高木彬光のレビュー一覧
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何を隠そう…というか、別に隠していないのですが、古色蒼然とした"探偵小説"が好きです。(推理小説というより探偵小説という感じが合っているかと)
しかし、高木彬光氏の作品は不覚にもこれまで『能面殺人事件』しか読んだことがなく、今更ながらにこちらを読みましたが…
なるほど。日本の探偵小説・推理小説オールタイムベスト投票のような企画で必ず上位に入る作品だけあります。
今となっては(他の推理小説を読みつけた身としては)トリックの要のところは読めてしまいますが、この、"耽美な"プロットがいい。そしてこの「読者への挑戦状」にはしびれる(笑。大いに楽しみました。 -
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傑作セレクションと銘打っているだけあり、6編の高純度の密室モノが読めます。
冒頭を飾る『白雪姫』は陳腐なトリックの裏に隠れた罠にしてやられました。張られた伏線がミスディレクションにもなるという素晴らしい逸品。
続く『月世界の女』『鏡の部屋』『黄金の刃』の3編は巧さは感じるものの、構造自体は単純。
そして『影なき女』の捻くれたプロットでまたもや騙され、ラストの傑作『妖婦の宿』で高木彬光の凄さを再認識。犯人当てミステリを語るときには外せない作品だと思います。意外な犯人を突き詰めたエドマンド・クリスピンの『誰がベイカーを殺したか』ほど意地悪ではないので、違和感を拾っていけば、必ず正解へとたどり着けます。
初めての高木彬光としてもオススメです。 -
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ネタバレ『死美人劇場』
神津恭介が発見した女の死体。死美人劇場と名付けられたストリップ小屋での殺人。被害者はエミー山田というダンサー。マリア・ローザというダンサーの代わりにある屋敷に派遣されていたエミー。洞爺丸事件に巻き込まれていたというアリバイのあるパトロンの天沼健二。
『嘘つき娘』
女性が殺害されたというタレこみの電話を受け現場に向かった真鍋記者。被害者は松野菊枝。嘘つき少女として新聞に投稿した福田慶子のと事件の関係。事件直前被害者にコートを届けた慶子。男関係が激しかった菊枝。菊枝の恋人の一人・佐久間源一と慶子の関係。
『青髭の妻』
かつて「青髭」と呼ばれた連続妻殺しの犯人。その男の生き残った妻の出演する舞台の脚本を担当する松下研三。男を惑わす女優の死。
舞台のスポンサーである河野の夫人は第二の青髭事件の目撃者だった女性。第二の青髭事件の被害者である女性の弟・尾島大尉の登場。
『女の手』
飲み屋であった女を送って帰った松下研三。彼の懐に入れられた拳銃。その夜起きた女優・吉野小夜子殺害事件。切り取られた小夜子の腕の謎。松下研三が目撃した光る女の腕。その近くで殺害された女スリ・お菊。お菊は研三に拳銃を渡した女だった。お菊の情夫に変装し犯人と接触した神津恭介。
『ヴィナスの棺』
神津恭介にダイヤモンドを渡し自分の遺体を探すように依頼してきた女。銀杏屋敷と呼ばれる屋敷から戦前に消えた伊馬笙子。消えた彼女の夫と宝石。現在の住人である春藤の証言。防空壕の中の壁に隠された秘密。
『血塗られた薔薇』
神津恭介が出会った女。同じタクシーに乗り合いカバンを間違われる。血痕のついたカバンと中身の抜き身のナイフ。翌日カバンを受け取りにきた姉の加藤百合子。植物園で殺害された百合子。消えた恵美子。恵美子の周囲に出没する男たち。神津と共に事件を追う小山内の秘密。 -
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神津恭介が活躍する短編集。
全編密室ものです。
【白雪姫】
密室物ですがトリックよりもプロットの上手さが光っていると思う。
雪国に向かう列車内で偶然居合わせた白雪姫のように美しい女性という出だしも幻想的でいい。ラストの風景も素敵だった。
双子の登場によって当然入れ替えトリックが浮かびますが、それを逆手にとって二転三転する展開もおもしろいです。
しかし、神津恭介はちょっとうっかりだったんじゃないでしょうか。
人を疑う以上迂闊なことは言えないというのは分かりますが、、新たな事件発生を予期しながらもそれを誰にも伝えず、防げなかったのはひどい。
寒くて疲れてたから彼を責められない、っていわれても。
【月世界の女】
竹取物語のように、自分は月に帰らねばならないという美しく聡明な女性の消失事件。聡明な女性ということですが、あんな意味不明な言動をする人に対して警戒心や不信感を抱くのは普通の反応ではないでしょうか。これが彼女の為になったのが疑問。
神津に対してこの石木め!絶交だ!と理不尽にあたったかと思えば、言を弄して事件を解明させようと呼び出す松下くんのわがままっぷりがかわいい。
消失トリックは状況を見れば自明。
【鏡の部屋】
消失トリックは単純ですが、かつて女魔術師が住んでいたといういわくつきの鏡の部屋での手品でおもしろいです。
あの人がなぜ新聞社に電話したのかが分かりませんでした。
【黄金の刃】
四次元がどーたらこーたら言っているわりに単純なトリックだと思ったものの、この言動が最後にあのような形で思い出されるのが哀しい。
最後の被害者はもうちょっとなんとかして救ってもらいたかった。
【影なき女】
次々と起こる事件がすべて密室殺人。その不自然さにもしっかり理由があり好感です。
「影なき女」という不気味な存在が全体に不穏な空気を与えており楽しい。
前半は神津が登場せず、別の探偵が活躍するのでどうなるのかと思っていましたが、こんな真相だったとは。
内容の濃い短編でとてもおもしろかったです。
【妖婦の宿】
途中で読者への挑戦が挟まれる本格ミステリ。
殺人予告ともとれる不気味な蝋人形の登場、限定された容疑者、見張られていた現場。なんとも楽しい状況です。
事件が起きる前から神津がついていながらの惨事、そこからの華麗な推理とお決まりのパターンですが、ここからまさかまさかの展開になりました。
真相への手掛かりはあからさまではあるものの、まさかね、ということが本当だったのでびっくり。
○○○○トリックがこんな形で使われるなんておもしろいです。 -
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高島嘉右衛門は高島易断の創始者であり、明治時代に横浜を作った男の一人としても有名です。みなとみらいの近くに高島町という駅がありますが、このあたりの地名はこの人の名前からとっているのですね。
易者というと、その能力で危機回避したり、人を占って収入を得て生活していくというイメージを持ってしまいます。もちろん将来を判断するのに易を使います。本を読むと、彼の判断や行動力は、実業家そのものだということがよくわかります。明治の横浜は外国人が数多くいたのですが、新しい町である横浜には金持ちの外国人が泊まれるような高級旅館がないと見るや、作ってしまう。料理人や下女も歴史のある料亭や旅館からスカウトしてきてしまうのですね。そうやって伊藤博文や大隈重信、陸奥宗光と言った明治時代のトップと親交を深めていきます。他には鉄道を引いたり、ガス灯を作ったり、風俗街まで(!)作ります。自分の利益も狙いますが、同時に明治期の日本の発展を願って、さまざまな事業に手を出していきます。
占いの精度もすごいですが、それを信じきる心の強さは並大抵ではない。高島嘉右衛門のダイナミックな男の生きざまが感じ取れる一冊です。 -
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魔術協会の新作魔術発表会で人形の首が盗まれた。その数日後、首なし死体が発見されるが死体のそばには人間の首ではなくその人形の首が残されていた。
第二の殺人は列車での轢死。しかしその前にも人形がひき殺されていた。
実際の殺人の前に必ず人形によって殺人を予告する犯人。
「人形はなぜ殺される?」
初・高木さんの名探偵・神津恭介シリーズです。
この作品が発表されたのは昭和30年。もう古典といってもいいかな。
いまから50年前の作品ですから貨幣の価値とか世相とか現代とはズレていますが、さすが名作と名高いだけあって面白かったです~!
犯人は中頃で「こいつが怪しい」というのはわかりましたが、動機・伏線・トリックはわかりませんでした。全部終わって、人形が殺される理由なんかもう驚き!さすがです!
魔術協会の会員たちだけあって、一癖もふた癖もある登場人物たちも、あやし~い雰囲気も大好きな世界です。
ただ、神津の設定が
「日本犯罪捜査史上、屈指の名探偵といわれる」
「医学博士と理学博士の二つの学位をもっている」
「財産もあり、ギリシャ彫刻のような美男子」
「素人ばなれのしたピアニスト」
なんて、もう万能のように描かれているのにちょっとひいてしまいましたが、ほぼ終盤まですべて犯人の後手にまわっているところでなんだか好きになってしまいました。 -
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結構面白かったです。魏志倭人伝の記述が誤っている、とか、現在の地名と響きが似ている、といった論証方法をとらずに、あくまで魏志倭人伝に書かれてる内容に忠実に、論理的に邪馬台国の場所を比定しよう、という安楽椅子ならぬ病床探偵小説で、なかなか納得させられるものがありました。ただ、最後6分の1くらいが、ちょっと説得力に欠けたかな。以前に、鯨統一郎氏の『邪馬台国はどこですか』を読んで面白かったですが、鯨氏がこの『邪馬台国の秘密』の新装版のあとがきを書いていて、その中でこの本がなければ自分は作家にならなかっただろう、というようなことを書かれていたのが印象的でした。自分が影響を受けた本の題材にここまで正面きって取り組んで作家デビューというのは、珍しいのでは?
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ネタバレ第1部「天皇の密使」、第2部「神々の黄昏」。第1部は山本五十六の密命で、天皇家がスイス銀行に預けた資金をもとに、ドイツを拠点として秘密裡に軍事戦略物資を集める海軍軍人のインテリジェンスと、その物資と資金を横取りしようとするSS将校との対決が主旋律となる物語。第2部は、その軍人が残したとされる遺産と新興宗教教団内部の跡目争いが絡んでいく、という展開。最後の「エピローグ」で、第1部が作中の小説家による創作だったことが明かされて、2部にわたる物語世界自体が蜃気楼のように消え去っていくという展開は、三島の『豊饒の海』4部作を想起させる。
第2部はややまだるい感じがするが、第1部のSSとのインテリジェンス対決の物語は読みごたえがあった。山戸という謎めいたスパイのキャラクターも魅力的。ヨーロッパに於ける「8・15」を描いた小説という点でも記録しておきたい(それが作中作で「捏造」と語られてしまうので、これ単独で論じにくくなってしまったのが何とも残念だが)。