あらすじ
賢狼ホロと、湯屋の主人になったロレンスの“幸せであり続ける”物語が、ついに登場。ホロとロレンスが、温泉地ニョッヒラに湯屋『狼と香辛料亭』を開いてから十数年。二人はスヴェルネルで開催される祭りの手伝いのため、山を降りることになる。だがロレンスにはもう一つ目的があった。それは、ニョッヒラの近くにできるという新しい温泉街の情報を得ることで――? 電撃文庫MAGAZINEに掲載され好評を博した短編3本に加え、書き下ろし中編『狼と泥まみれの送り狼』を収録!
...続きを読む
まさかの商業ファンタジー、楽しみながら貨幣経済や商取引が学べてしまう恐るべき(?)ラノベ!
中世ヨーロッパ風の世界観というと様々な作品がありますが、本作はメインとなる要素がかなり異色。主人公は25歳の行商人ロレンス、武器とするのは商人としての知恵や経験、発想力や交渉術とバトル要素はまるで無し、剣も魔法も使いません。
商人なので勝負事は商売関連なのですが、これがまたどういう訳か物凄く熱い!
騙し騙され裏を読んで裏をかく……全霊を掛けた商売の駆け引きはバトルにも負けない緊張感があるんですねー。
ひょんなことから狼っ娘ホロと旅することになるロレンスですが、この狼っ娘が侮れない。
少女の姿ながら数百年を生きる賢狼で知恵も機転も凄まじく行く先々でロレンスはもちろん歴戦の商人達も唸らせます。しかし普段は飄々としつつ時折弱さや儚さを見せることもあり……二人の行く末にも注目です!
緻密なストーリー構成で推理モノや裁判モノに通じるハラハラ感とカタルシスがあり、それでいて文体はとても読みやすい本作。ラノベを敬遠する人にもぜひ読んでもらいたい一作です!
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
娘と未来の息子?が旅に出て、また二人になったロレンスとホロの短編集。
ニョッヒラで宿を開いて何年も経つが、まだ新参者扱いされている苦労や町になじむための努力などが書かれる。
人なので普通通りに年を重ねるロレンスと、神なので若いままのホロ。寿命の差を感じる会話も多め。
子供も巣立って、あとの人生をどう過ごすのかがテーマになっていそう。
家族から子供が抜けて、恋人に戻った二人はまだ随分お熱い印象。
そういえば二人が恋人として書かれた巻は、あんまりなかったかもしれない。
Posted by ブクログ
「狼と香辛料」の新しい物語を読める幸せ。
まさか続編が出ているとはこの2年間、全く気付かなかった。
しかし、嬉しい。わたしはこの物語が大好きだ。中世のファンタジー風ではるが、主人公は持つのは剣でも魔法でもなく、言葉である。戯言シリーズも言葉ではあるが、その言葉の指すベクトル化が違う。
なんというか、狼と香辛料の言葉の選択はとても美しい。戯れ言シリーズは、なんか何か意味ありそうなことを言葉遊びのように使い、読者を誘ってくる。
しかし、こちらは音楽を奏でるようなリズムがあり、それが気持ち良い。
「そこには、少しだけ苦みが含まれる。自分はホロと同じ時間を生きられない。自分が死んだ後、ホロがずっと自分のことで尾を引くのを望んでいない。
だが、それもまた麦酒と同じ。甘いだけでは、酒はうまくないのだ。」
言葉を紡ぐとは、この狼と香辛料に適した表現である、
物語というのは原作者が書くのを辞めた瞬間から停止する。狼と香辛料も然り、好きな物語が止まってしまうのはとてもさみしい。
それが再開していたというのだから、こんなにうれしいことはない。しかも、過去の出来事の隙間の話や、スピンオフではなく、続編というのが嬉しい。例え、短編でも。
最後改めて、この物語にまた会えたことがとても嬉しい。ありがとう。支倉凍砂さん。