あらすじ
大震災後に歩む、芭蕉の「みちのく」
松尾芭蕉の『おくのほそ道』は単なる紀行文ではなく、周到に構成され、虚実が入り交じる文学作品である。東日本大震災の被災地とも重なる芭蕉の旅の道行きをたどり、「かるみ」を獲得するに至るまでの思考の痕跡を探る。ブックス特別章として、芭蕉による『おくのほそ道』全文を収載。
[内容]
はじめに―『おくのほそ道』への旅
第1章 心の世界を開く
第2章 時の無常を知る
第3章 宇宙と出会う
第4章 別れを越えて
ブックス特別章 『おくのほそ道』全文
松尾芭蕉 略年譜
あとがき
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
芭蕉が描いた巧妙な半フィクション作品。人生を感じる素晴らしい内容でした。長く生きて来て到達する『かるみ』の境地はグッときました。日本人に生まれて感謝!
Posted by ブクログ
「古池の句で切り開いた心の世界を求めて旅に出た芭蕉は、みちのくで何もかも押し流す時間の猛威を目の当たりにし、無常迅速な時間の波に洗われるこの世を人はどう生きたらいいかという大問題を抱えて旅の前半を終えました。 後半では月、太陽、星のめぐる宇宙を通り(第三部)、そこからふたたび別れの嘆きに満ちた人間界へ戻ってくることになります(第四部)。ここで芭蕉が追い求めてきた心の世界はさらに発展して不易流行(第三部)、「かるみ」(第四部)という新たな境地に達することになります」
Posted by ブクログ
「古池や蛙飛びこむ水の音」の句が、蛙飛びこむ水の音という現実から、古池という芭蕉の心象世界を描いているのがエポックメイキングなんだぜと覚えておくだけである程度ドヤれる。その後の核心であるかるみの部分についてはまた読み直さねば。
Posted by ブクログ
長谷川櫂
NHK 100分de名著
松尾芭蕉 「 おくのほそ道 」
さすが100分de名著。俳句解説や名所紹介でなく、芭蕉の世界をわかりやすく説明し、「おくのほそ道」を読んでみたいと思わせる
おくのほそ道を紀行文というより、芭蕉が「かるみ」という境地に達するまでの精神史と捉え、俳句から 精神変化を読みとる構成
芭蕉の精神史のスタートを 「月日は百代の過客にして」ではなく、「古池や 蛙飛びこむ水のおと」としている。古池の句で開眼した心の世界を みちのくの歌枕の旅、無常観、宇宙観、現世の別れを経て「かるみ」に達したとするアプローチ
かるみ=苦難に微笑を持って乗り越える生き方
*不易流行の上に立つ生き方。出会いや別れに一喜一憂することなく 軽々と生きていきたいとする芭蕉の願い
*不易流行=宇宙はたえず変化しながらも不変であるという宇宙観、自然観、人生観
おくのほそ道の4部構成
1.江戸〜白河
*旅のみそぎ(みちのくの旅の前に旅の無事を願う)
*芭蕉は 古池の句で開いた 心の世界を求めて 歌枕の宝庫 みちのくを旅する
古池や 蛙飛びこむ水のおと=芭蕉開眼の句〜心の句を詠んだ
*蛙が水に飛びこむ音→芭蕉の心に古池を呼び起こした
*俳句=現実+心の句→異次元の同居が躍動感を与えた
2.白河〜尿前
*みちのく歌枕の旅
*歌枕の廃墟に 時の無常を感じ、人は どう生きるべきかを考える
白河〜尿前→みちのく歌枕の旅
*みちのくの歌枕を訪ねることが目的→白川の関、松島の松
*みちのくは歌枕の宝庫
*時移り、代変じて、其跡たしかならぬ→ 歌枕の廃墟に失望と幻滅
松島に芭蕉の句がない
*松島はおくのほそ道の山場
*風雲の中に旅寝するこそ、あやしきまで妙なる心地=空中に旅寝しているような夢心地
*予は口をとぢて=感激のあまり眠れず
*自分の句を外して 松島の情景を想像力の中で広げた
平泉はおくのほそ道の みちのくの旅のまとめ
*時は何もかも押し流してしまう無常迅速の嘆き
*兵どもが夢の跡→夏草を目にした芭蕉の心の世界
中尊寺の光堂
*光堂は空虚の草むらになっているはずなのに ならなかった→無常迅速な時間に流される運命に耐え残っている
*生きながらえるものの微かな光明
3.尿前〜市振
*宇宙の旅
*旅の中で 宇宙と出会い、無常迅速に見える宇宙が永遠不変であることに気付く=心の世界が 不易流行に発展する
*日月行道の雲関に入る=天の入口
*雲の峰〜壮大なスケールで宇宙を描き、その転変に心動く
4.市振〜大垣
*人間界の旅
*塚も動け=芭蕉の心の世界〜一笑の若すぎる死を惜しんだ
*別れの嘆きに満ちた人間界にもどり「かるみ」という境地を得て 別れを乗り越える
Posted by ブクログ
松尾芭蕉と「おくのほそ道」の内容を知りたくて読んだ本。芭蕉と「おくのほそ道」の内容、芭蕉の俳句の解説を知ることができて良かった。「おくのほそ道」は高校の古典の授業で習ったことがあるが、全文を初めて読んだ。高校の古典の授業もこの本と同じくらいの解説をしてくれたら、古典とかもっと好きになれたかもしれないと思った。この本を読んで、「ギャグマンガ日和」や「プレバト」がより楽しめると思った。