川北稔のレビュー一覧
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イギリス 繁栄のあとさき
川北稔さんの、記念碑的名著。川北さんと言えば、近代世界システム論という新たな歴史観を提唱し、南北問題の解決の困難さを論じたエマニュエル・ウォーラ―ステインの日本語訳を行い、自らも『世界システム論講義』などの本を出す、世界システム論の第一人者だ。
その川北さんが、史上2番目のヘゲモニー(覇権)国家となったイギリスが、覇権を握るところから、現代に至るまでを様々な観点から論じると共に、そこから得られる教訓を、どう日本に活かすかということが書いた本が、本書である。
いささか、専門用語が多くなってしまったが、ここで最も重要な概念である近代世界システム論を簡単に解説すると、歴 -
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いまやありふれた、なんのことはない食べものであり調味料である砂糖。
貴重品だった時代までさかのぼり、
どのように普及していったかを、
イギリスを中心にその歴史をなぞっていきます。
もともとはイスラム世界がその製造方法を知っていたのだそうです。
製糖方法はヨーロッパへは門外不出の技術だったのですが、
ヨーロッパを凌駕していたイスラム世界の勢いが弱まってくると、
占領されていたヨーロッパの土地をヨーロッパ人たちは奪い返し始め、
そのときに製糖方法も奪取したのだそうです。
その当時は、地中海の島々やスペインなどのヨーロッパ南部で砂糖きびが栽培され、
それらが砂糖に変えられていた。
重労働でしたが、 -
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ネタバレ世界の歴史を特定の国に注視するのではなく、世界を有機的に結びつけられたシステムとして考える本書。
ある地域で発生した事象をきっかけにそれが他の地域に影響を及ぼしていく様を追いかける。
まず、はじめの問いかけがなぜこの世界には現在に至るまで地域間の格差が生じているのか?という点から始まり、世界の中心がヨーロッパになったのはなぜなのかを深掘りしていく。
以下、個人的あらまし。
①15世紀くらいまではどこも似たり寄ったりの封建的国家であり、小領主が農民を武力で支配していた。
②技術の発展(火薬や武器)に伴い、農民の不満を小領主では抑えられなくなり、「国家」に頼るようになる。こうして国家が成立 -
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各国を個別事象的に見て、ある国を「先進国」、またある国を「後進国」とラベリングするのは狭小な「単線的発展段階論」であると断じ、近代以降の世界は一つの巨大な生き物、有機体の展開過程の如く捉えるべきだとする論が主旋律。
封建制の崩壊と国民国家の成立に端を発し、その後スペインとポルトガルによってもたらされた大航海時代が近代世界システムの成立を告げ、やがてオランダ、イギリス、アメリカと、ヘゲモニー国家の覇権を巡って各国が「中核」の座を争った陰には、「周辺」として極度に低開発化された国々が。それはさながら「光」と「影」であり、この近代世界に影を落としてきたのは紛れもなく中核国そのものである。
この「 -
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超絶名著。近代ヨーロッパ史の流れがまるわかりできる。様々な断片的知識が繋がっていく爽快感はたまらない。
2017年1月6日追記
世界システム論について今一度考えてみると、中核―周縁関係の中で、垂直的関係があることが、南北問題が解決しない一つの理由として挙げられている。中核国家が産業の高度化を成し遂げたために、周縁国家は産業の低次化を強いられた。東方植民に見られるエルベ川以東の再版農奴制やインド植民地のモノカルチャー化はイギリスを筆頭とする西欧の産業化との関連性の中で考えられる。さて、そこで重要に思えるのは、低開発化された周縁では労働力のコストを下げるために、非/低賃金労働を強いられるという -
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イギリス近代史の大家である川北稔氏の著書。
著者の関心は近年日本の経済的衰退が問題となっているが、これを歴史的に見た場合にはどのように考えられるのか、という点である。
そこで、かつて大英帝国として世界中にコモンウェルスを築き繁栄したヘゲモニー国家イギリスの衰退期を紹介した。
従来イギリスの衰退は産業革命以後の工業の衰退が指標となって論じられてきたが、川北氏は近年イギリス史で盛んとなっている「ジェントルマン資本主義論」を以て批判する。
というのも、ウィリアム・ペティの法則「第一次産業→第二次産業→第三次産業」も踏まえて産業革命と呼ばれる程の大きな変革は存在しなかったとしている。
また、これま -
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[模範としても、反面教師としても]日本においてはときに近代化のモデルとして、ときに「英国病」という言葉が示すように衰亡する国の例として捉えられてきたイギリス。その認識の変遷を確認しながら、イギリスから改めて学ぶべきことは何かについて思いを寄せた歴史エッセイです。著者は、大阪大学名誉教授などを歴任され、I・ウォーラーステインの『近代世界システム』の邦訳も手がけられた川北稔。
執筆されたのが日本においてバブルが崩壊した直後ということもあり、「"衰退"と思われる状況にどう対処するか」という点に力点が置かれています。ただ、特効薬的な回答に走るのではなく、歴史研究者として長期的な -
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世界システム論+川北さん、久々に目にしたコンビでした。
で、つい手に取ってみました、、十数年振りですかね。
斜陽といわれて久しい大英帝国、その斜陽の推移を追うことで、かって経済大国であった我が国”日本”への、
今後の立ち位置にも敷衍できる点を見出せるのではないかとの、一冊になります。
取り上げている題材もわかりやすく、本質的には現在の日本の状況にも合致する点を多く感じました。
ん、”進歩史観”をもう一つ深めた概念が”成長パラノイア”になるのでしょうか。
”成長しなくてはいけない”との強迫観念に縛られている、とは言い得て妙ですね。
ただその強迫観念、まったく的外れかというとそうではないと -
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I・ウォーラーステインの世界システム論をベースとしてイギリスの近代産業革命の成立を説明する。講義を元にして書籍化されているので授業を受けているような感覚で読める。とくにイギリスのジェントルマンの成立のくだりは興味深かった。
ジェントルマンとは、もともとイギリス各地を治めていたカントリージェントルマン(貴族)たちを指していていたのたが、産業革命が起きてロンドンにシティ(都市)が成立するとともに、地方の貴族と都市に住む新興ブルジョワジー(資本家)や特権的職業階級(弁護士・医師など)の交流の場として社交界も誕生した。そしてこれら社交界に出入りするような人々を一般的にジェントルマンと呼ぶようになった -
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なかなか堅苦しい題名の本ですが、なかなか面白い内容でした。帯にもあるように「大英帝国の興亡から現代日本を考える」と言うことで、日本はイギリスの追体験してきたようなところがあるのではないかという発想は面白いものがあります。しかし、そこから何を学ぶかと言うとこれがなかなか難しい。
イギリスがどうして「世界で最初の工業国家」となったのか、そしてその後20世紀後半に到来した「イギリスの衰退」とを同時に考察することの意味、さらには、そもそも「成長」とか「衰退」と言う意味は何を持って言うのかってことまで考えると面白くなってきます。
日本も高度成長時代から、失われた10年(もっと失われている感じですが(