【感想・ネタバレ】フラミンゴボーイのレビュー

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Posted by ブクログ

マイケルモーパーゴは、歴史の一コマを取り出して現代の私たちと繋げてくれるのが、なんてうまいのだろう。これまで第2次世界大戦を舞台にした物語を何作も届けてくれているが、毎回切り口が違って、毎回素晴らしい。
イギリス青年のヴィンセントが、子どもの頃出会った忘れられない物語の一場面と一枚のゴッホの絵をきっかけに南仏カマルグを訪れ、そこで知り合った女性ケジアによって過去の物語が語られる。
ロマの少女ケジアと障害を持ったロレンゾの物語は二人の家族の物語であり、第2次世界大戦末期ナチスによって侵略されたフランス田舎町の時代の空気を伝えるものでもある。
その物語の中に占領軍のドイツ兵カポラルを描くことで、軍服の下には血の通った一人の父親がいることを、立場を超えて心が通えることを教えてくれる。

人が戦争をしているときでも、湿原の情景とフラミンゴの生態が変わらずに力強く美しいことに感動する。
その美しい自然の中の人々の愚行や哀しみに胸がしめつけられる。

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2020年03月03日

Posted by ブクログ

ナンシーが語った『フラミンゴが戦争するのか、人種差別するのか、自分とは違うという理由だけで虐殺するのか』
訳者さんの後書きにもあった、戦争をおこすのは大人だけ。

大人の行動を見て子供も差別をしたり、攻撃的になったりする。
自分の行動が子供に影響を与える。そこをきちんと理解して学んでみんなが平和に安全に暮らしていけるようにしないといけない。
大人も、子供も読まないといけない本やった。

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2021年08月26日

Posted by ブクログ

戦争下で進んでいく物語なのに、悲しくもずっと優しさと温かい空気が包んでいる。

人の言葉は苦手だけど、人の心と動物の言葉を理解する少年の優しさと強さに胸を締め付けられる…。

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2020年11月24日

Posted by ブクログ

ナチスの軍人の一人が 精一杯の信愛を示してくれて
人対人なら こうも和やかにいくのにと
切なくなりました
辛いことも多いですが優しい終わり方も
まるで ロマのメリーゴーランドのように
美しい話です

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2020年07月10日

Posted by ブクログ

自分と同名の画家ゴッホのボートの絵と小さいときに読んだ物語の一場面に出てくるロマのおじいさんの「行き先は道まかせ」に惹かれて、フランス南部のカマルグを旅するヴィンセントは、暴風と蚊と急な体調不良から行き倒れてしまう。目が覚めたところは、暖炉のそばのソファーの上で、そこには、ケジアと犬のアミと変わった中年男性のロレンゾが住んでいた。ロレンゾはきちんと話をするのは苦手だったが、心をよく読み、人も動物も癒やすことができ、何よりも完璧にフラミンゴになることができた。ケジアは、小さい頃から「フラミンゴボーイ」と呼ばれていたロレンゾと自分たちの過去を語り始める。

ロマとして差別され、強制収容所行きの恐怖に耐える少女と、人と違う言動により蔑まれる少年、それぞれの親たち、敵として現れながらも人として協力を惜しまないカポラル、それぞれが協力しあい、希望を持って生き抜こうとする姿を、厳しくも美しいカマルグの自然を背景に描く物語。



*******ここからはネタバレ*******

枠の話、ヴィンセントが旅に出たり、旅から戻らずにそこに居着いてしまったり、さらにそこで、カポとの感動的な再開に出くわしたりというところは、いささか作った感が強く感じます。

でも、ケジアとロレンゾの話は、さすがモーパーゴ、引き付けさせずにいられませんでした。
カポがあまりにも親切で面倒見が良すぎる点には疑問を持ちましたが、もともと優しい人なのでしょう。彼らへの親切は、自分の「仕事」への贖罪だったのかも知れません。

ロレンゾが他のことは違う言動を取ると気づいた後でも両親は、彼を一番いい方法で伸ばしてやっています。他の人から離れたところに住んでいたからやりやすかったとは思いますが、彼のすべてを受け入れて、彼の幸せを一番に考えていたからできたことで、それによって、彼は人や動物を幸せにする力を得たのでしょう。ひとりの親として、これは見習わなくてはポイントです。

ナチスによるユダヤ人迫害は周知ですが、ロマに対してしたことは、まだあまり知られていません(そして今でも差別は根強いように感じています)。戦争をいろいろな形で題材にする著者ですが、この作品が、知り考える機会のひとつになるのではないかと思います。


戦争を扱ってはいるものの、残虐シーンは出てこないので、高学年からオススメします。

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2020年04月29日

Posted by ブクログ

南仏にある小さな村の湿地のほとりで、旅行中のイギリスの若者ヴィンセントは体調を崩して倒れてしまった。助けてくれたのはロレンゾとケジア。ロレンゾの話す言葉は断片的でよくわからなかったが、目が雄弁に気持ちを語ってくれた。ケジアは英語を上手に話し、二人がこの農場で暮らしてきた月日、特に戦争中の出来事について語ってくれた。その驚くべき物語とは…。
モーパーゴの語る戦争の物語は、いつも敵や味方、悲しみや混乱を超えて、圧倒的なストーリーの面白さで読ませてくれる。教訓を語らなくても、登場人物があまりにも生き生きとしているために、体験を共有して心に何かを残してくれるのだ。

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2020年02月16日

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英国に住むヴィンセントは、試験が終わったのでフランスへ自由な旅行に出かけたが、フラミンゴの大群の中で体調を崩し倒れてしまう。そんなヴィンセントはロレンゾに助けられる。自閉症のロレンゾは、ロマ(ジプシー)の女性ケジアと暮らしている。ヴィンセントは、なぜケジアとロレンゾがそこで二人で暮らすようになったかを聞く。
 
第二次大戦中のドイツ軍による障害者やロマへの弾圧をくぐり抜けた二人のストーリーをケジアが語って聞かせるのだが、そういう設定にする必要性が伝わらなかった。

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2020年11月25日

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「アーニャはきっと来る」2020.3月刊と、テーマや登場人物が似ている。良かったのだが、読者としては、似た話を書くなら一冊に凝縮させてほしいと思ってしまう。最後にモヤモヤが残った「アーニャ…」だったが、こちらは終わり近くの英国人の部分がサラッとしすぎていて、最後にもうひと盛り上がりあって有無を言わせぬ結末でなかったのが残念。そして、自閉症を扱うには、一部分を捉えて都合よく使った感がしてしまいました。

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2020年08月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

心を通わせて、希望を失わないで。

ある男の回想という形をとって語られる物語。少年の時、旅路で世話になった人の昔話。それは、フラミンゴと話ができる少年と、その少年の隣にいた少女の話だった。

人間は自分と違うものを嫌う。戦争は残酷な行為に理由を与える。発達障害のロレンゾを笑った人もいたし、ロマのケジアにロマというだけで辛くあたった人もいた。サロモン先生はユダヤ人というだけで殺されてしまった。ケジアの両親もロマという理由でキャンプに連れて行かれた。

メリーゴーラウンドは希望だ。すべては元の場所に帰ってくる。乗るのは主に子ども。希望の象徴だ。カポラルはケジアやロレンゾにとって、敵の立場にあたるドイツ兵だ。でも、彼は兵士になる前は教師で、亡くした子を想い、ロレンゾとケジアを守ろうとした。大人たちは警戒した。ケジアも信じきれなかった。でも、ロレンゾは受け入れ、信じた。カポラルは裏切らなかった。第二次世界大戦のヨーロッパにおいて、特にフランスにおいて、ドイツはどうしても悪者である。カポラルのような人もいたのだ。そして、ケジアは自分の希望の象徴である聖女サラをカポラルに託した。彼を守ってくれるように。再会のシーンは光に満ちている。

一時は激減したフラミンゴが帰ってきて、ケジアは両親と再会し、ロレンゾと共に生き、メリーゴーラウンドは今も回っている。優しく、愛おしい物語である。あまりにうまくいきすぎているかもしれない。でも、それは皆が信じたから起きたことなのだ。信じることは難しい。希望は儚い。でも信じてみたいと思う。

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2020年08月23日

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