川北稔のレビュー一覧

  • 生活の世界歴史〈10〉産業革命と民衆

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    イギリスの産業革命について深く勉強したいと思い本書を手に取りました。これまでにアシュトンの「産業革命」などを読んではいましたが、本書は産業革命時代の人間像を可能な限り生々しく記述されていて、とても勉強になりました。文庫版で購入しましたが読み応えは十分です。産業革命によって人々の生活が劇的に変わりましたが、当時の英国でもっとも重要だったのが社会的地位。上流、中流、下流(労働者層)という意識は産業革命時代に生まれたそうですが、本書を読むといかに多くの人々が自分自身の社会的地位をあげることに必死になっていたかわかります。21世紀の現在でも周りの人からどう見られているかを気にしながら生活している人が多いですから、人間は古今東西あまり変わっていないんだな、と苦笑しながら読みました。

    本書でとてもよかったのは当時の絵画、版画をイラストとして多用していることです。文章を補完する意味でとても良かったです。また興味深かったのは当時英国に旅行に行ったドイツ人旅行者の日記のように「外国人から見た産業革命」がわかることです。イギリスの良いところ、悪いところが生々しく記述されていて、想像力をかきたてられました。産業革命を学ぶ人は本書は必須かと思いますし、学術研究ではなく教養として産業革命の勉強をしたいという人も十分楽しめます。

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    2023年04月28日
  • 8050問題の深層 「限界家族」をどう救うか

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    支援活動をされている方です

    たくさんの当人・家族・支援者たちの事例が載せられています。

    他に日本中にたくさんの当事者・家族たちが存在しています。

    自分の部屋や家族以外に、SNSを含めて相談先や支援を受けられる場所があればあるほど数多くの当事者・家族たちが助かることは間違いがないのです。

    少しでも自分たちに温かい姿勢で接してくれる人達と接していけることはとてもありがたいことです。

    お互いに距離を持って礼儀正しく接していけて、大きな意味で日本人全体で良くなっていければ。

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    2023年01月27日
  • 史的システムとしての資本主義

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     原著1983年刊、1995年増補。
     社会学におけるシステム論ということで、ただちにニクラス・ルーマンとの関連を想定したが、読んでみるとルーマンともまた違っており、関係性は分からない。ルーマンほど極端に抽象的ではなく、現実の社会の相に根ざし、たまには統計データをもとにしたような論述も見られる。それでもやはり、かなり抽象的な本ではあるので、好き嫌いは分かれるかもしれない。
     小さな章に分かれていないために読んでいて一息つくタイミングが計りにくく、ちょっと読むのに苦労する。しかし、中身は資本主義システムなるものの独特さを個性的な切り口で浮かび上がらせ、たいへん興味深い指摘があちこちに見られる。
     たとえば、普遍的な「排外主義」とは異なる意味での「人種差別」は資本主義システムを支えるものとして周到に練り上げられたものだという。

    「人種差別とは、資本主義というひとつの経済構造のなかで、労働者のいろいろな集団が相互に関係をもたざるをえなくなってゆく場合の、その関係のあり方そのもののことであった。
     要するに人種差別とは、労働者の階層化ときわめて不公平な分配とを正当化するためのイデオロギー装置であった。」(P.124)

    「人種差別の意識は、不平等を正当化する万能のイデオロギー−として作用してきた。しかし、ことはそれだけでもなかった。
     それはまた、諸集団を社会化し、「経済」のなかに位置づける役割をも果たしてきたのである。」(P.125)

     こういった予想外の着眼があちこちに見られ、刺激的きわまりないのである。結局その論旨が正当かどうかはすぐには断定できないものの、こうした刺激によってその都度覚醒ささられながら、私たちはさらに多面的に、深く世界を見ていくことができるだろう。
     本書はそうした知的愉悦に満ちた本であり、この著者の他の本も読んでみたくなった。

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    2022年08月24日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    以前に同著者の学生向けのやはり名著『砂糖の世界史』を読んでいますので内容的には自分にとって新しくはありませんが、アメリカ史を学びつつ改めて読むと色々と繋がり腹落ちします。
    アメリカの独立から南北戦争期の歴史って、まさにヨーロッパ(スペイン、イギリス、フランス)の「世界システム」の「中に組み込まれた」人たちとそれに対する「抵抗派」の確執であり、さらにヨーロッパの国同士の覇権争いがそこに絡んで来て、またそれを利用する力学あり、牽制する力学あり、の歴史なんですよね…
    「アメリカ史を知ると世界システムの歴史が見える」と感じる次第です。
    あ、話が若干逸れましたが、間違いなく一読の価値ある名著ですね。

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    2021年02月11日
  • 8050問題の深層 「限界家族」をどう救うか

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    良くも悪くも、どう救うか、の本。あまり良い状態を目指さない、が印象的だった。確かにそう。受援力という言い方をするのね。

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    2020年07月27日
  • イギリス 繁栄のあとさき

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    イギリス 繁栄のあとさき

    川北稔さんの、記念碑的名著。川北さんと言えば、近代世界システム論という新たな歴史観を提唱し、南北問題の解決の困難さを論じたエマニュエル・ウォーラ―ステインの日本語訳を行い、自らも『世界システム論講義』などの本を出す、世界システム論の第一人者だ。
    その川北さんが、史上2番目のヘゲモニー(覇権)国家となったイギリスが、覇権を握るところから、現代に至るまでを様々な観点から論じると共に、そこから得られる教訓を、どう日本に活かすかということが書いた本が、本書である。

    いささか、専門用語が多くなってしまったが、ここで最も重要な概念である近代世界システム論を簡単に解説すると、歴史とは「各国が平行に、そして独立して」に進んでいくのではなく「水平的に、関係性の中で」進んでいくというころを提唱した一つの歴史観である。
    前者は、ヘーゲルの弁証法をルートとするマルクスの発展史観である。歴史が、いくえの段階を通じて発展していく、階段の様なイメージ。例えば、産業革命を起こした後に、金融サービス業を確立した国は、農業を基軸とする産業構造を持つ国に対して“先進”した国であり、農業を基軸とする産業構造を持つ国は“発展途上”であるとする考え方だ。
    我々が無意識に使っている先進国・発展途上国という言葉は、実のところ、この歴史は単線的に進むという価値判断を孕んだ言葉なのだ。
    では、歴史が「水平的に、関係性の中で」進んでいくということはどういうことか。16世紀以降、大航海時代を皮切りに、カリブ海やラテンアメリカはヨーロッパの経済圏に組み込まれていく。西ヨーロッパを中心に商業化・工業化が進んでいく中で、エルベ川以東の東ヨーロッパやラテンアメリカは西ヨーロッパに食料や原材料を供給する第一次産業にシフトしていく。一つの経済圏の中で、西ヨーロッパの産業か高次化していくことにより、それ以外の国の産業が低次化していくという国際的な分業体制が形成されていくという仕組み、近代世界システム論と呼ぶのだ。
    実際、発展史観では、この時期に見られたエルベ川以東の低開発化や農奴制の復活を説明できない。教科書的には再版農奴制と書いているところもあるが、歴史は発展していくという理屈では、農奴制の復活を説明できないのである。
    私は中高大とバレーボール部に属していたが、バレーボールにおける花形は点取り屋のスパイカーである。しかし、当たり前だが、チーム全員がスパイカーではチームは勝てない。
    レシーブをするリベロがいて、トスを上げるセッターがいて、初めてスパイカーは点を取ることが出来る。ここにも、チームの総力を向上させるための分業化のメカニズムが働く。レシーブをするリベロは、点を取るスパイカーに対して“遅れて”いたり“下手”なわけではない。スパイカーになった選手が、スパイカーになるその過程で、レシーブに専門化したのである。Vリーグでも、人気やファンが多いのはスパイカーであるが、ここでいう人気やファンを「富」に置き換えると、世界システム論は理解しやすい。所謂「先進国」は自らの役回りによって、「富」を集積し、「後進国」は搾取されている。
    近代世界システム論の示唆は、南北問題の解決方法の難しさにも及ぶ。南北問題を解決しようと思った時、今の後進国が産業の高次化を行おうとしても難しいのである。そもそも、後進国が産業の高次化をするということは、現在の先進国の産業構造を一部低い次元に落とすことになる。イギリスは徹底した農業のアウトソース化により、食料自給率は低い水準にしているが、アウトソースしている後進国が農作業をしなくなると、イギリスは今まで工業に割いていたリソースを割いて、自ら農業を行うか、別の国を見つけて、その国の産業の低次化を進めることになる。


    随分と世界システム論について話すぎてしまったが、本書で興味深いところは2点ある。イギリスの「ジェントルマン資本主義」と「文化のヘゲモニー」である。

    イギリスの産業革命において「ジェントルマン」の担う役割が大きいということである。まず、ジェントルマンは経済合理主義者ではなく、自らの社会的威信を価値基準の上位に置く人々である。一国の産業が発展する上で、必要になるのが、大量の公共財である。この公共財をいかにして早期に形成していくかということが、国の産業の高次化のボトルネックともいえる。往々にして、公共財の担い手は国家である。しかし、公共財を国家が担うということはつまり財源の必要性から重税が課される。重税が課されると消費行動は落ち込み、結果として公共財は出来ただけになってしまう。一方、民間でこれを担おうとする場合にもゴリゴリの経済合理主義者は短期的に採算の合わない公共事業に手を出さない。そこで、社会的威信を価値基準の上位におく、ジェントルマンの出番なのである。ジェントルマンは持ち前の地代や証券により得た巨万の富を、自らの社会的威信の向上の為に、公共財に使ったのである。まさに「ノブレス・オブリージュ」である。ジェントルマンによる公共財への投資は、イギリスが小さな政府で発展できた理由なのである。

    余談だが、公共事業を国家としては、ほぼ0円で形成した国がある。旧ソビエト連邦だ。ソ連は、政敵や捕虜を大量にシベリアに送り込み、無賃&無限労働させることで公共財を形成したある意味“最強”の経済合理性を持った国である。そのソ連という国が持ち前の最強の経済合理性をもってヘゲモニーを取ったかということは、もはやここに書く必要はないだろう。

    本書は、後半でイギリスはそもそも衰退しているのか?という命題について考える。川北さんの答えは、イギリスは衰退をしているものの、その衰退の期間が異常に長く、その「粘り強さ」に学ぶべきものがあるというものだ。日本はもうすでに下り坂を下っている。人口減少社会の中で、いかに発展するかという議論はあまり適切ではないとすると、いかに衰退期間を長く、「粘り強く」その角度を緩やかにとどめるかという議論が必要になる。では、イギリスはいかにして「粘り強く」衰退を耐えているのかと言えば、それは世界に発信できる文化を挙げることができる。文化の最たるものは英語である、同じ英語を使う超大国があることは幸運でこそあるが、イギリスに生まれる限り、世界中に「英語教師」という雇用があることは世界を見渡しても類を見ないアドバンテージである。音楽であれ、文学であれ、生活文化であれ、世界中に人々は今なおイギリスに魅了される。ハリー・ポッターを知らない人や、ビートルズを知らない人は、なかなかお目にかかれない。ハリー・ポッターを知ろうと思ったとき、ビートルズの歌詞を理解したいと思った時、世界中の人々の英語への欲望は駆動する。その欲望は、イギリス人の雇用を生み出すのである。この世界に発信できる文化という圧倒的なアドバンテージがイギリスの粘り強さの根源である。日本が下り坂を「転げ落ちていく」のか「ゆっくりと下っていく」のかの鍵を握るのは、まさしく文化なのである。そう考えた時に、現在の日本の大学教育における理系重視と文系軽視は嘆かわしいことである。無論、理系と文系という分け方が適切ではないかもしれないが、日本はもっと独自のカルチャーとその発信方法を明確に目標に定める必要がある。

    そして、最後に川北さんは東アジアの発展について語る。東アジアの発展を語る上で、近代世界システム論というフレームワークそのもの自体を懐疑する。実際、資本主義の指標を中心におく世界システム論は、環境破壊などの外部不経済を起こしてきたことは否定できない。アジアの発展といった時に、そういった環境へのインパクトや、ブラック労働に対する人権意識などの、無形(短期的には)の指標を組み込んだ新たな物差しは必要になると語っている。
    川北さん、歴史学とは未来学であると語る。まさしく、未来を語る為には歴史への視線が必要なのである。とても読みごたえのあり、面白い本であった。

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    2020年04月18日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    世界の歴史を特定の国に注視するのではなく、世界を有機的に結びつけられたシステムとして考える本書。
    ある地域で発生した事象をきっかけにそれが他の地域に影響を及ぼしていく様を追いかける。

    まず、はじめの問いかけがなぜこの世界には現在に至るまで地域間の格差が生じているのか?という点から始まり、世界の中心がヨーロッパになったのはなぜなのかを深掘りしていく。

    以下、個人的あらまし。

    ①15世紀くらいまではどこも似たり寄ったりの封建的国家であり、小領主が農民を武力で支配していた。

    ②技術の発展(火薬や武器)に伴い、農民の不満を小領主では抑えられなくなり、「国家」に頼るようになる。こうして国家が成立し始める。

    ③度重なる戦争や黒死病により人口激減したヨーロッパでは従来の封建国家では成り立たなくなってくる。よって新たな収入源を求めて海外へ飛び出す
    ちなみにこのときの中国は欧州と同等か進んでいたが、単一国家であったために、他国との競争にさらされず、武力の増強、外への進出が遅れた。

    ④まずいち早く動いたのはイスラムから領土を回復し、海に面していたスペイン・ポルトガルであった。これらの国々はラテンアメリカを蹂躙し、アジアに進出した。
    また、進出先で生産品を作るためにアフリカから奴隷を「輸入」した。

    ⑤南欧国家に続いて、イギリス、フランス、オランダも海外貿易に参入したが、やがて世界で新たに開拓できる地域が無くなり、発展が進みにくくなる。

    ⑥その中で頭角を表してきたのが、漁業と林業といった「生産力」に秀でたオランダであった。オランダはその優れた生産競争力を発揮し、覇権を握るようになる

    ⑦しかし覇権国家では賃金上昇により競争力は低下する。その隙を突いたのがイギリスであり、海外貿易により収益を伸ばしていく。
    特に紅茶と砂糖の生産は著しく、これらの輸入を機にコーヒーハウスが作られ、情報集積の中心となっていく。

    ⑧やがてイギリスの競争力が上がり都市化が進むに連れて、「産業革命」が、起こりイギリスの地位が安定的に覇権国家となる。

    ⑨しかし貿易の保護主義的側面に

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    2019年01月26日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    各国を個別事象的に見て、ある国を「先進国」、またある国を「後進国」とラベリングするのは狭小な「単線的発展段階論」であると断じ、近代以降の世界は一つの巨大な生き物、有機体の展開過程の如く捉えるべきだとする論が主旋律。

    封建制の崩壊と国民国家の成立に端を発し、その後スペインとポルトガルによってもたらされた大航海時代が近代世界システムの成立を告げ、やがてオランダ、イギリス、アメリカと、ヘゲモニー国家の覇権を巡って各国が「中核」の座を争った陰には、「周辺」として極度に低開発化された国々が。それはさながら「光」と「影」であり、この近代世界に影を落としてきたのは紛れもなく中核国そのものである。

    この「世界システム」というスキームは、国際社会を見る視座を確実に一段高めてくれるものであり、また未来予測にも大変有益と感じる。
    よく歴史は線で考えろというけれど、その一歩先、「複線」で考えるイメージかな。非常に勉強になったし、読み物としてシンプルに面白かったです。

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    2018年01月15日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    著者は「砂糖の世界史」や「イギリス近代史講義」といった名著を書いた川北稔氏。本書も平明で筋が通っており、がってんボタン100回くらい押した。

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    2016年04月08日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    超絶名著。近代ヨーロッパ史の流れがまるわかりできる。様々な断片的知識が繋がっていく爽快感はたまらない。

    2017年1月6日追記

    世界システム論について今一度考えてみると、中核―周縁関係の中で、垂直的関係があることが、南北問題が解決しない一つの理由として挙げられている。中核国家が産業の高度化を成し遂げたために、周縁国家は産業の低次化を強いられた。東方植民に見られるエルベ川以東の再版農奴制やインド植民地のモノカルチャー化はイギリスを筆頭とする西欧の産業化との関連性の中で考えられる。さて、そこで重要に思えるのは、低開発化された周縁では労働力のコストを下げるために、非/低賃金労働を強いられるということだ。いわゆる自給的労働は賃金の発生しにくい非/低賃金労働としてカウントされ、生産的労働に財が集まると考えられている。さて、WW2以前の世界では植民地における強制労働という形で、このような非/低賃金労働を賄ってきたが、植民地解放以降の世界では国内に低賃金労働者たる非正規雇用者を確保するために、雇用の非正規化が進む。サービス残業やブラック企業はシステムの存続に不可欠な非/低賃金労働の創出という歴史的側面で説明できる。そして、これが本題であるのだが、2016年12月に一世を風靡したドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」に隠されたメッセージは、世界システムの存続に必要な搾取の構造を、夫婦という解り易い関係に置き換えて世間に訴えていたのではないかと思う。最終回に近づくにつれて、主人公の平匡は解雇による年収の激減から、元々は賃金労働者として対価を払っていた妻の労働を結婚によって非賃金労働化することによってシステムの存続をしようと試みた。このシーンに象徴される含意は夫という中心がシステム維持の為に周縁を非賃金労働化するという世界システム論の中にある非対称な分業体制に由来するのではないか。
    追記おわり。

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    2020年12月26日
  • 世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界

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    ウォーラーステインに基づいた世界システム論の概説書。原本は放送大学の教科書なので、分量的制限からミニマムエッセンス的な記述となっており、取っつきやすい。大航海時代以後のヨーロッパ中心の近代世界を対象に、システム論的な見方で世界史を概括する。たとえば英国の産業革命ですら世界システムの影響から逃れ得なかったなど、示唆に富んでいる。近代世界の移民問題について知りたい場合にも重要な観点である。15世紀以前のヨーロッパ世界についてはアブールゴド「ヨーロッパ覇権以前」をひもといてみたい。

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    2016年02月13日
  • イギリス 繁栄のあとさき

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    イギリス近代史の大家である川北稔氏の著書。
    著者の関心は近年日本の経済的衰退が問題となっているが、これを歴史的に見た場合にはどのように考えられるのか、という点である。
    そこで、かつて大英帝国として世界中にコモンウェルスを築き繁栄したヘゲモニー国家イギリスの衰退期を紹介した。

    従来イギリスの衰退は産業革命以後の工業の衰退が指標となって論じられてきたが、川北氏は近年イギリス史で盛んとなっている「ジェントルマン資本主義論」を以て批判する。
    というのも、ウィリアム・ペティの法則「第一次産業→第二次産業→第三次産業」も踏まえて産業革命と呼ばれる程の大きな変革は存在しなかったとしている。

    また、これまた近年歴史学では盛んに活用されている「近代世界システム論」による国際社会の分析も行っている。いわゆる搾取する側とされる側という役割分担によって世界の秩序は構成されている。
    これは現代の国際社会における経済発展においても、搾取する側・される側の役割は存在しているらしい。

    この「近代世界システム論」において、ヘゲモニー国家として存在したオランダ、イギリス、アメリカはどれもが衰退への途を経験している。
    その中で、イギリスの衰退は「粘り腰」のあるものであり、なぜ「緩やか」な衰退が可能なのか。ここに日本が今後衰退を「緩やか」にしていく秘訣が隠されているとした。
    それは、海外に輸出できるような「文化遺産」(生活文化)があるかどうかである。日本の確固たる文化を、世界に発信できる時、日本は衰退した後も影響を保ち続けれるのである。

    以上が簡単な要約であるが、著者が指摘したように日本にきちんとした生活文化を発信できるだけの文化的感受性があるのか否か。私は、まず国内のちょっとした文化を見つめ味わい、各々の文化的感受性を高めていかなければ、上辺だけのグローバリズムに阿る薄っぺらい文化となってしまうだろうと思う。

    イギリス史からの日本人へ警鐘を鳴らした一冊と受けりたい。

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    2015年07月20日
  • イギリス 繁栄のあとさき

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    [模範としても、反面教師としても]日本においてはときに近代化のモデルとして、ときに「英国病」という言葉が示すように衰亡する国の例として捉えられてきたイギリス。その認識の変遷を確認しながら、イギリスから改めて学ぶべきことは何かについて思いを寄せた歴史エッセイです。著者は、大阪大学名誉教授などを歴任され、I・ウォーラーステインの『近代世界システム』の邦訳も手がけられた川北稔。


    執筆されたのが日本においてバブルが崩壊した直後ということもあり、「"衰退"と思われる状況にどう対処するか」という点に力点が置かれています。ただ、特効薬的な回答に走るのではなく、歴史研究者として長期的な、なんなら少し余裕を感じさせる考え方をしている点に、本書が長く読まれる理由の1つがあるのではないかと思います。


    また、「近代世界システム論」と呼ばれる考え方を基に、当時の産業革命や近代に関する見方を紹介してくれているところも魅力の1つ。21世紀初頭の紆余曲折を経てそれらがどのように捉え直されているかも気になるところですが、20世紀末までの日本やヨーロッパにおけるイギリスへの視点を確認する際に有益な1冊になってくれるはずです。

    〜こうした諸国のいわゆる「衰退」過程にあって、イギリスの特性と言えるものは何か。その最大の特質は、むしろその「衰退」過程が異常に長期に及んでいること、つまり、その「粘り強さ」にこそあるのではないか。〜

    やっぱり注目しちゃいますよね☆5つ

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    2014年09月19日
  • イギリス近代史講義

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    世界システム論+川北さん、久々に目にしたコンビでした。
    で、つい手に取ってみました、、十数年振りですかね。

    斜陽といわれて久しい大英帝国、その斜陽の推移を追うことで、かって経済大国であった我が国”日本”への、
    今後の立ち位置にも敷衍できる点を見出せるのではないかとの、一冊になります。

    取り上げている題材もわかりやすく、本質的には現在の日本の状況にも合致する点を多く感じました。

    ん、”進歩史観”をもう一つ深めた概念が”成長パラノイア”になるのでしょうか。
    ”成長しなくてはいけない”との強迫観念に縛られている、とは言い得て妙ですね。

    ただその強迫観念、まったく的外れかというとそうではないとも思います。
    ”成長”ではなく”変化”とすれば、、との個人的解釈になりますが。

    ちなみに、私自身は”進歩史観”自体は懐疑的なスタンスです、あまりにも狭窄的で。

    しかし、自分が学生の頃、歴史学はドメスティックなままではアレだよね、って議論も盛んでしたが、、

     - 歴史学などというのは、もう終わっている分野でしょう

    ってくだりを見ると、学会のメインストリームは変わってないのかなぁ、、と感じます。

    「歴史学は諸学の基礎だが、それ単体では何も成し得ない」、
    そう感じた自分は、白亜の塔ではなく現場に出る事を選びました。

    ちなみに大学の恩師は経済学を織り込んだ視座でアプローチをされています。

    自分が基礎学問として歴史学を選んだことは”社会的有用性”につなげることができるのか、
    久々に自分の起点と基点を振り返ることができました、さて、どうしますかね。

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    2024年08月02日
  • イギリス近代史講義

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    I・ウォーラーステインの世界システム論をベースとしてイギリスの近代産業革命の成立を説明する。講義を元にして書籍化されているので授業を受けているような感覚で読める。とくにイギリスのジェントルマンの成立のくだりは興味深かった。

    ジェントルマンとは、もともとイギリス各地を治めていたカントリージェントルマン(貴族)たちを指していていたのたが、産業革命が起きてロンドンにシティ(都市)が成立するとともに、地方の貴族と都市に住む新興ブルジョワジー(資本家)や特権的職業階級(弁護士・医師など)の交流の場として社交界も誕生した。そしてこれら社交界に出入りするような人々を一般的にジェントルマンと呼ぶようになったのだそうだ。

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    2011年08月16日
  • イギリス近代史講義

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    なかなか堅苦しい題名の本ですが、なかなか面白い内容でした。帯にもあるように「大英帝国の興亡から現代日本を考える」と言うことで、日本はイギリスの追体験してきたようなところがあるのではないかという発想は面白いものがあります。しかし、そこから何を学ぶかと言うとこれがなかなか難しい。

    イギリスがどうして「世界で最初の工業国家」となったのか、そしてその後20世紀後半に到来した「イギリスの衰退」とを同時に考察することの意味、さらには、そもそも「成長」とか「衰退」と言う意味は何を持って言うのかってことまで考えると面白くなってきます。

    日本も高度成長時代から、失われた10年(もっと失われている感じですが(笑))このこと自体を考えると、高度成長時代ではない今の日本での生活がすごく不幸かと言うと、そうでもない感じです。それでも今の日本は衰退しているか考えると面白いものです。

    高度成長時代に比べて成長率と言う点では確かに劣っており、その成長率の低さが将来に対する不安になっているのでしょう。国際競争力と言う点では、そもそも高度成長時代には経済大国2位なんて地位にはなかったはずです。今は3位になったかもしれないけど、少なくとも今の時代の方が国際的な地位も上がっているはずなのに、成長率の低さが大きな影を落とします。

    このあたりに「「成長パラノイア」があるのではないかと言うことです。「パラノイア」って意味が分からなかったですが、「成長偏執病」とでも言いましょうか。要は成長続けることが至上命令のような(企業にもありますよね(^^;))

    日本とイギリスとは必ずしも同じ土俵では比較が出来ない(生活史と言う面でスポットをあてると価値観も違うでしょうし)とは思いますが、いずれにしても歴史をこうした視点で切り込んで考えると、いろいろあるもんだなあって、改めて大学での歴史の勉強も悪くないかもって思ったりします(^^)。

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    2011年05月23日
  • 生活の世界歴史〈10〉産業革命と民衆

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    このシリーズも自分の専門だけあげますが、他のも面白そうでシリーズ買いしたのかな?中国史のとかも面白かったです。

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    2009年10月04日
  • 砂糖の世界史

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    学生の頃、世界史の授業は範囲が膨大でただ覚えるだけになっていたけど、本書は砂糖にフォーカスしているため当時の世界の繋がりがありありとみえ世界の動きがわかりやすかった。苦手な世界史でも身近なモノ1つの歴史を紐解くだけでこんなにも楽しく学ぶことができるとは驚き。
    砂糖と関わりが深いコーヒーや茶、チョコレートなどにも触れながら書かれており、現在の各国の生活様式が築かれた由縁がだんだん理解できるようになってくるのは面白かった。
    年代が行ったり来たりでついていけなかったが、それ以外はわかりやすく面白い本だと感じる。

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    2026年09月13日
  • 砂糖の世界史

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    友人の薦めで手に取りました。

    ジュニア新書と言っても、内容はとてもしっかりしたもので、学生の頃からこういうものを読んでいたら世界史、歴史の理解は出来事単体ではなく繋がりを持って理解できるのだろうなと思った。

    p208のあとがき
    「歴史を学ぶということは、年代や事件や人名をたくさん覚え込むことではありません。
    いま私たちの生きている世界が、どのようにしてこんにちのような姿になってきたのかを、身近なところから考えてみることなのです。
    みなさんがこの本を読んで、一見したところ、おたがいに何の関係もないような世界各地の人びとの生活が、相互に深くかかわりあっていることを理解してくだされば、著者としてはとてもうれしく思います。」
    という文の通り、テスト・受験勉強は単語を覚えることにフォーカスされがち。採点が楽だからですかね。

    単純な記憶が得意な自分はそれで逆に助かってましたが…。
    今とこれからの日々の選択とあり方のために過去を参考にするならば、単語で覚えるのではなく、繋がりを持って理解しないとですよね。
    さらに、ただ繋がりを理解するだけでなく、と、いうことは……の部分まで想像力とマクロの視点を持って導き出したり理解したりしなくてはいけない。

    この本の中で、〇〇と△△の出来事は実は繋がっていて、ということは□□という感じの流れがあると、〇〇△△までは大丈夫なんですが、□□の部分が理解できてなくて、世界の大きな仕組みというか、圧倒的に世界史の知識も足りないし、繋がりで歴史を見てきていないから気づきの能力も拙いんだろうなと反省。

    あと、イギリスの砂糖価格値下げのため、プランテーションの奴隷制度をマンチェスター派が否定したけど、外国の奴隷制度にはノータッチだった。なぜなら人権派だから反対したわけでなくイギリス国内だけの砂糖の値段を下げることが目的だったから というのがびっくりしたのと、現代でも政治家の訴えや、政治全体の動き、法律の変更などの裏側の意図を理解しないとな…と思わされました。

    奴隷制度と聞くと、人権派が頭に浮かびますが、ぱっと見 反対することの聞こえが良さそうな、そういうイメージも利用したんだろうな、と。
    砂糖の価格を下げた後のことは知ったこっちゃない政治家もいただろうし、海外のことは知らずにイギリスのプランテーションの奴隷制度廃止だけで、人権的!と感動した庶民もいただろうな。
    いろんな側面から物事を見ないと騙されたり、中身のないものを信じてしまうのかも…。

    p54の奴隷の積み込みのイラストが衝撃でした…。

    p183の日本のコメが過保護状態というのはちょっとハテナでした。
    海外のお米と日本の米では種類が違うし、味わいも違うのでそりゃ日本のお米がいいし、日本の農家を保護するのは良くない…か?と思っちゃいました。
    単純な砂糖の価格の話だけでなく、産地によって砂糖の味は違ってたのかな?品質とかまで気にしなくて良かったのかな…?
    ビジネス至上主義でお金に取りつかれちゃったのかな…?

    沖縄でさとうきびの収穫体験をしたことがあって、とれたてを齧って吸ったのですがとても美味しかった思い出。

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    2026年08月22日
  • 砂糖の世界史

    Posted by ブクログ

    かなり読みやすく、面白かった

    世界史の知識がほとんどないので、近代のイギリスの社会の様子が頭の中で少しずつ具体的になっていく感じがしてよかった。

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    2026年07月11日