あらすじ
フレッド・フィリプスが走っている……その言葉は八月の静かな午後、さながら牧師のお茶会で誰かが発したおならのように鳴りひびいた。庭師を周章狼狽させたのは、邸の氷室に鎮座していた無惨な死骸――性別は男。だが、胴体を何ものかに食い荒らされたその死骸は、人々の嘔吐を誘うばかりで、いっこうに素姓を明示しようとしない。はたして彼は何者なのか? 迷走する推理と精妙な人物造形が読む者を八幡の藪知らずに彷徨わせ、伝統的な探偵小説に織りこまれた洞察の数々が清冽な感動を呼ぶ。新しい古典と言うにふさわしい、まさに斬新な物語。英国推理作家協会最優秀新人賞受賞作!/解説=巽昌章
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Posted by ブクログ
かつて当主が失踪したといわれる屋敷で胴体を食い荒らさらた死体が見つかる。誰の死体なのか?見事なストーリー展開と巧みな人物描写。このデビュー作で一躍女王となったミネットウォルターズだけにページをめくる手を止めさせない。ここまで面白いともうトリックなどどうでも良い。ミステリも小説であるからには、一流であるためにはトリックよりも小説としての面白さなのだとつくづく思わせる逸品。
Posted by ブクログ
ネットで見かけて。
「フレッド・フィリプスが走ってる」
すごい始まりだ。
思わせぶりなところはなにも無く、ただ事実を述べているだけなのに、
それがわざわざ語られなければならないところに、インパクトがある。
あっという間に作品に引き込まれる。
行方不明者と身元不明死体。
田舎の村とスキャンダル。
守るべき秘密と明かされるべき感情。
それは面白くならないはずがない。
結局語られなかった、
主席警部と部長刑事の過去の関係性が気になり過ぎる嫌いはあったが、
ミステリーとしては面白かった。
恋愛ものとしては、どうかな。
Posted by ブクログ
面白いー!!
身元のわからない朽ちて食われた死体が一つ。
見つかったのは10年前の夫殺しの噂のある屋敷。
人殺しのレッテルのした、毅然と見えるフィービと
心優しいダイアナ、頭脳明晰の皮肉屋アン。
同性愛者だ、魔女だ、人殺しだと警察からさえ信用されない
不遇の女たち、
そして妻に逃げられたアル中寸前のようなマクロクリン部長刑事、昔にこだわりすぎる首席警部。
むせかえる悪意のなか、
清涼飲料水のようなプレイボーイたち。
オッサンパディと、愛すべき単細胞(性根もよい)エディ。
ラスト、エディが好きになった。
Posted by ブクログ
ウォルターズ作品では、3番目に読みました。最初は主人公3人が嫌な感じの人かと思ったり、刑事さんも誰が中心になるのか分かりにくくて、読みずらかったのですが、途中からとても面白くなり、一気に読みました。いつもながら、意外な展開がよかったです。
Posted by ブクログ
1992年に書かれ、舞台もその頃の小説なのだが、
なんだか、戦前の香りの漂う小説だ。
もっとも、時代に閉じ込められたような、
田舎の村の古めかしいお屋敷が舞台だけに
そういう書き方は正解で、しかもそれが見事に書かれていてすばらしい。
Posted by ブクログ
以前読んだときはもっと怖いと思っていたんだけど、私がそうとう図太い人間に変わっちゃったんだろうな…。
最後まで二転三転する犯人の正体にはさすがストーリーテラーとしか言いようがない。でも、これより「黒い薔薇」の方が万華鏡みたいにくるくると視点が変わって読後の騙された感が強かったような気がする。
「黒い薔薇」も購入済み。
Posted by ブクログ
なんでしょうか?
単なる謎解きと思えば、意外性もあってそれなりに面白い。
ただ、事件の背景や原因となる事があまりにおぞましい。イギリスの田舎町ってこんな感じなのかと絶句する。日本の村八分とあまり変わらないというか、もっと陰湿かも。
あまりカタルシスのないお話でした。
Posted by ブクログ
多くの小説では、物語の中心となる人物やその性格というのがだいたい定まっていて、読者はその人物の視線、気持ちに寄り添いながら物語を理解していくというのが一般的な流れなのではないかと思いますが、本書は、そう言った意味ではちょっと普通ではない変わった構成をとっています。
例えば、次々に別の登場人物へと視点が切り替わっていくので、誰を中心に物語を理解すればいいのかわからない。しかも、出てくる登場人物がみなアクの強い性格付けがなされているうえ、視点が変われば印象もガラッと変わる始末で安易な感情移入すら拒絶されます。寄り添うべき視線が定まらないとういのがこれほど不安感を煽るものだとは思いもよりませんでした。そして、そのことが物語に息苦しいような緊迫感を与えて、先の読めない展開にもう夢中になってしまいました。
ただ、少し残念に思うのが、中盤以降にその緊張感がやや途切れてしまったように感じられることです。ストーリーは面白いし、後半も読みどころは多いのですが、前半のインパクトがあまりにも大きかっただけに、一気に読んだにもかかわらず、数日開けて続きを読んだ時のような少し醒めた印象を受けてしまいました。正直、謎と謎解きに拘らなければもっと面白くなったのでは?などと思ってしまいましたが、それじゃあミステリにならないですね (^_^;)
この物語は、無責任な噂や偏見といったものがテーマの一つになっているように感じられます。感想の最初に「視点が変われば印象もガラッと変わる始末で安易な感情移入すら拒絶されます」、などと書きましたが、そもそも安易な感情移入、表面的な印象や先入観に基づく勝手な理解こそ偏見そのものなのかもしれません。私の場合、最初は結構好きかもと勝手に肩入れしていた人物が、実はかなり非道い一面を持っている人間だとわかってちょっとショックでした。
Posted by ブクログ
発表作のどれを読んでも安定して面白いミステリ作家さんです。
なんていうかカバーイラストもどれも好き。
これが1作目かな?
どの作品にも共通して張り詰めた空気と湿度を感じます。
救いのない終わり方が多くてつらい時もある…。