アーナルデュル・インドリダソンのレビュー一覧

  • 声

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    ネタバレ

    読み始めるまでに気合いがいる。
    クリスマスの話なのに、誰も楽しそうではない。
    それでも一度読み始めると、最後まで一気に読んでしまうのは、ストーリーの上手さと、このシリーズは家族再生がテーマであろうから、きっとはじまりより終わりの方が状況が良くなっているだろうと信じているから。

    レイキャビクで2番目に大きいホテルの地下室で、サンタクロースに扮した元ドアマンの刺殺死体が発見される。
    何十年もそのホテルで働いているのに、彼の私生活を知る者は誰もいない。

    捜査をしていくうちに明らかになる被害者の過去。
    心が痛くなる。

    親は子どもを希望にしてはいけない。
    自分の夢を子どもに託してはいけない。
    子ど

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    2020年12月06日
  • 緑衣の女

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    インドリダソンもう1つの傑作、これも面白い!もはや推理小説の域ではない。現代の日本の小説は私小説のような書き方をする。登場人物が何を考えてるのか、心の内を書き尽くす。これがまだるっこしい。海外の小説の描写は簡潔だ。心の内なんて書かない。映画を観てるようだ。芥川龍之介のような文章の簡潔さが好きだ。さて、この話。赤ん坊がしゃぶっていたものは人間の骨だった。人骨は古いもので、発見現場近くにはかつてサマーハウスがあったらしい。誰の骨なのか。証言者が語る緑衣のいびつな女とは誰か。エーレンデュル捜査官は捜査を始める。麻薬中毒で身重の彼の娘は血だらけで意識不明の重体で病院に運ばれた。幸せにしてやれない自分の

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    2020年11月16日
  • 湖の男

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     ヘニング・マンケルに似た雰囲気を感じるのは、翻訳者がどちらも柳沢由美子さんの名訳だからということだけではあるまい。マンケル同様、北欧を代表する作品に与えられるガラスの鍵賞を、しかも立て続けに二度受賞しているインドリダソン。そのエーレンデュル警部シリーズも、マンケルのヴァランダー・シリーズ同様に、主人公を捜査官として描くのみならず、生活を持ち、家族を持つ人間であり、その中で私的な懊悩や迷いや希望を抱え込んでいるのである。そこに単作としての事件の上をカバーする連続性持ったシリーズ小説としての魅力が感じられるのだ。

     シリーズ探偵が、誰かとつきあったとか、別れたとか、子供ができたとか、飼い犬が家

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    2020年11月02日
  • 湖の男

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    これまでに読んだエーレンデュルシリーズの中で一番の作品。
    事件の背景である冷戦下の東ドイツとアイスランド人留学生の描写に引き込まれた。
    このシリーズを読むまでアイスランドがあまり身近な国ではなかったこと、冷戦下の東ドイツについて知識が足りなかったこともあり、東ドイツとアイスランドの関係は新鮮で歴史の知らない一面を垣間見ることができた。

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    2020年09月23日
  • 湿地

    購入済み

    雨・闇・胸苦しさ

    最果ての地、アイスランド🇮🇸から届いたミステリー。現場にしがみつき、昇進を拒む男エーレンデュレ捜査官を主人公に据えたシリーズ第4作目(らしい)。それが謎解きのキーになるのか!?ちょっと持ち込むにはムリっぽくないのか? 等とも感じましたが、アイスランドという特殊な背景においては成り立つという。しかし、そのキーが成立するには、昔かたぎというのか、あまり語ること・説明することを得意としない、と同時に嗅覚・感性を疎かにしない、執拗な(疑問を放置しない)姿勢を持つ主人公がそこにいたからという奇跡になるのかなーーー。主人公の子どもたちがどうしようもない状況に置かれていたり、登場人物の痛ましい過去に紙幅を割

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    2019年07月19日
  • 緑衣の女

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    男の子の拾った骨がいったい誰の骨なのか。最近のものではないということしかわからず、古代のものの可能性もあり考古学者が時間をかけてゆっくり掘り出す間、エーレンデュルたちが過去をすべて掘り起こしていく手法は見事でかなり読みごたえがありました。絶対この人だと思ったひとだったかどうか、最後までぐいぐい引っ張られて読めました!
    さて、次は読書会課題の『声』に真剣に取りかかるぞ!!

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    2018年09月28日
  • 声

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    今回もとても引き込まれた。派手さはないけれどすごく好き。いつもやるせなさが残るけれど、読み終わった後にいろんなことを考えさせられる。
    徐々に明かされていく過去と人間関係。家族の形。ありのままの自分をそばにいて愛してくれたら。簡単なはずなのに難しい。
    家族の愛と幸福と、だからこその悲しさが漂う物語だった。

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    2018年05月26日
  • 湿地

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    無駄な描写が無く最初から最後まで集中して一気読みできる警察クライムノベル。訪れたことがないアイスランドの様々な描写や麻薬などの社会的問題も垣間見えて、興味深く楽しめました。主人公の刑事が同い年だったことでも没入できました。

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    2025年10月14日
  • 湿地

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    アパートの半地下の一室で老人男性が撲殺されているのが発見されたが、それは単純な強盗殺人ではなく、大昔の強姦事件を発端とする哀しい事件だった、というアイスランドの警察小説。
    アイスランドは人口が少ない単一民族の国で、全国民の家系情報・遺伝情報がデータベースに登録されていて辿っていくことができるようになっている…というのが肝になっている。
    ストーリーは陰鬱だが、文量は多くなくて非常に読みやすい。

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    2025年10月09日
  • 緑衣の女

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    ネタバレ

    ダガー賞読書会のための読書その1。
    アイスランドのミステリは初めて読みました。
    北欧ミステリのほかの国々と同じく、こちらも凄惨な生々しさでした。読み終わっても、心が重いままです。

    発掘される人骨の事件、捜査の指揮を執るエーレンデュル捜査官の娘さんを中心とする家族の話、大戦中に起こっていると思われるとある家族が受けているドメスティックバイオレンス。
    この3つの話が次々に描かれ、どう絡み合っていくのか…引き込まれました。

    体に受ける暴力も、心に受ける暴力も、何もかもを壊してしまう。暴力をふるっていた人も、壊された人だったのがわかったとはいえ。。。
    取り戻すために払った代償は大きいし、とある関係

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    2025年09月30日
  • 黒い空

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    エーレンデュル捜査官シリーズ第8弾。

    今作品は、今までエーレンデュルの脇役捜査官だったシグルデュル=オーリが、友人から厄介な相談事を受けたことから始まる。

    スウィンガー・パーティーで撮られた写真がきっかけで起きた暴力事件が殺人事件となり、関わった者を捜査するうちに銀行員が絡んだ犯罪もまた、この事件と絡んでくる。
    もうひとつは、浮浪者で酒浸りのアンドレスと革製のマスクの男である。
    何故アンドレスが酒に溺れることになったのか、それは彼の少年の頃の出来事が関係していた。

    このシリーズの特徴といってもいいのが、捜査する者(シグルデュル=オーリ)の私生活が明らかになることである。
    彼の生い立ちと母

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    2025年09月09日
  • 黒い空

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    アイスランドの作家によるアイスランドが舞台のミステリー。アイスランドは人口が40万人ほどで、金融立国であり観光立国でもある。舞台はアイスランドが所謂金融バブルが爆ける前で、書かれたのがはじけた翌年ということもあり、一部社会派寄りのミステリーとも捉えられるかも。
    3つの事件要素を絡めての進展はなかなか面白く飽きさせない。一つ難を言えば、慣れない人名と地名で悩まされる笑

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    2025年08月30日
  • 黒い空

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    ネタバレ

    かなり終盤まで、このシリーズの中では弱いなと思いつつ読んだのですが、終わってみればさすがの重厚さと暗さにしびれました。
    主役不在の中、今回抜擢された普段は脇役の若者の、父と母からの影響の受け方、さまざまなカップルの形、また興味深いアイルランドのバブル経済など、忘れ難いものを残してくれました。

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    2025年08月29日
  • 黒い空

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    大好きなシリーズ新作、これまでザ陰鬱を突きつけてくれたシリーズにしては、銀行がらみでちょっと軽い印象。それでも、アイスランドって全く、、と思わざるを得ないような事件の数々でいやはや、です。まあ、知らないだけで日本もそうでしょうけど。アンドレスが切なくて胸が痛みました。そして、久しぶりのメンバー登場で懐かしさでいっぱい。いつもはサブキャラのシグルデュル-オーリ、スカした奴かと思っていましたが、妻や両親との関係など深くえぐってくれてて、好感持てました。エーレンデュルはまだお出かけのようなので、サブキャラの皆さんで展開してくださっても全然OKです。

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    2025年08月22日
  • 黒い空

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    本作もエーレンデュルは不在。同僚のシグルデュル=オーリが殺人事件の捜査を進める様子が描かれる。
    エーレンデュルとは違い、やや気取り屋で熱血とは程遠いイメージのシグルデュル=オーリだが、本作では彼の生い立ちや、別れた妻や両親との関係も事件と並行して丁寧に描かれていて、彼の人間らしさに触れることが出来る。
    その生い立ち、特に母親との関係のせいで、人を見下すような態度をとってしまう不器用な彼が、父親や悲惨な生活を送っている人達に時折見せる優しさが愛おしい。
    事件の内容も読み応え十分で、次作へと続くであろう不穏な展開で物語は終わる。早くも次作が待ち遠しくて仕方ない。

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    2025年08月12日
  • 緑衣の女

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    前作もだけど悲劇的で泣きそうになる。
    埋められた人骨と緑のコートの女、この二つがどう繋がるのか。
    その謎を解くにはある一家の物語を知る必要がある。
    でもこれが本当に辛くて。
    いわゆるDV家庭で、これでもかってぐらい暴力描写がある。
    一度も妻の名前を呼ぶことなく、ひたすら相手を貶める言動をする。
    それを子供の前でわざとやって見せる。
    どう見ても精神的な殺人で、こんなの子供から見たら地獄でしかない。
    作品としてはどっぷり浸かれて良いのだけど、読んでる間ずっと悲しかった。
    親子関係って簡単には切れないから、しんどいよね。

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    2025年08月09日
  • 湿地

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    アイスランド発、ミステリー。
    かなり陰鬱な物語。
    湿地というタイトルからイメージする
    じめっとした空気や匂いの表現が気分を重くする。

    ヴァランダーのシリーズと少し似たところがあるかも。
    頑固そうで自分の道を突き進むおっちゃん刑事。
    ちょっと(かなり)やんちゃな娘もいたりするところが。

    事件の核心に近づくほどに
    家族のつながりを強く意識させられた。

    あとがきに書かれていたことにも納得。
    訳者は作者に会うためアイスランドへ。
    人口30万人ほどのこの小さな国で起こる犯罪の
    理由とは?
    それを社会の現状や家族の関係をからめつつ描いていく手法がおもしろかった。

    次作も読みたい。

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    2025年07月30日
  • 黒い空

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    前作に続き主人公エーレンデュルが不在、部下のシグルデュル=オーリが中心の話です。これまでのシグルデュル=オーリの横柄な態度や冷淡さの理由が明らかになります。彼の事はずっと、嫌なヤツ…と思っていましたが、本作を読んでちょっと可愛く思えてきました。
    夫婦交換からの恐喝そして殺人。幼少期の性的虐待からの復讐。銀行員たちの金融関係の悪事。この3つの出来事が最終的に絡みあっていきます。さほど難解ではない割に、読み応えはたっぷり。今作も面白いです!

    個人的にはシグルデュル=オーリが人の心がわかる人間に少しづつ変わっていく過程が好きでした。
    それにしてもエーレンデュルはいつ帰って来るのかな。次回作に期待で

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    2025年07月24日
  • 厳寒の町

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    冷たい雪の上に横たわる少年。外国にルーツを持つ彼らの現状とアイスランドの人々の葛藤に胸が苦しくなる。
    気候も歴史も文化も、そして言語体系が全く異なる土地で暮らすことは、身体・精神に相当の負担を強いる。特に子どもにとっては。受け入れる側にも正しい知識や価値観のすり合わせが大事。
    キャルタンのような考え方をする大人がいる限り、うっすらとした差別はなくならないのかもしれない。子どものしたことだから大目に見ようでは済まされない悲劇が、どこかで起きているかもしれないと思うと、ぞっとする。

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    2025年07月16日
  • 湿地

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    ずっと気になっていた北欧ミステリ。
    こういう作風は初めてかも。
    地道な捜査でストーリーに派手さは無い。
    感情的な表現も控えめ。
    だけど胸にせまるものがあって、淡々とした印象なのにどうにも心が揺さぶられる。
    人物の心情に焦点を当てているからかな。
    最初は意味の分からなかった犯人のメッセージも、意味を知った瞬間遣り切れなくて泣いた。

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    2025年05月10日