【感想・ネタバレ】イギリス近代史講義のレビュー

あらすじ

一国史観・進歩史観では世界史はわからない。都市と田舎の違いとは。近世イギリスはなぜ晩婚社会だったのか。昼寝より残業を選ぶ心性はいつ生まれたか。世界で最初の産業革命はなぜイギリスだったのか――。ヨーロッパ世界システム下、イギリスの民衆はどのような日常生活を送ったのか。イギリスの「繁栄」と「衰退」を捉え直し、日本の現在を考える。生活史、世界システム論を開拓してきた泰斗による近代史講義!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

世界システム論+川北さん、久々に目にしたコンビでした。
で、つい手に取ってみました、、十数年振りですかね。

斜陽といわれて久しい大英帝国、その斜陽の推移を追うことで、かって経済大国であった我が国”日本”への、
今後の立ち位置にも敷衍できる点を見出せるのではないかとの、一冊になります。

取り上げている題材もわかりやすく、本質的には現在の日本の状況にも合致する点を多く感じました。

ん、”進歩史観”をもう一つ深めた概念が”成長パラノイア”になるのでしょうか。
”成長しなくてはいけない”との強迫観念に縛られている、とは言い得て妙ですね。

ただその強迫観念、まったく的外れかというとそうではないとも思います。
”成長”ではなく”変化”とすれば、、との個人的解釈になりますが。

ちなみに、私自身は”進歩史観”自体は懐疑的なスタンスです、あまりにも狭窄的で。

しかし、自分が学生の頃、歴史学はドメスティックなままではアレだよね、って議論も盛んでしたが、、

 - 歴史学などというのは、もう終わっている分野でしょう

ってくだりを見ると、学会のメインストリームは変わってないのかなぁ、、と感じます。

「歴史学は諸学の基礎だが、それ単体では何も成し得ない」、
そう感じた自分は、白亜の塔ではなく現場に出る事を選びました。

ちなみに大学の恩師は経済学を織り込んだ視座でアプローチをされています。

自分が基礎学問として歴史学を選んだことは”社会的有用性”につなげることができるのか、
久々に自分の起点と基点を振り返ることができました、さて、どうしますかね。

0
2011年09月14日

Posted by ブクログ

I・ウォーラーステインの世界システム論をベースとしてイギリスの近代産業革命の成立を説明する。講義を元にして書籍化されているので授業を受けているような感覚で読める。とくにイギリスのジェントルマンの成立のくだりは興味深かった。

ジェントルマンとは、もともとイギリス各地を治めていたカントリージェントルマン(貴族)たちを指していていたのたが、産業革命が起きてロンドンにシティ(都市)が成立するとともに、地方の貴族と都市に住む新興ブルジョワジー(資本家)や特権的職業階級(弁護士・医師など)の交流の場として社交界も誕生した。そしてこれら社交界に出入りするような人々を一般的にジェントルマンと呼ぶようになったのだそうだ。

0
2011年08月16日

Posted by ブクログ

なかなか堅苦しい題名の本ですが、なかなか面白い内容でした。帯にもあるように「大英帝国の興亡から現代日本を考える」と言うことで、日本はイギリスの追体験してきたようなところがあるのではないかという発想は面白いものがあります。しかし、そこから何を学ぶかと言うとこれがなかなか難しい。

イギリスがどうして「世界で最初の工業国家」となったのか、そしてその後20世紀後半に到来した「イギリスの衰退」とを同時に考察することの意味、さらには、そもそも「成長」とか「衰退」と言う意味は何を持って言うのかってことまで考えると面白くなってきます。

日本も高度成長時代から、失われた10年(もっと失われている感じですが(笑))このこと自体を考えると、高度成長時代ではない今の日本での生活がすごく不幸かと言うと、そうでもない感じです。それでも今の日本は衰退しているか考えると面白いものです。

高度成長時代に比べて成長率と言う点では確かに劣っており、その成長率の低さが将来に対する不安になっているのでしょう。国際競争力と言う点では、そもそも高度成長時代には経済大国2位なんて地位にはなかったはずです。今は3位になったかもしれないけど、少なくとも今の時代の方が国際的な地位も上がっているはずなのに、成長率の低さが大きな影を落とします。

このあたりに「「成長パラノイア」があるのではないかと言うことです。「パラノイア」って意味が分からなかったですが、「成長偏執病」とでも言いましょうか。要は成長続けることが至上命令のような(企業にもありますよね(^^;))

日本とイギリスとは必ずしも同じ土俵では比較が出来ない(生活史と言う面でスポットをあてると価値観も違うでしょうし)とは思いますが、いずれにしても歴史をこうした視点で切り込んで考えると、いろいろあるもんだなあって、改めて大学での歴史の勉強も悪くないかもって思ったりします(^^)。

0
2011年05月23日

Posted by ブクログ

名作『砂糖の世界史』の流れで読みましたが、これも若い頃に読みたかったと思わせる歴史の本です。ジェントルマン資本主義とは何かについて、その背景も含め詳しく語られています。講義録なのでとても読みやすく、学生にお勧めしたいです。

0
2025年06月06日

Posted by ブクログ

 イギリスの近世、近代とはどういう時代なのか、人々の生活の様子や家族のあり方を観察しながら、都市の形成や産業革命の意味について世界システム論の立場から考察し、現代の「イギリス経済衰退論」の妥当性について述べたもの。
 今度仕事でイギリスに行くので、イギリスのことについてもっと勉強した方がいいなと思って読み、通史的なものを期待したけれど、そんな感じではなかった。が、結果的にとても面白く読めた。著者は岩波ジュニア新書の『砂糖の世界史』という本の著者らしく、この本は読んだことがないけれど、うちの学校の複数の歴史の先生がおすすめしていた本でいつか読んでみたいと思っていた本なので、やっぱりこの著者は歴史学の面白さとかダイナミズムとかを教えてくれる感じなのだと思う。以下、面白かった部分のメモ。
 まずsurgeon, physicianという「医者」を表す単語を理解するのが難しい。産業革命時代、「外科医、散髪屋、歯医者というのは、当時の職業概念では人体の一部を切り取るということで、ひとつの仕事に考えられました。外科医兼散髪屋、そういう人たちがロンドンでは非常に増えていったと言われています。」(p.42)というのは何となく聞いたことがあった。ただphysicianは水銀を使わないと対処できない梅毒の治療ができなかった(p.43)という話は意外。でphysicianは何をしていたかというと、「古代ギリシャのガレーノスの医学を前提にしていました。人間の体液の組み合わせて、病気が出てくるとする学説です。」(p.42)という、この時代にもそんな学説が使われていたというのが驚き。中世で終わったのかと思っていた。あと用語という点では、pp.56-7ではシティズン、バージェス、ブルジョワ、シティ、ブルクという言葉が解説されている。今度おれが行くリヴァプールは、「見かけは農村みたいなところですが、中世から司教座がありましたので、シティとよばれてきました。自治権が認められているので、都市自治体がありました。このことが、あとの時代になると、たとえばガス灯をつけ、道路を整備し、水道をつけるといった事業をおこなえる前提になりました。しかし、そのころのマンチェスタにはそれをおこなう主体がありません。だから、両都市の発展を見ていくと、どうしてもリヴァプールが一歩リードしています。」(p.75)というのは勉強になった。そしてこれらのリヴァプール、マンチェスタ、バーミンガムなどは、「十七世紀か十八世紀前半ごろのニュータウン」(p.78)だそうだ。さらに十九世紀後半のニュータウンは、「ガーデン・シティつまり、田園都市」(p.80)が生まれ、それは日本の東急の田園調布や阪急の箕面と同じ、という、日本との類似点があるというのを知ると面白い。
 そして「ぜいたく禁止法は、中世から近代にうつっていく近世という時代に、中世の身分制秩序が崩れていくのを止めるために、世界中の国で出された法です。」(p.52)という、日本で言うと「倹約令」らしいが、歴史の過程で必然的に生まれてくる現象として解説されているのが興味深い。
 この本全体のキーワードとして、「成長パラノイア」というのが挙げられるが、これが解説されている部分、「人間は進歩・成長をしなければならないし、前よりはよい生活になっていかなければいかない」という考え方(p.87)は理解しないといけないと思った。そして「膨張するヨーロッパ世界システム、ひきこもる中華帝国」(pp.127-32)の節は世界史の大まかな流れがわかる感じで面白かった。そもそも大きな世界システムには、主権国家が分立し競争しているヨーロッパ的なシステムと「皇帝、つまり中央が政治的な支配をし、武力を独占することになる」(p.130)帝国システムの2つ、というのが分かりやすかった。そして2つのシステムがぶつかる時には中和するというより差異化が生まれて「周辺」がどんどん「周辺」になっていく、というのも興味深い。
 そして今度おれがイギリスに行くのはイギリスの産業革命について色々知りたいというのが一つあるのだけれど、その産業革命についても世界システム論的に見る、というのが面白かった。毛織物業(国内輸送の方がコストがかかる、羊毛よりは食料の増産)→綿織物業(海外で手に入る、東インド会社、洗濯が出来るので毛織物より清潔=平均寿命の延長)(pp.159-61)と言う感じだそうだ。あと産業革命と言えば鉄、というイメージがあるが、「このころの鉄は、木炭を燃料としてつくりましたので、莫大な量の木炭が必要で、そのために、木材が切りだされ、イギリスの山は現在のようになったと言われています。いまのイギリス(イングランド)には、ほとんど森も林もなくなって、(略)ウッドもフォレストもありません。あるのはブッシュ(低木の藪)くらいです。(略)現代の環境学で、熱帯雨林などの森林がなくなっていくことをdeforestationと言いますが、もともとこの言葉は、一六世紀のイギリスの現象をあらわすためにつくられた」(pp.165-6)というのは勉強になった。そして奴隷貿易については、「アフリカは搾取されたと漠然と考えがちですが、奴隷輸出という産業が展開していく、そういういびつさのほうがむしろ深刻な問題」(p.170)というのも納得した。そして、アフリカは暑いので毛織物よりは綿織物が喜ばれるので、「こうして、綿花がリヴァプールに入ってきて、綿織物が出ていくという構造があり、その後背地のマンチェスタで綿業を展開する。」(p.171)ということだそうだ。他にも産業革命で、女性や子どもの労働の成果が「ともに安いけれども賃金というかたちで明確化されるように」(p.202)なって、「戸主のリーダーシップがなくなる」(同)ということと、実は子どもがたくさんいる家庭は豊かだった、女性や子どもが悲惨というのは「男性の声で、本人たちはそんなには思っていなかったのかもしれません」(p.203)というのは新しい視点だった。ただ「産業革命で、産業資本家が経済力を少し持つようになったけれども、政治力は持てなかった。しかも、(略)ものづくりの産業資本化ではなく、財産を貸してその利潤で生活をすると言う、ジェントルマン的なシティの人びとを中心とするタイプの資本主義に変わっていってしまった。」(p.237)という見方もあるというのを知った。p.239にも書いてあるが、「製造業が重視されない雰囲気」って日本と逆だなあと思った。
 ということで、イギリス近代史を切り口にして世界史の勉強の面白さが感じられる良い本だったと思う。(24/06)

0
2024年07月17日

Posted by ブクログ

15世紀〜18世紀のイギリス近代史の概観について、語り口調で著している。
歴史的な事実よりも「都市の成立とファッションの関連性」「産業革命がイギリスから始まった要因」などの「なぜ?」を考える内容である。
自分の英国史に関する知識が乏しく、消化不良感があった。いつかもう一度読み直したい。

0
2022年04月30日

Posted by ブクログ

イギリスでなぜ産業革命が起こったか、なぜ「ゆりかごから墓場まで」と言う福祉政策が執り行われていたかなど、イギリスに関する疑問を作者独自の視点と意見で述べている

0
2021年02月09日

Posted by ブクログ

帝国と王国の違いの説明が面白い。イギリスの社会構造が、大陸とは違っており、それがたまたま産業革命を推進した。晩婚(24歳)で核家族っていうのが普通という珍しい社会。

0
2020年02月17日

Posted by ブクログ

歴史ものの新書はなぜこんなにおもしろいのだろう。
ディケンズの描く「ロンドン」のイメージが色濃い自分の中の「イギリス」がガラガラと音を立てて崩れていく。。

一般的な解釈に事実を突きつけて別の解釈が可能であることをただただ述べていく。そして教科書的な「大英帝国」という虚構の帝国を解体してしまう。

読み終えて「他の著書も読まないといけない」とあせってる。巻末の文献リストもクール。

0
2019年02月18日

Posted by ブクログ

英国近代史を経済システムや内的発展の観点から描く。19世紀に世界を網羅する帝国を築いた同国の歴史は、議会政治とかインド制服とか、政治・外交史の観点から描かれることが多いけれども、帝国を形成するに至った内的活力に目を向ける本書は、どうやら著者の講義を書き起こしたものであるらしい。

ポイントの一つは、近代化とは都市化であるという着眼。交易都市や城塞都市としての性格が強かった中世都市に対し、近代都市では農村から都市への人の集中が起こり、産業的にも文化的にも、都市において近代が形成される。

次に、イギリスにとって切って離せないジェントルマンの存在。労働に従事しないのがジェントルマンであり、地主階級から生まれたジェントルマンは弁護士、将校、医師、さらには植民地官僚といった職業に展開し、大英帝国のバックボーンを形成した。

そして、産業資本家に対する考察。産業革命の呼び水となった綿織物工業は、毛織物工業からの連続ではなく、綿産地のインドが植民地になるといった世界システムの中で生まれた。産業革命とその後の歴史の中で産業資本家は一定の貢献をしたが、英国経済の主流はあくまで金融などジェントルマン側にあり、産業資本家は発言力を持つことはなかった。そういった歴史の流れが先日のBrexit可決に行き着いており、産業資本家とジェントルマンの相克という観点から今後の英国史をみていくのも一興ではないかと思う。

0
2016年11月06日

Posted by ブクログ

碩学によるイギリス近代史の集中講義が本になった感じ。通史でもないし、体系的でもないが、今を意識しつつ歴史の流れをざっくり、かつ角度をつけて眺めていて興味深い。
需要から生まれた産業革命や、世界システムのとらえ直しなど、ワクワクするようなパースペクティブが提供されている。

0
2016年03月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

内容説明
大英帝国の興亡から現代日本を考える。
世界システム論、生活史を切り拓いた西洋史の泰斗による画期的入門書。
高齢者問題、「外見」の重視、昼寝よりも残業という心性―。
拡大する世界システム下、イギリス民衆の日常生活を描く。

目次
プロローグ 歴史学は終わったのか
第1章 都市の生活文化はいかにして成立したか―歴史の見方
第2章 「成長パラノイア」の起源
第3章 ヨーロッパ世界システムの拡大とイギリス
第4章 世界で最初の工業化―なぜイギリスが最初だったのか
第5章 イギリス衰退論争―陽はまた昇ったのか
エピローグ 近代世界の歴史像

0
2014年10月31日

Posted by ブクログ

世界で最初の産業革命が起こり「世界の工場」と言われたイギリス。
その後、途中に二度の大戦を挟みながらアメリカやドイツでも発生した産業革命は、近代史の基盤とも言えるキーワード。
そもそも産業革命はなぜイギリスで最初に発生したのか。
広大な植民地で築かれた経済の仕組み?
伝統的な議会政治の体制?
はたまた国民の気質や習俗、風土によるもの?
近代国家の発展について、イギリスの経済成長に焦点を当てて政治、経済、文化など多様な観点から考察する。

と、言ってもそれほど堅苦しいものではなく。
特に前半はイギリスの文化的側面、庶民の生活や価値観に基づいて語られる部分が多く、17世紀くらいのイギリスの生活ってどんなだったの、という好奇心だけで読んでも面白いです。

0
2012年10月11日

Posted by ブクログ

おすすめです。学者たちがどう歴史を捉えていくかという方法論が多く書かれていたあたりは眠くなりましたが、「成長パラノイア」に関するくだりの記述は、現代日本の閉塞感に十分関連付けて考えられるのでは、と思いました。みんな山の登り方とか頂上でどんなことするか(インスタントラーメン食ったり叫んだりとかね)は考えるけど、いつかは山を下りないといけないわけで。産業革命時の女性と子どもは長時間低賃金労働で悲惨な生活を強いられていたと高校世界史ではあったけど、その前を知ることで違うものが見えてきます。

0
2012年07月25日

Posted by ブクログ

講演録のような記述スタイルなので、肩が凝らずに読むことができました。

さて、著者はウォーラースティンの世界システム論を下敷きにしながら、イギリスの近代史を俯瞰していきます。「なぜ世界で最初にイギリスが産業革命を成し得たのか」「なぜイギリスは衰退したのか」等々。

私が興味深かったのは、「そもそも衰退とは何か」という著者の問題設定です。「衰退」について語るためには、「成長」とは何かを語らねばなりませんから。

私たち日本人も、「どうやら日本は衰退しているのではないか」との漠然とした不安につきまとわれています。それは第二次世界大戦後のイギリス人たちが感じた不安感と同じなのでしょう。イギリス人がその不安にどう立ち向かっていったか、その不安にどう迎合していったか。それらを知ることは、私たちにとって決して無益ではありません。

0
2012年05月07日

Posted by ブクログ

イギリス近代に経済の視点から迫った入門書。記述にもうちょっと深みが欲しかったが、新書だからしょうが無いか。社交庭園の話や、各家族の話、世界システム論など、マクロもミクロも幅広く見れて、エキサイトな一冊。

0
2012年01月15日

Posted by ブクログ

寝ながらイギリスの近代史が学べる本。世界システム論、ウォーラーステインが何度も出てくるので、予備知識があったほうがいいのかな…と思った。

0
2011年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まさにイギリスに行く飛行機の中で読んだ。世界システム論や生活史などを切り口としてイギリスの社会構造を活写している。ヨーロッパがなぜ膨張主義政策をとり植民地を海外に希求するのか、国内の社会状況や「モノ」の観点から初学者にも大変わかりやすく解説していて何度も読みたくなる本です。

0
2011年10月13日

Posted by ブクログ

マックス・ウェーバーの議論を(意図的に?)誤読・矮小化している嫌いがあるが、その点を差し引いても、読み物としてとても面白かった。

0
2011年09月21日

Posted by ブクログ

書いてある内容が多岐にわたっているので少し把握しにくかった。ジェントルマンの話や産業革命の話は面白かった。ヨーロッパは世界進出してアジアは進出しなかったのか?その辺の話をもう少し詳しく知りたい。

0
2011年07月23日

Posted by ブクログ

イギリスの近代に関する文章群。講義形式なので、一部論旨がぐだぐだになっているところもあるし、たまに文脈がおかしいところもあるが、産業革命を一国の内部の現象ではなく、世界経済のパラダイムの変化として捉える試みは興味深かった。

0
2011年06月19日

Posted by ブクログ

世界が、一つのシステムによって成り立っているとしたら、その世界大に広がっているものは何だろうか。
それはヒトだろうか。それともモノ・カネだろうか。
グローバリズムという「傾向」は、決してここ数十年来に始まったものではない。
文明としての技術は、産業化ないし工業化を促したわけだが、まさにそれが、どこにいても利用可能なものとして、普遍化していったのである。
だとすれば、その発端となったイギリスの近現代史を探ることによって、現代の世界への見識が深まる可能性があるとも言えよう。

0
2011年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高校の歴史は殆ど忘れてしまった私ですが、この本はとても楽しく読めました。
歴史という窓を通して、人間の様々な側面を考える本です。

「田舎と都会とは何だろう」「なぜ工業化はイギリスが早かったのか」など、素朴な疑問からスタートし、分かりやすく実例を交えながら解き明かします。

イギリスの歴史が我々の現在にこのように大きな影響を与えていることを初めて知りました。

歴史が苦手な方でも、サクサク読めるお勧めの一冊です。

0
2011年02月27日

Posted by ブクログ

イギリスの歴史をおおまかに把握するために読んだ。世界システム論がやっと少しわかった気がする。イギリスにおいて「産業革命=工業化」が進行した背景を理解するには、世界システム論の考え方が有効である。ぼんやりとしたイメージはつかめた。ノーフォーク農法により、庶民の生活が改善され、人口が増加した。工業化に必要な労働力はここから出た。植民地体制はジェントリの維持に必要不可欠だった。ジェントリ=金融業者。東インド会社が綿織物業における工業化に大きく貢献した。綿織物の輸入を禁止されても、輸入し続けた。綿織物は洗濯可能、毛織物はできない。ゆえにイギリスの人々の衛生状態は向上し、綿織物の人気は高まった。次第に綿織物を輸入するのではなく、国内で生産する動きが出てくる。その頃、紡績機か発明され、まもなく特許か無効となったため、ランカシァ地方で工業化が進んだ。ただしこの工業化がイギリス全体に拡大することはなく、工業化自体も緩やかだった。
シティロンドンの金融に関する考察は『タックスヘイブン』を思い出した。イギリスの歴史をふまえて再読したい。
時間ないのでここまで。まとめきれない。テスト終わったらちゃんと読み直したい。

0
2015年02月07日

Posted by ブクログ

清教徒革命や名誉革命からの、アイルランド他連合周辺国とのいざこざの流れを詳しく知りたくて読んでみたが、そんなことは一切載ってない、イギリス近代経済史講義。
調べればわかるようなジャガイモの流通経路やオランダ語の普及度合いについて『正確には知りませんが〜』や『この議論は私自身まだ煮詰まっておりませんが〜』など、調査不足と憶測が占める割り合いが少なくなく、良く言えば親切だが、悪く言えばぼんやりとしてまとまりがない。
さておき主題はなぜイギリスで産業革命が始まったのか、そしてなぜイギリスが衰退したのか。乱暴にまとめると、そもそもの発展は技術革新にあったとしても、供給に対して必要とされる需要は乱暴な植民地との取引のほか、工場労働で女子供に至るまでが購買力を持つことによる貨幣経済の拡大にあり、それが貴族の生活様式を真似る国民性とあいまって急速な勢いを持つに至った。またノブレス・オブリージュにより地方隅々までインフラ整備が届いたが、そういった貴族階級の活躍もあってフランスのように資産階級に権力が移り変わることがなく、いつまでも過去の資産に拘り続けることで他国との工業生産競争に遅れをとるようになり、世界の情勢の流れで植民地を手放したときには、残るものは海外への投資経済のみになってしまった。こうして一定の成長率と経済力は保ちつつも、大量生産時代の他国と比較して影響力を失うこととなった。
とまぁこんな感じに数値的根拠も持たないままなんとなくわかった感になってしまうのは良いのか悪いのか…。これが正答と驕らず、一意見としてとどめて他への入り口として活用できるよう努めよう。

0
2018年10月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

イギリス近代史、特に産業革命以降を詳しく分析している。筆者はなぜ産業革命は起きたのか、消費や社会から説明するのが適切というゾンバルトの主張を支持している。イギリスは近代以前から核家族が普通で現在の日本と近い所がある。ロンドンにジェントルマンが集まるようになって田舎から都会という流れができたようだ。ジェントルマンというのも独特でフランスの貴族とは違ってお金があり、特定の職種なら誰でもなることができる。また利益ばかり追求せず、箔を重視するというのも変わっている。
 産業革命が起きた頃からロンドンにスラムが形成される。このスラムの原因はなんなのか、色々な説があるようだがはっきりとは分かっていない。著者は港がスラムを形成したと考えている。なぜこの問題が難しいかというと当時の資料はなかなか当てにならないからだ。工場労働者は低賃金だったというが物価はどうだったのか生活パターンが変われば比較できないデータがある。女性子どもの過酷な労働も過去と比較すると一概に判断できない。「世界の工場」から「世界の銀行」への移行も良かったのか悪かったのかは人によって意見が違う。
 イギリスの衰退論は第二次世界大戦後に出てきたが経済成長は続けており、衰退というのはアメリカやドイツ、日本と比べた時の相対的なものであり幻想に過ぎないという人もいる。また成長パラノイアという「常に成長しなければならない」という資本主義の強迫観念が強く影響しているようだ。

0
2013年10月23日

Posted by ブクログ

英国の近代史、経済発展やその時代の人たちの生活スタイル等を知る上ではかなり良かったと思う。ある程度掘り下げられていたりするので、読みごたえもあるんじゃないかなと感じる。また、著者がプロローグで語っている様に、現在は歴史を軽視している事を危惧し、現在の事がらは過去から学べるという事でサッチャー政権と60年代を比較したりと工夫がなされている。現在から未来を見る為にも、歴史を知ることは大事なのかもねって事を感じさせてくれるかも

0
2013年04月16日

Posted by ブクログ

イギリスの経済史を世界システム論から読み解いた歴史書だ。はじめに、教区の資料を読み解く「家族復元法」からみたイギリス社会の話がある。英国の子供は14歳頃から、階級が上の家庭にサーヴァントとして入り、そこの家族として7年〜10年働き、20代中頃までに金を貯め市民権を得て結婚し、親元には帰らなかった。17世紀にはもうこのような核家族で、見寄のない親の世代のために「救貧」が必要だった。若者はロンドンへ流入し、都会は「匿名性」があり、「見た目」で判断されるため、ファッションや社交が起こる。これは、産業革命で生産される綿織物の需要となった(以前からあった毛織物は洗濯できず、鮮やかな色もつけられなかった。綿織物は洗濯ができるところが画期的で、イギリス人は綿織物で身なりが清潔になって平均寿命がのびた)。「政治算術」の話も興味深い。ペストを避けるためにつくられた教区の「死亡表」から、人口を時系列で並べる発想が生まれ、経済発展の概念、ひいては「成長パラノイア」が形成された。殖民地はジェントルマン(地主)の次男・三男が食い詰めたときにいく安全弁であった。「産業革命」の話もおもしろい。工場はほかの仕事で金を貯めた人がパートナーシップでわりに安く建てることができ、銀行は工場などには融資しなかった。ジェントルマンは体面のために鉄道路線や道路、学校などのインフラを自分の領地に作った(決して経済合理性から出た行為ではない)。産業革命の時代の児童・女子の労働は過酷だったが、それ以前から労働環境はきびしかった。むしろ、それまで0だった収入がいくらか発生したので、子供が多い家庭ほど豊かになり、大量生産された綿織物やナイフ・陶磁器などの製品は収入を得るようになった女性が購入した。子供や女性が家長以外の監督をうけ働くようになると、権威をうばわれたオヤジが「子供や女性がかわいそうだ」と批判したらしい。「イギリス衰退論争」では、ジェントルマンが文学芸術を好み科学を軽視したから衰退したという説や、ロンドンの金融街は元気だから衰退していないという説や、衰退はしていないけど衰退感はあるという説など、混乱しており、「そもそも衰退って何?」という事態になっていること(「衰退で人が不幸せになったのか」という問題もある)。衰退論はサッチャーに利用され、新自由主義の台頭をもたらした。どれも興味深く、日本の現在を考えるにも役に立つ。ドイツ・アメリカの台頭後はイギリス国内にも保護貿易思想があった。彼らは自分たちが強いときは「自由にやろうぜ」といい、弱くなったとみると「国内経済の保護」とかいいだす。つまり、その時々で最大限有利なように事を進めているだけなのだ。

0
2011年11月09日

Posted by ブクログ

日経の書評で5つ星だったので買って読んだのですが、全然面白くなかったです。「大英帝国の興亡から現代日本を考える」と帯に仰々しく書いてありますが、タイトル通り、本書の中では日本については全く考えてません。本書を読んで各々思うことあるだろ?というスタンスだと思いますが、知識不足の私はイギリスの興亡から翻って現代日本を考えることができませんでした。

0
2011年06月23日

Posted by ブクログ

産業革命と贅沢禁止法。
世界史で勉強していた時に全然つながりを感じなかった両者がリンクするときの目から鱗、って感じがわくわく。

0
2011年05月28日

「学術・語学」ランキング