寺田寅彦のレビュー一覧
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ネタバレ本と対話しながら感想を書いてました。それをそのまま転記します。ネタバレ注意です。
・寺田寅彦、夏目漱石の弟子。物理学者。
・一発目の「土の善し悪し」で、今と昔も環境に左右されるのは変わらねえんだなと思った。
・一節目からこの世の真理というか、当然の事をズバッと示された。共感する。日常と詞歌の間にはガラスがあるのみ。ただし穴が空いている。誰でもやろうと思えば通れる穴。通り抜けているうちに(触れているうちに)穴は大きくなり何時でも行き来できる。これはなんにでも当てはまる。俺だってギター弾かなくなったら下手くそになるし。
・p14,スッポンが鳴いた話好き。固定観念に囚われている人々を表現できている -
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物理学者にして文学者、さらには音楽家だったという寺田寅彦のマルチな才能を垣間見ることができた。
自然現象や、動物の生態、人の行動特性とか、身の回りで生じていることへの観察眼が多角的で冴えている。
師匠の夏目漱石同様、猫が好きだったみたいで、可愛らしい側面も垣間見える。
晩年は、日々病に蝕まれるなかで、人間の身体について淡々と描き続けていた様子が分かった。
当時は、自由に海外旅行へ行ったり、インターネットで情報収集したりできない時代だったが、寺田氏は視野が広くて自由な発想を持ち、時には婉曲的に、ソフトに社会を批判していたのだろう。
他の随筆集も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
東日本大震災直後(2011年7月)に編まれた、寺田寅彦随筆選である。編者の意図を超え、コロナ禍の現代に読むと、そのあまりにもいまの我々のために言ってるかのような言葉に溢れていて、びっくりした。
その幾つかを、以下に羅列する。
「天災と国防」(昭和9年)
・文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその激烈の度を増す
・日本のような特殊な天然の敵を四面に控えた国では、陸海軍のほかにもう一つ科学的国防の常備軍を設け、日常の研究と訓練によって非常時に備えるのが当然ではないかと思われる。
「流言蜚語」(大正13年)
・(大地震の最中毒薬を暴徒が井戸に投じたという噂に関して)いわゆる科学的常識とい -
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岩波文庫の随筆集を持っているので、角川ソフィア文庫から寅彦が刊行されたときにどうしようか迷ったのだが、購入して良かったと今は思う。
戦後間もない時期に角川書店から寅彦の本が何冊も出版されていたことも、今回の文庫化で初めて知った。
元版の角川源義氏、文庫版に新たに付された若松英輔氏の懇篤な解説があるので、印象に残ったことを数点。
「案内者」〜案内者によって見ること、考えることが拘束されてしまう危険。
「一つの思考実験」、「ジャーナリズム雑感」〜かなり手厳しい見解が表明されている。
「レーリー卿」〜寡聞にしてこの人を知らなかったが、寅彦の親愛感が現れている。
「丸善と三越」〜寅彦らし -
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I先生の追憶、II先生に集う人たち、III先生の俳諧の3部構成。
IIは正岡子規がテーマの作品が多く、I・IIIも漱石が僅かしか登場しない作品も結構ある。小宮豊隆や森田草平と比べると、寅彦が漱石について書き残した量は少なかったということだろう。もっとも、IIでも例えば『仰臥漫録』を漱石の「修善寺日記」と対比しつつ論じたものなど、鮮やかな作品が収録されている。
「『朝 ヌク飯三ワン 佃煮 梅干 牛乳一合ココア入 菓子パン 塩センベイ……』こういう記事が毎日毎日繰返される。それが少しも無駄にもうるさくも感ぜられない。読んでいる自分はその度ごとに一つ一つの新しき朝を体験し、ヌク飯のヌク味とその香