あらすじ
一国史観・進歩史観では世界史はわからない。都市と田舎の違いとは。近世イギリスはなぜ晩婚社会だったのか。昼寝より残業を選ぶ心性はいつ生まれたか。世界で最初の産業革命はなぜイギリスだったのか――。ヨーロッパ世界システム下、イギリスの民衆はどのような日常生活を送ったのか。イギリスの「繁栄」と「衰退」を捉え直し、日本の現在を考える。生活史、世界システム論を開拓してきた泰斗による近代史講義!
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Posted by ブクログ
内容説明
大英帝国の興亡から現代日本を考える。
世界システム論、生活史を切り拓いた西洋史の泰斗による画期的入門書。
高齢者問題、「外見」の重視、昼寝よりも残業という心性―。
拡大する世界システム下、イギリス民衆の日常生活を描く。
目次
プロローグ 歴史学は終わったのか
第1章 都市の生活文化はいかにして成立したか―歴史の見方
第2章 「成長パラノイア」の起源
第3章 ヨーロッパ世界システムの拡大とイギリス
第4章 世界で最初の工業化―なぜイギリスが最初だったのか
第5章 イギリス衰退論争―陽はまた昇ったのか
エピローグ 近代世界の歴史像
Posted by ブクログ
まさにイギリスに行く飛行機の中で読んだ。世界システム論や生活史などを切り口としてイギリスの社会構造を活写している。ヨーロッパがなぜ膨張主義政策をとり植民地を海外に希求するのか、国内の社会状況や「モノ」の観点から初学者にも大変わかりやすく解説していて何度も読みたくなる本です。
Posted by ブクログ
高校の歴史は殆ど忘れてしまった私ですが、この本はとても楽しく読めました。
歴史という窓を通して、人間の様々な側面を考える本です。
「田舎と都会とは何だろう」「なぜ工業化はイギリスが早かったのか」など、素朴な疑問からスタートし、分かりやすく実例を交えながら解き明かします。
イギリスの歴史が我々の現在にこのように大きな影響を与えていることを初めて知りました。
歴史が苦手な方でも、サクサク読めるお勧めの一冊です。
Posted by ブクログ
イギリス近代史、特に産業革命以降を詳しく分析している。筆者はなぜ産業革命は起きたのか、消費や社会から説明するのが適切というゾンバルトの主張を支持している。イギリスは近代以前から核家族が普通で現在の日本と近い所がある。ロンドンにジェントルマンが集まるようになって田舎から都会という流れができたようだ。ジェントルマンというのも独特でフランスの貴族とは違ってお金があり、特定の職種なら誰でもなることができる。また利益ばかり追求せず、箔を重視するというのも変わっている。
産業革命が起きた頃からロンドンにスラムが形成される。このスラムの原因はなんなのか、色々な説があるようだがはっきりとは分かっていない。著者は港がスラムを形成したと考えている。なぜこの問題が難しいかというと当時の資料はなかなか当てにならないからだ。工場労働者は低賃金だったというが物価はどうだったのか生活パターンが変われば比較できないデータがある。女性子どもの過酷な労働も過去と比較すると一概に判断できない。「世界の工場」から「世界の銀行」への移行も良かったのか悪かったのかは人によって意見が違う。
イギリスの衰退論は第二次世界大戦後に出てきたが経済成長は続けており、衰退というのはアメリカやドイツ、日本と比べた時の相対的なものであり幻想に過ぎないという人もいる。また成長パラノイアという「常に成長しなければならない」という資本主義の強迫観念が強く影響しているようだ。