高木彬光のレビュー一覧
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神津恭介が活躍する短編集。
全編密室ものです。
【白雪姫】
密室物ですがトリックよりもプロットの上手さが光っていると思う。
雪国に向かう列車内で偶然居合わせた白雪姫のように美しい女性という出だしも幻想的でいい。ラストの風景も素敵だった。
双子の登場によって当然入れ替えトリックが浮かびますが、それを逆手にとって二転三転する展開もおもしろいです。
しかし、神津恭介はちょっとうっかりだったんじゃないでしょうか。
人を疑う以上迂闊なことは言えないというのは分かりますが、、新たな事件発生を予期しながらもそれを誰にも伝えず、防げなかったのはひどい。
寒くて疲れてたから彼を責められない、っていわれても。 -
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高島嘉右衛門は高島易断の創始者であり、明治時代に横浜を作った男の一人としても有名です。みなとみらいの近くに高島町という駅がありますが、このあたりの地名はこの人の名前からとっているのですね。
易者というと、その能力で危機回避したり、人を占って収入を得て生活していくというイメージを持ってしまいます。もちろん将来を判断するのに易を使います。本を読むと、彼の判断や行動力は、実業家そのものだということがよくわかります。明治の横浜は外国人が数多くいたのですが、新しい町である横浜には金持ちの外国人が泊まれるような高級旅館がないと見るや、作ってしまう。料理人や下女も歴史のある料亭や旅館からスカウトしてきてし -
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魔術協会の新作魔術発表会で人形の首が盗まれた。その数日後、首なし死体が発見されるが死体のそばには人間の首ではなくその人形の首が残されていた。
第二の殺人は列車での轢死。しかしその前にも人形がひき殺されていた。
実際の殺人の前に必ず人形によって殺人を予告する犯人。
「人形はなぜ殺される?」
初・高木さんの名探偵・神津恭介シリーズです。
この作品が発表されたのは昭和30年。もう古典といってもいいかな。
いまから50年前の作品ですから貨幣の価値とか世相とか現代とはズレていますが、さすが名作と名高いだけあって面白かったです~!
犯人は中頃で「こいつが怪しい」というのはわかりましたが、動機・伏線・トリ -
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結構面白かったです。魏志倭人伝の記述が誤っている、とか、現在の地名と響きが似ている、といった論証方法をとらずに、あくまで魏志倭人伝に書かれてる内容に忠実に、論理的に邪馬台国の場所を比定しよう、という安楽椅子ならぬ病床探偵小説で、なかなか納得させられるものがありました。ただ、最後6分の1くらいが、ちょっと説得力に欠けたかな。以前に、鯨統一郎氏の『邪馬台国はどこですか』を読んで面白かったですが、鯨氏がこの『邪馬台国の秘密』の新装版のあとがきを書いていて、その中でこの本がなければ自分は作家にならなかっただろう、というようなことを書かれていたのが印象的でした。自分が影響を受けた本の題材にここまで正面き
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ネタバレバイクにはねられ、みたび入院することになった神津恭介。推理作家の松下研三の提案で、日本古代史の実相を探ることに。『成吉思汗の秘密』『邪馬台国の秘密』に続く、歴史推理の第三弾。
今回のテーマは「邪馬台国のその後」「国譲りの神話」「神武東征」「騎馬民族征服王朝説」「神功皇后の三韓征伐」など多岐にわたり、非常に情報量が多い。『古事記』『日本書紀』からもたくさんのエピソードが引用されていて、聞き慣れない名前の神さまや人物が多数登場するので読むのに骨が折れた。また、現在では偽書とされている『東日流外三郡誌』に言及されていることにより、どうしても説得力に疑問を感じてしまう。
なお、本編冒頭では『成吉思 -
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盲腸で入院することになった神津恭介。退屈しのぎを探しているところに話題であがった「源義経=成吉思汗」説に興味を覚える。おなじみの探偵作家・松下研三、歴史学の研究室に勤める大麻鎮子とともに、この歴史的な一人二役のトリックを解明に乗り出す。現実の事件ではなく、歴史上の謎を推理するという新しい路線を示した作品。本編にまつわるエッセイや、短編「ロンドン塔の判官」も併録。
歴史書や文学作品などの文献や、各地の遺跡や史跡、伝承など、古今東西のさまざまな資料をもとに義経が成吉思汗であったという可能性を探っていく。全体的には面白く、なるほどと思うところも少なくないが、人名や地名などはあまりに日本語の読みに寄 -
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ネタバレ背中に刺青がある双子と言う事でほぼ想定通りだったかな。でも、細かい部分のトリック(特に密室)は分からなかったです。逆に外部で殺害して分割して狭い窓から中に入れたパターンかと思った。
最初、珠枝の写真を加工したかと思ったがそもそも珠枝(の脚)には刺青が無かったのね。そう言って珠枝の描写に戻って読み返すと確かに、際どいけど脚に刺青があるとまでは書いてありませんでした。
また、絹枝な死を想定させる描写(冒頭)や銭湯のシーンも微妙にぼかして書いてありますね。
文章は古典なのに読みやすかったです。ただ、技術が当時のものなのでリアリティラインの線引は難しいかもしれません。