あらすじ
チンギスは病床にある長子ジョチのもとを訪れたのち、草原へと向かう帰還の途につく。西夏領内に入ったチンギスは、ある城にただならぬ気配を感じた。それは黒水城と呼ばれ、砂漠に囲まれており、ウキという謎の人物が主とされていた。一方、チンギスから受けた傷を山中で癒すマルガーシに、カルアシンから見事な剣が手渡される。贈り主は明かされなかったが、マルガーシは戦に向けて隊の修練を重ねていく。アウラガの宮殿に戻ったチンギスは、ソルタホーンから国を揺るがす一大事を告げられた。突如生じた戦いに、チンギスは将軍だけでなくボオルチュも帯同させる――。圧巻の最終章! 「チンギス紀」全十七巻、ついに完結!!
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Posted by ブクログ
チンギス紀17 天地を読み終えた。
長かったチンギス紀がついに終わった。言葉では言い表せない感情。本を読んでこんな気持ちになったことはない。希望、絶望、別れ、悲しみ、満足、高揚。全てがあった!
まずは17巻の振り返りする。
・チンギスの長男ジョチが闘病に末に死んだ。最後、チンギスはジョチの元を訪れて話をした。これまで息子の扱いに困っていたように見えたチンギスだが、最後にジョチに見せたものは、愛情と言ってさしつかえないだろう。ジョチも思い残すことなく死ねたはず。
・トーリオが長い旅の末、チンギスと出会った。タルグダイのことを語るチンギスが、僕は好きだと思った。やっぱりテムジンだった頃の彼が好きなんだよな。草原の男だった。
・その点、最後の最後にチンギスは全てから解き放たれて草原の男に戻ったと思う。ホラズムと戦いながら、戦の目的、理由を見失いがちだったチンギス。彼の迷いと並走するように読者も、チンギスをどこか掴みどころのない巨星と感じてしまっていたと思う。それが最後にマルガーシとの激闘もあって、手触り感を取り戻した。テムジンが13歳の頃から、読者は知ってる。そんな彼があまりに巨大帝国を築き、チンギスとなり、そしてテムジンとして死んだ。私は、親のような気持ちで見守った。マルガーシとの戦いは、本当に尊いものだった。父の愛したリャンホアと出会い、完全に父ジャムカの影を引き受けたマルガーシ。彼とチンギスの戦いの中では、何度も黒貂の帽子と玄旗が登場し、常にジャムカを思わせた。こんなに綺麗な物語の終わり方があるのか。北方先生がすごかったのは、ジャムカが死にテムジンがチンギスとなり、ホラズムが最大の敵になったとしても、物語の中で最も重要な核の部分を9巻で退場したジャムカにあらせ続けた事だろう。それが、1巻から読んできた僕としては、全てがつながり円になった感覚であり、至高だった。
感情が溢れすぎて、箇条書きのつもりがめちゃくちゃ長くなってしまってるね。それだけ終盤が素晴らしかった。序盤中盤は違う面白さがあったから、それも触れとくね。最後の決戦の舞台である黒水城は、建築の背景、城主ウキと、謎が多かった。それは、久しぶりにチンギス紀で現れた謎解き要素だったので、個人的にはすごく好きだった。
全て読み終えたのでチンギス紀全体の振り返りもするけど、個人的に1番白熱していたのは、三者連合と草原の雌雄を決する戦いをしていた時かな。あの時は、ジャムカ、タルグダイ、トクトア、ジャカガンボといった初期からの登場人物の活躍はもちろん、西遼・金国の代理戦争の色も帯び始め、盤面が読めない不気味さと期待があった。そこから三者連合が破れ、ジャムカが死ぬ所までの物語の盛り上がりは、自分の人生の読書の中で最高のものだった。ホラズムとの戦ももちろん面白かったが、初期から共に走ってきた登場人物ではなかった分、感情的にはなれなかった。それが最後に、マルガーシが完全にジャムカの跡を継いだことで、あのころの熱いものを蘇らせてくれた。これ以上ないエンディングだった。
この作品に出会えてよかった。本当にありがとう!チンギス紀は僕の宝物です。いつか必ずモンゴルに行くぞ!
Posted by ブクログ
あ~あ、ついに終わってしまった。北方先生、長い間楽しませてくれてありがとうございます。
チンギスとボオルチュ、ソルタホーン、素晴らしい締めくくりだと感じました。
水滸伝も今度読もう!
Posted by ブクログ
「それで、虹の根もとは見えたのですか?」
あそこが虹の根もとだ、とソルタホーンに言ったらしい。そして駈けようとした時、眼を醒ました。
「虹に、根もとなどがあると思うのか」
「人の、思いの中だけのものですか」ソルタホーンが、大きく溜息をついた。
「俺たちは、殿の虹の根もとを、捜し続けてきたのですよ」(93p)
とうとう最後まで、チンギスは虹の根元を見ることはできなかった。チンギスの分身とも言っていいソルタホーンだから口ごたえできたのだろう。何しろソルターホンたちは命を差し出してこの苦しい戦いを伴走してきたのだから。
最終巻。
ホラズム国との戦いを終えて、国づくりの巻になるだろう、という私の予測を簡単に覆し、チンギスは最終章まで戦い尽くして人生を終えた。まさか、最後まで、最後こそ、盟友であり宿敵であったジャムカの息子マルガーシとの直接対決で終わるとは。吹毛剣が此処迄存在感を示すとは。
「モンゴル国の広さだけを考えても、人に戻ったチンギスにとっては、幻でしかなかった。これほど広い国など、あっていいのか」
天地をひとつにしようとしたチンギスの想いは、一代英傑の夢として閉じようとしている。
「天はひとつ。だから、地もひとつなのだ。それがすべてで、ほかのものは、なにもない。ほんとうの美しさが、人の世にあるのか。美しさそのものが、あり得ないものではないのか。」
何か美しいもの、虹の様なものを目指して人生を駆け抜けたが、幻のままに終える。漢としてはそれでOKかもしれない。ただ、そのために何万という兵士が亡くなった。英雄を描いた大河小説の最終巻にしては、何処にもその成果を寿ぐ言葉は無く、むしろ哀調に満ちていた。
チンギスの夢を孫のフビライが受け継ぐのだろうか。吹毛剣のみが知っている。次回文庫本迄、また5年ほど雌伏の秋を過ごさねばならない。
成吉思(チンギス)汗
テムジン十四歳立
モンゴル族長子也
少年学金国大同府
帰還郷幾戦幾度負
モンゴル族遂統一
授名前成吉思汗也
東端華北渤海保州
西端大海カスピ海
南端金国開封府迄
一代英雄統一天地
夢虹彼方永眠根元