倉本聰のレビュー一覧
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ネタバレわたしが純と歳が近いせいか、どうしてもこどもの想いで当時の映像は観ていました。この本はわたしが親になったせいか、はじめて父親の五郎の立場で考えることができました。
一番印象的だったのは、純が東京でだれかに危害を与えてしまったことを五郎に伝えるシーン。泥の付いたお札は五郎の血と汗と涙の結晶であり、そんじょそこらのお札とは訳が違う。そのお札を取られたからとは言わなかった純は、知らないあいだに五郎の愛が伝わっていたと思われるシーンです。五郎は理由は聞かなかったが、こんなにも人を愛し愛され、本当の意味で人間らしく生きている姿がここにあるように思われました。高級な住宅、高級な車、贅沢な食事をどんなに手に入れても、手に入れられないものが見えた瞬間でした。カッコよくもなく頭がいいわけでもなくお金があるわけでもなく不器用で短気な黒板五郎が素敵に感じました。人間らしく生きるってなんだ。日本にはいまだに義務教育に哲学がありません。格差社会、貧困、環境問題、多様性、自然破壊、人間中心社会、温暖化なども、40年前、倉本聰はそこに疑問を持ち「人間とは何か」をみんなに伝えたかったのかもしれません。今読んでも新しい思想が詰まった本でした。 -
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これまでも、エッセイ、テレビで知ってる話もあるが、それ以外の話もあって興味深い。フランクに書かれてると思う。山田太一が倒れたことは知らなかった。この年代で一人気を吐いている。
『2018年12月から、テレビの4K、8K放送が始まりました。いったいどれほどの視聴者が画素数で番組を見るというのでしょう。せいぜい家電業界や、関連するシステムやサービスを提供する会社が潤うだけです。国はテレビのハード面にばかり力を入れて、ソフト面をないがしろにし過ぎたと思います。俳優や演出家の質を上げることにいくら金をかけても、直接的な経済効果に結びつかないからでしょう。だから、テレビをテレビ文化として真剣に育てようという意識がない。』
『CMにたくさん出れば儲かるかもしれませんが、僕から見ればすごくもったいないことです。タレントと役者の違い。それは一緒に喫茶店に入ると分かります。タレントは人に見られないように壁に向かって座る。一方、役者は人を見たいから壁を背にして座ります。普通の人の生活を知らないと演じられないので一生懸命、観察するんです。
役者も脚本家もそうですが、われわれの仕事は「発信」することだと思われがちですが、実際それは30%程度しかありません。残りの70%は「受信」なんです。普段の生活の中でいかに多くのことを受信できているか。それがものすごく大事です。』 -
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ネタバレ倉本聰ほど伝説?や話題の多い脚本家も珍しい。
思い浮かぶものを羅列しても「国民的ドラマの大ヒットメーカー」「NHK大河ドラマの降板」「富良野への移住」「台本の一字一句にも拘り修正を許さない」「キャスティングに口を出す」「80歳を超えてからのシルバータイムドラマの創出(やすらぎの郷)」・・・等々
その倉本聰へ碓井広義が行った計9回のインタビューを纏めたものが本著である。
インタビューなので読みやすく、倉本聰の考え方やそれぞれのドラマの舞台裏など面白い話がわんさかと詰め込まれており、その時代その時代に果敢にチャレンジしてドラマの可能性を広げてきたことが分かる。
具体例を挙げると、2017年のドラマの「やすらぎの郷」のキャスティングの裏話も面白い。
主役の石坂浩二の「元ヨメ・浅丘ルリ子」、「元カノ・加賀まりこ」のキャスティングは、前もって浅丘ルリ子と加賀まりこに話をしていた時から石坂浩二の名前は出ていたそうで、倉本が「あなたたち平気なの」って聞いたら「全然平気よ」って言うので、あとはとんとん拍子に決まったそうだ。
また「石坂浩二演じる『菊村』は倉本聰と阿久悠と久世光彦(演出家)等の同世代の複数の人間の要素を詰め込んでいるので、菊村を僕(倉本聰)だと思われるのは迷惑な話でね。女房も生きていますし、駆け出しの女優と浮気したなんて言われちゃうと困っちゃう」
それにしても84歳の倉本聰が「やすらぎの郷」の続編を書きあげ、その「やすらぎの刻~道」が2019年4月から始まるのが楽しみだ。 -
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倉本聡の、富良野塾、富良野自然塾など、おもに富良野での仕事についての本。だが、そこにいたるまでのこと、幼少の頃のことも、随所に語られている。重複しているところもあるが、カタログのような、盛りだくさんの内容。
テレビでしか知らない人には、まさに氷山の一角、水面下で行われてきたこれらの仕事に驚きを覚えるだろう。今、テレビより舞台での演劇にシフトしている感があるが、それも、この本を読むとよくわかる。これまで富良野塾生に出していた演出方法が事細かに明かされるが、役を本質的に捉え、体で表現することを極限まで求めている。テレビとはまた違った、人間を育てる演劇の姿がここにある。影響を受けた脚本家に「おくりびと」の小山薫堂、富良野塾出の脚本家には、「Drコトー診療所」の吉田紀子などがいる。
他にも農業をはじめたもの、演劇や自然塾のスタッフとして富良野に住み着いたものなど、塾生の活躍は多岐にわたっている。
御年77歳、現役としてまだまだ発言してほしい。巻末の、3・11への提言は、ここまで考えている政治家がいるかどうか、疑問に思うほどだ。 -
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脚本家・倉本聰を師匠と請う元・テレビマンの碓井氏によるインタビュー対談の形式で、倉本聰の歩みと数々の作品や関係者たちとの交流を振り返る。
実名入りで「あの役者は失敗だった」とか「あのプロデューサーのやり方が気に入らなかった」などズバズバと本音で語られている。倉本氏は大御所になって、とか「歳を取ったからもう怖いものなし」でもなく、元から自分の創りたいものに強いこだわりを持っていた人のようだ。それは作品の内容にも表れている。一見穏やかな空気が流れていても、社会に対して常に問題提起というか疑問を投げかけている。
本書は「シルバータイムドラマ」と話題になった「やすらぎの郷」の放送後、その続編の放送が決定していた頃に書かれている。年齢に応じて人生の厚みもさらに増していく中でも、さらに描きたいことをいつまでも描き続ける倉本氏の意欲は見事だ。
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ネタバレ倉本聰の創作思想や哲学を新作の創作過程をとおして、碓井が聞き手となり明らかにしていく。本書のための新作「火曜日のオペラ」の企画書、全7話のあらすじ、第一話のシナリオが読める。また、随所に過去作品の創作エピソードもあり倉本聰ファンなら楽しめる一冊。
以下、ネタバレ。お気に入りの箇所。
「相手が女優だったら、ほとんど僕、恋愛感情で書いてますよ」「ただ、彼女たちを愛するんだけども、長所が見えただけじゃ、その人を理解したってことにはならないんですよ。欠点が見えないと面白くない。役者って、欠点をきちんと書いてやれば、必ずそれが個性になって出てくる」 -
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『おとなのデジタルTVナビ』(産経出版)の2015年8月から19年8月まで連載したものに加筆、再構成したものだが、『ドラマへの遺言』(新潮新書)と内容がダブっている部分が多く、密度も『ドラマへの遺言』の方が充実している。
もし、この2冊を手に取って、どちらを選ぶかを迷っている人がいれば、迷わず『ドラマへの遺言』をお勧めいたします。
内容は、
第1章 昭和から平成、令和をつなぐ物語 「やすらぎの郷」「やすらぎの刻」
第2章 戦後日本を総括する物語 「北の国から」
第3章 東京を離れて見えた物語 「6羽のかもめ」「前略おふくろ様」他
第4章 富良野がつないだ物語 「昨日、非別で」「風のガーデン」他
第5章 若き日の物語 「文五捕物絵図」「ガラス細工の家」他
第6章 これからの人に贈る物語
第6章では、昔のようなテレビを見る習慣が崩れた今でも、テレビ局は「視聴率第一主義」「ゴールデンタイム信仰」「F1F2層(20~40代の女性)のターゲット主義」から抜け出せないでいることに対して痛烈に批判し、番組の質が堕ちていくことを嘆いている。
テレビという媒体が生き残るためには、上記の考え方から脱却しなくてはならないと提言している・・・これは著者が東京を離れた北海道にいるから見えてくるのかも知れない。
脇道にそれて、印象に残っているのは、「人間的にはいろいろ言う人がいるが、(ショーケンは)役者としては天才だった」と、著者はショーケン(萩原健一)をかなり評価していることだった。そして「いしだあゆみ」の言葉を紹介している。「いしだあゆみがショーケンと結婚していた頃に、『364日はひどい人だけど、1年に一度の笑顔で、一緒になってよかったと思う』」
・・・若い時に「いしだあゆみ」のファンだった私からすれば、言って欲しくないセリフです