川北稔のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
世界の仕組みというか、現代社会を外観するために参考になる本。時々こういった本を読むと、ああ、そうだったという確認と、そいういう見方もあるのかという新たな視点を得られるのでとても良い。今回は近代ヨーロッパを中心に、経済システムの切り口で歴史を外観するもの。これまでの教科書や歴史解説書では、「国や王朝」単位で物事を捉えていることが多いが、この本は国境や〇〇家ではなく、モノ(農作物、工業製品、奴隷も)の流れで歴史を解説し、評価もしてくれている。この見方に立つと、大航海時代の世界の中心はインドや中国など東・東南アジア地域であり、この地域は域外との取引をしなくても十分豊かだった。従って、ヨーロッパ征服な
-
Posted by ブクログ
川北稔(1940年~)氏は、イギリス近世・近代史を専門とする歴史学者。大阪大学名誉教授。
本書は、2001年に放送大学のテキストとして出版された『改訂版 ヨーロッパと近代世界』を改題・改訂し、2016年に出版されたもの。
「世界システム論」とは、米国の社会・歴史学者であるイマニュエル・ウォーラーステイン(1930~2019年)が、1970年代に提唱した巨視的歴史理論である。それは、各国を独立した単位として扱うのではなく、より広範な「世界」という視座から近代世界の歴史を考察するアプローチであり、複数の文化体(帝国、都市国家、民族など)を含む広大な領域に展開する分業体制により、「周辺」の経済的余剰 -
-
Posted by ブクログ
世界システム論講義
世界システム論について初めて読んだ本。
シヴィライゼーション界隈の人とかがたまにウォーラーステインとかの名前を出すので気になっていた。
放送大学のテキストだったらしい。
世界システム論は、世界史を個別の国単位の総合として捉えるのではなく、世界全体を1つのシステムとして捉える見方を言う。
16世紀に西欧で成立したため、「西欧システム論」と言い換えてもいいかもしれない。
世界システム論によれば、南北格差の問題は、中心国である帝国に1次産業供給地として周辺化されてしまい、その構造が固定化されてしまうことにある。(その国やその民族の特性に起因するのではない。)
面白かったポイ -
Posted by ブクログ
二十年前に書かれた、川北史学の基本線を記した本。
英国社会の実相はジェントルマン支配であり、これまでの世界史教育では産業革命が過大評価されている、と筆者は言う。これを敷延すると、工業は必ずしも国民経済の豊かの指標ではなく、金融資本や文化の蓄積も重要な要素だから、先進国の産業空洞化も恐るに足りず、ということになる。
20年後の観点でこの主張を検証すると、日本の産業空洞化は更に進み、経常収支も脅かされるようになったが、日本のカルチャーは世界に評価され、日本経済はポスト工業化時代をそれなりの温度で歩んでいる。米国ではアメリカファーストを掲げるトランプ政権が成立し、イギリス国民はブレグジットを選択した -
Posted by ブクログ
本書は、ヨーロッパ、特にイギリスを「中心」に、重要な史実を関連付けて、システム論という大括りにされた視座で解説がなされている。高校の世界史の授業で扱われたかすかな記憶が線で繋がったようだった。世界システム論の核となる「中核」と「周辺」の概念は、世界の大学の発達過程や、日本国内の大学間の関係を理解するときに活用できよう。例えば、中核となる大学はその機構を強化しつつ、周辺の大学は「大学間連携」の名のもとに当該大学を溶融させようとする効果が企図されている、というように仮定することは言い過ぎだろうか。また、著者は植民地が製品・商品の「生産地」であると同時に「社会問題の処理場」だった側面があるとしている
-
Posted by ブクログ
イギリス近代史学者さんによる、近世からの世界の流れを少し広い目で捉えた本。ねらいは、現代社会がどう成立したのかを読み解くこと。
全体のボリュームは軽めで、各章ムチャクチャ駆け足で進んでいきますが、要点がまとまっていて明解です。世界史で習った「アレか!」的単語が登場したかと思うとサラッと去っていくようなシーンがしばしばあります。典礼問題とか。文章は平易なのですが、世界史習ってないとようわからんかも?
大して豊かでもなかったヨーロッパがなぜ覇権を握ることができたのか?今後世界で覇権を握っていくのはどこ(誰)か?などについて、歴史の流れを手繰りながらヒントを得ていく本です。
世界史は開拓の歴史で、 -
Posted by ブクログ
この世界はどのようにして成立したのか、その中でなぜヨーロッパが世界の中心となったのか、なぜその逆(アフリカや南米が先進国で欧米が発展途上国である世界)にならなかったのか、南北の差はなぜ生まれたのか、というのがこの本の議題で、議題自体は名著「銃・病原菌・鉄」と同様のものだと思います。ただ、「銃・病原菌・鉄」は人類の文明が始まる昔まで遡ってこの議題に挑んでいる一方で、この「世界システム論講義」は主に15世紀以降の世界の経済の動きに焦点を合わせている点が違うと感じました。250ページ程の文庫本なのに1,100円もして高かったけど、それに見合う内容だったと個人的には満足しました。この本を「銃・病原菌・
-
Posted by ブクログ
英国近代史を経済システムや内的発展の観点から描く。19世紀に世界を網羅する帝国を築いた同国の歴史は、議会政治とかインド制服とか、政治・外交史の観点から描かれることが多いけれども、帝国を形成するに至った内的活力に目を向ける本書は、どうやら著者の講義を書き起こしたものであるらしい。
ポイントの一つは、近代化とは都市化であるという着眼。交易都市や城塞都市としての性格が強かった中世都市に対し、近代都市では農村から都市への人の集中が起こり、産業的にも文化的にも、都市において近代が形成される。
次に、イギリスにとって切って離せないジェントルマンの存在。労働に従事しないのがジェントルマンであり、地主階級 -
Posted by ブクログ
世界史の流れを、「国家」という単位ではなく、「世界」全体で見つめ直すべきだ、ということを様々な角度から講釈してくれている本。
この本が示そうとする事柄は、次の文に端的に表現されている、と思っています。
p26「近代の世界は1つのまとまったシステム(構造体)をなしているので、歴史は「国」を単位として動くのではない。すべての国の動向は、「一体としての世界」つまり世界システムの動きの一部でしかない。「イギリスは進んでいるが、インドは遅れている」などということはなく、世界の時計は一つである。現在のイギリスは、現在のインドと同じ時を共有している。両者の歴史は、セパレート・コースをたどってきたのではな -
Posted by ブクログ
ネタバレ内容説明
大英帝国の興亡から現代日本を考える。
世界システム論、生活史を切り拓いた西洋史の泰斗による画期的入門書。
高齢者問題、「外見」の重視、昼寝よりも残業という心性―。
拡大する世界システム下、イギリス民衆の日常生活を描く。
目次
プロローグ 歴史学は終わったのか
第1章 都市の生活文化はいかにして成立したか―歴史の見方
第2章 「成長パラノイア」の起源
第3章 ヨーロッパ世界システムの拡大とイギリス
第4章 世界で最初の工業化―なぜイギリスが最初だったのか
第5章 イギリス衰退論争―陽はまた昇ったのか
エピローグ 近代世界の歴史像