あらすじ
モンゴル族を統一し、さらにケレイト王国を滅ぼしたテムジン。弟のカサル、テムゲ、長男ジョチらに出動を命じ、タヤン・カンが統べるナイマン王国との戦いを進める。そのナイマン王国の大軍の中に、ジャムカの千五百騎が、ホーロイ、サーラルとともに潜んでいた。崩れたナイマン軍を見届けて馬首を回したテムジンは、眼前にあるはずのない旗を見る。ジャムカ! とっさに吹毛剣を抜いたテムジンだが、すさまじい斬撃を受けて落馬する・・・・・・。――モンゴル族を統一したテムジンは、ついに〈チンギス・カン〉を名乗る。一方、ジャムカとの因縁も決着、さらなる統一へ向かうことを決意する衝撃の第9巻!
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Posted by ブクログ
チンギス紀9 日輪を読んだ。
・8を読み終えた時の、あっさりナイマン王国を併合しそうという予想は当たった。これでテムジンは、完全に草原の覇者となった。
・1番は、テムジンがようやくチンギス・カンになった事だろう。ただ個人的には「テムジン」が好きだったので、その呼び名がチンギスに変わってしまったことは、少し寂しさを覚えた。多分、テムジンの弟たちも似たような思いを抱いているのではないか。兄は、どこへ向かうのか、と。
・テムジンの最大の幸運は、非常に優秀な弟と息子達に恵まれたことだと思った。カサルはナイマン王国攻防戦において、将軍として才能を発揮した。末弟のテムゲも西夏遠征の主将として、文句ない実績を作った。長男ジョチも順調に成長している。これほど後継者に困っていない、人材豊かな国は周りにいないので、そこにもモンゴル族のつよさがあるとおもった。
・テムゲが、かつての師であり、今はジャムカ軍についたアクタンとクチャルを討ち果たすシーンは感動的だった。敵味方の殺し合う関係でありながら、心の底では互いを愛し、信頼している。チンギス紀にはそのような描き方をされる人間関係が頻出しており、もちろん代表はテムジンとジャムカな訳であるが、単に憎しみ会うだけではない切なさを感じさせた。
・ジャムカの息子マルガーシが、流浪の末トクトアと出会ったのが、今後の大きな契機になりそう。トクトアは懐の深い人物だから、おそらくマルガーシがジャムカの息子だと気づいても、彼を一人の男として育て上げるだろう。そんなマルガーシが、父の宿敵テムジンを憎むのでなく、いつか共闘してジャムカが出来なかった「テムジンとの共闘」を成して欲しいと思った。
・前回、もう出番がないと予想したタルグダイとラシャーンだが、予想に反してまだ暮らしが描かれいる。2人の暮らしの中に、轟交買という交易の主?が登場しており、これはテムジンが興味を持っているものでもある。もしかしたら、今後テムジンが国を大きくする過程で、彼らの人生と交錯する地点が来るのかもしれないと思った。楽しみ。
・そして何より、ジャムカとの決着が見所だった。本当に辛い。ずっと読んできて、ジャムカとテムジンは本当の盟友だった事が分かるからこそ、殺し合わなければならなかった運命が憎い。自分の事のように辛かった。私は、真っ直ぐで部下思いなジャムカが好きだったし、その周りにいたホーロイやサーラルも好きだった。だから余計に辛い。ただ、テムジンはジャムカとの決着を胸に、力強く進むんだろう。私も進まなければならない。最後に、テムジンとジャムカが直接話す時間が出来たことが唯一の救い。「ジャムカ、長かったな。」というセリフが、2人の長い戦いと信頼の歴史を物語っていて、切なかった。
・改めてテムジンの動機は何なのか考えてみた。やはり、「人の心は無限だ」との認識が根底にあるのではないか。人の心の無限さを知るからこそ、普通の人が見たら果てがないように思える大地にも、テムジンだけは有限性を見ている。大地を果てがあるものだと捉えているのだ。その、独特の大地観が、彼の国作りを支えている一因だと感じた。
Posted by ブクログ
物語も中間点に到達し、テムジンがいよいよチンギス・カンになる!
ジャムカ軍との戦闘シーンも読みごたえあり、一気に読んじゃった感じです。
後半の展開も楽しみになります。
Posted by ブクログ
草原を統一しても視線の先には常に…。長年の因縁に終止符が打たれる、ハードボイルドなラストは深い余韻を残す。テムジン改めチンギスが最後にみせる心のうちが象徴的な巻。シリーズはやっと折り返し。刊行スタートした新シリーズ「森羅記」も気になるが、チンギス死後の話なので順を追って…今しばらくの我慢。
Posted by ブクログ
西夏やキルギスではなく、椎間板ヘルニアと戦う三連休で読書量激減中(笑)。 チンギス以外の前半の主要登場者が順に影が薄くなり、大河の物語が進行している。この巻は、とうとう永遠のライバルとのお別れの巻。モンゴル帝国に向けてスタートする。
Posted by ブクログ
テムジンは、立ち上がった。
座が、しんとした。全員の顔を、ゆっくりと見渡した。
(略)
「モンゴル族も、もうない。草原の民だ。かつてタタル族がいたが、それもない。草原の民だ。ケレイト王国があったが、もうない。草原の民だ。このテムジンの下にいるかぎり、すべて草原の民で、なんの違いもない。モンゴル国という名は、俺がそこの出身だから、ついただけのことだ。やがて、あたり前のことになるが、いまはおまえたちが、それを心せよ」
テムジンは、もう一度、ゆっくりと全員を見渡した。
「新しいことが、はじまる。俺は今日、チンギスという名になった」(143p)
オノン河の辺りの大会議で、テムジンは「チンギス・カン(王)」となった。これ以降、公式にはチンギスと呼び、自称するが、本書で「チンギス」の由来は一言も述べられなかった。「チンギス紀」と称しているのに異様だ。其処に作者の意図があると見なければならない。ただ、草原に巨大な王が誕生した。前巻でケレイト王国、今巻でナイマン王国を一挙に制圧し、西夏の鉄鉱山を掌握して西夏軍を破った。何処まで行くのか、行くつもりなのか。廷臣も、もしかしたら本人さえも、一切わからない。
填立に拾われた少年・侯春はやはり梁山泊・侯真の孫だった。梁山泊・宣凱も亡くなった。流通の道は、楊令の目指した道なのか、何処かで確かめて欲しい。
ジャムカ
モンゴル族ジャンダラン氏長
キャト氏長テムジンと同年也
年少時最困難能く克服も同也
青年時切磋琢磨、相互盟友也
日輪英雄相不並、干戈数度交
二度能くテムジンに深傷を負
ナイマン王国決戦で虎包囲す
独虎はチンギスと語らい死す