主人公の姿は、私の2年前の姿と重なった。
とても受け入れ難い出来事を、受け止めようとして心が壊れた。歪なかたちでしか受け止める事が出来ずに多くのものを手放しかけてしまった。
この本は、大切になっていく本だと思う。出逢えて、よかった。
『手を伸ばしたら、ちゃんと触れられる人がよかった。なにも考えず、
...続きを読むただまっすぐ歩ける人でなければ、私は耐えられなかった。』
『ふいに感情が波のようにやってきた。押し寄せては引き、また押し寄せて...そうして私という砂浜を絶えず洗っていく。』
『彼と過ごした日々の記憶があまりにも美しく、そして過ぎゆく時間と共にますます澄んでいくものだから、私は加地くんをそのままきれいな場所に置いていきたかった。加地くんの姿も、思いも、純粋さも、届かぬ星の光のように輝き続けて欲しかったのだ。』
『立っている場所が変わると、同じ風景でも違うように見えるものなんだ、それは加地くんの言葉。覚えていた巧くんが、お父さん似言った。そして今度は、お父さんがわたしに言っている。言葉や思いは、こうして巡っていくのだ。』
『最愛の恋人を失うのは、とても辛いことだった。この一年半、わたしは呼吸をしていただけで、ちゃんとは生きていなかった。思い出そうとしても、まるで陽炎のようにしか記憶は蘇って来ない。多分、一度、私の心は壊れてしまったのだと思う。不幸なんて、いくらでもある。珍しくもなんともない。けれど、ありふれているからと言って、平気ですごせるかといえば、そんなわけはないのだ。じたばたする。泣きもする。喚きもする。それでもいつか、やがて、ゆっくりと、わたしたちは現実を受け入れていく。そしてそこを土台として、次のなにかを探す。探すという行為自体が、希望になる。とにかく、終わりが来るそのときまで、わたしたちは生きていくしかないのだ。たとえそれが、同じ場所をぐるぐるまわるだけの行為でしかないとしても、先を怖がって止まっているよりは何百倍も、いや1万倍もましだ。だから、わたしは進もうと思う。恐れながら、泣きながら、進もうと思う。』