あらすじ
歴史のひとこまを力強く描く感動作品。
一人のイギリス青年が、一枚のゴッホの絵をきっかけに訪れた南仏カマルグで、原因不明の高熱におそわれ動けなくなる。辺りにはフラミンゴが無数飛んでいた。気を失った後、助けられた家で不思議な話を聞くことになる。
第2次世界大戦の末期、南仏の田舎町カマルグにもナチスはやってきた。
そこで何が起きたのか………?
それは、フラミンゴと話ができる不思議な力を持つ少年とロマの少女の物語だった。
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Posted by ブクログ
心を通わせて、希望を失わないで。
ある男の回想という形をとって語られる物語。少年の時、旅路で世話になった人の昔話。それは、フラミンゴと話ができる少年と、その少年の隣にいた少女の話だった。
人間は自分と違うものを嫌う。戦争は残酷な行為に理由を与える。発達障害のロレンゾを笑った人もいたし、ロマのケジアにロマというだけで辛くあたった人もいた。サロモン先生はユダヤ人というだけで殺されてしまった。ケジアの両親もロマという理由でキャンプに連れて行かれた。
メリーゴーラウンドは希望だ。すべては元の場所に帰ってくる。乗るのは主に子ども。希望の象徴だ。カポラルはケジアやロレンゾにとって、敵の立場にあたるドイツ兵だ。でも、彼は兵士になる前は教師で、亡くした子を想い、ロレンゾとケジアを守ろうとした。大人たちは警戒した。ケジアも信じきれなかった。でも、ロレンゾは受け入れ、信じた。カポラルは裏切らなかった。第二次世界大戦のヨーロッパにおいて、特にフランスにおいて、ドイツはどうしても悪者である。カポラルのような人もいたのだ。そして、ケジアは自分の希望の象徴である聖女サラをカポラルに託した。彼を守ってくれるように。再会のシーンは光に満ちている。
一時は激減したフラミンゴが帰ってきて、ケジアは両親と再会し、ロレンゾと共に生き、メリーゴーラウンドは今も回っている。優しく、愛おしい物語である。あまりにうまくいきすぎているかもしれない。でも、それは皆が信じたから起きたことなのだ。信じることは難しい。希望は儚い。でも信じてみたいと思う。