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Posted by ブクログ
イギリスの作家「ミネット・ウォルターズ」の中篇ミステリ作品集『養鶏場の殺人/火口箱(原題:Innocent Victims: Two Novellas)』を読みました。
「P・D・ジェイムズ」、「アリ・ランド」、「コリン・ワトスン」に続き、イギリス作家の作品です… 「ミネット・ウォルターズ」作品は『遮断地区』以来なので、約2年振りですね。
-----story-------------
1920年冬、「エルシー」は教会で純朴な青年に声をかけた。
恋人となった彼が4年後に彼女を切り刻むなどと、だれに予想できただろう──。
英国で実際に起きた殺人事件をもとにした『養鶏場の殺人』と、強盗殺害事件を通して、小さなコミュニティーにおける偏見がいかにして悲惨な出来事を招いたかを描く『火口箱』を収録。
現代英国ミステリの女王が実力を遺憾なく発揮した傑作中編集。
解説=「大矢博子」
*第4位『ミステリが読みたい!2015年版』海外篇
*第6位『週刊文春 2014ミステリーベスト10』海外部門
*第6位『2015本格ミステリ・ベスト10』海外ランキング
*第8位『このミステリーがすごい!2015年版』海外編
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読みやすさを念頭に置いて描かれた2篇が収録されています… 『養鶏場の殺人』は普段本を読まない大人に読書に馴染んでもらう企画で、『火口箱』は読書好きの人に普段読まないジャンルを読んでもらうという振興の目的で、それぞれ出版された作品です、、、
実際に読みやすかったし、それでいてしっかり読み応えのある内容で愉しめましたね。
■はじめに
■養鶏場の殺人(原題:Chickenfeed)
■火口箱(ほくちばこ)(原題:The Tinder Box)
■解説 大矢博子
『養鶏場の殺人』は、1924年(大正13年)にイングランド南東部・サセックス州で実際に起きた「エルシー・カメロン」殺害事件を、経緯も人名もそのままに小説に仕上げ、末尾に「ミネット・ウォルターズ」の推理を述べた作品… 犯人とされた「ノーマン・ソーン」は絞首刑となったが、最後まで「エルシー」の自殺であると訴えていたそうです、、、
真実は藪の中ですが、美人ではなく、華やかな恋愛経験もなく、でも、プライドは異様に高く、自分の理想通りに物事が進まないと腹を立て、冷たくなった恋人に結婚を迫るために妊娠したと嘘をつく… そんな人格として描かれた「エルシー」には感情移入できず、常に「ノーマン」の立場で読み進めましたね。
直接的な事件の原因を作ったのは「エルシー」の性格や行動なんでしょうが… それを許してしまっていた「ノーマン」の優柔不断な態度にも、問題はありますよね、、、
顛末だけみれば、現代の日本でも、色んなところで同じようなことが起きているんでしょうけど、本書では「エルシー」を掘り下げて丹念に描くことで、実録物でありながら、恋愛ホラーのような印象の作品に仕上がっていましたね… 肥大したエゴが倒錯する様を、畳みかけるように描写する迫力が強い印象として残りました。
『火口箱』は、イギリスの片田舎を舞台に、老女二人の強盗殺害事件を通して、小さなコミュニティーにおける偏見がいかにして悲惨な出来事を引き起こしたかを描いた作品、、、
アイルランド人の男性「パトリック・オライアダン」が村内の老女と住み込みの看護師を殺したとして逮捕された… それから8ヵ月後、同じ村に住むアイルランド出身の女性「シヴォーン」は、「パトリック」の両親が村から排斥され、脅迫や嫌がらせを受けて危険な状態であると警察に訴える。
しかし、話を聞いた警部は夫妻の自作自演を仄めかした… そして翌月、「オライアダン家」が火災に見舞われ、焼け跡から一人の焼死体が発見される、、、
小さな共同体の中の差別や偏見意識を主題とした作品なのですが、その差別や偏見意識から生じる思い込みを逆手に取ったトリックが隠されており、意外な結末が愉しめる作品でしたね… 真相がわかると登場人物の印象が一変して見えるのが素晴らしいですね。
あることが原因で登場人物たちの間には共同体が崩壊すれすれになるほどの緊張が高まる。そうした事態は本筋の事件捜査からは副次的な要素に見えるが、実はそうではなく、全体を構成する不可欠のピースであることが最後には判る趣向なのである。どこにも無駄がなく、箱根名物のからくり細工のようにすべての部品が利用されている。その徹底ぶりが素晴らしいのである。
イギリスにおける、イングランド人とアイルランド人の関係性について、改めて気付かされる作品でした… そりゃ、ラグビーの試合でも熱くなるよなぁ。
読みやすくて愉しめる作品でした… 甲乙付け難いですが、個人的には『養鶏場の殺人』の方が好みでしたね。
Posted by ブクログ
二つの風変わりな中編作品を収録した新ミステリの女王ミネット・ウォルターズの初の中編集である。序文は作者本人によるもので、そこで証されていることにより、ぼくは「風変わりな」と称したのである。
『火口箱』は1999年、オランダでのブック・ウィーク期間中、普段ミステリを読まない読書家を誘い込むために無償配布された掌編だそうである。
『養鶏場の殺人』は2006年イギリスのワールドブックデイにクイックリード計画の一環として刊行されたとある。普段本を読まない人に平易な言葉で書かれた読みやすい本として提供されたものであるらしい。
どちらも読書促進運動という目的をもって書かれた珍しい作品であり、そういえばミネット・ウォルターズはこれまで長篇以外は邦訳されていないので、こういうウォルターズはどうなのかと興味津々でページを開いた次第。
さて『養鶏場の殺人』は、二人の男女の悲劇であるが、どちらが被害者か加害者かわからないほどの悲惨な関係が、養鶏場経営という悲惨な生活を背景に描かれることで、事件の背景にある真実を曝け出したものである。1924年という古い時代に実際に起きた事件のノベライズであるのだが、ウォルターズの筆力が、「読みやすいように平易な文章で書かれている」ゆえにこそ、際立って見える。
どうして四年後にこの人がこの人を切り刻むことになるのかという、事件のあからさまな紹介から遡っての年月を追っての物語だけに、読む側の追い込まれ感がたまらない。そしてその皮肉な結末への雪崩れ込み方が、まさしくウォルターズ流なのである。
『火口箱』はミステリーでありながら、やはりジャンル外読者向けのサービスに満ちており、とりわけアイリッシュの一家に襲いかかるソウアーブリッジ村という偏見に満ちた小さなコミュニティーの見えない恐ろしさが圧巻である。どこがミステリーなのかわからないうちに、導かれてゆくところに意外な真相が潜んでおり、なるほど、ミステリーとはこういうものでもあるのかと感じさせるようなサービス精神にあふれた書きっぷりである。もちろんこちらも筆力の素晴らしさが見えるウォルターズらしい作品。
二作ともいつもの長篇の重厚感から解き放たれていながら、コンパクトにむしろ密度の高まるクライム小説となっている。中編の一気読みの快感を味わうには手頃な一冊と言えよう。
Posted by ブクログ
英国ミステリの女王ミネット・ウォルターズの新刊。
趣向のある中編2本です。
面白く読めました。
「養鶏場の殺人」は実話をもとにした作品。
クイック・リードという企画で、本をあまり読みつけていない人にも楽しんでもらえるような作品として書かれたもの。
1924年に実際に起きた殺人事件で、裁判で主張がわかれ、あのコナン・ドイルが疑義を申し立てたこともあるという。
エルシーという女性がノーマンという年下の若者に教会で出会い、声をかける。
親しくなった二人だが、ノーマンが失職、二人の将来には暗雲がたれこめる。
エルシーの性格にもかなり問題があったのだが‥
実名のままに経緯を手さばきよく描き、鬼気迫るシーンへ。真相も推理しています。
はたして、何が真実だったのか‥?
「火口箱」のほうは、ブック・ウィークにオランダで無償配布された作品。
読書好きの人に、普段は読まない分野のものを読んでもらう狙いだそう。
とある住宅街で老婦人と看護師が殺され、出入りしていた無職の男性パトリックが逮捕された。
その後、パトリックの両親は、村の誰かから嫌がらせを受け続ける。
相談された女性シヴォーンは、見兼ねて警察に出向くが、取り合ってもらえない。
パトリック一家はアイルランド系で貧しく、村の美観を乱すようなガラクタを庭に放置し、イングランド人のひんしゅくを買っていた。
シヴォーンはアイルランド出身の女性だが裕福で、もしアイルランドにいるままだったら一家とは縁がないような関係。
一筋縄ではいかない登場人物に、村に渦巻く偏見と誤解が、どう絡み合っていくか。
緊張が高まっていくあたりはちょっと「遮断地区」を思わせます。
感じのいい女性シヴォーンの善意と意志が貫かれるのは、いかにもウォルターズらしい。
でも彼女にもすべてが見通せているわけではないんですね。
意外な展開を楽しめます!
初めてウォルターズを読むのにも良いかもしれません。
Posted by ブクログ
大好きなミネット・ウォルターズも本作入れて残り3作
大事に読んでいきたい
ミネット初めての中編集、制約のある中で書かれたものらしく、ミネットらしい朗らかさがあまり感じられなかったので残念
『養鶏場の殺人』
うわー、こんな女いるよなーというかなりめんどくさい女性が登場
そりやそうよね実話がもとらしいので
さすがの筆運びで、ほんとこの女性がイライラさせられる
上手い
上手いけど面白いかといったら、う〜ん
『火口箱』
偏見による思い込みが悲劇を生むのと同様にその逆も…という社会派ミステリー
こちらはミネットらしい朗らかな女性が登場して少し好み
あ、でもよく考えるとミネットらしさってとことん後ろ向きな女性ととことん前向きな女性の書き分けのような気がする
そうか片方しか登場しない中編だとまさにミネットの魅力半減なのか
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