長谷川櫂のレビュー一覧

  • 子規の宇宙

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    俳人の長谷川櫂が正岡子規について書いた文章をまとめたものである。特に、病床の子規が「悟りとは平気で生きること」と書き、悲惨な人生をも楽しんで生きようとしたこと、そのために身の周りの自然や人々を俳句や短歌で荘厳したとするところは、共感する。何よりも、巻末の長谷川櫂選の正岡子規句集二百八十六句がうれしい。「つきあたる迠一いきに燕哉」「我宿にはいりさう也昇る月」「蛍狩袋の中の闇夜かな」「大仏にはらわたのなき涼しさよ」「白魚や椀の中にも角田川」「紙雛や恋したさうな顔許り」「ずんずんと夏を流すや最上河」「六月を綺麗な風の吹くことよ」「我死なで君生きもせで秋の風「山茶花のここを書斎と定めたり」「雪残る頂一

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    2025年10月29日
  • 四季のうた 井戸端会議の文学

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    いろいろな作家、作品が載せられていて愉しんだ

    伊藤一彦 岩岡中正 岡野弘彦 小島ゆかりを知る

    雪降れば地蔵に笠をかぶせゆくそんなあなたとふたりの暮らし(馬淵のり子)
    でも現実は
    たんぽぽの野道はやさし疲れたなあじぶんに言へどじぶん応えず(小島ゆかり)

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    2025年04月02日
  • 小林一茶

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    小林一茶の俳句から100句を選んで、作られた年代順に解説しながら紹介していく一冊。

    これ、ものすごく良い本でした。一茶の生涯を辿りながら句が紹介されていくのだけど、その句のどこが面白いのかを技法的な面にも触れながらすごく丁寧に解説していて、さらに、関連する芭蕉とか子規などの句も紹介されて、俳句がどのように変遷したのかもすごく分かりやすく解説されていて、めちゃくちゃ面白かったです。

    一茶は使われている言葉が現代に近いし、身近な題材も多いから、俳句自体も読みやすいのが良いですね。

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    2024年12月19日
  • 和の思想 日本人の創造力

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    「和」とは何か、本書ではそれを和菓子から考えてみます。和菓子とは「江戸時代の終わりまでに完成していたお菓子」という定義があるようで、この定義に照らすと羊羹も饅頭も和菓子になります。しかしこれが「純正日本発」かというとまったくそんなことはなく、江戸時代よりもずっと昔に中国などから輸入されたものを起源としているわけです。
    そのうえで著者は「和」とは外国からの「受容」「選択」「変容」という創造的プロセスを指すと結論付けます。これは納得のいく説明でした。
    また本書では俳句の解説に多くのページを割いていますが、松尾芭蕉の有名な句「古池や 蛙飛び込む水の音」の解説が面白かった。それは現実世界の現象と「心の

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    2024年04月17日
  • 決定版 一億人の俳句入門

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    なぜ切字を使うのか。
    なぜ季語が必要なのか。
    この2点に集中して解説してくれます。

    特に切字のところが良かったのですが、それは俳句の型の4分類が明快だから。
    1 一物仕立て 生きながら一つに冰る海鼠哉
    2 一物仕立ての変形 山も庭に動き入るゝや夏座敷
    3 取り合わせ 菊の香やならには古き仏達
    4 取り合わせの変形 さまざまの事おもひ出す桜かな

    私は以前から俳句には初見でやたら意味がとりにくいものがある、論理の飛躍について行けないものがあると感じていました。
    既知のはずの日本語なのに、どのように読めばいいか混乱してしまうのです。

    本書の4分類のように有限個のパターンのどれかだというなら、混

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    2022年12月31日
  • 文学部で読む日本国憲法

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    日本国憲法を文学のように読もうという意図がある。
    特に前文の解釈がわかりやすかった。作成した側の意図や気持ちのようなものが感じられて、憲法をこのように読む方法もあるのか、と目から鱗が落ちた。

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    2022年09月21日
  • NHK「100分de名著」ブックス 松尾芭蕉 おくのほそ道

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    芭蕉が描いた巧妙な半フィクション作品。人生を感じる素晴らしい内容でした。長く生きて来て到達する『かるみ』の境地はグッときました。日本人に生まれて感謝!

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    2021年11月19日
  • 松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙

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    芭蕉、蕪村、一茶、余りに有名かつ定番の俳人であるが、本格的に比較して鑑賞したのは恥ずかしながら初めてであった。
    中でも、蕪村は他の2名と比べて写実的、と云われていると思うのだが、どうしてどうして非常に心理描写を巧みに取り入れた作品が多く、あらためて感銘を受けた次第である。俳諧というものは、素人の私が云うのもおこがましいが、深いものだと感じた。

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    2016年07月14日
  • 「奥の細道」をよむ

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    これは良かった!私は俳諧のまったくの初心者なのだが、芭蕉の世界を理解できた。和歌は、三十一文字で一つの世界を読み上げるが、俳諧は切れのところでまったく違う
    (心の世界)へ飛ぶ。初めはそれがわかりにくかったが、通読するうちにわかってきた。そしてその面白さも。
    初心者でもこのように芭蕉の世界の面白さをわからせる書き方をしてくれる筆者がすばらしいと思う。

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    2014年01月03日
  • 「奥の細道」をよむ

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    ネタバレ

    「古池や・・・」の句で蕉風開眼した芭蕉が、その俳句の実践の場として、選んだ場所が歌枕の宝庫である東北(みちのく)であった。
    そして杜甫や西行のような旅に憧れて旅に出るのであるが、訪れた「みちのくの歌枕」の地での夢と現実のギャップそして失望、そして日本海側での「荒海や」の句で代表される宇宙的な体験、最後に人間世界への浮世帰りと、その旅の中で新境地を悟る。つまり、宇宙的なものから「不易流行」、人間世界への回帰からは「かるみ」へと、芭蕉の俳句が昇華していく旅であった事が平易に語られている。

    若い頃は誰でも、希望に満ち溢れている、ところが、長く生きていると、どうも様子が違う事に気づき始める。そして現

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    2013年06月11日
  • 子規の宇宙

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    宇宙はわれに在り
              正岡子規『松羅玉液』

    正岡子規を熱演する香川照之の姿を、一昨年から続いているNHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』で見るたびに、なんだかもうむずむずしてきて、今まで飽きるほど(けっして飽きたりしていません、単なる比喩です)読んだ正岡子規を、たまらなくまた読みたくなったりします。

    一応、手元には例のコンパクトな「ちくま日本文学全集 正岡子規」を置いていて、いつでも読めるようにしてありますが。

    作品を読むだけでなく、正岡子規の場合は、どうしてもその結核のための夭折が、出会った小学生の頃から気になっていて、特にスキーで足の骨を折って動けなかった時とか、高熱が

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    2011年07月21日
  • 決定版 一億人の俳句入門

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     現代俳人を代表する一人でもある長谷川さんによる俳句入門書。俳句の構造から始まり、「切れ」や「季語」といったものに関する解説、果ては類句の問題や文体・表記に関する問題まで、広く浅く説明をしてくれます。

     すごくわかりやすい講義を受けている感じ。まず、アレが説明されて、コレが説明されて、ここでアレの伏線が回収される……というような、うまい講義の流れを体現しているかのような本ですた。
     もう、ほんとにこれ読んだら俳句を始めたくなっちゃったよー。っていうことは、以前かいぶつ句会編『日本語あそび「俳句の一撃」』をレビューしたときも言っているんですけどねー。やっぱりワタクシ、熱しやすく冷めやすいタイプ

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    2012年09月05日
  • 「奥の細道」をよむ

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    [ 内容 ]
    芭蕉にとって、『おくのほそ道』とはなんだったのか。
    六百里、百五十日に及ぶ旅程は歌仙の面影を移す四つの主題に分けられる。
    出立から那須野までの禊、白河の関を過ぎてみちのくを辿る歌枕巡礼、奥羽山脈を越え日本海沿岸で得た宇宙への感応、さまざまな別れを経て大垣に至る浮世帰り。
    そして芭蕉は大いなる人生観と出遭う。
    すなわち、不易流行とかるみ。
    流転してやまない人の世の苦しみをどのように受け容れるのか。
    全行程を追体験しながら、その深層を読み解く。

    [ 目次 ]
    第1章 「かるみ」の発見
    第2章 なぜ旅に出たか
    第3章 『おくのほそ道』の構造
    第4章 旅の禊―深川から蘆野まで
    第5章 

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    2014年10月27日
  • 「おくのほそ道」を読む 決定版

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    月日は百代の過客にして、行かふ人も又旅人也。

    誰もが知っているであろう、「おくのほそ道」の書き出しである。

    予も、いづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず、海浜にさすらへて、去年の秋、江上の破屋に蜘の古巣をはらひて、やゝ年も暮、春立てる霞の空に、白川の聞こえんと、そぞろ神の物につきて心をくるはせ、道祖神のまねきにあひて取ものも手につかず、もゝ引の破をつづり、笠の緒付けかえて、三里に灸すゆるより、松島の月先心にかゝりて、住る方は人に譲り、杉風は別墅に移るに、
    草の戸も住替る代ぞひなの家
    面八句を庵の柱に懸置。

    と続く。
    松尾芭蕉が、「漂泊の思ひやまず」に、旅に実際に出かけた

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    2025年06月10日
  • 「おくのほそ道」を読む 決定版

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    最近読んだ奥の細道を題材にした小説が面白かったので購入 あっさりして読みやすい 深読みとかはないのでちょうど良いと言えばちょうど良いし物足りない感じもある

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    2025年05月28日
  • NHK「100分de名著」ブックス 松尾芭蕉 おくのほそ道

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    「古池の句で切り開いた心の世界を求めて旅に出た芭蕉は、みちのくで何もかも押し流す時間の猛威を目の当たりにし、無常迅速な時間の波に洗われるこの世を人はどう生きたらいいかという大問題を抱えて旅の前半を終えました。  後半では月、太陽、星のめぐる宇宙を通り(第三部)、そこからふたたび別れの嘆きに満ちた人間界へ戻ってくることになります(第四部)。ここで芭蕉が追い求めてきた心の世界はさらに発展して不易流行(第三部)、「かるみ」(第四部)という新たな境地に達することになります」

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    2023年01月09日
  • 俳句と人間

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    著者の文才があふれ出る随筆集だ.第3章「誰も自分の死を知らない」で、大和言葉か中国語かの件が面白かった.漢字の音しかない場合、外来種だそうだ.例としてキクやボタンをあげている.「死」も大和言葉ではない由.死と漢字が伝わる前の日本人は死を知らなかったことになるそうだ.漢字の死に相当する大和言葉には、なくなる、ゆく、みかまる があり、漢字の死にある厳粛な断絶の響きがない.古代の日本人の死生観の議論が面白かった.俳句がぽろぽろと出てくる文章は、読んでいて区切りをおけるので面白味が感じられる.

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    2022年08月19日
  • NHK「100分de名著」ブックス 松尾芭蕉 おくのほそ道

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    「古池や蛙飛びこむ水の音」の句が、蛙飛びこむ水の音という現実から、古池という芭蕉の心象世界を描いているのがエポックメイキングなんだぜと覚えておくだけである程度ドヤれる。その後の核心であるかるみの部分についてはまた読み直さねば。

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    2022年01月28日
  • NHK「100分de名著」ブックス 松尾芭蕉 おくのほそ道

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    長谷川櫂
    NHK 100分de名著
    松尾芭蕉 「 おくのほそ道 」

    さすが100分de名著。俳句解説や名所紹介でなく、芭蕉の世界をわかりやすく説明し、「おくのほそ道」を読んでみたいと思わせる


    おくのほそ道を紀行文というより、芭蕉が「かるみ」という境地に達するまでの精神史と捉え、俳句から 精神変化を読みとる構成


    芭蕉の精神史のスタートを 「月日は百代の過客にして」ではなく、「古池や 蛙飛びこむ水のおと」としている。古池の句で開眼した心の世界を みちのくの歌枕の旅、無常観、宇宙観、現世の別れを経て「かるみ」に達したとするアプローチ


    かるみ=苦難に微笑を持って乗り越える生き方
    *不易

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    2020年03月31日
  • 句会入門

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    句会がどういうものかが、実際の句会の内容でいきいきと描かれている。各回の隙間に著者の句会についての考え方が書かれており納得しやすかった。
    俳句始めたばかりの私が得られたポイントは、
    ・句会の良さとして、与えられた題と時間で作るということがある。自分で選んだ材料で時間をかけて作る場合と違う効果がある
    ・仲間同士の選の数に意味はないから気にしてはいけない
    ・吟行で写真をとるのはだめ。見る、感じることが大事。

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    2020年03月06日