川北稔のレビュー一覧

  • 砂糖の世界史

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    1996年に発行されて以来、約30年読み継がれているベストセラー。私は高校生の時に一度読んでいて、大人になった今読み返してみました。

    当時、世界が狭かった私は、日常に溢れている味にこんな壮大な歴史があることに驚き、また暗記していた事件や偉人たちが、自分と同じ地球に生きる住人であることを実感し、感動したことを覚えている。
    当時は私にとって暗記科目だった歴史の、点と点が線で繋がる体験で、教科書で習ったことは現代で繋がっているんだと実感として理解した。

    大人になって読み返したら、当時ほどの感動はなく、自分の世界が縦にも横にも広がったんだと思った。私という人間も、歴史の一部になっている。

    内容はとてもわかりやすく、世界史が好きになる本。
    是非、中高生に読んで欲しい。

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    2026年05月23日
  • 砂糖の世界史

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    世界史で習った知識がこの本を読むことによって経緯や流れが見えて、線で繋がっていくような感覚が良かったです。
    世界システム論の視点から見る砂糖の歴史で、砂糖という世界商品による強国の思惑、プランテーションと奴隷貿易、時代背景、変化していく世界、産業革命、広範囲に及ぼした影響力、そして奴隷や植民地の歴史や、モノカルチャー経済によって現代の発展にまで色濃く影響が残っていることを、流れとして分かりやすく知ることができました。
    流れとして見ることで負の歴史である理不尽な侵略と連れ去り、奴隷貿易もずっしりときました。

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    2026年05月17日
  • 砂糖の世界史

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    砂糖がない生活なんてもう考えられない現代だが、その歴史には「砂糖のあるところに、奴隷あり」。主題の砂糖はもちろん、紅茶もヨーロッパでは現代でも作れないというのは驚きである。紅茶に砂糖を入れて優雅にアフタヌーンティー…の裏側は血みどろ。その影響が今でも続いており、昨今、グローバルサウスと呼ばれる国々の怒りもごもっともだ。とはいえ、今の豊かな生活を捨てられるわけもなく、どうしたもんだろうか。。

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    2026年05月17日
  • 砂糖の世界史

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    "アジアの東の端で採れた茶と、西の端のカリブ海の砂糖がイギリスで出会う"

    砂糖をめぐって様々な国や人の思いが交差して生まれた歴史は、未知の発見と新しい時代の成り立ちを疑似体験でき、めっちゃ面白かったです。

    読みやすい語り口もジュニア新書ならではの魅力。

    こういう本を読むと、昔に比べると奴隷制度はやっぱり減っているし、世界は良い方向に進んでいるじゃないかなと思います。

    中学生のお子さんにおすすめしたい一冊で、歴史に興味をもつきっかけになります。

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    2026年04月05日
  • 砂糖の世界史

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    よくおすすめにあがってくるので読んでみた。
    砂糖は自分にとって「おいしいけど健康に悪い」程度の認識だった。ところがこの本を読むと、かつては万病に効く薬であり高貴なものだったという。同じものでも時代や環境が変われば認識がここまで変わるのかと驚かされる。

    あと、この本は苦々しい。
    砂糖の生産には、収穫から精製までの工程に厳しい時間的制約がある。当時のヨーロッパの人々は農業中心の晴耕雨読の暮らしで、近代的な時間規律とは無縁だった。その制約を満たすために、奴隷たちが正確な時間での重労働を強いられた。そして利益はヨーロッパの側にしか流れない。タイトルの甘く楽しげな雰囲気とは裏腹に、読み進めるほど苦々しい気持ちになるギャップが不思議だった。

     一方で、モノを起点にした歴史本はあまり読んだことがなく、新鮮だった。砂糖を追いかけるだけで、当時の人々の生活がリアルに浮かんでくる。砂糖と紅茶の結びつきや、言葉の由来といった雑学も随所にあり、歴史が遠い過去ではなく地続きのものだと感じさせてくれる。
     現代でも、便利なモノやサービスの由来をたどれば、誰かの犠牲の上に成り立っているものがあるのだろう。仕事で原価を扱っていると数字でコストを把握した気になるが、数字に表れない犠牲や背景もある。数字だけで判断せず、その裏にあるものを見に行くようにしたい。

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    2026年04月04日
  • 砂糖の世界史

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    とても読みやすくわかりやすく、そしてためになった。
    最近読んだイギリスの野鳥博物館の盗難事件のノンフィクションを読んでいるときもそうだったけれど世界史図説を引っ張り出してきてノートを取ってしまった。興味を持ったその先へつなぐ案内人として岩波ジュニア新書は最高。
    歴史を学ぶと、本当になんというか列強のしてきたことというのは…となる。

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    2026年03月29日
  • 砂糖の世界史

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    パン作りを始めて気になっていた砂糖とは何なのか。
    フランス人友達がマルティニクに旅行しラム酒をお土産に持って来てくれたのだけど、考えさせられてしまった。
    イギリス人がお茶を飲む理由、ハイティーと労働者の着付けの友、カリブ海についての歴史が学べた。
    軽すぎず重すぎず、読み応えのある本だった。

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    2026年03月22日
  • 砂糖の世界史

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    1. 「生活習慣」のルーツ:砂糖が現代の労働リズムを作った
    ​最も関心を持たれていたのは、食文化が**「時間概念」**という目に見えない社会ルールに変容した点ですね。
    ​エネルギー源としての砂糖: 砂糖入り紅茶が、産業革命を支える労働者の安価で手軽な「ガソリン」となったこと。
    ​労働スタイルの変化: 以前の「晴耕雨読」のような自然に合わせた働き方から、砂糖の摂取によって「時間厳守(ワークスケジュール)」で動く近代的な労働スタイルへと人間が適応させられたこと。
    ​日常への浸透: 私たちが当たり前に使っている「時間割り」や「スケジュール」の裏に、実は砂糖という物質が深く関わっていたという驚き。
    ​2. 「世界の歪み」の起源:モノカルチャー経済と南北問題
    ​一国の繁栄が他国の犠牲の上に成り立つという、現代の国際情勢の根っこについても深く認識されていました。
    ​モノカルチャー経済の強制: イギリスの利益のために、植民地が「砂糖を作るだけの場所」に変えられてしまったこと。
    ​構造的不平等の誕生: この植民地支配の仕組みが、自給自足の崩壊や経済的不安定を招き、今日の「南北問題」の直接的な発端となったこと。
    ​3. 「普及の法則」:贅沢品から日常品へのダイナミズム
    ​お茶やチョコレート、コーヒーといった他の嗜好品とも共通する、**「価値の変遷」**のパターンを見出されていました。
    ​三段階の普及: 「薬」として珍重され、次に「貴族の贅沢品(ステータス)」となり、最終的に「庶民の日常品」へと降りてくるという歴史的プロセス。
    ​イギリスの戦略: フランスやドイツとは異なる、植民地とセットにしたイギリス独自の「お茶文化」の定着戦略。
    ​総括
    あなたにとってこの本は、単に「砂糖の歴史」を知るためのものではなく、「私たちが今、なぜこのようなスケジュールで働き、なぜ世界には格差があるのか」という現代社会の謎を解き明かすための補助線となったのではないでしょうか。

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    2026年03月03日
  • 史的システムとしての資本主義

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    ウォーラーステイン氏の資本主義論。
    資本主義の歴史的全容に迫る。
    この本が資本主義全盛の1995年に書かれたことに驚き。氏は当時を資本主義の秋と表現していたが、現在は冬も通りすぎ、終焉を迎えている。

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    2026年01月05日
  • 砂糖の世界史

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    神聖な薬が台所に並ぶまでの人類狂想曲


    砂糖の歴史を語ることは、奴隷の歴史を語ること、ヨーロッパの戦争を語ること、アメリカの歴史を語ること、産業革命以後の近代化した生活を語ること。 

    ファストフード店でこの本を読んでいる時、本から目線を落とすと、そこにはコーヒーの入ったカップと横たわる白い紙製の筒がありました。無論それはスティックシュガーの包み紙であって、『砂糖の世界史』なんて本を読みながら、ごく自然に砂糖いりコーヒーを口に運んでいるわけです。普段なら何気ない日常の行為が、なんだか世界を揺るがすほどの強欲な行為に思えてくるような、おもしろい読書体験になりました。日常に対して「これは当たり前じゃないのかも」という視点を与えてくれる本は、いい本です。ちなみにコーヒーも砂糖同様、プランテーションで大量生産され世界中に伝播した嗜好品であって、今では当たり前のこのコンビが、歴史上重要な出会いだったという発見もありました。

    砂糖の原料・サトウキビの発祥はニューギニアあたりからインドにわたり、東南アジアへ広がったと言われています(この本ではインド説を取っています)。その後ペルシャ、地中海へ伝わり、ヨーロッパの知るところになったとのこと。糖分によるエネルギー補給という側面から最初は薬として珍重されたほか、砂糖の純白さが高潔で神秘的だったことから、宗教的な甘露として人々を強く惹きつけたとこの本は教えます。

    中世ヨーロッパにおいて砂糖は貴族や上級階級民だけの薬品、飾りもの、食品、ステータスシンボルだったのが、17世紀に普及した茶やコーヒーとドッキングすることで、イギリスの紅茶文化のおこりとともに爆発的に波及した。イギリスでは葉っぱ一枚とれないにも関わらず、紅茶といえば英国となったという珍奇な現象もこれが起因だそうで。そもそも紅茶に砂糖を入れる行為が、高級品に高級品を掛け合わせるというイギリス成金たちの単なるお戯れだったとは驚きです。そうか、中国茶には砂糖なんていれないもんなと納得しました。17世紀イギリスのコーヒーハウスやフランスのカフェには科学、経済、文学、政治などの情報が集中し、そこから現在でも続く大企業や組織、サロン、政党などが生まれたという、文化への影響もけして軽視できません。

    砂糖という、世界的な需要がある商品を大量に供給するために生まれた「三角貿易」にも分かりやすく触れています。ヨーロッパ列強国は新大陸アメリカに砂糖、コーヒー、カカオなどの大規模農場を開き、収穫した作物で莫大な利益を上げます。その農場ではアフリカから買った大量の奴隷を働かせます。アフリカの奴隷商人へは代わりに武器や工業製品を送ったという、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカを結ぶ三角形の人や物の流れが三角貿易です。資本力をもったヨーロッパ人、強制的に農業に従事させられた奴隷、ヨーロッパからアメリカに移住し奴隷をつかった白人、さまざまな人間模様があります。人類の非人道で残酷な一面でしょう。この本では語られませんが、アメリカ大陸の歴史においてはヨーロッパからの侵略による先住民の迫害という側面もあります。アメリカというまだ誰の手もついてない大きな可能性を秘めた大陸にむらがるヨーロッパの強欲さたるや、、、

    また産業革命も、砂糖の舞台が成金のステータスから一般家庭の卓上へと移る大きな理由であったとのこと。昔は農家も大工も料理人も、ぜんぶ自分だったものが、産業革命以降は効率が求められ、それぞれが家のそとに仕事を持ち、分業化され効率化されたという今の働き方のスタイルができたのです。働き方だけでなく栄養の取り方、時間の管理もそれまでとは変わってしまいました。それが砂糖入りの紅茶とオートミールという、湯さえ沸かせば味はともかく簡単にカロリーがとれて労働に励めるという、悪名高いイギリス朝食がスタイル化する原因となったというのも驚きです。

    今の世の中は三角貿易以上に複雑な国交が行われています。そのむかし島国として海に護られていた日本も、いま世界のなかでどう動くかが問われています。世界貿易が当たり前になって以降、世界各国の動きを勘定に入れないわけにいきません。日本のメーカーが、A国で採れた原料で、B国の工場で組み立てられたものを日本市場で売って、それをC国の観光客が爆買いするのが当たり前の光景なのです。

    また現在の日本への共通点で言うなら、食糧政策にもこの本は言及しています。ヨーロッパの穀物の値段が、農家のために値下がりを防いでいたのが、労働者にやすくカロリーを与えるために、今度は逆に値上がりを防ぐようになっていった事例を取り上げていて、生産者を守るか消費者を守るかという問題は今の日本のコメ問題ともぴったり重なります。

    日本の物価高騰が現在、深刻な状況であることは身にしみて感じてはいますが、安さだけを追い求めるのではなく、財布と相談しながらもフェアトレード商品や農家直売など、そういったマーケットに触れてみることも大事だと思います。むずかしいことですけどね。

    三角貿易もそうですが、人間の恐ろしいまでの欲深さにふれるたび、極端な意見ですが「”ぜいたくは敵”ってのは、一周まわって正しいかも」とか思っちゃいましたね。もっと贅沢したい、もっと豊かになりたいという一部の上級階級によって世界がかき回されてるような気持ち。人間という生き物の根本的な欲深さを、もっと自覚しなきゃいけないんじゃないか、そう思います。

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    2025年12月22日
  • 洒落者たちのイギリス史

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    イギリスの贅沢禁止法を通して、身分社会の崩壊の過程と毛織物産業の発展を記していたことが印象に残った。著者は「身分」から「富」へと、贅沢禁止法の規定が変化することから、舶来品であった奢侈品の上流階級に対する貧者の憧れが、経済社会としての需要を促進させ、産業革命に至ったと考えている。個人的に、田舎のジェントリたちが規制されない新規産業を開拓し続けたことが、ファッションが法に勝利した原因とも言えることが興味深い。近世以降のイングランドの発展は、立憲民主制に支えられたことも大きいが、舶来品の国産化に成功したという日本にも共通する点である、島国であったことも大きな要因であると考える。

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    2025年08月02日
  • イギリス近代史講義

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    名作『砂糖の世界史』の流れで読みましたが、これも若い頃に読みたかったと思わせる歴史の本です。ジェントルマン資本主義とは何かについて、その背景も含め詳しく語られています。講義録なのでとても読みやすく、学生にお勧めしたいです。

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    2025年06月06日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    タイトル通り、ウォーラーステインによって主張された「世界システム論」についての概説書である。
    随分前に書棚に収めていたが、先日、的場昭弘氏の『資本主義全史』を読んで、もしやと思って本書を手に取った。
    直感は当たっていた。
    「世界システム論」とは、西洋資本主義体制による国際的分業制のことを指していたのである。

    世界システム論の目的は、各国史の積み上げを世界史とする旧来の史観を脱し、資本主義による国際的分業体制という観点を軸に近代以降の歴史を論じていくこと。つまり、一国史からの脱却だ。
    この観点に基づくと、欧米各国が「進んで」いて、アフリカ等の諸国が「遅れている」という、それぞれの国が辿るべき進歩のルートを順番に辿っているのではなく、国際分業体制の中で欧米が「中心」となってしまったがゆえに、アジアやアフリカ等の地域が「周辺」となって同時代を進行してきた。ということになる。
    なので、世界システム論に基づいて世界史を読み直そうとすると、どうしても資本主義が発生した西洋史を中心とした描写になる。
    本書も大航海時代に始まるヨーロッパ近代の歴史の変転を、世界システム論の解釈を差しはさみながら進んでいく。

    読み終わって、すぐに「世界システム論」はいつ頃提唱された議論だったかを確認した。
    もう30年も前である。
    今や世界史の潮流は「グローバルヒストリー」に移っているし、そのグローバルヒストリーですら例えばアジア史家からは西洋中心史観の誹りを免れず、今も様々な専門を背景に持った歴史家たちが「本当の意味での世界史」を追い求めているのが現状だろう。
    そんな現状から何周かの周回遅れで本書を手に取ったわけだ。あまりに長いこと本棚の肥やしにしすぎたかな。

    でも、著者自身がそれらの批判に末尾で抗弁している通り、現在の世界はどうあっても西洋資本主義のシステムを前提に構築されているのである。ゆえに、その切り口での歴史を学ぶことに意味はあると思う。

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    2025年04月27日
  • イギリス近代史講義

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     イギリスの近世、近代とはどういう時代なのか、人々の生活の様子や家族のあり方を観察しながら、都市の形成や産業革命の意味について世界システム論の立場から考察し、現代の「イギリス経済衰退論」の妥当性について述べたもの。
     今度仕事でイギリスに行くので、イギリスのことについてもっと勉強した方がいいなと思って読み、通史的なものを期待したけれど、そんな感じではなかった。が、結果的にとても面白く読めた。著者は岩波ジュニア新書の『砂糖の世界史』という本の著者らしく、この本は読んだことがないけれど、うちの学校の複数の歴史の先生がおすすめしていた本でいつか読んでみたいと思っていた本なので、やっぱりこの著者は歴史学の面白さとかダイナミズムとかを教えてくれる感じなのだと思う。以下、面白かった部分のメモ。
     まずsurgeon, physicianという「医者」を表す単語を理解するのが難しい。産業革命時代、「外科医、散髪屋、歯医者というのは、当時の職業概念では人体の一部を切り取るということで、ひとつの仕事に考えられました。外科医兼散髪屋、そういう人たちがロンドンでは非常に増えていったと言われています。」(p.42)というのは何となく聞いたことがあった。ただphysicianは水銀を使わないと対処できない梅毒の治療ができなかった(p.43)という話は意外。でphysicianは何をしていたかというと、「古代ギリシャのガレーノスの医学を前提にしていました。人間の体液の組み合わせて、病気が出てくるとする学説です。」(p.42)という、この時代にもそんな学説が使われていたというのが驚き。中世で終わったのかと思っていた。あと用語という点では、pp.56-7ではシティズン、バージェス、ブルジョワ、シティ、ブルクという言葉が解説されている。今度おれが行くリヴァプールは、「見かけは農村みたいなところですが、中世から司教座がありましたので、シティとよばれてきました。自治権が認められているので、都市自治体がありました。このことが、あとの時代になると、たとえばガス灯をつけ、道路を整備し、水道をつけるといった事業をおこなえる前提になりました。しかし、そのころのマンチェスタにはそれをおこなう主体がありません。だから、両都市の発展を見ていくと、どうしてもリヴァプールが一歩リードしています。」(p.75)というのは勉強になった。そしてこれらのリヴァプール、マンチェスタ、バーミンガムなどは、「十七世紀か十八世紀前半ごろのニュータウン」(p.78)だそうだ。さらに十九世紀後半のニュータウンは、「ガーデン・シティつまり、田園都市」(p.80)が生まれ、それは日本の東急の田園調布や阪急の箕面と同じ、という、日本との類似点があるというのを知ると面白い。
     そして「ぜいたく禁止法は、中世から近代にうつっていく近世という時代に、中世の身分制秩序が崩れていくのを止めるために、世界中の国で出された法です。」(p.52)という、日本で言うと「倹約令」らしいが、歴史の過程で必然的に生まれてくる現象として解説されているのが興味深い。
     この本全体のキーワードとして、「成長パラノイア」というのが挙げられるが、これが解説されている部分、「人間は進歩・成長をしなければならないし、前よりはよい生活になっていかなければいかない」という考え方(p.87)は理解しないといけないと思った。そして「膨張するヨーロッパ世界システム、ひきこもる中華帝国」(pp.127-32)の節は世界史の大まかな流れがわかる感じで面白かった。そもそも大きな世界システムには、主権国家が分立し競争しているヨーロッパ的なシステムと「皇帝、つまり中央が政治的な支配をし、武力を独占することになる」(p.130)帝国システムの2つ、というのが分かりやすかった。そして2つのシステムがぶつかる時には中和するというより差異化が生まれて「周辺」がどんどん「周辺」になっていく、というのも興味深い。
     そして今度おれがイギリスに行くのはイギリスの産業革命について色々知りたいというのが一つあるのだけれど、その産業革命についても世界システム論的に見る、というのが面白かった。毛織物業(国内輸送の方がコストがかかる、羊毛よりは食料の増産)→綿織物業(海外で手に入る、東インド会社、洗濯が出来るので毛織物より清潔=平均寿命の延長)(pp.159-61)と言う感じだそうだ。あと産業革命と言えば鉄、というイメージがあるが、「このころの鉄は、木炭を燃料としてつくりましたので、莫大な量の木炭が必要で、そのために、木材が切りだされ、イギリスの山は現在のようになったと言われています。いまのイギリス(イングランド)には、ほとんど森も林もなくなって、(略)ウッドもフォレストもありません。あるのはブッシュ(低木の藪)くらいです。(略)現代の環境学で、熱帯雨林などの森林がなくなっていくことをdeforestationと言いますが、もともとこの言葉は、一六世紀のイギリスの現象をあらわすためにつくられた」(pp.165-6)というのは勉強になった。そして奴隷貿易については、「アフリカは搾取されたと漠然と考えがちですが、奴隷輸出という産業が展開していく、そういういびつさのほうがむしろ深刻な問題」(p.170)というのも納得した。そして、アフリカは暑いので毛織物よりは綿織物が喜ばれるので、「こうして、綿花がリヴァプールに入ってきて、綿織物が出ていくという構造があり、その後背地のマンチェスタで綿業を展開する。」(p.171)ということだそうだ。他にも産業革命で、女性や子どもの労働の成果が「ともに安いけれども賃金というかたちで明確化されるように」(p.202)なって、「戸主のリーダーシップがなくなる」(同)ということと、実は子どもがたくさんいる家庭は豊かだった、女性や子どもが悲惨というのは「男性の声で、本人たちはそんなには思っていなかったのかもしれません」(p.203)というのは新しい視点だった。ただ「産業革命で、産業資本家が経済力を少し持つようになったけれども、政治力は持てなかった。しかも、(略)ものづくりの産業資本化ではなく、財産を貸してその利潤で生活をすると言う、ジェントルマン的なシティの人びとを中心とするタイプの資本主義に変わっていってしまった。」(p.237)という見方もあるというのを知った。p.239にも書いてあるが、「製造業が重視されない雰囲気」って日本と逆だなあと思った。
     ということで、イギリス近代史を切り口にして世界史の勉強の面白さが感じられる良い本だったと思う。(24/06)

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    2024年07月17日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    ウォーラスタインの世界システム論をベースに15世紀以降の世界史、資本主義史を読み解いていく。

    どこまでがウォーラスタインの議論で、どこからが著者の見解なのか、境目がわかりにくい気がするが、一般の読者を対象とした入門なので、そのあたりまで知りたければ、専門書か、ウォーラスタイン本人の本を読めばいいということかな?

    世界システム論を最初に知ったときには、すごく面白いと思ったのだけど、あまりにもマクロなアプローチで各論、具体論に入ると、だんだん怪しげになっていくところがあって、興味は薄れていった。

    が、個別テーマの本をある程度読んだ今となると、もう一度、このマクロ的な議論がとても大事なものに思えてくる。

    冷戦が終わって、同時にかつての植民地における東西両陣営による取り込み競争も終わって、30年以上経っているわけで、今の時点でもう一度システム論の観点から見ることはとても大切な気がする。

    というわけで、これまで何度も読みかけて挫折したウォーラスタインの近代世界システム論を読むときがついに来たのかな?

    この本は本当に大雑把な議論なのだが、全体観が俯瞰でき、準備運動はかなり進んだ気がする。

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    2024年06月28日
  • 史的システムとしての資本主義

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    資本主義に限らず、「史的システム」はその内部に矛盾を抱えている。資本主義における矛盾とは、平等性と不平等性(普遍主義と人種/性差別、富と搾取の増大など)である。
    史的システムとしての資本主義は16世紀の西ヨーロッパに端を発し、現代に至るまで500年ほど存続してきた安定的なシステムであったが、その拡大と維持に必要である、新たな周辺(搾取対象)の供給に陰りが見えており、緩やかな崩壊が始まっているように思われる。
    次を担う史的システムの詳細を予見することは不可能に近いが、幾つかの粗いシナリオを準備しておくことは可能であろう。

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    2024年02月12日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    ウォーラステインが提唱した「世界システム論」という史観概念について解説されている。
    世界システム論とは、歴史を国単位で捉えて、諸国が互いに不干渉な状況であるセパレートコース上での競争をおこなっているとする「単線的発展段階論」へのアンチテーゼとして生まれた。
    つまり、勤勉国家が「先進国」、怠け者国家が「後進国」になっているとするのではなく、「中核国」が「周辺国」から収奪したために、「先進国」と「後進国」が生まれたというように、国単位ではなく、世界を一つの単位/構造体として捉え、構造体内の相互作用において全体の状況が作り出されているという考え方である。
    近代初期においては、世界における西ヨーロッパの影響力は小さく、経済・文化・技術などあらゆる点において、アジア(特に中国)の方が進んでいた。
    次第に、(火器などの暴力技術も含まれる)技術がアジアから到来し、一揆などに対応しかねた領主層が「国家」の存在を求めるようになり、封建制度から国家国民制度へと移行していった。
    ここに、世界システムの萌芽が見られ、その後、西ヨーロッパ諸国は、大航海時代→植民地支配→工業化といった流れで世界システムを地球規模に拡大させ、常に新しい「周辺」を探し求める。

    ・世界システムは「中核」と「周辺」が存在し、周辺から搾取した富によって中核が充足されるという構造がベースとなっていること
    ・現代社会において、世界システムから逃れた地域は存在せず、新しい「周辺」の拡大が見込まれないこと
    ・搾取するシステムである「工業」の姿変化してきていること(IT/金融に重点が移動)
    などを踏まえると、近代の世界システムから現代の世界システムへの更新を考えてみても良いではないだろうか。

    <メモ>
    ・国家国民モデルが希求された背景として、ウォーラステインは「農奴統治のため」ゲルナーは「高文化教育普及のため」とそれぞれ違う観点で見ている
    ・ヘゲモニー国家の支配力の拡大/衰退の順序は、いずれも生産→商業→金融の順となる
    ・ヘゲモニー国家衰退の理由としては、生活水準の向上→生産における優位性低下となり、上記の衰退スパイラルに陥るため
    ・世界システムにおいて、「世界帝国」は存在せず「世界経済」のみ存在する。帝国モデルは支配体制としての効率が悪い
    ・ヘゲモニー国家において一番有利なのが「自由主義」。そのため、ヘゲモニー国家の首都は最もリベラルで芸術や亡命インテリの溜まり場となる

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    2024年02月03日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    近代世界史がなぜヨーロッパを中心に展開していくことになったのか、それは世界は個別の主体(国家)による自由競争なのではなく総体として捉えるべきシステムであるから、という世界システム論で捉える本。元々は口頭の講義なのかとても読みやすいです。この書籍以降のアフリカ・中東の紛争と難民、欧米のナショナリズムの状況だったり、中国の台頭、あるいは気候変動問題なども地球規模の相互作用の中で捉えるという意味では今では当たり前の話ではありますね。それでもヘゲモニー国家の変遷と各国の文化の成立要因が連動しているところなんかはなるほど、と面白かった

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    2022年12月04日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    感想
    西洋の世界観の下に地球が一つのシステムにまとめ上げられる。ITCによって加速しているが、ローカルな動きも見られる現代。統一には限界があるか。

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    2022年08月17日
  • イギリス近代史講義

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    15世紀〜18世紀のイギリス近代史の概観について、語り口調で著している。
    歴史的な事実よりも「都市の成立とファッションの関連性」「産業革命がイギリスから始まった要因」などの「なぜ?」を考える内容である。
    自分の英国史に関する知識が乏しく、消化不良感があった。いつかもう一度読み直したい。

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    2022年04月30日