川北稔のレビュー一覧
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古くはイスラームから伝来したとされるサトウキビ。大航海時代を経てヨーロッパ諸国は、カリブ海を中心にサトウキビのプランテーションを展開する。その労働力として酷使されたのは先住民やアフリカから連れてこられた黒人だった。
当初砂糖はその希少性から薬や装飾に用いられるなど、ステータスシンボルとしての側面が強かった。その後大西洋貿易により大量にヨーロッパへと流入するようになると、東方からの茶と合わせて庶民階級にまで広く浸透していく。このように、砂糖や茶は西欧を中心とする近代世界システムを循環する主要な世界商品となった。だが、「砂糖あるところに奴隷あり」と言われたように、砂糖の生産と奴隷制度との間には切っ -
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イギリスの贅沢禁止法を通して、身分社会の崩壊の過程と毛織物産業の発展を記していたことが印象に残った。著者は「身分」から「富」へと、贅沢禁止法の規定が変化することから、舶来品であった奢侈品の上流階級に対する貧者の憧れが、経済社会としての需要を促進させ、産業革命に至ったと考えている。個人的に、田舎のジェントリたちが規制されない新規産業を開拓し続けたことが、ファッションが法に勝利した原因とも言えることが興味深い。近世以降のイングランドの発展は、立憲民主制に支えられたことも大きいが、舶来品の国産化に成功したという日本にも共通する点である、島国であったことも大きな要因であると考える。
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タイトル通り、ウォーラーステインによって主張された「世界システム論」についての概説書である。
随分前に書棚に収めていたが、先日、的場昭弘氏の『資本主義全史』を読んで、もしやと思って本書を手に取った。
直感は当たっていた。
「世界システム論」とは、西洋資本主義体制による国際的分業制のことを指していたのである。
世界システム論の目的は、各国史の積み上げを世界史とする旧来の史観を脱し、資本主義による国際的分業体制という観点を軸に近代以降の歴史を論じていくこと。つまり、一国史からの脱却だ。
この観点に基づくと、欧米各国が「進んで」いて、アフリカ等の諸国が「遅れている」という、それぞれの国が辿るべき進 -
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イギリスの近世、近代とはどういう時代なのか、人々の生活の様子や家族のあり方を観察しながら、都市の形成や産業革命の意味について世界システム論の立場から考察し、現代の「イギリス経済衰退論」の妥当性について述べたもの。
今度仕事でイギリスに行くので、イギリスのことについてもっと勉強した方がいいなと思って読み、通史的なものを期待したけれど、そんな感じではなかった。が、結果的にとても面白く読めた。著者は岩波ジュニア新書の『砂糖の世界史』という本の著者らしく、この本は読んだことがないけれど、うちの学校の複数の歴史の先生がおすすめしていた本でいつか読んでみたいと思っていた本なので、やっぱりこの著者は歴史 -
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ウォーラスタインの世界システム論をベースに15世紀以降の世界史、資本主義史を読み解いていく。
どこまでがウォーラスタインの議論で、どこからが著者の見解なのか、境目がわかりにくい気がするが、一般の読者を対象とした入門なので、そのあたりまで知りたければ、専門書か、ウォーラスタイン本人の本を読めばいいということかな?
世界システム論を最初に知ったときには、すごく面白いと思ったのだけど、あまりにもマクロなアプローチで各論、具体論に入ると、だんだん怪しげになっていくところがあって、興味は薄れていった。
が、個別テーマの本をある程度読んだ今となると、もう一度、このマクロ的な議論がとても大事なものに思 -
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ウォーラステインが提唱した「世界システム論」という史観概念について解説されている。
世界システム論とは、歴史を国単位で捉えて、諸国が互いに不干渉な状況であるセパレートコース上での競争をおこなっているとする「単線的発展段階論」へのアンチテーゼとして生まれた。
つまり、勤勉国家が「先進国」、怠け者国家が「後進国」になっているとするのではなく、「中核国」が「周辺国」から収奪したために、「先進国」と「後進国」が生まれたというように、国単位ではなく、世界を一つの単位/構造体として捉え、構造体内の相互作用において全体の状況が作り出されているという考え方である。
近代初期においては、世界における西ヨーロッパ