寺田寅彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
災害の多い日本だからこその随筆集。大勝から昭和初期に書かれたものだが、災害の様子も寺田寅彦の語る内容も、これって現在のことか?と思えるものばかり。
『天災と国防』昭和9年(1934年)11月
災害の無い時に準備をしなければいけないのに、それをせずに「非常時」と騒いでしまうことについて。
日本は、地理の問題として世界の国々との関係が特殊になり、多くの仮想敵国を想定して防衛の準備をしなければいけない、それと同時に、気象学的地球物理学的にも極めて特殊な場所であるので、常に特殊な天変地異に晒されていることを忘れてはならない。
日本は、陸海空の軍備の他に、科学的国防の常備軍が必要なのではないか?転々の -
購入済み
寺田寅彦らしさ。
寺田寅彦さんの本は難しいです。
数式や確率の話だとか、頭を使う文章が多いように感じます。けれどこの文章はとてもわかりやすいです。自分が物事に対してどう思っていて、どうすればよかったのかを淡々と書いていて、共感できる部分もあればクスッと笑える部分もある。
寺田寅彦さんの人となりがわかる、良い文章です。
-
Posted by ブクログ
明治〜昭和初期にかけての日常のあれやこれやを著名な物理学者おじさん(おじいさんか)が好き勝手に考察して書く随筆。
当時の男性の書く文章で、やや難解だったけれど非常に面白かった。当時の世の中のこともわかり、とにかく大変に興味深い。
飼い猫のこと、絵画のこと、地震、火災、庭の植物、映画、音楽、ラジオ、研究、そして東京という町…。おじさんの興味は多岐に渡り、それらについて、驚くほど現代にも通じる感性で語られている言葉たち。
人間の営みの変化する様と同時にその普遍性を強く感じた。
そして、この人は現代に生きていたら間違いなくスタバで論文を読んでるおじさんになっていただろうな、などと勝手に想像して笑っ -
Posted by ブクログ
ネタバレ震災の時からずっと読みたかったのですが、本屋で見つけられず、最近やっと購入できました。
昭和の災害について書かれた文章なのにそのまま今も通用する。全く進歩していないのかな日本人。
(読中)面白いです。そして文章がとても読みやすい。戦前の文章なので少し敷居が高かったのですが、すっと頭に入ります。
(読後)何回も読み返すべき本だと思った。
日本人の自然観は日本人の宗教観など精神部分にも触れとても興味深かった。寺田寅彦の時代からこちら、日本でも自然破壊が進み、里山は崩壊し、人の住むところはコンクリートとアスファルトにおおわれて久しいが、日本人の芯の部分はまだ変わっていないと、いいなと思う。 -
Posted by ブクログ
私が私淑している寺田寅彦の本。
この人の頭の中を一度覗いてみたい。この人が見てる景色を見てみたい。きっと全く違う世界が広がっているのだろうと思う。知識の量によって入ってくる情報の量が変わると聞くので、普通の人が何気なく見過ごしている日常の中でも寺田寅彦ほど博学な人は些細な物事から多くの発見をし、いろんな考えや思いが巡るのだろう。
特に「浅草紙」は私の大好きな話。1枚のありふれた浅草紙からエマーソンのシェークスピア論やラスキンの剽窃問題論が思い起こされ、人も紙も作りが同じであることに彼は気がつく。
「価値のある独創は他人に似ないという事ではない。」「最大の天才は最も負債の多い人である。」「どん -
Posted by ブクログ
「科学の歴史はある意味では錯覚と失策の歴史である。偉大なる迂愚者うぐしゃの頭の悪い能率の悪い仕事の歴史である。
頭のいい人は批評家に適するが行為の人にはなりにくい。すべての行為には危険が伴なうからである。けがを恐れる人は大工にはなれない。失敗をこわがる人は科学者にはなれない。」
「科学者とあたま」を読んでふと道垣内先生の法律家の在り方を述べた話を思い出しました。「歴史上、世の中を変えた法律家はいないので、たかが法学と突き放すぐらいで良いと思います。世の中を変えているのは、哲学・政治・経済・科学技術ですね。せいぜい、そのような哲学者たちを邪魔しない法律家になってほしいです。法律というのは、ど -
Posted by ブクログ
ネタバレ寺田寅彦は、日本文化や日本事情の授業を担当した私にとっては、よく見ていた名前だったので、良書だと思っていました。で、実際に読んでみてそうでした^^
「天災は忘れたころにやってくる」という警告を発したということでも有名な寺田寅彦。この随筆集に収録されているのは、昭和25年ぐらいまでのもので、「天災と国防」という短編は昭和9年(1934年)、日本が中国大陸に侵略し始めていたころの時代に、書かれた随筆です。
この「天災と国防」は、随筆集の冒頭に収録されていますが、文明と災害というテーマで、「陸海軍の防備が十分であっても肝心な戦争の最中に安政程度の大地震や今回の颱風あるいはそれ以上の者が軍事に関する首