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一国史観・進歩史観では世界史はわからない。都市と田舎の違いとは。近世イギリスはなぜ晩婚社会だったのか。昼寝より残業を選ぶ心性はいつ生まれたか。世界で最初の産業革命はなぜイギリスだったのか――。ヨーロッパ世界システム下、イギリスの民衆はどのような日常生活を送ったのか。イギリスの「繁栄」と「衰退」を捉え直し、日本の現在を考える。生活史、世界システム論を開拓してきた泰斗による近代史講義!
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Posted by ブクログ
世界システム論+川北さん、久々に目にしたコンビでした。 で、つい手に取ってみました、、十数年振りですかね。 斜陽といわれて久しい大英帝国、その斜陽の推移を追うことで、かって経済大国であった我が国”日本”への、 今後の立ち位置にも敷衍できる点を見出せるのではないかとの、一冊になります。 取り上げて...続きを読むいる題材もわかりやすく、本質的には現在の日本の状況にも合致する点を多く感じました。 ん、”進歩史観”をもう一つ深めた概念が”成長パラノイア”になるのでしょうか。 ”成長しなくてはいけない”との強迫観念に縛られている、とは言い得て妙ですね。 ただその強迫観念、まったく的外れかというとそうではないとも思います。 ”成長”ではなく”変化”とすれば、、との個人的解釈になりますが。 ちなみに、私自身は”進歩史観”自体は懐疑的なスタンスです、あまりにも狭窄的で。 しかし、自分が学生の頃、歴史学はドメスティックなままではアレだよね、って議論も盛んでしたが、、 - 歴史学などというのは、もう終わっている分野でしょう ってくだりを見ると、学会のメインストリームは変わってないのかなぁ、、と感じます。 「歴史学は諸学の基礎だが、それ単体では何も成し得ない」、 そう感じた自分は、白亜の塔ではなく現場に出る事を選びました。 ちなみに大学の恩師は経済学を織り込んだ視座でアプローチをされています。 自分が基礎学問として歴史学を選んだことは”社会的有用性”につなげることができるのか、 久々に自分の起点と基点を振り返ることができました、さて、どうしますかね。
I・ウォーラーステインの世界システム論をベースとしてイギリスの近代産業革命の成立を説明する。講義を元にして書籍化されているので授業を受けているような感覚で読める。とくにイギリスのジェントルマンの成立のくだりは興味深かった。 ジェントルマンとは、もともとイギリス各地を治めていたカントリージェントルマ...続きを読むン(貴族)たちを指していていたのたが、産業革命が起きてロンドンにシティ(都市)が成立するとともに、地方の貴族と都市に住む新興ブルジョワジー(資本家)や特権的職業階級(弁護士・医師など)の交流の場として社交界も誕生した。そしてこれら社交界に出入りするような人々を一般的にジェントルマンと呼ぶようになったのだそうだ。
なかなか堅苦しい題名の本ですが、なかなか面白い内容でした。帯にもあるように「大英帝国の興亡から現代日本を考える」と言うことで、日本はイギリスの追体験してきたようなところがあるのではないかという発想は面白いものがあります。しかし、そこから何を学ぶかと言うとこれがなかなか難しい。 イギリスがどうして「...続きを読む世界で最初の工業国家」となったのか、そしてその後20世紀後半に到来した「イギリスの衰退」とを同時に考察することの意味、さらには、そもそも「成長」とか「衰退」と言う意味は何を持って言うのかってことまで考えると面白くなってきます。 日本も高度成長時代から、失われた10年(もっと失われている感じですが(笑))このこと自体を考えると、高度成長時代ではない今の日本での生活がすごく不幸かと言うと、そうでもない感じです。それでも今の日本は衰退しているか考えると面白いものです。 高度成長時代に比べて成長率と言う点では確かに劣っており、その成長率の低さが将来に対する不安になっているのでしょう。国際競争力と言う点では、そもそも高度成長時代には経済大国2位なんて地位にはなかったはずです。今は3位になったかもしれないけど、少なくとも今の時代の方が国際的な地位も上がっているはずなのに、成長率の低さが大きな影を落とします。 このあたりに「「成長パラノイア」があるのではないかと言うことです。「パラノイア」って意味が分からなかったですが、「成長偏執病」とでも言いましょうか。要は成長続けることが至上命令のような(企業にもありますよね(^^;)) 日本とイギリスとは必ずしも同じ土俵では比較が出来ない(生活史と言う面でスポットをあてると価値観も違うでしょうし)とは思いますが、いずれにしても歴史をこうした視点で切り込んで考えると、いろいろあるもんだなあって、改めて大学での歴史の勉強も悪くないかもって思ったりします(^^)。
名作『砂糖の世界史』の流れで読みましたが、これも若い頃に読みたかったと思わせる歴史の本です。ジェントルマン資本主義とは何かについて、その背景も含め詳しく語られています。講義録なのでとても読みやすく、学生にお勧めしたいです。
イギリスの近世、近代とはどういう時代なのか、人々の生活の様子や家族のあり方を観察しながら、都市の形成や産業革命の意味について世界システム論の立場から考察し、現代の「イギリス経済衰退論」の妥当性について述べたもの。 今度仕事でイギリスに行くので、イギリスのことについてもっと勉強した方がいいなと思っ...続きを読むて読み、通史的なものを期待したけれど、そんな感じではなかった。が、結果的にとても面白く読めた。著者は岩波ジュニア新書の『砂糖の世界史』という本の著者らしく、この本は読んだことがないけれど、うちの学校の複数の歴史の先生がおすすめしていた本でいつか読んでみたいと思っていた本なので、やっぱりこの著者は歴史学の面白さとかダイナミズムとかを教えてくれる感じなのだと思う。以下、面白かった部分のメモ。 まずsurgeon, physicianという「医者」を表す単語を理解するのが難しい。産業革命時代、「外科医、散髪屋、歯医者というのは、当時の職業概念では人体の一部を切り取るということで、ひとつの仕事に考えられました。外科医兼散髪屋、そういう人たちがロンドンでは非常に増えていったと言われています。」(p.42)というのは何となく聞いたことがあった。ただphysicianは水銀を使わないと対処できない梅毒の治療ができなかった(p.43)という話は意外。でphysicianは何をしていたかというと、「古代ギリシャのガレーノスの医学を前提にしていました。人間の体液の組み合わせて、病気が出てくるとする学説です。」(p.42)という、この時代にもそんな学説が使われていたというのが驚き。中世で終わったのかと思っていた。あと用語という点では、pp.56-7ではシティズン、バージェス、ブルジョワ、シティ、ブルクという言葉が解説されている。今度おれが行くリヴァプールは、「見かけは農村みたいなところですが、中世から司教座がありましたので、シティとよばれてきました。自治権が認められているので、都市自治体がありました。このことが、あとの時代になると、たとえばガス灯をつけ、道路を整備し、水道をつけるといった事業をおこなえる前提になりました。しかし、そのころのマンチェスタにはそれをおこなう主体がありません。だから、両都市の発展を見ていくと、どうしてもリヴァプールが一歩リードしています。」(p.75)というのは勉強になった。そしてこれらのリヴァプール、マンチェスタ、バーミンガムなどは、「十七世紀か十八世紀前半ごろのニュータウン」(p.78)だそうだ。さらに十九世紀後半のニュータウンは、「ガーデン・シティつまり、田園都市」(p.80)が生まれ、それは日本の東急の田園調布や阪急の箕面と同じ、という、日本との類似点があるというのを知ると面白い。 そして「ぜいたく禁止法は、中世から近代にうつっていく近世という時代に、中世の身分制秩序が崩れていくのを止めるために、世界中の国で出された法です。」(p.52)という、日本で言うと「倹約令」らしいが、歴史の過程で必然的に生まれてくる現象として解説されているのが興味深い。 この本全体のキーワードとして、「成長パラノイア」というのが挙げられるが、これが解説されている部分、「人間は進歩・成長をしなければならないし、前よりはよい生活になっていかなければいかない」という考え方(p.87)は理解しないといけないと思った。そして「膨張するヨーロッパ世界システム、ひきこもる中華帝国」(pp.127-32)の節は世界史の大まかな流れがわかる感じで面白かった。そもそも大きな世界システムには、主権国家が分立し競争しているヨーロッパ的なシステムと「皇帝、つまり中央が政治的な支配をし、武力を独占することになる」(p.130)帝国システムの2つ、というのが分かりやすかった。そして2つのシステムがぶつかる時には中和するというより差異化が生まれて「周辺」がどんどん「周辺」になっていく、というのも興味深い。 そして今度おれがイギリスに行くのはイギリスの産業革命について色々知りたいというのが一つあるのだけれど、その産業革命についても世界システム論的に見る、というのが面白かった。毛織物業(国内輸送の方がコストがかかる、羊毛よりは食料の増産)→綿織物業(海外で手に入る、東インド会社、洗濯が出来るので毛織物より清潔=平均寿命の延長)(pp.159-61)と言う感じだそうだ。あと産業革命と言えば鉄、というイメージがあるが、「このころの鉄は、木炭を燃料としてつくりましたので、莫大な量の木炭が必要で、そのために、木材が切りだされ、イギリスの山は現在のようになったと言われています。いまのイギリス(イングランド)には、ほとんど森も林もなくなって、(略)ウッドもフォレストもありません。あるのはブッシュ(低木の藪)くらいです。(略)現代の環境学で、熱帯雨林などの森林がなくなっていくことをdeforestationと言いますが、もともとこの言葉は、一六世紀のイギリスの現象をあらわすためにつくられた」(pp.165-6)というのは勉強になった。そして奴隷貿易については、「アフリカは搾取されたと漠然と考えがちですが、奴隷輸出という産業が展開していく、そういういびつさのほうがむしろ深刻な問題」(p.170)というのも納得した。そして、アフリカは暑いので毛織物よりは綿織物が喜ばれるので、「こうして、綿花がリヴァプールに入ってきて、綿織物が出ていくという構造があり、その後背地のマンチェスタで綿業を展開する。」(p.171)ということだそうだ。他にも産業革命で、女性や子どもの労働の成果が「ともに安いけれども賃金というかたちで明確化されるように」(p.202)なって、「戸主のリーダーシップがなくなる」(同)ということと、実は子どもがたくさんいる家庭は豊かだった、女性や子どもが悲惨というのは「男性の声で、本人たちはそんなには思っていなかったのかもしれません」(p.203)というのは新しい視点だった。ただ「産業革命で、産業資本家が経済力を少し持つようになったけれども、政治力は持てなかった。しかも、(略)ものづくりの産業資本化ではなく、財産を貸してその利潤で生活をすると言う、ジェントルマン的なシティの人びとを中心とするタイプの資本主義に変わっていってしまった。」(p.237)という見方もあるというのを知った。p.239にも書いてあるが、「製造業が重視されない雰囲気」って日本と逆だなあと思った。 ということで、イギリス近代史を切り口にして世界史の勉強の面白さが感じられる良い本だったと思う。(24/06)
15世紀〜18世紀のイギリス近代史の概観について、語り口調で著している。 歴史的な事実よりも「都市の成立とファッションの関連性」「産業革命がイギリスから始まった要因」などの「なぜ?」を考える内容である。 自分の英国史に関する知識が乏しく、消化不良感があった。いつかもう一度読み直したい。
イギリスでなぜ産業革命が起こったか、なぜ「ゆりかごから墓場まで」と言う福祉政策が執り行われていたかなど、イギリスに関する疑問を作者独自の視点と意見で述べている
帝国と王国の違いの説明が面白い。イギリスの社会構造が、大陸とは違っており、それがたまたま産業革命を推進した。晩婚(24歳)で核家族っていうのが普通という珍しい社会。
歴史ものの新書はなぜこんなにおもしろいのだろう。 ディケンズの描く「ロンドン」のイメージが色濃い自分の中の「イギリス」がガラガラと音を立てて崩れていく。。 一般的な解釈に事実を突きつけて別の解釈が可能であることをただただ述べていく。そして教科書的な「大英帝国」という虚構の帝国を解体してしまう。 ...続きを読む読み終えて「他の著書も読まないといけない」とあせってる。巻末の文献リストもクール。
英国近代史を経済システムや内的発展の観点から描く。19世紀に世界を網羅する帝国を築いた同国の歴史は、議会政治とかインド制服とか、政治・外交史の観点から描かれることが多いけれども、帝国を形成するに至った内的活力に目を向ける本書は、どうやら著者の講義を書き起こしたものであるらしい。 ポイントの一つは、...続きを読む近代化とは都市化であるという着眼。交易都市や城塞都市としての性格が強かった中世都市に対し、近代都市では農村から都市への人の集中が起こり、産業的にも文化的にも、都市において近代が形成される。 次に、イギリスにとって切って離せないジェントルマンの存在。労働に従事しないのがジェントルマンであり、地主階級から生まれたジェントルマンは弁護士、将校、医師、さらには植民地官僚といった職業に展開し、大英帝国のバックボーンを形成した。 そして、産業資本家に対する考察。産業革命の呼び水となった綿織物工業は、毛織物工業からの連続ではなく、綿産地のインドが植民地になるといった世界システムの中で生まれた。産業革命とその後の歴史の中で産業資本家は一定の貢献をしたが、英国経済の主流はあくまで金融などジェントルマン側にあり、産業資本家は発言力を持つことはなかった。そういった歴史の流れが先日のBrexit可決に行き着いており、産業資本家とジェントルマンの相克という観点から今後の英国史をみていくのも一興ではないかと思う。
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