寺田寅彦のレビュー一覧

  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    明治生まれの科学者、寺田寅彦の随筆集。俳句雑誌の巻頭に寄せた文章が中心となっている。著者が先生と呼ぶ、夏目漱石の影響が文章にも感じられる。特に短章 その1のほうは、夢十夜のような幻想的な雰囲気さえある。
    後書きは、池内了によるのもので、阪神大震災の1年後に書かれており、著者が触れている関東大震災後の日本への警鐘を、今の日本にも通ずるとしている。東日本大震災が起こった今、更にその思いを強くせざるを得ない。
    (2015.2)

    0
    2015年02月11日
  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    物理学者である寺田寅彦の随筆集。短いものは1ページちょい、長い者でも10ページに満たない様々な文章が収められており、どれを読んでも楽しめます。
    物理学者であるにも関わらず、文学者のような視点も備えた著者が見た大正と昭和の時代の移り変わり、そして関東大震災後の復興の様子もここから読み取れます。

    体の弱かったらしい著者の、「泥坊のできる泥坊の健康がうらやましく、大臣になって刑務所へはいるほどの勢力がうらやましく、富豪になって首を釣るほどの活力がうらやましい。」という文章には、シニカルで滋味深い著者の力量が感じられます。折りを見てゆっくりと読み返したい本です。

    0
    2014年11月22日
  • 地震雑感/津浪と人間 寺田寅彦随筆選集

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    【本の内容】
    「天災は忘れた頃にやって来る」の名言で有名な寺田寅彦の、地震と津浪に関連する文章を集めた。

    地震国難の地にあって真の国防とは何かを訴える色あせぬ警告の書。

    寺田寅彦が漱石門下の友人小宮豊隆に送った「震災絵はがき」のカラー図版十葉を収める。

    [ 目次 ]
    断水の日
    事変の記憶
    石油ランプ
    地震雑感
    流言蜚語
    時事雑感
    津浪と人間
    天災と国防
    災難雑考
    地震の予報はできるか
    大正十二年九月一日の地震について
    地震に伴う光の現象
    震災日記より
    小宮豊隆宛書簡(大正十二年九月-十一月)
    無題

    [ POP ]
    寺田寅彦(1878~1935)が漱石門下の友人、小宮豊隆に送った関東大震

    0
    2014年10月31日
  • 地震雑感/津浪と人間 寺田寅彦随筆選集

    Posted by ブクログ

    物理学者にして文学者でもある寺田寅彦。

    彼の地震(あるいは災害全般)に対する鋭い洞察は、いつの時代でも通用する。

    自然災害がかならず起こる日本。
    寺田寅彦の警句は、東日本大震災後の日本においても、伝わるものがある。

    しかし、時の為政者は、その警句をわすれ、あるいは、また、その時代を生きる人間もわすれがちである。

    名文集。

    0
    2014年02月08日
  • 天災と国防

    Posted by ブクログ

    今に通じる内容。
    陸海空軍以外に、第4ジャンルとして新たな天災対策軍を作った方が良いのでは、というのには納得させられた。今ではそういうのもあるんだろうけど。
    あと、旧来からの建物がなぜ壊れないかと言う論で「自然淘汰」の話が出てきたのが興味深かった。天災に逆らおうというのは現実的ではない。だからその天災から安全地帯に逃げた結果、被害が少なくて済む場所に自然に集落ができた、と。
    今回の大震災の津波被害も、沿岸部から山に集落が移動するきっかけになるんだろうか。どこが安全だなんて言い切れないのが現実だが。

    0
    2013年09月26日
  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    古本で購入。

    「天災は忘れた頃にやってくる」
    と言った(と言われている)物理学者、寺田寅彦の短いエッセイを集めた本。
    「なるべく心の忙しくない、ゆっくりした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」
    という著者の願いを無下にした一読者ではあるけれども、夜ごと数編を読んで眠りにつけば、きっとゆったりした心持ちになれるだろう。

    寺田寅彦の「気付き」の鋭さおもしろさに唸らされる。
    いっこうに花の咲かないコスモスに、ある日アリが数匹いた。よく見ると蕾らしいのが少し見える。コスモスの高さはアリの身長の数百倍、人間にとっての数千尺にあたる。そんな高さにある小さな蕾を、アリはどうして嗅ぎつける

    0
    2013年09月20日
  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    なんて素敵な本なんだろう。科学とは。生きるとは。
    こういうふうに純粋に、学問のひろがりを味わってたのしむことが、やはり心の忙しくなりやすい現代ではなかなか叶わないから。
    科学を志すひとにもそうでないひとにも、いちど手にとってもらいたい。
    科学の原点とは何であったか、見失わずに科学と向きあっていけたらと願う。

    0
    2013年05月22日
  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    p.29 この説明が仮に正しいとしても、この事実の不思議さは少しも減りはしない。不思議さが少しばかり根元へ喰い込むだけである。
    p.92 にぎやかな中に暗い絶望的な悲しみを含んだものである。

    科学と文学と感覚の不可分さがシックリ腑に落ちる。

    0
    2013年01月06日
  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    再読。
    この本がきっかけで、寺田寅彦を知りました。
    科学者から見た世界は、不思議さと鋭さと温かさに満ちている気がします。

    0
    2012年10月18日
  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    随筆のお手本のような1冊。
    こんな平易な文章で 何気ない日常を切り取って 鮮やかな印象を残す。
    本来の意味での「観察」を怠らない 注意深く 好奇心旺盛な双眸が 「
    くもりなき 瞳」というべきものだろうか?

    p.60 そのなつかしそうな声をきいたときに、私は、急に何物かが胸の中で溶けて流れるような心持ちがした。

    0
    2012年09月03日
  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    無粋な人ならば、あまり日常のことに気を留めない人ならば通り過ぎるところを興味深く観察しているのが良い。あ~確かに!ってなる。
    科学者が文学者であることに納得がいった。
    機知に富んだ話に休憩をはさむように猫の話が出てくるのがまた良い。

    気になったこと:ナシ赤星病の話がある気がする。

    0
    2015年02月02日
  • 天災と国防

    Posted by ブクログ

    地球物理学者にして、夏目漱石の文学上の弟子でもあった寺田寅彦のエッセイ。

    特に、昭和八年に東北を襲った大津波に関するエッセイ『津浪と人間』は、そのまま今回の東日本大震災に用いることができるものだ。三陸大津波、昭和八年の大津波での教訓を、後世のわれわれに伝える内容である。

    逆に言えば、われわれは何も進歩していないということか。

    0
    2012年03月24日
  • 天災と日本人 寺田寅彦随筆選

    Posted by ブクログ

    寺田寅彦さんの文章に中学生の頃初めて出会って以来の大ファン。(「茶碗の湯」とか「金平糖」とかだったかな)岩波文庫で全集持ってますが、買ってしまいました。やっぱり好きです。お弟子さんの中谷宇吉郎さんも大好きです。

    0
    2011年12月23日
  • 天災と日本人 寺田寅彦随筆選

    Posted by ブクログ

     今般の東日本大震災を機に、改めて災害に対する備えとそもそも災害も含めた自然観を振り返る意味で手にとった本です。
     著者は物理学者であり随筆の達人寺田寅彦氏。日本列島の地勢の特殊性を踏まえ、自然科学を礎としつつも日本人論にも踏み込んだそれぞれの作品は、今読んでもなお大変示唆に富む興味深いものです。
     特に、「天災と国防」「津波と人間」「颱風雑俎」「災難雑考」等の小文で述べられている寺田氏の主張は、まさに東日本大震災の被害を目の当たりにした現代、この瞬間になおさらに活きる箴言だと思います。

    0
    2011年10月15日
  • 天災と国防

    Posted by ブクログ

     本書は大正~昭和初期にかけて発生した天災等を題材にして、物理学者・寺田寅彦氏が科学的視点から考察・分析した随筆・論評の短編が12編収められています。
     
     取上げられている題材は80~100年前であるにもかかわらず、その切り口、分析、問題点の指摘等は現代でも色褪せる事無く同意できる部分大であることには驚きます。さらに、その天災・災害の根本を問う姿勢は人間の拭い難い特質や神話・民族・宇宙・進化論様々に思い巡らして思慮に思慮を重ねており、文脈の端々から当時最先端であった量子論を意識したと思われる洞察や、果てはまだその存在すら科学的立場からは意識されていないはずの”複雑系”を匂わせるような見識も持

    0
    2011年10月06日
  • 天災と国防

    Posted by ブクログ

    今読んでも古典たるにふさわしい名文だ。科学的態度を身につけるとはどのようなことかを考えさせる。中の一節、「科学の効果が滑稽なる程度にまで買いかぶられているかと思うと、一方ではまた了解のできないほどに科学の能力が見くびられている。」現在の状況を喝破したような文章である。

    0
    2011年08月07日
  • 天災と国防

    Posted by ブクログ

    各社から寺田虎彦の同類のエッセイ類を集めた本がいくつか出版されているが、畑村先生の解説と併せて読めるといった点で、本書が一番ではないか。
    東日本大震災のことを後世にいかに伝えていくかということを考えた時、収録されている「津波と人間」をテキストとして子どもたちに伝え考えさせるということをしてはどうだろうか。
    畑村先生の『未曽有と想定外』(講談社現代新書)と併せて、是非読んでほしい一冊である。

    0
    2011年07月29日
  • 地震雑感/津浪と人間 寺田寅彦随筆選集

    Posted by ブクログ

    「天災は忘れたころにやってくる」という有名な言葉を残した寺田寅彦が関東大震災と昭和三陸大津波について書き残したエッセイをまとめてます。もう一から十までもっともでうなずけることばっかりの示唆に富んだ文章です。科学者だしね。今こそ広く読まれるべきだと思います。おすすめ。

    0
    2011年07月26日
  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    寺田寅彦という人物の評判だけ凄い感じで、皇室も本書を有り難く読んでいるとか言われても、正直言うとピンと来ない。先週から色んな会合に参加し、その度に酒を飲み、前後不覚では本も読めず、酩酊しながらレビューを書くが、こんな簡単な自身の線引きからわかるのは、人は書くより聞く方が難しい生き物だという事。ならばエッセイなどは、何割も引いて読まねばなるまい。適当に書いたものを有り難く読む、アル中のスノビズムの情けなさよ。

    あるいは人の想像力の逞しさ。または、見たいものを見たいように見ているだけの独善的な仮想世界よ。

    その虚勢こそが、物理学の泰斗してのアイコン化された寺田寅彦の存在そのものではないかと。マ

    0
    2025年10月16日
  • 柿の種

    Posted by ブクログ

    物理学者の短文集なのでどうかなぁと思っていたら、これが結構面白い。癖になる。はぁなるほどなと思うものもいくつかあったのでまたゆっくり再読しよう。

    0
    2025年04月25日