【感想・ネタバレ】漱石先生のレビュー

あらすじ

先生はごく温かい柔らかい心持ちを持った、いわばあの作物の中の坊ちゃんであられたのである――自他共に認める「別格の弟子」が、教師と生徒としての第五高等学校での出会いから、その素顔と作品、周辺に集う人々までを親愛と哀惜の情をこめて語る。文庫オリジナル
〈座談〉小宮豊隆・松根東洋城・寺田寅彦
〈巻末エッセイ〉中谷宇吉郎
(目次より)
Ⅰ 先生の追憶
夏目先生/蛙の鳴声/夏目先生の自然観/「柿の種」より/夏目漱石先生の追憶/埋もれた漱石伝記資料/「自由画稿」より/『普及版漱石全集』内容見本推薦文/『決定版漱石全集』内容見本推薦文/日記より三句/思ひ出るまゝ
Ⅱ 先生に集う人たち
根岸庵を訪う記/初めて正岡さんに会った時/仰臥漫録/子規自筆の根岸地図/子規の追憶/『子規全集』/明治三十二年頃/芥川竜之介君/高浜さんと私/『藪柑子集』自序/『藪柑子集』執筆当時の追憶/『漱石襍記』について/津田青楓君の画と南画の芸術的価値
Ⅲ 先生と俳諧
夏目先生の俳句と漢詩/天文と俳句/涼味数題/思出草/俳諧瑣談/こころもち/〈座談〉小宮豊隆・松根東洋城・寺田寅彦 漱石先生俤草/『漱石俳句研究』より
〈巻末エッセイ〉中谷宇吉郎 寒月の「首縊りの力学」その他/冬彦夜話

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

漱石の門下生と言われる人々の中でも、早くから漱石に師事した寺田寅彦。物理学者にして文学・俳諧を理解する寺田氏は余程漱石先生が好きだったんだな~。漱石が亡くなった直後の記者の聞き書きによる記事から始まる本書。根岸庵(正岡子規)訪問記、津田清楓へのエール、そして俳諧を機縁とした漱石の俳句を松根東洋城、小宮豊隆と論ずる座談と、読み応え満載。解説に相当する「寺田寅彦先生」「冬彦夜話」は、奇しくも寺田寅彦没後に書かれているのも感慨深い。

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2024年12月15日

Posted by ブクログ

8月13日購入。
一昨日の会食相手と夏目漱石や寺田寅彦の話などしていたものだから、書店で一際目に付き購入してしまった。
漱石先生のことを書いているようで、その実、明治大正という時代が垣間見える。
そうか、随筆はこういう楽しさがあるのだなと改めて思う。

ちなみに中谷宇吉郎著作の『寺田寅彦』も一緒に購入してしまったのだが、漱石先生の巻末に件の宇吉郎先生も登場しており、いやはや読む前から聯想の坩堝に見事にはまっていたなと苦笑。

こういう読書も楽しい。

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2020年08月16日

Posted by ブクログ

寺田寅彦自身の科学と文学の思想がいかなるものかについて、とりあえず手にとった本書では多くは語られていないが
当時の特色も踏まえた漱石との師弟関係のあり方や、寺田ー漱石を通じた俳句論の片鱗を垣間見ることができた。

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2021年11月30日

Posted by ブクログ

I先生の追憶、II先生に集う人たち、III先生の俳諧の3部構成。

IIは正岡子規がテーマの作品が多く、I・IIIも漱石が僅かしか登場しない作品も結構ある。小宮豊隆や森田草平と比べると、寅彦が漱石について書き残した量は少なかったということだろう。もっとも、IIでも例えば『仰臥漫録』を漱石の「修善寺日記」と対比しつつ論じたものなど、鮮やかな作品が収録されている。

「『朝 ヌク飯三ワン 佃煮 梅干 牛乳一合ココア入 菓子パン 塩センベイ……』こういう記事が毎日毎日繰返される。それが少しも無駄にもうるさくも感ぜられない。読んでいる自分はその度ごとに一つ一つの新しき朝を体験し、ヌク飯のヌク味とその香を実感する。そして著者と共に貴重な残り少ない生の一日一日を迎えるのである。牛乳一合がココア入りであるか紅茶入りであるかが重大な問題である。それは政友会が内閣をとるか憲政会が内閣をとるかよりは遥かに重大な問題である。」(「仰臥漫録」1927年)

なお、中谷宇吉郎のエッセイ2本が解説代わりに付いている。うち1本は、『猫』の「首縊りの力学」と元ネタの英語論文とを比べるもので、なかなか面白かった。

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2020年07月23日

Posted by ブクログ

夏目漱石の一番弟子である著者の、夏目漱石に関する文章。
初めて読んだ時は著者のこともよく知らなかったし、夏目漱石以外のこともたくさん書いてあるなあ…と思って興味を失い、一度挫折したんだけど、それから夏目漱石とその周りの人のことを知り、改めて興味をもって読み始めた。そんな目線で見てみると、この本は夏目漱石、と少しでも出てくる話を収録してるんだ、と気づいた。そして、著者の夏目漱石への愛!夏目先生、みんなから愛されすぎです!

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2023年12月14日

Posted by ブクログ

 こういう形で一冊を編んでもらえると、また違った角度から寅彦の文章を味わえる。

 何よりも感じられるのは、師漱石に対する敬愛の念である。漱石だからということもあるのだろうが、当時の濃密でいて、だからと言ってベタついたところのない関係が偲ばれる。  

 特に本書からは、漱石の句作について、いろいろと教えられるところが多かった。 

 また、『根岸庵を訪う記」他子規に関する文章も多く収められているが、その跡家に最近行ったばかりなので、当時とは地形なども変わってしまったのだろうが、しみじみしたものを感じる。

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2020年07月27日

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