”教主さま”だという、小学5年生の女の子、彩乃ちゃんを中心とした連作短編集。
友人に頼まれて綾乃ちゃんを預かることになった花屋に勤める智佳子、進路に悩む高校生の鉄平、家で綾乃ちゃんを預かることになった小学5年生の佳奈の3人の話が載っています。
彩乃ちゃんには、未来を見たり、死んだ人を見たりする不思
...続きを読む議な力があるらしく、その力を使って彼らの未来をほんの少しいい方向へ押してくれます。
どの話も何となく人生に悩んでいる人の背中を押してくれるような、温かく優しくていい話でした。
けれど、彩乃ちゃんは不思議な力を持つ教主さまというだけではなく、アクセサリーや化粧品に興味があったり夜のコンビニにはしゃいだりする普通の小学生でもあり、大人びていて教主という重荷を背負っている姿が少し物悲しくもありました。
私は一番最初の智佳子の話が一番好きでした。教主の彩乃ちゃんに、”少しだけ悪い事”を教える優しいお姉さん。彩乃ちゃんも彼女の前では少しだけ”普通の女の子”になれたんじゃないかな。
彩乃ちゃんはどの話にも出てくるのですが主人公ではないので、この先、教団に戻った彩乃ちゃんがどうなるのかも気になります。
柔らかく優しい小説はこんなのも。
→『あずかりやさん』(ポプラ文庫)/大山淳子