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“近代世界を一つの巨大な生き物のように考え、近代の世界史をそうした有機体の展開過程としてとらえる見方”、それが「世界システム論」にほかならない。この見方によって、現代世界がどのような構造をもって成立したかが浮き彫りとなる。すなわち、大航海時代から始まるヨーロッパの中核性、南北問題、ヘゲモニー国家の変遷など、近代のさまざまな特徴は、世界システム内の相互影響を分析することで、はじめてその実相を露わにするのだ。同時にそれは、歴史を「国」単位で見ることからわれわれを解放する。第一人者が豊富なトピックとともに説く、知的興趣あふれる講義。
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Posted by ブクログ
近代世界システムとは、16世紀以降の歴史を世界的な構造として捉えようとする概念。資本主義の本質を歴史的に捉えることもできたので、読んでよかった。
近代世界システムとは、世界的な分業体制をとることで、それぞれの生産物を大規模に交換する体制のこと。 16世紀の東ヨーロッパでは、西ヨーロッパへの穀物輸出が激増したため、農奴の労働が強化された。今日の南北問題は、北の国々が工業化、開発される過程において、南の国々がその食糧・原材料生産地として「開発」された結果、生じた。
12世紀から13世紀にかけての北西ヨーロッパでは、人口が増加し、耕地の開発も進んだ。1150年頃を境として、西ヨーロッパでは多くの人々が、食糧のような基礎物質も交換によって入手するようになった。
火薬の普及によって戦術が変化すると、封建制度における騎士の存在が無意味になった。農民の抵抗を抑えきれなくなった領主層は、王権の支援に期待するようになり、絶対王政が西ヨーロッパ各国で見られるようになった。帝国は武力を独占し、武器の浸透や発展を阻止する傾向が強いが、国民国家の寄せ集めであったヨーロッパでは、各国が競って武器や経済の開発を進められた。その結果として、 16世紀にはヨーロッパと東アジアの間では、武力は圧倒的な差となった。
オランダは優秀な造船業を確立したことから、漁業と商業で圧倒的に有利になった。特に、バルト海貿易用に開発したフライト船は、少人数で大量の積荷を安価に運ぶことができたため、木材などを扱うバルト海貿易で圧勝した。このバルト海貿易は、東ヨーロッパと西ヨーロッパを結ぶ幹線貿易で、穀物や造船資材のほとんどを供給し、アムステルダムで取引された商品の4分の3を占めた。アムステルダムには世界中の資金が集まり、金利が最も低い金融の中心となった。
イギリスでは、1660年の王政復古から 1775年のアメリカ独立戦争前までの1世紀あまりの間に、それまでヨーロッパ諸国とトルコに限られていた貿易相手地域は、カリブ海、北アメリカの植民地を中心に、東インド会社の活躍したアジア、奴隷貿易の展開したアフリカに急展開し、貿易の規模が劇的に上昇した。それまでほとんど増えていなかった貿易量は、17世紀後半の半世紀で3倍に増え、18世紀の初めの60~70年間にも数倍に増えた。輸出品は、それまでのほとんど唯一のものであった毛織物のほか、金属製品や家具などの工業製品と植民地物産の再輸出が加わった。イギリス政府は税によって得た資金のほとんどを軍事費にあてた結果、対仏戦争に勝利し、大英帝国の形成に繋がった。イギリスは世界で最初の産業革命に成功したために大英帝国を作り上げたのではなく、帝国を作り上げたからこそ産業革命に成功した。前のヘゲモニー国家オランダの資金もイギリスに流れた。
砂糖プランテーションが行われたカリブ海には、まともな学校がなかったため、カリブ海の砂糖プランターたちは、その子弟をイギリスに送り込んだ。子弟はそのままイギリスに住み着き、プランテーションを引き継いでも不在化したままイギリスの政界に進出し、議会に強力な圧力をかけて、カリブ海植民地の砂糖を保護させた。これに対してアメリカ大陸のタバコ植民地では、プランテーションを現場監督に任せて不在化できるほどの金持ちにはなれなかったため、不在化しなかった。そのため、アメリカ大陸の13植民地が独立を宣言したとき、カリブ海の植民地は追随せず、20世紀まで植民地の立場を保った。不在化したプランターは、現地に道路も学校も公園も作ることはせず、上下水道のような生活基盤も整備しなかった。不在化が進行しなかった北アメリカ南部では、社会資本の整備はカリブ海よりもはるかに進行した。
イギリス近代史では、植民地を社会問題の処理場としてきた。失業者は植民地の労働力になるべきとみなされ、非行青少年や犯罪者、売春婦、反体制派、結婚相手の見つからない女性も植民地に活路を見いだすことを奨励された。植民地時代にアメリカに渡ったイギリス人の少なくとも3分の2は、期限付きの債務奴隷とも言える年季奉公人であった。 18世紀のイギリスでは、死刑の対象となる犯罪の種類が急増して死刑判決が頻発し、恩赦によって植民地へ流刑されて年季奉公人と同じ労働力として扱われた。
近代世界システムにおいては、低コスト労働の確保のために人種主義や性差別などが行われる。フランス革命の理念である平等の観念も、能力主義と結びつくことによって、差別や生産的労働からの排除と結びついた。ヨーロッパを中核とする近代世界システムが世界を覆った19世紀には、オーストラリアやカリフォルニアの金鉱への中国人クーリー、南アフリカの鉱山での黒人労働者、アジアの茶や綿花やゴムなどのプランテーションなどで、労働力の世界的な再配置が展開された。
近代世界システムにおける「周辺」の従属地域は、いったん支配的な中核との関係を断ち切らなければ、その立場から脱却はできない。鉄のカーテンを引いた旧ソ連や鎖国を行った日本は、その世界システム上の地位を高めたり、「半周辺」の地位にとどまることができた。アメリカ独立革命の意味は、イギリスからの投資、すなわち、低開発化の圧力を避けることにあった。
イギリスは、19世紀には自由貿易を前提とした軽い政府に移行したため、急速に工業化されたドイツとアメリカに敗れ、1873年以降の大不況の中でヘゲモニーを喪失していった。世界の工業製品輸出に占めるイギリスのシェアは、1870年代には45%前後だったが、世紀末には30%を下回るようになり、金融とサービス業で生きる国となった。
Posted by ブクログ
以前に同著者の学生向けのやはり名著『砂糖の世界史』を読んでいますので内容的には自分にとって新しくはありませんが、アメリカ史を学びつつ改めて読むと色々と繋がり腹落ちします。
アメリカの独立から南北戦争期の歴史って、まさにヨーロッパ(スペイン、イギリス、フランス)の「世界システム」の「中に組み込まれた」人たちとそれに対する「抵抗派」の確執であり、さらにヨーロッパの国同士の覇権争いがそこに絡んで来て、またそれを利用する力学あり、牽制する力学あり、の歴史なんですよね…
「アメリカ史を知ると世界システムの歴史が見える」と感じる次第です。
あ、話が若干逸れましたが、間違いなく一読の価値ある名著ですね。
Posted by ブクログ
各国を個別事象的に見て、ある国を「先進国」、またある国を「後進国」とラベリングするのは狭小な「単線的発展段階論」であると断じ、近代以降の世界は一つの巨大な生き物、有機体の展開過程の如く捉えるべきだとする論が主旋律。
封建制の崩壊と国民国家の成立に端を発し、その後スペインとポルトガルによってもたらされた大航海時代が近代世界システムの成立を告げ、やがてオランダ、イギリス、アメリカと、ヘゲモニー国家の覇権を巡って各国が「中核」の座を争った陰には、「周辺」として極度に低開発化された国々が。それはさながら「光」と「影」であり、この近代世界に影を落としてきたのは紛れもなく中核国そのものである。
この「世界システム」というスキームは、国際社会を見る視座を確実に一段高めてくれるものであり、また未来予測にも大変有益と感じる。
よく歴史は線で考えろというけれど、その一歩先、「複線」で考えるイメージかな。非常に勉強になったし、読み物としてシンプルに面白かったです。
Posted by ブクログ
超絶名著。近代ヨーロッパ史の流れがまるわかりできる。様々な断片的知識が繋がっていく爽快感はたまらない。
2017年1月6日追記
世界システム論について今一度考えてみると、中核―周縁関係の中で、垂直的関係があることが、南北問題が解決しない一つの理由として挙げられている。中核国家が産業の高度化を成し遂げたために、周縁国家は産業の低次化を強いられた。東方植民に見られるエルベ川以東の再版農奴制やインド植民地のモノカルチャー化はイギリスを筆頭とする西欧の産業化との関連性の中で考えられる。さて、そこで重要に思えるのは、低開発化された周縁では労働力のコストを下げるために、非/低賃金労働を強いられるということだ。いわゆる自給的労働は賃金の発生しにくい非/低賃金労働としてカウントされ、生産的労働に財が集まると考えられている。さて、WW2以前の世界では植民地における強制労働という形で、このような非/低賃金労働を賄ってきたが、植民地解放以降の世界では国内に低賃金労働者たる非正規雇用者を確保するために、雇用の非正規化が進む。サービス残業やブラック企業はシステムの存続に不可欠な非/低賃金労働の創出という歴史的側面で説明できる。そして、これが本題であるのだが、2016年12月に一世を風靡したドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」に隠されたメッセージは、世界システムの存続に必要な搾取の構造を、夫婦という解り易い関係に置き換えて世間に訴えていたのではないかと思う。最終回に近づくにつれて、主人公の平匡は解雇による年収の激減から、元々は賃金労働者として対価を払っていた妻の労働を結婚によって非賃金労働化することによってシステムの存続をしようと試みた。このシーンに象徴される含意は夫という中心がシステム維持の為に周縁を非賃金労働化するという世界システム論の中にある非対称な分業体制に由来するのではないか。
追記おわり。
Posted by ブクログ
タイトル通り、ウォーラーステインによって主張された「世界システム論」についての概説書である。
随分前に書棚に収めていたが、先日、的場昭弘氏の『資本主義全史』を読んで、もしやと思って本書を手に取った。
直感は当たっていた。
「世界システム論」とは、西洋資本主義体制による国際的分業制のことを指していたのである。
世界システム論の目的は、各国史の積み上げを世界史とする旧来の史観を脱し、資本主義による国際的分業体制という観点を軸に近代以降の歴史を論じていくこと。つまり、一国史からの脱却だ。
この観点に基づくと、欧米各国が「進んで」いて、アフリカ等の諸国が「遅れている」という、それぞれの国が辿るべき進歩のルートを順番に辿っているのではなく、国際分業体制の中で欧米が「中心」となってしまったがゆえに、アジアやアフリカ等の地域が「周辺」となって同時代を進行してきた。ということになる。
なので、世界システム論に基づいて世界史を読み直そうとすると、どうしても資本主義が発生した西洋史を中心とした描写になる。
本書も大航海時代に始まるヨーロッパ近代の歴史の変転を、世界システム論の解釈を差しはさみながら進んでいく。
読み終わって、すぐに「世界システム論」はいつ頃提唱された議論だったかを確認した。
もう30年も前である。
今や世界史の潮流は「グローバルヒストリー」に移っているし、そのグローバルヒストリーですら例えばアジア史家からは西洋中心史観の誹りを免れず、今も様々な専門を背景に持った歴史家たちが「本当の意味での世界史」を追い求めているのが現状だろう。
そんな現状から何周かの周回遅れで本書を手に取ったわけだ。あまりに長いこと本棚の肥やしにしすぎたかな。
でも、著者自身がそれらの批判に末尾で抗弁している通り、現在の世界はどうあっても西洋資本主義のシステムを前提に構築されているのである。ゆえに、その切り口での歴史を学ぶことに意味はあると思う。
Posted by ブクログ
ウォーラスタインの世界システム論をベースに15世紀以降の世界史、資本主義史を読み解いていく。
どこまでがウォーラスタインの議論で、どこからが著者の見解なのか、境目がわかりにくい気がするが、一般の読者を対象とした入門なので、そのあたりまで知りたければ、専門書か、ウォーラスタイン本人の本を読めばいいということかな?
世界システム論を最初に知ったときには、すごく面白いと思ったのだけど、あまりにもマクロなアプローチで各論、具体論に入ると、だんだん怪しげになっていくところがあって、興味は薄れていった。
が、個別テーマの本をある程度読んだ今となると、もう一度、このマクロ的な議論がとても大事なものに思えてくる。
冷戦が終わって、同時にかつての植民地における東西両陣営による取り込み競争も終わって、30年以上経っているわけで、今の時点でもう一度システム論の観点から見ることはとても大切な気がする。
というわけで、これまで何度も読みかけて挫折したウォーラスタインの近代世界システム論を読むときがついに来たのかな?
この本は本当に大雑把な議論なのだが、全体観が俯瞰でき、準備運動はかなり進んだ気がする。
Posted by ブクログ
ウォーラステインが提唱した「世界システム論」という史観概念について解説されている。
世界システム論とは、歴史を国単位で捉えて、諸国が互いに不干渉な状況であるセパレートコース上での競争をおこなっているとする「単線的発展段階論」へのアンチテーゼとして生まれた。
つまり、勤勉国家が「先進国」、怠け者国家が「後進国」になっているとするのではなく、「中核国」が「周辺国」から収奪したために、「先進国」と「後進国」が生まれたというように、国単位ではなく、世界を一つの単位/構造体として捉え、構造体内の相互作用において全体の状況が作り出されているという考え方である。
近代初期においては、世界における西ヨーロッパの影響力は小さく、経済・文化・技術などあらゆる点において、アジア(特に中国)の方が進んでいた。
次第に、(火器などの暴力技術も含まれる)技術がアジアから到来し、一揆などに対応しかねた領主層が「国家」の存在を求めるようになり、封建制度から国家国民制度へと移行していった。
ここに、世界システムの萌芽が見られ、その後、西ヨーロッパ諸国は、大航海時代→植民地支配→工業化といった流れで世界システムを地球規模に拡大させ、常に新しい「周辺」を探し求める。
・世界システムは「中核」と「周辺」が存在し、周辺から搾取した富によって中核が充足されるという構造がベースとなっていること
・現代社会において、世界システムから逃れた地域は存在せず、新しい「周辺」の拡大が見込まれないこと
・搾取するシステムである「工業」の姿変化してきていること(IT/金融に重点が移動)
などを踏まえると、近代の世界システムから現代の世界システムへの更新を考えてみても良いではないだろうか。
<メモ>
・国家国民モデルが希求された背景として、ウォーラステインは「農奴統治のため」ゲルナーは「高文化教育普及のため」とそれぞれ違う観点で見ている
・ヘゲモニー国家の支配力の拡大/衰退の順序は、いずれも生産→商業→金融の順となる
・ヘゲモニー国家衰退の理由としては、生活水準の向上→生産における優位性低下となり、上記の衰退スパイラルに陥るため
・世界システムにおいて、「世界帝国」は存在せず「世界経済」のみ存在する。帝国モデルは支配体制としての効率が悪い
・ヘゲモニー国家において一番有利なのが「自由主義」。そのため、ヘゲモニー国家の首都は最もリベラルで芸術や亡命インテリの溜まり場となる
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