杉田七重のレビュー一覧
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自分と同名の画家ゴッホのボートの絵と小さいときに読んだ物語の一場面に出てくるロマのおじいさんの「行き先は道まかせ」に惹かれて、フランス南部のカマルグを旅するヴィンセントは、暴風と蚊と急な体調不良から行き倒れてしまう。目が覚めたところは、暖炉のそばのソファーの上で、そこには、ケジアと犬のアミと変わった中年男性のロレンゾが住んでいた。ロレンゾはきちんと話をするのは苦手だったが、心をよく読み、人も動物も癒やすことができ、何よりも完璧にフラミンゴになることができた。ケジアは、小さい頃から「フラミンゴボーイ」と呼ばれていたロレンゾと自分たちの過去を語り始める。
ロマとして差別され、強制収容所行きの恐怖 -
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南仏にある小さな村の湿地のほとりで、旅行中のイギリスの若者ヴィンセントは体調を崩して倒れてしまった。助けてくれたのはロレンゾとケジア。ロレンゾの話す言葉は断片的でよくわからなかったが、目が雄弁に気持ちを語ってくれた。ケジアは英語を上手に話し、二人がこの農場で暮らしてきた月日、特に戦争中の出来事について語ってくれた。その驚くべき物語とは…。
モーパーゴの語る戦争の物語は、いつも敵や味方、悲しみや混乱を超えて、圧倒的なストーリーの面白さで読ませてくれる。教訓を語らなくても、登場人物があまりにも生き生きとしているために、体験を共有して心に何かを残してくれるのだ。 -
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ネタバレある商店街での爆発事件の1分前から1秒ずつ周囲にいる人々のエピソードが語られる。
1秒でそんなに盛り込めないだろ!というつっこみはさておき、みんなが知りたいタイショーの漫談まとめ↓
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55(秒前):大将に、とっておきの漫談があるんだよ。
54:この話はきっと気に入る。
53:大将の仕事に関係があるんだ。
52:聞いたことがあるかな。
51:それってのがさ
50:ジャックとピートっていう
49:昔の友だちどうしが
48:そこで出くわした。
47:これがまったくの偶然だった。
46:で、ジャックは
45:昔の友に会えて
44:そりゃもうワク -
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パパはいないし貧しいけれど、大好きなディアリスト・ママと大好きな友人と日々を過ごす少年・セドリックは誰からも好かれる愛らしくて優しい思いやりのあるアメリカの好少年。だけど実は、イギリスの貴族の跡取りだった!? でも祖父にあたるドリンコート伯爵は大、大金持ちだけれど、かんしゃく持ちのひねくれ者で領民からも嫌われるひと。大好きなディアリストと引き離されたセドリックは、けれども無邪気な憧れとまっすぐな心で伯爵の堅い心をほぐしていく。伯爵とディアリストと、いつか三人で暮らすことが出来るのか。秘密の花園・小公女に続いてつばさ文庫で登場のバーネットの名作。
これもまた長いことタイトルだけは知ってて内容全 -
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会計事務所で働く、強欲でケチで誰に対しても意地悪で心が狭くて、街の皆から嫌われているスクルージ。勿論、街中が浮かれ騒ぐクリスマスなんてだいっ嫌い! 「クリスマスなんてばからしい!」 けれどその夜、同業者のマーレイの幽霊が現れて、同じ運命を辿らないでとスクルージに告げる。“まだ、やり直せるチャンスはある”――そしてスクルージは、クリスマスの精霊と共にかつての、現在のク、そして未来の――スクルージが死した後のクリスマスの様子を辿っていく。その中でスクルージの堅い心はほぐされ、何かが芽生えていく。それはまさしく、“クリスマスの奇跡”! 幸せはいつも、自分の心が決める! 世界一有名で、誰もが心暖かにな
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また勃起したいというマチズモに酔いしれ、気持ちのいい言葉に熱狂し、科学は面白いことを言わないから蔑ろにされるという歴史を延々繰り返しているよねっていう延々繰り返された警告のノンフィクション。ヤギの睾丸移植手術が拡がった歴史的背景の解説が面白い。
2008年の古い本が再度翻訳されたのは、つまりはMAGAってのがマチズモに飢えたアメリカ社会が新たに装着した金玉だぜってことなんだろうけれど、本著が警告だとするならばそれは既に敗北している。本作では科学が勝利したが、21世紀は科学が敗北する。誰もが耳心地のよい言葉と劣等感をぬぐう興奮に酔って新たな金玉を装着して喜んでいる。
熱狂させる物語は心地良いが、 -
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第二次世界大戦中のロンドン、田舎で祖母と暮らしていたジョーゼフは、ロンドンの動物園で動物たちの世話をしているミセスFのもとに送られる。誰からも見放されたと感じているジョーゼフは、ゴリラのアドニスと心を通わすようになる。
人間たちの戦争のために地方の動物園へと移送される動物たち。年を取っているため移送先の見つからないアドニスには殺処分の運命が近づいてくる。
ジョーゼフとミセスFも、それぞれに戦争で愛する人たちを失っている。それぞれの過去を抱え、お互いに心を開けない2人が、アドニスを軸に少しづつ理解し合えるようになるのだが…。
結末は、こうなるだろうと分かっていたものの、切なく悲しい。