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Posted by ブクログ
ミネット・ウォルターズの長編第三作。原題の『Scold's Bridle』というのは、昔の英国で使用されていた舌を押さえる金具の付いた拘束具のことで、口うるさい女性に罰として被せていたものなのだそうです。
事件は、ある資産家の老婦人、マチルダが手首を切って浴槽で死んでいたことから始まります。それだけなら自殺のようにも見えるのですが、死者の頭には野菊や刺草で飾られたスコウルズ・ブライドルが被せられていました。果たして彼女は自殺なのか、それとも誰かに殺されたのか、この謎を追ってストーリーが展開していきます。
なのですが、読み進めていくうちに、そうした事件の謎よりも、次第にマチルダとはいったいどんな人物だったのか、その真意はどこにあったのか、そのことにすっかり意識を持っていかれてしまいました。推理小説を読んでいるのに誰が犯人かとか、どうやって殺したのかとか全く気にならなくなると言うのは、思えばちょっと不思議な状況です。
数冊読んでみての印象ですが、ミネット・ウォルターズのミステリは、誰が犯人かといった事件の謎を解き明かすことよりも、それに関わる人物自身を解き明かすことを主眼に置いているような気がします。しかし、人物を解き明かすといっても、その過程は、作者の創作したキャラクターを読者に一方的に押し付けると言うような単調なものではありません。というか、彼女のミステリでは、登場人物に対する安易な理解というのはあっさりと拒絶されてしまいます。人物の謎は登場人物たちが一方的に解き明かしていくのではなく、読み手も同じように考えさせられてしまうのです。そして、それが読者を物語に引き込む原動力にもなっていて、決して心地よいとは言えないけれど、深い余韻を残す読後感を生み出しているように思います。
ミネット・ウォルターズの描く人物はいい人とか悪い人とかで割り切れるほど簡単ではなく、作中で登場するマチルダの肖像画のようにとても複雑です。偏見や先入観に基づいた理解もそうですが、一面だけみて好意的に解釈することも表面的な理解という点では同じことなのかもしれません。物語最後のジャックの言葉は、それだけ抜き出しても特に心動かされるものではないと思いますが、登場人物たちと共に事件を追ってきた読者の胸には強い印象を与える言葉として響くのではないかと思います。
ちょっと堅苦しい感想になってしましましたが、物語の進行もテンポ良く、恋愛要素やサブストーリーも充実していて、エンターテイメント小説としてとても楽しめます。おすすめの一冊です。
Posted by ブクログ
すごい好みのミステリー。
というか、気合の入ったおばあちゃんの話は大体好みなのだけど。
故人の日記が不意に挿入される文章の構成は、話自体の雰囲気ともあっていて面白い。
「彼女は、少しの哀憐に値する。ひとは皆そうなんだよ」というジャックの台詞と、「私のこの、男たちに対する侮蔑の念。やはり異常なのかもしれない」というマチルダの台詞が、正確には対比ではないけれど、ふたつワンセットで思い出されてしまう。
マチルダの、傲慢と計算高さに覆い隠された傷つきやすさが痛ましい話。
彼女にセアラという存在がいたことは、最後に与えられた神様の哀れみのようでもあって、けれどそれは慶事には感じられない。むしろ悲しい。
Posted by ブクログ
ひま師匠がおすすめくださり探していた一冊。
先日土瓶さんもお読みになられていて、あの土瓶さんが★3つ!
これは絶対読まなくては!!
と思い、娘にメルカリで探して貰い手に入れた♪
資産家の老婦人、マチルダが浴槽の中で死んでいた。睡眠薬を服用し、手首を切っていた。
これだけなら自殺と判断されてもおかしくないが、マチルダにはスコウルズ・ブライドルという、中世の拘束具が被されており、額には刺草や野菊が挿されていた。
自殺で処理されそうになっていた事件だったのだが、クーパー刑事が真相を解き明かす。
目立つ登場人物は、女医のセアラ。娘のジョアンナ、孫娘のルース。夫のジェイムズ。
セアラの夫のジャック。隣人のダンカン、ヴァイオレット夫妻。掃除婦のジェニーと、診療所の受付係のジェインだが、これらそれぞれの物語がぎっしり詰まった一冊だった。
マチルダは、娘のジョアンナや、孫娘のルースではなく、担当医のセアラに全財産を譲るという遺言を残していた。
何故娘や孫娘ではなくセアラなのか??
娘たちと確執があったのか??
終盤では、全ての疑問が一つ一つ解決に向かう。
マチルダ1人にフォーカスをあてた物語なのではなく、1人1人へ照明をあて、マチルダとどのように繋がっているのか描いている。その登場人物の描き方が巧みで、それぞれが一つの物語としてかなり重たい。衝撃的な人生の人ばかりだ(⌒-⌒; )
翻訳もので、ページ数は526ページと、かなり分厚い。私好みの厚さ。
かなり時間がかかってしまったが、最後の解決編はかなりスッキリ収まった。
推理小説だが、文学的な重さもずっしりと感じた。凄い小説だった(*´꒳`*)
あ、あと、デイヴィット・ヒューズみたいなヤツは、ぎったんぎったんにして、それこそ拘束具でも拷問でもして、2度と悪事を働かないようにしてやりたい(-。-;
ムカついた。
Posted by ブクログ
これでミネットちゃんの4冊目かな。
さすがにおもしろい。
とある資産家の老婦人が自宅の浴槽で遺体で見つかる。
体内から睡眠薬が検出され、手首がナイフで切られているその姿は一見して自殺のようでもあったが、異様なものが頭に被さられていた。
スコウルズ・ブライドル。口やかましい女に罰として頭に被せる拘束具が。
はたしてこれは自殺なのか、他殺なのか。
スコウルズ・ブライドルの意味するものはなにか。
老婦人の主治医である女性主人公に、遺産の全てを譲渡するという遺言が発表されると、関係者たちの混乱はいっそう深まっていく。
人物かな~? 人物描写がうまいのかな~?
最初の引きはもちろん異様な死体に興味がいくんだが、中盤あたりからはどうでもよくなってくる。
それよりも被害者の老婦人の生きざまのほうに惹きつけられていく。被害者で加害者で嫌われ者で哀れで美貌の持ち主で傲慢不遜で金持ちで。
母、娘、孫と女三代に渡って男運がない。
主人公の旦那はただのクズだと思っていたら、どんどん立体的に魅力的に描かれていく。
やっぱ人物だよな~。惹かれるのは。
★4でもいいかと思ったけど最後が少々残念。
犯人があいつか~。
動機がそんなんか~。
あのスコウルズ・ブライドルの意味って……。
などなどが物足りない。
でもミネットちゃんは狭いコミュニティを題材に使うのがうまいな。
そこを出たくても出て行けない、出ても戻って来てしまう。
そこでの濃密な人間関係。
こういうのもクローズドサークルといえるのかも。心理的な。
物理的なトリックより心理的なそれの方が好きなように、心理的なクローズドの方がいいかもな。
そうそう。
今回はシェイクスピアの話「リア王」なんかもちょっと触れるんだけど、俺ってまともにシェイクスピアを読んだことも観たこともないんだよな。
海外の人って当たり前にシェイクスピアとか引用してくんのね。
読むのは大変そうだから、舞台とかで一回ちゃんと観てみたいな。
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