ひこ・田中のレビュー一覧
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子どもから大人へと言う「成長神話」なき時代が来ていることをあぶり出した労作。
主に日本の子どもたちをめぐる主要なメディアを通して、近代とその後に肉薄している。自分の周りの現象のいくつかに合点がいった。
私は40代男性。いかに自分が成長神話ある時代に育ったかを自覚した。状況がどんなに困難なものであっても、成長を信じて疑うことは無かったのである。
・何者かに名前を与える行為は、それにアイデンティティを持たせる第一歩であり、その責任を任される。(DQ)
・なぜ女子用メディアが後付けになるかは現場の作り手の多くが男だったから。
・彼女たちは戦うだけではなく、自分たちの夢や悩みを実によく語り合う -
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『あした、弁当を作る』
最初は子どもの反抗期の物語かと思った。
でも実際は、ジェンダーバイアスや夫婦関係の歪み、その中で「子どもとしての役割」を強いられる姿が描かれていた。
成長するにつれて違和感を抱き、自分の要望を伝える子ども。
それを「笑顔」でかわそうとする親。その笑顔が時に嘲笑に見え、ゾクッとする怖さを感じさせる。
人が立場を揺さぶられたときの反応は、親子関係であっても目を背けたくなる。
それでも子どもはできる範囲で抵抗し、自立していく。
私自身もかつては子どもで、今は親。きっと数年後に直面するであろう時期に、少し備えるヒントをもらえた気がした。
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自分で自分の弁当を作りたい、
自分の衣類を洗濯したい、
自立に向けて喜ばしい一歩を踏み出したはずの中学生が、両親の反対を受け、親の庇護という名目で、支配下に置かれ続けようとするお話。
息子といるときは息子に甘えて夫の悪口を言い、夫がいるときは夫に頼り、息子の言動を逐一告げ口する母親。
「わたしはいつもタッちゃんのことだけを考えて生きているのに。生きがいなのに」
ぼくは、母親が世話をするための人形だ。ぼくは支配されている。そして、父親はそうしろとぼくに命令している。
愛情ということばを隠れ蓑にした、ぞっとするような母親の言動と、傲慢かつ威圧的な父親、
その中で揺らぎながらも、自らの意思を -
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主人公の少年のように
小学4〜5年生の頃夢中になって読んだ本。
小公女もあしながおじさんも。
お母さんにゴッホのひまわりを見た時の
感想を聞かれて言語化するのが
難しい理由を考えてみたり
翻訳本の翻訳者が違う時のニュアンスの
違いを考えたり、大人の意見が
人それぞれ違う理由も
主人公は一生懸命考えている。
今自分を振り返っても
確かにその年齢は
色々考えていたかもしれない。
両親の本部屋で見つけた古い
少女文学から考えが広がる。
そんな部屋が自宅にあって
こっそり持ち出して本を読める
環境が羨ましい。
結局カバーがしてあった本は
誰の本なのか、なぜカバーしてあるのか
わからないけれど、 -
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親離れの第1歩を踏み出したレッツに結構しんみりしてしまう本。レッツはあるときとうさんに本を読んでもらっていて「うるさい」と感じてしまう。とうさんのせいかな?でもかあさんに読んでもらってもうるさい。本がいけないのかな?でも自分で声に出して読んでみてもうるさい。場所がいけないのかしら。さんざん考えて試した末に、目で読みたいことに気づくレッツ。一人で読みたいといったときのかあさんとうさんの、レッツが成長したことの喜びと、もう読んでもらわなくていいと言われた寂しさが、全然そんなこと書いてないけど、3人の会話や間ですごーく伝わる。大きくなるのは嬉しいけど寂しい。結構しみじみしたレッツのお話でした。
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ネタバレ思春期の少年が親からの自立に目覚めるまでの話。少年の心のうちが描かれていて、自分にもそんな時期があったなあと懐かしく思う。また、息子を溺愛する母親や家事を見下してあたかも自分だけが偉いかのように家で振る舞う父親など、今まで当たり前と思っていた狭い世界が広がった時、何かおかしいと気づく。
それまで立派だと思っていた両親や周りの大人の言うことに矛盾を感じたり、実は子供っぽいのでは?と気付いてしまうあの感じ。そこから離れたいけど未成年という経済的弱者ゆえ動くことができないもどかしさ。そういった少年の心情にフォーカスした小説は初めてだったので新鮮で面白かった。 -
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弁当を作る
誰が?何のために?表紙の男性に見えるこの人?何歳?
など疑問たっぷりで読み始めた。主人公は中学生龍樹。=タッちゃん。
亭主関白モラハラな父と、専業主婦の母に重く世話されることに違和感を覚え、背中を触られるのもゾクっと不快になるお年頃。
本人はうっすらとした自覚を哲学者の様に考え自問自答。表情に出てしまうので、幼馴染のカホや友人のアヤとマモルに問われるがままに答え、悩み相談をする。
友人達との淡々とコミカルな会話とは真逆の家庭での父親と母親と息子の会話。サスペンスホラーの様でとても怖い。
自立のキッカケのツールとして弁当作りがあったわけね。
個人的には龍樹の気持ちがよく理解で -
Posted by ブクログ
中学1年生の龍樹は、仕事が忙しくてあまり家にいない父親と、専業主婦の母親との三人家族。ある日、いつもと同じように母そやから「行ってらっしゃい」と背中を触れられた瞬間、悪寒が走ります。母親には触ってほしくない…。それ以降、母親の「重たい」愛情から逃れたいという気持ちと、母親を邪険にしては申し訳ないという気持ちの間で悩む龍樹。
その「成長期」とも「反抗期」ともつかない自分探しの手段が、母親に頼りきりであった家事(特にお弁当づくりや洗濯)を自分でやる(=それにより母親の過干渉を減らす)という平和的な手段であることが、ほほえましく、またリアリティがあると感じます。
親にとってはいつまでも「かわいい