マーク・トウェインのレビュー一覧
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あいかわらず、引っかかりがなくスルスルと入ってくる訳文だ。
難しい漢字が全てひらがなになっている。これは原作の文章の雰囲気を日本語的表現で反映しようとしたためとのことだが、ちょっと読みにくい(原作のスペルミスだらけの英語を読むときのネイティブも、同じように感じるのだろうか)。
ハックの大冒険の物語の詳細よりも、印象深く残っているのは風景の描写だ。筏で迎える川の夜明け、あらし、夜更けの航行の様子は、どれも目の前でハックの目線で見ているような気になった。どんな豪華な食べ物も衣服も、自由と空と川と森の美しさには勝てないのだろう、ハックにとっては。 -
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なんてこってしょ!
ハックとトムの物語が、こんなに魅力溢れる本だったとは知らなかった!
子どもの頃から何かのおりに、トム・ソーヤーや、ハックルベリー・フィンの名は聞いていて、そうか、男の子のロマンなのかな?くらいにしか思っていなかったし、2人が友だち?悪友?だったって事も知らなかった。
柴田元幸さんの肝入りの翻訳というのと、この素敵な装丁に惹かれて読んだのだけど、とんでもない冒険しちまったよ!ってな感じ。
ハックは、現代ならば、DV親父の下で暮らす貧困児童。
でも、彼らの時代はそんな言葉はなく、ハックの自由さに驚くばかり。
父親がダメなこともよくわかってるし、関わりたくないのだけど、 -
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【ハックルベリー・フィンの冒険 上・下】
マーク・トウェイン作、西田実訳、岩波文庫、1977年
面白かった。
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の主人公ホールデンが「20世紀のハックルベリー・フィン」と呼ばれると知って、初めてちゃんと読んでみたが、面白かった。
作者マーク・トウェインは1835年生まれで、日本で言えば「幕末明治の時代」に生きた人。
日本で若い志士たちが「黒船襲来」「尊皇攘夷」と立ちまわっていた時代のアメリカで、トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンといった少年たちが見る社会と自然を余すことなく描いた作家。
本書は浮浪児で自然を愛する主人公ハックフィンは暴力的で怠惰な父親 -
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日本では「ハックの冒険」より「トムソーヤーの冒険」の方が有名ではないだろうか? にもかかわらず,オールタイムベストの類に選ばれているのは,かならず「ハックの冒険」の方である.この認知度(日本での)と評価のずれは,一体何なのだろう? とかねてから不思議に思っていたのだが,そこに鳴り物入りで柴田元幸訳の本書が登場したので,読んでみた.
ハックはまともに教育も受けていない,なかば浮浪児であるが,そのハックが自分で書いたという設定が絶妙で,ハックのたどたどしい文章を通じて,彼の冒険の数々が生き生きと浮かび上がる,また冒険の道連れとなった逃亡奴隷のジムも当然ながら無学で,この二人が様々なトラブルに巻き込 -
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他の人の訳で中学時代に読んだ気がするが、柴田元幸氏の翻訳で読んでみたいと思い、再読。
トムの勇気や機転は本当にすごいんだけど、ガキ大将っぷりは鼻についてしまう。スクールカースト上位だよな、こいつ、とか思ってしまう。私が捻くれているのか。しかし柴田先生もあとがきで同様に「トムは大人になったら地元のお偉いさんになって『私も子供の頃はやんちゃしたもんですよ、ガハハ』って言ってそう」的なことを書いており、激しく同意。
やっぱりトムよりもハックの言葉が心にしみる。「手に入れるのに苦労しないものなんて、持つ気しねえから」。こっちはきっと、お偉いさんになって昔を笑ったりはしない。 -
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王さまと公爵の詐欺師ふたり組がまあ、面の皮が厚いのなんの(笑)。そして、巻いても巻いてもつきまとってくる。ついにジムを勝手に農家に売り飛ばされてしまい、ハックがふたり組にさとられないよう、遠回りしてその家に乗り込むと、なんとそこは……ということで、最後はもうトウェインさんがベタなくらいにどんどんたたみかけてきます。
読み終えて、あーおもしろかった! 読めてよかった! というのが一番の感想。
そして、トム・ソーヤーがめんどくさいやつだという意外な感想を抱いたんだけど、けっきょくのところトムは、純粋に子どもの世界に生きているからなんだよね。
ジムは、逃亡奴隷として命がけで逃げてる。ハックは暴力的 -
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かつて既訳(昨年までの。柴田訳は読んでいません)をいくつかちら見したけれど、どれも謎の方言にはばまれて読みつづける気にならず、それならと原書で読み始めたものの、ジムとハックが何度か嵐やなんかで別れ別れになったりまた合流したりをくりかえすあたりで、迷子になって沈没していた(笑)。だからこの新訳が出てくれてすごくうれしかった!
いやー、なんと読みやすいこと。そしておもしろいこと。
じつは、原作もたしかにジムの黒人なまり、ハックのミズーリなまりで書かれてはいるけど、それはけっして読みにくいものではない。(日本語の本で、そのなかに関西弁の人が出てきたりする状況を想像すればわかると思う。)ところが翻訳 -
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人間と獣は違う。いろいろな点で違う、ゆえに人間は獣よりも優れている、というのはよくある一般的な話。
この本では、人間と獣は違う、人間には良心がある、だから獣よりも劣っている、という。
人間は良心のためならなんだってする。戦争、殺人、強盗、拷問、残忍なことなんでも。ありもしない道徳をもちだして。
獣は残忍なことをしない。本能で、無心でやった結果、仲間に危害を加えていることはある。でも誰かを傷つけて喜ぶなんてことは絶対にしない。
手塚治虫の漫画ブッダの中のナラダッタという人間を救うために、動物の命を犠牲にしてしまいその罰を受け、生きながら獣として生きた人物を思いだした。獣として、人間としての良 -
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ネタバレ人間は教育をはじめとする外因からできた機械にすぎない
すべての行動は自己是認を求める。他者への思慮も、自己犠牲も、自分が納得するかどうかが最大の基準となる。
晩年のトウェインがペシミスティックな面を露わにした作品、との解釈が多い。同意であるが、それ以上の解釈の可能性を見出したい。青年の台詞を書いたのもトウェインであるなら、老人がどんなに説得にかかっても何とか食いつこうとする姿勢を見せるのはなぜだろう。
機械にすぎない人間がここまで「進歩」してきたのはなぜだろう。歴史は繰り返す、しかしそれは螺旋階段だと聞いたことがある。
キーは「想像力」と「創造力」に在るかもしれない。
せっかくなら -
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面白い、なんてものではない。マークトウェインすげー!であります。
30年ぐらい前に父が読み聞かせしてくれた本の一つ。内容は忘れたけれどトム・ソーヤよりも面白かったという記憶ははっきり持っています。今回子供たちへの読み聞かせに取り寄せてみたら、分厚くて字が小さくてびっくりしました。先に再読したトム・ソーヤの冒険ではトムが利発でハックのそういうところは目立たないこともあり、こちらはもっと牧歌的だったかと少し勘違いしていましたが、とんでもない!アウトドア的なサバイバルに社会的なサバイバルの要素も加わりぎりぎりの物語です。
物語の構造としてはロードムービーです(。まだ下巻末まで読んでませんので