国内文学の検索結果
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夜明け前
「夜明け前」は何度読んでもぼくを感動させる。陶酔はますます深まり、ぼくの月並みな思念は千々にみだれ、目前の言葉と言葉の合間に、意味しえぬ意味がひろやかに、しかも幾重にも層をなして透けてくるように思える。陶酔から醒めたときに、ぼくははるかなる彼方をかえりみるように、あるいは遠い昔のことを思いだすようにして、この小説がぼくに経験させてくれたものの意味を考えようとする。ぼくが想いみたものは、あるときは、ありとあらゆるものを食い尽してゆく時間についての作者の毅然たる形而上学であり、あるときは主人公青山半蔵の悲槍な劇的生涯であり、またあるときは、ぼくたちの祖国が、黒船の到来とともにヨーロッパから押し寄せてきた近代の巨大な波濤に、身をさらしながら切り拓いてきたぼくたち自身の近代の困難さであった。……篠田一士。 -
神州纐纈城
武田信玄のお気に入りの家臣土屋庄三郎は、ふらりと思い立った夜桜見物で、老人から声をかけられ、見事な深紅の布を売りつけられた。これは、古く中国で人血で染められたという纐纈布だった! だがこの紅巾には、今は行方知れずの庄三郎の父の名が浮いて見え、ひらひらと飛ぶ紅巾に操られて、庄三郎はいつしか富士山麓をさまよっていた。そこには、仮面の城主が君臨する纐纈城があり、神秘的な宗教団、不思議な女能面作り師が隠れ棲み、毎日人を斬らずにはすまない陶器師がうろつき、まさに魑魅魍魎の跋扈する魔界だった。怪異と妖美の世界をめくるめく筆致で描いた、不滅の伝奇文学。 -
野菊の墓
愛し合う二人が結ばれず、悲劇的な最後を迎える青春小説『野菊の墓』を読んで泣かない人はいない。山口百恵主演でテレビドラマ化、松田聖子主演で映画化された永遠の名作だが、100年以上も前の小説なので理解しづらいところも多い。特に会話は不自然な言い回しが目立つ。そこで、すらすら読め、小説としての感動がより深まるような現代語に超訳した。【登場人物】◎政夫(「りんどう」の花のように凛(りん)とした心優しい15歳の少年)◎民子(政夫と幼なじみの従姉。「野菊」の花のような可憐で美しい17歳の少女)幼なじみ政夫と民子は、いつしか心ひかれ合うようになるが、周囲の反対で民子は好きでもない男のもとへ嫁がされる。それでも互いのことを思慕し続ける二人に悲劇的な結末が……。