ミネット・ウォルターズのレビュー一覧

  • カメレオンの影

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    ミネットウォルターズらしい切り口で描いた力作。
    イラクで負傷した若き中尉をとりまく人々の心理が明暗交じえ丁寧に描かれている。
    好みの分かれる部分はあるかもしれないが、登場人物一人ひとりの生き様が鼓動とともに伝わってくるような、地に足のついた圧倒的な表現力を感じた。

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    2020年11月07日
  • カメレオンの影

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    イラクで爆弾により重傷を負い、片目を失ったアクランド中尉。除隊したあとも孤独を好み、人に触れられると暴力的になる彼は、近隣での連続殺人の嫌疑をかけられるが‥
    アクランドの不可解な態度や謎めいた行動の理由はなんなのか。医師や警察の視点から事件の推移を描いて、大変引き込まれた。
    この著者の描く女性キャラにはいつも敬服しており、今回は男性が主人公かと思ったが、途中から登場したジャクソンのキャラがまた素晴らしかった。

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    2020年11月03日
  • カメレオンの影

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    ネタバレ

    さすが。
    今年読んだ翻訳ミステリーの暫定1位。

    カリン・スローター好きな人が読むと、登場人物が何人か重なるかも。

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    2020年06月10日
  • カメレオンの影

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    イラクに派遣され爆弾で頭と顔に重傷を負ったアクランド。人に触れられるのを恐れ、暴力作的にもなる。アクランドの近くで起きる殺人、周りにいる人たちとの関連。事件の中にある差別と偏見。犯人は誰かという謎と丁寧に描かれつつも核心は描かれていないアクランドの心象。その具合がとてもいい。事件の身近さと複雑さがあって社会問題も描かれどんどん奥行きができていくのが本当に面白い。

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    2020年05月17日
  • カメレオンの影

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     実に5年ぶりのお目見えとなる作品。値段の割に邦訳が遅いのが気になる。この作家を思い出すのに、以下の前作『悪魔の羽』についての我がレビューを少し振り返りたい。

    (以下前作レビュー)
     中編集『養鶏場の殺人・火口箱』を読んでから、少しこの作家への見方がぼくの方で変わった。≪新ミステリの女王≫と誰が呼んでいるのか知らないが、この女流作家はミステリの女王という王道をゆく作家ではなく、むしろ多彩な変化球で打者ならぬ読者を幻惑してくるタイプの語り部であるように思う。

     事件そのものは『遮断地区』でも特に強く感じられるのだが、時代性と社会性を背景にした骨太のものながら、庶民的な個の感情をベースに人間ド

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    2020年04月24日
  • カメレオンの影

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    やや出来事の連鎖に無理筋なところはあるが、誰の、どの発言が本当なのか、最後まで興味が持続する展開の妙、一人一人の人物像が浮き彫りになる文章力など、ウォルターズらしい一作です。

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    2020年04月20日
  • 悪魔の羽根

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    ウォルターズ初体験。

    連続女性強姦殺人事件を追う女性記者が3日間拉致監禁された後、解放される。監禁中のことを決して話そうとせず、マスコミから身を隠す彼女のもとに、再度犯人が忍び寄り…という話。

    主人公が話そうとしない事実は想像の範囲内だが、恐怖心の描写が巧みで、文字通り目が離せない。この本筋の話の第18章での転換も見事だが、サブストーリーにしか思っていなかった人物に係る第21章以降の展開には本当に驚いた。

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    2019年12月30日
  • 病める狐 下

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    ネタバレ

    読み始めは何もかもがてんでバラバラな感じで、正直これはだめかもと、あきらめかけた。でもやはりミネット・ウォルターズでした。だんだんと組み合わさっていき理解が深まってくると今度はグイグイひきこまれる。後半はノンストップな感じで読み切りました。
    この方の描く人物が魅力的ですよね。なんと言ってもナンシーですが、最初あんなに印象悪かったマークにしても然り。やな爺さんかと思ってたジェームズにしても然り。そして最後までわからない意外な真相。
    充実した読者タイムでした。

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    2018年08月01日
  • 悪魔の羽根

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    ネタバレ

    やっぱりミネット・ウォルターズは面白い。どんなシチュエーションであっても、結局グイグイひきこまれる。そしてひとつだけではないんですよね。謎解きが。
    さらに女として、頑張らなくちゃという気持ちにさせられる。
    「幸せの秘訣は自由である…自由の秘訣は勇気である」
    どこまでで似るかわからないけど、私はすごく勇気づけられた作品でした。

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    2018年06月02日
  • 病める狐 下

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    ネタバレ

    (上巻より続く)

    とはいえ、
    祖母の死や農園を狙う謎も面白かったが、
    なにより、事件が解決したその後が良かった。
    トラヴェラーのベラ一家が農園に住んで再生させ、
    トラヴェラーの子どもが養子にもらわれ、
    祖父と孫娘も仲良くなる。

    やはりハッピーエンドが重要。

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    2018年05月05日
  • 病める狐 上

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    ネタバレ

    「氷の家」と同じ作者だったので。

    養女に出された孫娘と祖父、死んだ祖母。
    トラヴェラーの人々と「フォックス」仕切るその計画。
    農園をめぐって高まる緊張。

    面白かったけど、もっと主人公の孫娘に活躍してほしかったのに、
    予想外に祖父の弁護士が活躍していた。
    それと、目的は農園の乗っ取りかと思っていたのに、盗みだったとは。
    フォックスの連続殺人の扱いも軽くてがっかり。

    (下巻へ続く)

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    2018年05月05日
  • 破壊者

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    「氷の家」と同じ作者だったので。

    前作と違って読みやすかった。
    ミステリーとラブストーリーが織り込まれていたからか。
    全体的に明るい雰囲気だからか、
    舞台が海だからか。

    いかにも怪しげな二人の容疑者が最初から現れて、
    殺されたのが一人だからか。

    もと金持ちで結婚詐欺にあった母娘が、
    生活を立て直しはじめるところが良かった。

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    2018年03月16日
  • 鉄の枷

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    「氷の家」と同じ作者だったので。

    それほど複雑な人間関係でもなかったのに、
    途中で混乱してしまった。

    シェイクスピアの台詞に精通している訳ではないが、
    少なくともクーパー刑事よりは作品を知っていたので
    そのせいではないと思う。
    作品の要とも言うべき鉄の枷、
    「スコウルズ・ブライドル」の実感がないせかもしれない。

    画家なのに熱く飛び出した主人公の夫ジャックも良かったが、
    人を見る目に自信を無くかけたクーパー刑事が良かったかな。

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    2018年02月07日
  • 養鶏場の殺人/火口箱

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    ネタバレ

    人々を読書に誘うために書かれた二編。
    目的が何とも粋。

    その目的よろしく、さくさく、ぐいぐい物語は進んでいく。
    本格ミステリ的な謎を究明するような物語ではなく、人間の心理がもたらす事件性をサスペンスフルに描いたウォルターズらしい作品。

    個人的には『火口箱』の方が好き。偏見、思い込みをうまく仕立てた作品と思う。そういう終着点にするとは思わなかった。

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    2017年09月04日
  • 悪魔の羽根

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    ネタバレ

    2002年、シエラレオネで5人の女性が殺害され犯人も逮捕されたが、ロイター通信社の記者コニーはイギリス人のマッケンジーを疑っていた。
    マッケンジーは女性に対して非常に暴力的な男だった。
    コニーはシエラレオネを立ち去るが、去り際、マッケンジーに脅迫めいた言葉を告げられる。
    そして2年後、バグダッドでマッケンジーと出会ったコニーは拉致監禁されてしまう。
    3日後、一見無傷で解放されたコニーは、その間にあった事を黙して語らない。
    コニーの狂言だったのではないかという見方も出る中で、コニーは行方を晦ます。
    コニーがマッケンジーから逃れるように身を潜めたのはイギリスのとある谷あいの村だった。
    そこでコニー

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    2016年07月30日
  • 悪魔の羽根

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    本作では、人生における危機や悲劇を乗り越えた人たちの「その後」を心理的に解き明かしていく。
    冒頭、英国系ジンバブエ人の主人公がアフリカで取材中に拉致され、3日後に解放される。普通のミステリーならそれだけで1冊終わってしまいそうだが、本書ではこれは、言うならば起承転結の「起」だ。
    しかも、ここから端を発する事件は「転」が足早にやってくる。ところがこのシーンを迎えてもまだ、物語はどんどん続いていく。
    そう、だって、それが人生だからだ。大きな危機を乗り越えて命は救われた、めでたしめでたし、で終わるなんて、現実は許さない。
    一人称によって語られる物語だが、なにせこの「わたし」が信用ならない語り手なので

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    2016年04月20日
  • 悪魔の羽根

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    南アフリカで犯罪者に拘束された過去を持つ女性ジャーナリストが、隠遁したイギリスの片田舎で新たな恐怖に遭遇する。弱者の立場にいた者が復讐劇の渦中に置かれる過程、そしてその意外な顛末と豊かな余韻も楽しめる。主人公をはじめとして逞しい隣人や母親まで、とにかく女性の力強さが印象的。

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    2015年12月13日
  • 悪魔の羽根

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     中編集『養鶏場の殺人・火口箱』を読んでから、少しこの作家への見方がぼくの方で変わった。≪新ミステリの女王≫と誰が呼んでいるのか知らないが、この女流作家はミステリの女王という王道をゆく作家ではなく、むしろ多彩な変化球で打者ならぬ読者を幻惑してくるタイプの語り部であるように思う。

     事件そのものは『遮断地区』特に強く感じられるのだが、時代性と社会性を背景にした骨太のものながら、庶民的な個の感情をベースに人間ドラマをひねり出し、心理の深層を描くことにおいて特に叙述力に秀でた作家なのだと思う。

     本書はミネット・ウォルターズとしては最もページ数を費やした大作長篇であるのだが、種火は西アフリカ、シ

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    2015年08月09日
  • 遮断地区

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    ネタバレ

    イギリスの地方の街で起こった少女の失踪事件を追うミステリーとその事件を受けてパニックに陥る別の街を描いた融合的小説。

    ベースとしては小児性愛者への偏見がテーマとして有、ミステリーサイドは王道的に小児性愛を利用する犯人を追及していく。
    一方の街の事件は、そのテーマが前面に押し出され、パニック状態へ加速していく様、暴動を鎮めようとする主人公たちの善行、最後に失ったものの大きさと残ったものの大きさが見事に描かれている。
    特に群像劇的に始まったアシッド・ロウの話は、思わぬ登場人物が主人公的に浮かび上がってきて、普段の行動とは異なる行動により人たるもののあり方を訴えているように思いました。
    ページ数は

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    2015年08月08日
  • 養鶏場の殺人/火口箱

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     二つの風変わりな中編作品を収録した新ミステリの女王ミネット・ウォルターズの初の中編集である。序文は作者本人によるもので、そこで証されていることにより、ぼくは「風変わりな」と称したのである。

     『火口箱』は1999年、オランダでのブック・ウィーク期間中、普段ミステリを読まない読書家を誘い込むために無償配布された掌編だそうである。

     『養鶏場の殺人』は2006年イギリスのワールドブックデイにクイックリード計画の一環として刊行されたとある。普段本を読まない人に平易な言葉で書かれた読みやすい本として提供されたものであるらしい。

     どちらも読書促進運動という目的をもって書かれた珍しい作品であり、

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    2015年06月05日