石黒圭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本物の読解力
著:石黒 圭
出版社:SBクリエイティブ
SB新書 725
難しい内容です。
正確に読む
深く読む
批判的に読む
が本書のテーマです。
対象となる文章を構造的に把握した上で、一文一文を解析していくような記号論的アプローチではなく、読み手と書き手の意図を類推しながら進むことなど、GhatGPTにはできない人間的な「生き延びるための読解力」をめざしています。
ハイコンテクストな、日本国民に期待されるのは、以心伝心と、行間を読むである。
なによりも、太古からあいまいで、中間色なニュアンスを大切にする民族であり、その根幹は現代においても変わらない。欧米の二元的な白黒はっきりつけるではなく、やんわりと、おもんばかった表現をとるので、それを読み取るのが、「本物の読解力」では?
また、多言語に翻訳するのに、最低翻訳AIを使えばいいが、そこに入力するコンテクストが不完全であれば、でてくる文章も的外れになってしまう。
「はじめに」に、本書全体の地図があります。各章の後ろにまとめがあって、うれしい、わかりやすい。
また、著者のしおりがはいっていて、「読むことは、考えることです。本書がその一歩になればうれしいです」とあり。気がきいている。
気になったのは、以下です。
・国語の授業では、「読む」「書く」「聞く」「話す」というコミュニケーションの四技能が重視されます。
・母国語さえできれば、外国語が弱くても、機械翻訳や生成AIがカバーしてくれます。しかし、母国語である日本語の読み書きの力が乏しい人は、多言語に変換したくても、基盤となる言語力が乏しいので、情報の理解力も弱体化してしまいます。
・読解力向上に不可欠な力は、語彙力と文法力です。
・「なんとか読める」レベルの理解に必要な語彙カバー率は95%、「十分に読める」レベルの語彙カバー率は、98%というのが定説です。
・未知語の意味を推定する方法は3つ、
①語彙的手がかり(表意、語構成、表音)
②文脈的手がかり(連語、文法、関係)
③内容的手がかり(常識、経験、直観)
です。
・文章理解において誤解を招きやすいのは、多義語です
・助詞 「は」と「が」の使い分け
・文章が長く連なる原理を考える上で、大事な要素は、接続詞である
・意見や感情があらわになった文章を読むと、読み手はそれに共感したり、反発したりする気持ちになる
・感情が前面に出た文章を読む場合、その文章の感情の源泉となる事実がどこにあり、それに対して書き手がどう感じているのかを丁寧に分析しながら読むと書き手の気持ちに寄り添うことができる。
・断りの婉曲的表現
~できません
⇒~しかねます、
⇒~難しいです
⇒~厳しいです
・行間を読めというのは、書かれていることから、書かれていない内容を推測して読めということです
・情報の真贋を見分ける方法
①自分の常識に照らしてみること
②情報源を確認すること
③複数のことなる情報源にあたること
・文章理解とは、ボトムアップと、トップダウンの2つの方法がある
ボトムアップ:言葉という記号の組み合わせを積み上げ式に理解していく方法
トップダウン:読み手がもっている文章の内容や構成についての知識をつかって意味を理解していく方法
・情報過多になっている現代人は、文章を読むというより、見るだけですませてしまいがちです。
・読まないで済む情報は、読んだ振りではなく、あえて読まない勇気が必要です。
・ネガティブ・リテラシーとは、入ってくる情報を無批判にうけいれないように、あいまいな情報をあいまいなままで受け流す情報との適切な距離の取り方のことをいう
結論
よい書き手になるためには、自分の書いた文章を読み手がどう読むかを考え、読み手の理解にあわせて文章をかくことが大切です。反対に、よい読み手となるためには、書き手がなぜ文章をこのように書いたのかを考え、書き手の表現意図にそって文章を読むことが大事です。
目次
はじめに
第1部 正確に読む―絞りこむ
第1章 未知語の意味を絞りこむ
第2章 多義語の意味を絞りこむ
第3章 文の組み立てを絞りこむ
第4章 文の展開を絞りこむ
第2部 深く読む―読みとる
第5章 気持ちを読みとる
第6章 怒りを読みとる
第7章 意図を読みとる
第8章 行間を読みとる
第3部 批判的に読む―距離を取る
第9章 疑って読む
第10章 謙虚に読む
第11章 多角的に読む
第12章 創造的に読む
おわりに
参考文献
引用資料
索引
ISBN:9784815640330
判型:新書
ページ数:280ページ
定価:1000円(本体)
2026年03月15日初版第1刷発行 -
Posted by ブクログ
▪️評価の理由
仕事の中で大量の情報に触れる中、本質的な課題解決を実践したいと考えていた際に出会った一冊。人生単位で役立つ内容だと感じたため、高く評価した。
▪️筆者の課題感
情報社会においては、大量の情報を迅速に処理する必要があり、浅い理解のまま効率を優先して進めてしまいがちな構造がある。
一方で、情報に振り回されずに生きていくためには、本質を読み解く力が不可欠であり、この重要性自体は従来から変わらない。ただし、情報量が増大した現代においては、その重要性がより一層高まっている。
▪️本書の位置付け
本書は、こうした社会的課題に対して、多様な情報を自分なりに正しく理解するための方法、「正確に・深く・批判的に読む」技術を提示している。 -
Posted by ブクログ
本を読んだ時に「わー!よかった」「余韻すごー」とかで終わっていたけど、もっと深められそうと思えた。
文章の予測は、後に続く展開の幅を限定したり、「ここまで読んでここまでわかった!次はこんなことを知りたい!」という心の動きのこと。
実際の小説の文が出てきて、どんな予測になるかの実例があってイメージしやすかった!
当たる予測と、外れる予測がある。
予測が外れたときに、疑問に対して答えを探して、筆者はどうしてこういう表現にしたんだろうと考えることから、透けて見える筆者との対話が始まる。(ほんとに?とか、わかる!とか、なるほど!とか)
「そうなんだ〜」で終わるんじゃなくて、自分がどう予測したかをもっと意識するといいのかなって思った。予測と違うとき「へ〜びっくり」で終わってしまってたので。どう違ってて、それはなんでかを考えるの面白そう。
あと、文章を書くときにも予測を意識するのがとても大事そう。
次はこんなことを知りたい!と思う時、深める予測と、進める予測がある。
・深める予測:理解が不完全な部分を補おうとする(なんで?どこで?いつ?とか)
・進める予測:読んだ部分はわかったので、次の展開を期待する(すると?しかし?とか)
読む人がどんな予測をするかを考えると、わかりやすい文章になりそう(自分の言いたいことだけを書きがちだった)。 -
Posted by ブクログ
文章は接続詞で決まる
著:石黒 圭
紙版
光文社新書 370
接続詞専門の解説書です。めずらしい
プロの作家は、接続詞のよい使い手
旧来:接続詞とは、文頭にあって、直前の文と、接続詞を含む文を論理的につなぐ表現である
⇒
本書:接続詞とは、独立した先行文脈の内容を受け直し、後続文脈の展開の方向性を示す表現である
接続詞の論理は、論理のための論理ではなく、人のための論理である
気になったのは、以下です
■接続詞の役割
・接続詞は、「読み手のためのもの」である
・接続詞の6つの機能
①連結関係を表示する
②文脈のつながりをなめらかにする
③重要な情報に焦点を絞る
④読み手に含意を読み取らせる
⑤接続の範囲を指定する
⑥文章の構造を整理する
■論理の接続詞
①順接の接続詞
だから系 だから、したがって、ゆえに、よって、そのため、それで
それなら系 それなら、それでは、すると、そうすると、そうしたら、だとすると、だとしたら
そうしないと、そうでないなら、さもないと
②逆説の接続詞
しかし系 しかし、だが
ところが系 ところが、にもかかわらず、それなのに
■整理の接続詞
③並列の接続系
そして系 そして、それから、また
それに系 それに、それにくわえて、そればかりか、そのうえ、しかも、ひいては
かつ系 かつ、および、ならびに
④対比の接続詞
一方系 一方、他方、それにたいして、反対に、反面、逆に
または系 または、もしくは、ないし、あるいは、それとも
⑤列挙の接続詞
第一に系 第一に、第ニに、……
最初に系 はじめに、つづいて、ついで、その後、
まず系 つぎに、さらに
■理解の接続詞
⑥換言の接続詞
つまり系 すなわち、つまり、ようするに、いいかえると、換言すると、いわば、いってみれば
むしろ系 むしろ、かえって、そうではなく、いな、というより、というか、かわりに、そのかわり
⑦例示の接続詞
たとえば系 たとえば、具体的には、実際、事実、
とくに系 とくに、とりわけ、ことに、なかでも
⑧補足の接続詞
なぜなら系 なぜなら、なぜかというと、だって、なにしろ、なにせ、というのは、というのも
ただし系 ただし、もっとも、ちなみに
■展開の接続詞
⑨展開の接続詞
さて系 さて、ところで、それにしても、それはそうと、それはさておき
では系 では、それでは、じゃあ
⑩結論の接続詞
このように系 このように、こうして、かくして、以上、結局
とにかく系 とにかく、いずれにいても、いずれにしろ、どっちにしても、どっちみち
■文末の接続詞
⑪否定の文末接続詞
のではない系 のではない、名刺+ではない
だけではない系 だけではない、~だけ…のではない
⑫疑問の文末接続詞
か、のか、のだろうか
⑬説明の文末接続詞
のだ系 のだ、のである、のです、の、んだ、んです
からだ系 からだ、ためだ
⑭意見の文末接続詞
と思われる系 と思われる、と考えられる、と言える
のではないか系 のではないか、のではないだろうか、んじゃない
必要がある系 必要がある、べきである、なければならない、てはないらない
■話し言葉の接続詞
対話での使用リスク
①相手の発話権の奪う
というか、ていうか、つうか、てか、むしろ
②言い方を訂正して気分を逆なでする
というか、ていうか、つうか、てか、むしろ
つまり、ようするに、ようは
③逆接の使用で無用な対立を生む
でも、けど
④自己正当化を目立たせる
だから、だって、たって~だもん
目次
序章 接続詞がよいと文章が映える
第1章 接続詞とは何か
第2章 接続詞の役割
第3章 論理の接続詞
第4章 整理の接続詞
第5章 理解の接続詞
第6章 展開の接続詞
第7章 文末の接続詞
第8章 話し言葉の接続詞
第9章 接続詞のさじ加減
第10章 接続詞の戦略的使用
第11章 接続詞と表現効果
主要参考文献
おわりに
索引
ISBN:9784334034733
出版社:光文社
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:760円(本体)
発行年月日:2008年09月
2008年09月17日初版1刷発行
2008年11月25日3刷発行 -
Posted by ブクログ
タイトルだけ知ってて、実物見た時に思った以上に厚くてびっくりした。笑
正確、わかりやすい、配慮がある、工夫を凝らした文章を描けるようになるためのポイント集。
子どもの頃から小説を読むのが好きでいっぱい読んできて、その経験則や大学の卒論で教わったやり方でなんとなくやっていたことを理詰めで解説してもらった感じ。概ね実践済みで、時々知らない知識があったかな。
たぶん大学卒論をそれなりにちゃんとやった人はだいたい知ってるレベルじゃないかなと思う。
これを読んだらだいぶ変わるかなとは思う、思うけど変えたいなと思う人でこれ読み切るのは結構大変じゃないかな…という分量だった。毎日少しずつ読むならいけるのかな。私は最後いくつかのセクションは読みそこねた。
以下個人的メモ、読んだらわかると思う。
表記、語彙、表現、文法、構成
わ、え、お→助詞だと は、へ、を
う、おの即音→う(おとうさん、とうだい)
※こほろぎ、うつたうしい→こおろぎ、うっとうしい
じ、ず、ぢ、づ→原則じ、ず
※例外→同音の連続(ちぢむ、つづく)、二語の組み合わせ(おこづかい、たべづらい)
※さらに例外→同音の連続(いちじるしい、いちじく)、二語(うなずく、少しずつ) →文化庁のサイト「現代かなづかい」で確認
語彙選択→現代日本語書き言葉均衡コーパス で検索できる
62.不特定多数への配慮
・地球の裏側のブラジル→
季節も時間も日本と対称の国ブラジル
・ブラインドタッチ→タッチタイピング
他にも将棋倒し、狂言、ポエムなど
69.名詞の敬語
訓読みの和語はお、音読みの和語はご、外来語はなし
財布、弁当、中元など身近なものの場合はお
返事はおもごも使える。日常性のためか、おがつく。漢語という意識が高まるとごがつく。
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Posted by ブクログ
第二言語(いわゆる外国語)の習得は、母語である第一言語の習得のさいに構築した言語世界を転移させる形で起こります。
ですから、第一言語でしっかりした土台をつくっておかないと、せっかく、第二言語を学んでも高度な運用能力は身につきません。
その日本語の運用能力を高めること、本書で焦点を当てるのは、「読む」という行為です。言語の学習には、「読む」「書く」「聞く」「話す」という四つの技能があるといわれています。
「読む」ということは、文章に多様な意味を見いだす行為であり、人間の創造力の基盤となる行為である。
■読むというプロセス
①画像取得活動 文字列を脳内に取り込む活動
②文字認識活動 画像として脳内に取り込まれた文字を、文字として認識する活動
③意味変換活動 文字列を意味に変換する活動
④内容構成活動 脳内の辞書と文法によって意味に変換した文字列を、すでに私たちの頭のなかにある知識やその場の状況と結びつけ、実感をともなうイメージに構成する活動
■5つの読む
①スキャニング(超速読)表現検索のための読み キーワードを探す
②スキミング(速読) 大意把握のための読み
③味読(平読)楽しみのための読み
④熟読(精読)概念取得のための読み
⑤記憶(超精読)内容再生のための読み
■速読
話題ストラテジー:文章を貫く話題が何かを早い段階で見抜き、その話題にかんする知識を利用していこうの理解を迅速かつ適切にする
内容スキーマー:話題によって活性化するスキーマー
形式スキーマー:言語形式に関わるスキーマー
・あるスキーマ―を「わかった」ら、分かった瞬間から、別のスキーマーを呼び出すことができなくなるので、わからなくなるというジレンマに陥る
・速く読みたいから、タイトルや冒頭の文を目に留めて何の話題がどのように展開されるかを簡単にても想像してみる
取捨選択ストラテジー:速くよむためには、手っ取り早い方法は、読む分量をへらすこと。重要そうなところだけを選んで読む
・漢字だけを拾っていけば、文章の内容がだいたいわかる
・段落の最初の文に言いたいことがかかれている。
・各文の冒頭にある、指示詞や接続詞を重視して、それを軸に文章を読んでいく
・文末の「~のだ」「~のである」に注目する
■味読
視覚化ストラテジー:文章を視覚化する、視覚化できない文章もある
視点のメカニズム
視座
注視点
視野
視点
1人称と3人称
予測ストラテジー:後続文脈の候補を縛ることで理解の侵攻を効率的かつ効果的にする
関係の予測 深める予測と進める予測
内容の予測
・文章理解とは、文章を介した書き手と読み手の対話
文脈ストラテジー:文脈とは文章を理解するさいに使われる書き手と読み手の共有知識
現場文脈、記憶文脈、言語文脈
結束性の把握、つながりを理解する
一貫性の把握、推論や連想によってつながり、まとまりを理解する
■精読
行間ストラテジー
・行間をよむとは、書かれていることをヒントにしてかかれてないことを読み手が推論すること
・文と文の間に意味のスキマがある場合、橋をかけるような推論を行うこと
・精緻化:書かれている情報だけでは十分な理解ができないとき、読み手の頭の中にもっている背景知識を用いて情報を加えることで足りない情報を補填したり、抽象的な内容を具体化したりする推論を行うこと
理由を考える精緻化と、例を上げる精緻化がある
解釈ストラテジー:読み手によって異なる内容に到達するのが解釈です。解釈は読み手一人一人の個性によって、文章に新しい価値を付与する創造的な行為です
比喩、寓話を使う 直喩と隠喩
自己の専門性、個人的経験、思想的背景を加えてみる
暗黙の前提を疑う
抽象的なことばが使われている場合、具体的な言葉を当てはめてみる
記憶ストラテジー
読みやすい文章はすっと頭から消えていきます。記憶するために、自動化された理解活動を、非自動化、複線化し、能動的なものにすること。
理解の速度を落として、脳内に情報を留めやすくすること
反復読み 構造を組み替えながら試行錯誤しながら読む
音読 音が理解を深める効果がある、音読すれば、わからないところが、どこだかがわかる
換言と要約 わからないと、言い換えができない。わからないと要約ができない アウトラインを覚えていれば、その内容を再現できる
目次
序章 なぜ「読む」技術を鍛えるのか
第1部 読みの理論
第1章 「読む」ということ
第2章 「読む」技術の多様性
第2部 速読―速く効率的に読む技術
第3章 話題ストラテジー 知識で理解を加速する力
第4章 取捨選択ストラテジー 要点を的確に見ぬく力
第3部 味読―文章世界に自然に入りこむ技術
第5章 視覚化ストラテジー 映像を鮮明に思い描く力
第6章 予測ストラテジー 次の展開にドキドキする力
第7章 文脈ストラテジー 表現を滑らかに紡いで読む力
第4部 精読―深く多面的に読む技術
第8章 行間ストラテジー 隠れた意味を読み解く力
第9章 解釈ストラテジー 文に新たな価値を付与する力
第10章 記憶ストラテジー 情報を脳内に定着させる力
主要参考文献
おわりに
ISBN:9784334035563
出版社:光文社
判型:新書
ページ数:264ページ
定価:780円(本体)
発売日:2010年03月20日第1刷 -
Posted by ブクログ
文章を予想しながら読むことによって、文章をより理解できるようになる、というのが本書のメッセージです。正味200頁たらずの本ですが、行ったり来たりで、読むのに苦労しました。
文章のあとに続く展開の幅を限定するのが予測、予測があることで、後続文脈の候補が絞られ、無駄な処理をしなくて済むようになり、文章理解の経済効率が格段にあがる。
つぎはこんな展開になるのではないかという想定に基づき、つぎの文に入ることで、流れに乗って読めるようになる
言語の予測研究は、70年代に、アメリカで、人工知能研究の1つとして始められた学術分野です。
ですが、本書を読むにあたって、文法的でなく、不完全な文章を予測して、理解ができる、AIがここしばらく、できそうにもないと感じました。
気になっているのは次の点です。
・私の考える読書とは、書かれた文章の内容を把握するなかで起きる筆者との対話です。
・優れた筆者は、読者がテキストと対話ができるような仕掛けを文章のなかに巧妙に埋め込んできます。
・優れた文章には、予測という手段を使って対話に引き込む強い力があります。
・文章を映像として理解しているのか、概念として理解しているのか。前者を経験世界といい、後者を論理世界と称す。
・文章を音で理解するのか、それとも、文字で理解するのか。音として理解する場合は、外来語でなくても、カナで表現すれば、理解が易しくなる。文字で理解するとは、音がはっきりしなくても、漢字の字面を手がかりに連想できるもの。
・言語は一本の線であり、頭から順に読むようにできている。頭から順に読む過程で、徐々に意味が見えてくるという性格が言語にはあり、その線的な性質が予測を生む。
・文字理解には、ボトムアップとトップダウンの2種類がある
ボトムアップとは、1つ1つの要素の意味や機能を考え、それを順々に組み合わせて理解をしていく方法
トップダウンとは、その文章に何が書かれているか、先行文脈などから、あらかじめ見当をつけ、それを利用して個々の文の内容を理解していく方法
・トップダウンは、話題がわかるとスムースに進みます。精読している時間がなく、速読で文章の内容をとらえる必要があるときや、よんでいる言語が外国語で、語彙力や文法力が乏しいときに力を発揮する。
・予測が起きるのは、おもに、文脈の展開が変わる節目です。
・第一に、文脈理解は、文章を媒体にした読み手と書き手の疑似対話であり、問いの予測と、答えの予測がある。
・第二に、加えて、文の内容を深めるもの、「深める予測」と、進めるもの、「進める予測」とがある。
<深める予測>今読んでいる文に情報として「何か足りない」という欠落感があって、その欠落感を「いつ」「どこで」「誰が」「何が」「何を」「どう」「なぜ」といった疑問詞をつかって補填しようとする予測です。
<進める予測>読み手が物語の場面に没頭し、登場人物に感情移入しているときによく起きる
・第三に、予測の実現です。予測には当たるものと、外れるものがある。それを順接の予測、逆説の予測という。実現しなかった予測は、行間に存在を示唆し、読みを深め、余韻を感じとるきっかけを与えてくれる。
伏線を張る、緊張を作りだす。
笑いにせよ、安堵にせよ、予測がはずれたところで、オチをあざやかに決める。決めたら、くどくどと説明しないで、パッと切り上げる。バッサリと落とすことで文章の切れ味が増す。
・予測とは何か、予測とは、今読んでいる文を通して感じられる理解のもやもやを、そのあとに続く文脈で理解しようと期待する読み手の意識のことである。
・予測とは推論の一種です。
・日常会話で言葉どおりのやりとりをすると、人間関係がぎくしゃくします。言葉の足りない部分を推論で補っているので、コミュニケーションは成立するのです。
予測もまた、言葉の足りない部分を論理的に導き出し、読むというコミュニケーションを円滑にする推論の一種ですので、文法論ではなく、語用論で扱うべき問題です。
・よい書き手は、よい読み手です。文章を書くのが上手な人は、読み手の立場に立って推敲する術にたけている。
・構成の予測:それは文章の枠をはじめに示し、その枠の詳細をあとから、埋める技術です。
・文章というのは、一本の線ですが、後続する文章の構成を予告する文や、先行する文章をまとめる文、「第一に」「次に」「第三に」「最後に」のような指標によって文章が立体的に理解できりょうになっている。このような表現はメタ言語表現とよばれ、文章を構造化する重要な働きを担っています。
・文章を理解するとは、予測によって意味の箱のようなものを頭に作り、その箱が埋まったら片付け、また別の意味の箱をつくるという作業をくり返して文章を理解すること。
・文章にタメを作る。予測には、タメを作り、次にくる内容に注目させる表現効果がある。
・行間を読ませる。ないものを読み手が補って推論することが「行間を読む」ことの内実です。予測をとおして行間の存在に気がつく。行間の存在に気づき、その行間を埋める工夫をし始めた瞬間から、書き手との対話が始まる。
・文章世界に引き込む。文章理解とは問題解決過程、すなわち「謎」を解く過程だからです。
結論
・優れた文章は、重層性のある問いが有機的に関連してできています。そして、その問いを解き明かそうと予測を重ねるうちに、その文章世界に引き込まれ、読みが広がっていく。
目次
はじめに
文庫版はしがき
第1章 文章理解とは
第2章 予測とは
第3章 問いの予測とは
第4章 答えの予測とは
第5章 予測の表現効果とは
この本に登場した文章例
おわりに
文庫版あとがき
ISBN:9784044003302
出版社:KADOKAWA
判型:文庫
ページ数:208ページ
定価:720円(本体)
発行年月日:2017年09月
発売日:2017年09月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:CJBR
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:2GJ