寺田寅彦のレビュー一覧
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ネタバレ物理学者である寺田寅彦の随筆集。短いものは1ページちょい、長い者でも10ページに満たない様々な文章が収められており、どれを読んでも楽しめます。
物理学者であるにも関わらず、文学者のような視点も備えた著者が見た大正と昭和の時代の移り変わり、そして関東大震災後の復興の様子もここから読み取れます。
体の弱かったらしい著者の、「泥坊のできる泥坊の健康がうらやましく、大臣になって刑務所へはいるほどの勢力がうらやましく、富豪になって首を釣るほどの活力がうらやましい。」という文章には、シニカルで滋味深い著者の力量が感じられます。折りを見てゆっくりと読み返したい本です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【本の内容】
「天災は忘れた頃にやって来る」の名言で有名な寺田寅彦の、地震と津浪に関連する文章を集めた。
地震国難の地にあって真の国防とは何かを訴える色あせぬ警告の書。
寺田寅彦が漱石門下の友人小宮豊隆に送った「震災絵はがき」のカラー図版十葉を収める。
[ 目次 ]
断水の日
事変の記憶
石油ランプ
地震雑感
流言蜚語
時事雑感
津浪と人間
天災と国防
災難雑考
地震の予報はできるか
大正十二年九月一日の地震について
地震に伴う光の現象
震災日記より
小宮豊隆宛書簡(大正十二年九月-十一月)
無題
[ POP ]
寺田寅彦(1878~1935)が漱石門下の友人、小宮豊隆に送った関東大震 -
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古本で購入。
「天災は忘れた頃にやってくる」
と言った(と言われている)物理学者、寺田寅彦の短いエッセイを集めた本。
「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」
という著者の願いを無下にした一読者ではあるけれども、夜ごと数編を読んで眠りにつけば、きっとゆったりした心持ちになれるだろう。
寺田寅彦の「気付き」の鋭さおもしろさに唸らされる。
いっこうに花の咲かないコスモスに、ある日アリが数匹いた。よく見ると蕾らしいのが少し見える。コスモスの高さはアリの身長の数百倍、人間にとっての数千尺にあたる。そんな高さにある小さな蕾を、アリはどうして嗅ぎつける -
Posted by ブクログ
本書は大正~昭和初期にかけて発生した天災等を題材にして、物理学者・寺田寅彦氏が科学的視点から考察・分析した随筆・論評の短編が12編収められています。
取上げられている題材は80~100年前であるにもかかわらず、その切り口、分析、問題点の指摘等は現代でも色褪せる事無く同意できる部分大であることには驚きます。さらに、その天災・災害の根本を問う姿勢は人間の拭い難い特質や神話・民族・宇宙・進化論様々に思い巡らして思慮に思慮を重ねており、文脈の端々から当時最先端であった量子論を意識したと思われる洞察や、果てはまだその存在すら科学的立場からは意識されていないはずの”複雑系”を匂わせるような見識も持 -
Posted by ブクログ
寺田寅彦という人物の評判だけ凄い感じで、皇室も本書を有り難く読んでいるとか言われても、正直言うとピンと来ない。先週から色んな会合に参加し、その度に酒を飲み、前後不覚では本も読めず、酩酊しながらレビューを書くが、こんな簡単な自身の線引きからわかるのは、人は書くより聞く方が難しい生き物だという事。ならばエッセイなどは、何割も引いて読まねばなるまい。適当に書いたものを有り難く読む、アル中のスノビズムの情けなさよ。
あるいは人の想像力の逞しさ。または、見たいものを見たいように見ているだけの独善的な仮想世界よ。
その虚勢こそが、物理学の泰斗してのアイコン化された寺田寅彦の存在そのものではないかと。マ