼意次――従来、賄賂政治の代名詞のような存在であった田沼親子は、商業資本の擡頭を見通した進取の政治家であったという、新しい視点から、絶望の淵にあって、孤独に耐え、改革を押し進めんとする不屈の人間像を、時流に翻弄される男女の諸相を通して描く歴史長編。

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  • 日日平安
    4.5
    織田裕二主演の映画『椿三十郎』の原作「日日平安」を収録。無一文の浪人・菅田は、“切腹のマネ”をして通りすがりの男に飯を乞うがあえなく失敗……。しかし、この通りすがりの男、なにやら騒動を抱えている。聞くと、仲間9人で悪徳政治を行う家老らへの斬り込みを企てていた。これはいいツルだ……!! 菅田は仲間入りを志願。狙うはもちろん礼金! だったのだが……。無一文の空腹浪人の活躍をユーモラスに描く表題作をはじめ、ヒューマニズムあふれる名作全11編。「粋」が伝わってくる、時代小説初心者にもオススメの一冊!

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