高木彬光のレビュー一覧
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かつて(いまでも)日本を代表する名探偵であった神津恭介を主人公とする短編集。タイトルのとおり、密室殺人事件が並んでいる。
今読んでみると文体や人間の描き方、道具立てにさすがに書かれた時代を感じさせる。だけど全体としてすっきりと端正に感じられるのは、名探偵神津恭介のイメージでもあるし、小説内で描かれる謎解きのクリアーさのためだと思う。そういったあたりは全然負来るなっていないばかりか、逆に新鮮で驚く。
6編の短編集の中に、ミステリの典型的なアイデアが見本市のように並んでいて面白い。特に最後の2編は、稚気が感じられるほど作者が楽しんで書いたんじゃないかなって思う。時々でてくる機械的トリック -
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タイトルの「刺青」は「しせい」と読む。
刺青競艶会で他を圧倒して優勝をさらった絹江の「大蛇丸」。
研三と早川博士によって見つけられた死体は、密室の浴室で胴体だけが持ち去られたバラバラにされていた。
流れ出る水道の水で、死体の血はきれいに洗い流されていた。
やがて絹江の夫である竹蔵が発見され、絹江を殺して自殺したと思われた。
だが、第三の惨劇が起きる。
絹江の兄・常太郎が刺青を剥ぎ取られた状態で死体で発見された。
潜在的にすりこまれた密室にいだくイメージ。
トリック(密室)よりも、心理的に植え付けられた(ミスリードの)トリックが素晴らしい。
自雷也(文字は本分のまま)、大蛇丸、綱手姫にまつわる禁 -
Posted by ブクログ
何を隠そう…というか、別に隠していないのですが、古色蒼然とした"探偵小説"が好きです。(推理小説というより探偵小説という感じが合っているかと)
しかし、高木彬光氏の作品は不覚にもこれまで『能面殺人事件』しか読んだことがなく、今更ながらにこちらを読みましたが…
なるほど。日本の探偵小説・推理小説オールタイムベスト投票のような企画で必ず上位に入る作品だけあります。
今となっては(他の推理小説を読みつけた身としては)トリックの要のところは読めてしまいますが、この、"耽美な"プロットがいい。そしてこの「読者への挑戦状」にはしびれる(笑。大いに楽しみました。 -
Posted by ブクログ
傑作セレクションと銘打っているだけあり、6編の高純度の密室モノが読めます。
冒頭を飾る『白雪姫』は陳腐なトリックの裏に隠れた罠にしてやられました。張られた伏線がミスディレクションにもなるという素晴らしい逸品。
続く『月世界の女』『鏡の部屋』『黄金の刃』の3編は巧さは感じるものの、構造自体は単純。
そして『影なき女』の捻くれたプロットでまたもや騙され、ラストの傑作『妖婦の宿』で高木彬光の凄さを再認識。犯人当てミステリを語るときには外せない作品だと思います。意外な犯人を突き詰めたエドマンド・クリスピンの『誰がベイカーを殺したか』ほど意地悪ではないので、違和感を拾っていけば、必ず正解へとたどり着けま -
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ネタバレ『死美人劇場』
神津恭介が発見した女の死体。死美人劇場と名付けられたストリップ小屋での殺人。被害者はエミー山田というダンサー。マリア・ローザというダンサーの代わりにある屋敷に派遣されていたエミー。洞爺丸事件に巻き込まれていたというアリバイのあるパトロンの天沼健二。
『嘘つき娘』
女性が殺害されたというタレこみの電話を受け現場に向かった真鍋記者。被害者は松野菊枝。嘘つき少女として新聞に投稿した福田慶子のと事件の関係。事件直前被害者にコートを届けた慶子。男関係が激しかった菊枝。菊枝の恋人の一人・佐久間源一と慶子の関係。
『青髭の妻』
かつて「青髭」と呼ばれた連続妻殺しの犯人。その男の生き残った