ミネット・ウォルターズのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
シエラレオネで女性が五人殺害された。
記者コニーはある男を犯人ではと疑っていた。
そんなコニーが拉致監禁されるが、数日後解放された彼女は事件について多くを語らないまま身を隠してしまう。
事件の犯人は主人公の思う通りなためミステリーではなくサスペンスなのだが、事件の経過を読むというよりは、恐ろしい体験をした女性の心理を読むといった物語。
主人公コニーのまさに揺れる思いが描かれる。
恐怖というものは明らかに恐ろしい何かに対してというより、何かはっきりしないものにいつ何をされるかわからないことにある。
そういう恐怖に怯える心理が読み手にも伝わってくる。
ただ、事件の犯人を考えたり事件の顛末に興味を持って読むと、少し物足りない。
それがわたしだった。
わたしとしてはコニーが拉致されるまではスピード感があるのに、解放されてから失速したとさえ感じてしまった。
わたしはこういった事件の被害者になったことがないのであくまで想像にしか過ぎないが、誰かに狙われていると考えるとき、田舎よりは都会にいると思う。
田舎のほうがひとがいないため却って自分を隠すのにふさわしくないのではと思うだろうから。葉を隠すのなら森に、ひとを隠すのなら雑踏にだ。
そのため田舎に隠れるコニーの気持ちがよくわからず、コニーには別に思うところがあって敢えて田舎に行ったのではなどと要らない深読みをして結果ガッカリさせられた。
人間の心理を読みたいひとには面白いと思う。
人間の心理を読むのは好きだけれど、創元推理文庫から出版された本にそういうものは期待していない。
面白くないわけでもないけれど、やはり物足りなさを感じる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
コニーは取材中に拉致監禁される。
無傷で帰ってきた彼女はあいまいな証言を繰り返し、犬を恐れ、自分を精神的に追い詰めた男の影に常に怯えている。
何があったのか。
そして彼女はどうするのか。
マッケンジーと対決する場面は緊迫感がある。
彼女が彼に対してハッタリをかますシーンはドキドキする。
コニーは彼をとても恐れていた。
人格を破壊される直前まで辱めを受けたのだから。
しかしその一方で彼女は彼に復讐したいとも思っていた。
相反する二つの気持ち。
この気持ちのどちらが打ち勝つのか。
ある意味で彼女は千載一遇のチャンスをものにしたのだ。
そして。
マッケンジーはどうなったのかわからない。
おそらくそうだろう、という希望的観測を読者は得るが、それでも確定的なことは本文中では描かれない。
また、結末も同じように。
本作の象徴的な言葉がある。
深淵をのぞきこむ者は、深淵からも覗き込まれている
深淵とは何か。
それは見えない何かではなく、見えている何かなのだ。
それに気づくか気づかないか。その違いだけで。
本作は二つの事件が絡まり合っている。
上記の事件に関してはかなり面白いのだが、もう一つの事件は私にとってはわかりにくかった。
どうしても外国人の名前というのに慣れない。
これだけ本を読んでいても、人物が増えすぎるとごちゃごちゃになってしまう。
(だからきっとロシア文学は無理だ)
途中で読むのに飽きてしまった部分もあった。 -
Posted by ブクログ
前回読んだ中編の感触がよかったので、久々に長編にトライしてみた。結果はビミョー。
上記のあらすじは序盤。解放後、身を隠すために移り住んだ農村での人間関係が、もうひとつの軸となる。相手の出方を窺いながら徐々に心を通わせる偽名の生活と、記者コニーとしてのメールのやりとりからくる緊迫感の対比が興味深い。でも中盤はちょっと退屈したかも。
後半は、インパクト大の出来事から一気に展開する。前半はサスペンスで、後半は本格ミステリかな。追及する者とされる者。そこに心理描写の上塗りが加わり、前半とはまた違った緊張感で読ませる。
ミステリとしては非常によくできていると思う。伏線を回収し、心理戦を仕掛け、ロジックで追い詰める。余韻と満足感を味わえる読後感なのだろうが、私にはまだ長編は早かった…。 -
Posted by ブクログ
被害者加害者が濃密な関係を持っていて悲劇的な結果を迎えた時、加害者だけが悪い、といえるのだろうか──という作者の前書きにもあるように、当初の関係が悪意や思い込みによって徐々に破綻していくプロセスが面白い。中編なのであっさり描いてあるものの、それでも刻々と変化していく心理描写の上塗りはさすがウォルターズ。キャラ造形が巧いので、シーン毎に共感し反発し、常に不快感を覚えながらも、目が離せない人間ドラマは読み応え抜群。ここにハマると抜けられないよねえ。
『養鶏場』の方が好み。実話っていうところが更に惹かれます。ミステリ色の濃い作者の見解にも納得。『火口箱』は、やや中弛み。『蛇の形』で経験した“しつこさ”がちょっと垣間見えたかも。でも意外性のインパクトが強いので、ラストで丸め込まれたかな。長編はまだコワいけど、中編ならリピートできそう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ行き遅れた女の結婚に対する執念怖~~~!(他人事じゃない)(笑)(えない/(^o^)\)な、【養鶏場の殺人】と、イングリッシュ・アイリッシュ間の偏見が交錯する【火口箱】の2編を収録した中編集です。
私にとっての記念すべき初・ウォルターズ作品。既刊も何度か店頭で見ていたんですが、装丁とか説明文がいまいちそそらなかったのですよね(゜-゜)でも、今回の内容説明は面白そうだわ~!というわけで、一目惚れ買いでございます。
まずは、適齢期を過ぎて焦り始めた女の執念が恐ろしい、【養鶏場の殺人】。
実際に英国で起こった事件に題を取っているそうで、何とあのサー・ドイルもこの事件について言及しているんですね~(゜-゜)
「完全にありえないことを取り除けば、残ったものは、いかにありそうにないことでも事実である」と彼の名探偵に語らせたサー・ドイルの目に、この事件の顛末はどのように映ったのでしょうか。そして、一つの可能性として提示された今作をもし彼が読んだら、どんな風な意見を持ったのでしょう。と、しみじみ思いを馳せてしまったのでした。
が、今作の被害者であるエルシー。同性である私から見ても非常に身勝手で癇癪持ちな女性として描かれていて、読んでいてかなりゲンナリしました。
「私は何も悪くない!私が不幸なのはあんた達のせい、悪いのはあんた達よ!」
とヒステリックに周囲にまき散らしながら、盲目的に愛する男には媚び諂い、「ねえ、結婚いつしてくれるの?」と催促する女って…(震)。
そんな年上女性に愛されてしまった青年にも同情の余地はありますが、本作を読む限りでは「どうにか逃げ切れたやろ~」が正直な感想。
最後まで無実を訴えた彼が、絞首刑に処せられた瞬間、真実を知る者は誰もいなくなってしまったわけですが、仮に彼の言うとおり全てが彼女の自作自演だとしたら恐ろしいなあ(震)。私としては、「私を裏切った彼をちょいとビビらせてやるわー!」な動機であんなことをしでかして、結果事故死に至ってしまったってのがまだしも救いがあるのかなとも思いますが、どうでしょう。それはそれで報われないか…汗。でも、当てつけで自殺するよりは…う~ん…。
続いては火口箱!
強盗殺人事件に端を発した、人種差別的偏見が生んだ悲劇と、その後の関係者達の交流と闘争が描かれる中編です。
イングリッシュとアイリッシュという分かりやすい対立軸が大前提にあり、容疑者とその周囲を取り巻く人々の分かりやすい対立図式があり、それによって読者に「ある偏見=思い込み」が刷り込まれることで意外なラストが演出される、フーダニット物です。うむ、見事に騙されました(笑)。よく考えたら、一番怪しい筈だけどな~(笑)。
殺人事件発生直後、放火事件前後、そして語り手と担当警部のやり取り、これらが交互に描かれるカットバック構成も、物語に緩急を付けてリズム良く読めます。
「ある人物」が、犯人の仕掛けたこの「偏見によって容疑者圏外に自分を置いた」ことを逆手に取って、自分に対する「偏見」を用いて逆襲に転じたことが明かされるラストは、中々の読みごたえがあるどんでん返しです。
背表紙の説明文がいい感じだったので、そのまま引用~(^O^)
1920年冬、エルシーは教会で純朴な青年に声をかけた。恋人となった彼が4年後に彼女を切り刻むなどと、だれに予想できただろう―。英国で実際に起きた殺人事件をもとにした「養鶏場の殺人」と、強盗殺害事件を通して、小さなコミュニティーにおける偏見がいかにして悲惨な出来事を招いたかを描く「火口箱」を収録。現代英国ミステリの女王が実力を遺憾なく発揮した傑作中編集。 -
Posted by ブクログ
多くの小説では、物語の中心となる人物やその性格というのがだいたい定まっていて、読者はその人物の視線、気持ちに寄り添いながら物語を理解していくというのが一般的な流れなのではないかと思いますが、本書は、そう言った意味ではちょっと普通ではない変わった構成をとっています。
例えば、次々に別の登場人物へと視点が切り替わっていくので、誰を中心に物語を理解すればいいのかわからない。しかも、出てくる登場人物がみなアクの強い性格付けがなされているうえ、視点が変われば印象もガラッと変わる始末で安易な感情移入すら拒絶されます。寄り添うべき視線が定まらないとういのがこれほど不安感を煽るものだとは思いもよりませんでした。そして、そのことが物語に息苦しいような緊迫感を与えて、先の読めない展開にもう夢中になってしまいました。
ただ、少し残念に思うのが、中盤以降にその緊張感がやや途切れてしまったように感じられることです。ストーリーは面白いし、後半も読みどころは多いのですが、前半のインパクトがあまりにも大きかっただけに、一気に読んだにもかかわらず、数日開けて続きを読んだ時のような少し醒めた印象を受けてしまいました。正直、謎と謎解きに拘らなければもっと面白くなったのでは?などと思ってしまいましたが、それじゃあミステリにならないですね (^_^;)
この物語は、無責任な噂や偏見といったものがテーマの一つになっているように感じられます。感想の最初に「視点が変われば印象もガラッと変わる始末で安易な感情移入すら拒絶されます」、などと書きましたが、そもそも安易な感情移入、表面的な印象や先入観に基づく勝手な理解こそ偏見そのものなのかもしれません。私の場合、最初は結構好きかもと勝手に肩入れしていた人物が、実はかなり非道い一面を持っている人間だとわかってちょっとショックでした。