アーナルデュル・インドリダソンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ話題の本を読んでみた。北欧の作品だがアイスランドは初めて。ガラスの鍵賞2年連続受賞。 CWAゴールドダガー賞受賞。
いま世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人ついに日本上陸
この帯を読んで期待して待っていた。久しぶりに完成度の高いミステリが読める。
ストーリーは分かりやすく、読みやすいのだが、悲しいかな舞台が北極圏に近いアイスランド、登場人物の名前が出るたびに、コツンコツンとぶつかり、慣れるまで流れに乗りにくかった。
ついにグーグルアースさんのお世話にもなった。
事件は、湿地帯に建った住宅地の中にある、石造りのアパートで起きた。
半地下にある部屋は湿気と、猛烈な馬屋に似た匂いが充満した居間で、70歳前後の白髪の男が頭から血を流して倒れていた。
レイキャヴィク警察の犯罪捜査官、エーレンデュルとジグルデュル=オーリ、エーリンボルクが男の過去、背後関係を調べ始める。
エーレンデュルは娘と居間に腰を下ろした、殺人事件の捜査と経緯と現状をくわしく話した。頭の整理でもあった。ここ数日間におきたことをはっきり把握するためでもあった。死体の発見、アパートの臭い、意味不明の走り書き、引き出しの奥から発見された写真、パソコンに満載されたポルノ、墓石に刻まれた言葉、コルブルンと姉のエーリン、ウイドルと謎の死因、いつも見る夢、刑務所のエットリデ、グレータルの失踪、マリオン・ブルーム、もうひとつのレイプの可能性、エーリンの家の窓の外に立った男、もしかするとホルベルクの息子かもしれない。エーレンデュルはできる限り論理的にこれらを話した。
異常な臭気から、湿地の上に建つアパートの床を調べ、破壊された下水道のために陥没した穴を見つける。
殺されたホルベルクの港湾労働者仲間、エットリデ、グレータルを追う。エットリデは刑務所にいて、ホルベルクにはコルブルンのレイプだけでなくもう一件レイプ事件があったことを匂わす。
40年前のレイプ被害者を探す。だが女性たちには家庭があり、難航する。
最初のレイプ被害者のコルブルンは警察に届けたが、ホルベルクが、合意だった、誘われた結果だと主張して不起訴になっていた。
もう一人の被害者にたどり着く。そしてその時期に生まれた息子がいるという。
事件はホルベルクの過去とともに意外な展開を見せて終結する。
アイスランドは10月の長雨で、垂れ込めた雲の下で暗い話が続いていく。
小さな島国に暮らす人たちの生活が伺える。
エーレンデュルはこの事件に関わる仕事にたまらなくうんざりして述懐する。
「どうしたらいいのかわからない。もしかすると何もしないほうがいいのかもしれない。なにも手を出さずに、ことが起きるままにさせておくのがいいのかもしれない。全てを忘れて。なにか意味のあることをするのがいいのかもしれない。なぜこんな惨めなことに首を突っ込むんだ?なぜエットリアのような悪党と話をしなければならないんだ。エディのようなごろつきと取引をしたりホルベルクのような人間がどんな楽しみをもっていたかなど知りたくもないのに、レイプの報告書を読んだり、ウジ虫ののたくる肥だめとなった建物の土台を掘り返したり、子どもの墓を掘り返したり、もううんざりだ!」
また
「人はこんなことに影響など受けないと思うものだ、こんなことすべて、なんとなくやりこなすほど自分は強いと思うものだ。年とともに神経も太くなり、悪霊どもをみても自分とは関係ないと距離をもって見ることができると思うのだ。そのようにして正気を保っていると。だが、距離などないんだ。神経が太くなどなりはしない。あらゆる悪事や悲惨なものを見ても影響を受けない人間などいはしない。へどがのどまで詰まるんだ。悪霊にとり憑かれたようになってしまう。一瞬たりともそれは離れてくれない。しまいには悪事と悲惨さが当たり前になって、普通の人間がどんな暮らしをしているのかを忘れてしまうんだ、今度の事件はそういうたちのものだ。しまいにはおれ自身、頭の中を勝手に飛びまわる悪霊のようなものになってしまうんだ」
エーレンデュルは深いため息をついた。
「この話はすべてが広大な北の湿地のようなものだ」
かれは自分の仕事に飲み込まれないようにつぶやく。 暗い悲惨な事件は、こうして彼の人となりも浮き彫りにする。
エンターテインメントとして成功しているが、不明な部分もある。双子の姉妹を襲った迷彩服の男はどうなったのか。結婚式から消えた花嫁は何の意味があるのか。
レイプ犯が集めた容量いっぱいのポルノ映像はいたずらに醜悪感を増すばかりで、殺された男の写真趣味も思わせぶりだ。
話を人間の醜悪さに徹するなら、上記のような独白は警察官の感傷に思える。
ストレートな簡潔なストーリーは面白いし、犯罪原因も目新しい。アイスランドという馴染みが薄い国に少し慣れた。 -
Posted by ブクログ
アイスランド発のミステリーということで滅茶苦茶希少価値の高い翻訳ミステリーのシリーズ最新作。そもそもレイキャビク警察のエーレンデュル捜査官のシリーズなのだが、レギュラー刑事が他に二人いて、前作『悪い男』では女性刑事エリンボルクが主役を務め、本書では残る一人の刑事シグルデュル=オーリが主役を務める。
かつてのエド・マクベイン(この作家には生前に会ったことがありますよ)著87分署シリーズを思わせる警察小説シリーズ。
何と言っても人口30万という小さな国アイスランド発のミステリーというところが楽しい上、その内容も充実したシリーズであり、本書でも人間模様とその深みをやっぱりしっかりと味わえました。
できれば最初の『湿地』から順番に読んで欲しいところだけれど、すべて単独作品としても面白いおススメシリーズであります。 -
Posted by ブクログ
北欧ミステリ、面白い!
本当に久しぶりに、シリーズを追いたくなる傑作に出会えました。
先が気になって2日ほどで一気読みだったのですが、早く結末が知りたいような、まだこの豊かな読書をじっくり味わっていたいような、複雑な気持ちでしたね〜。
ブックガイドなどで「北欧ミステリ」の存在は認識していたものの、どうにも暗く重たいイメージがあってなかなか手が出なかったんです。
しかし、そんな私がドハマりしたのが『The Elder Scrolls V: Skyrim』(スカイリム)というゲーム。
おそらく北欧がモチーフであろうこのゲームの世界観に馴染んだことで、ようやく手を伸ばす気になったのでした。
結果、大当たり!!
個人的に、現代ミステリはどうにも暴力的でセンシティブで受け入れがたい作品が多かったのですが、本書は私の好みにどんぴしゃ。
というのも、解説にあった著者インタビューによると、アイスランドには昔の伝承文学のサーガがあり、子牛のなめし革に最小限で書く必要があったため短い簡潔な表現になったとのこと。どうりで読みやすいはずです。
およそ翻訳小説らしくない抑制の効いた文章はすらすらと読みやすく、作中で扱われる事件はなんとも胸が苦しくなる事実ばかりなのに、不思議と気持ちが重たくならない。
それでいて、読んだ後も鮮烈な読書体験として残り続ける……なんとも稀有な一冊です。
主役であるエーレンデュル捜査官もなんとも硬派。
”アイスランド的”警官であり、若手に手を焼きながらも己の信じる正義を決して曲げない、とても頼りになる存在です。
作中ずっと具合が悪そうで(事件解決が最優先で自分のことは二の次なため)、シリーズのどこかでリタイアしてしまうのではと不安でしたが、とりあえず重篤な病気ではなさそうで一安心。
娘であるエヴァとの関係性も始終ひりつくものでしたが、作中で数少ない希望のある終わり方でよかったです。エヴァもまた登場してくれるかしら?
続編も順次翻訳中とのことで、ぜひ次巻以降も読んでみたい。
そしてこれを機に、物怖じしていた「北欧ミステリ」の名著にも、取り組んでいきたいなと思います! -
Posted by ブクログ
アーナルデュル・インドリダソン『悪い男』創元推理文庫。
『エーレンデュル犯罪捜査官犯罪捜査官シリーズ』の第7弾。珍しいアイスランドを舞台にしたミステリー小説。
訳者は岩手県一関市出身の柳沢由実子さん。自分は10年前まで30年間も一関市に暮らしていたので、感慨深いものがある。
主人公のエーレンデュルは行方不明のまま、主人公不在の中、事件は起きる。
冒頭に描かれるレイプドラッグをポケットに忍ばせ、酒場で獲物を物色する男。この男がタイトルの『悪い男』なのかと思いながら読み進めば、意外な展開が待ち受けていた。
と、冒頭から畳み掛けるように読者をストーリーの中に引き摺り込んでしまうアーナルデュル・インドリダソンの力量に感服。
一時、シリーズが劣化したように思ったのだが、前作の『印』から再び盛り返してきたようだ。劣化したなどと言って、すまなかったと思う。
アイスランドの首都レイキャヴィクのアパートの一室で、刃物で喉を切り裂かれた若い男の死体が発見される。男は電気通信会社に勤務する30歳のルノルフル。ルノルフルはレイプドラッグのロヒブノールを所持しており、酒場で獲物の女性を物色し、クスリを飲ませて意識を失わせレイプをしていた常習犯らしいことが判明する。
犯罪捜査官エーレンデュルが行方不明の中、同僚のエリンボルクは現場に落ちていた一枚のタンドリー・チキンの香辛料の匂いがするスカーフスカーフを頼りに捜査を進める。
果たして、ルノルフルは自宅アパートに連れ込み、レイプした女性に復讐されたのか。
この先、主人公のエーレンデュルは登場はあるのだろうかと心配しながら読み進めると……
本体価格1,360円
★★★★★ -
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アイスランドを代表するミステリー、エーレンデュル捜査官シリーズの第8弾である
前作に引き続きエーレンデュルは不在で、今作ではエーレンデュルの部下の傲慢野郎シグルデュル=オーリが主役を務めます
第1作からのレギュラーメンバーとの付き合いも長くなりました
懐かしいなぁ…
あの頃はまだ経験不足のくせにやけに自信だけはたっぷりで、見当違いのことばっかり言ってたっけ
そして今回もやけに不遜で、自分の考えだけで突っ走る
こいつぜんぜん成長しねーなーと思っていたのですが…
ちなみにシグルデュル=オーリとは本当に長い付き合いなのですが、実はほとんど彼のことをシグルデュル=オーリと呼んだことがありません
いつも「シングルデュオーリ」って呼んでます
なぜならその方が発音しやすいからw
いやアイスランド人の名前の発音ムズいって、恐らくほんとはカタカナでは表現できないんだよ
あと、主人公のエーレンデュルは「エーレンデュエル」、もうひとりの主要メンバー・エリンボルクは「シンボルク」って呼んでます
その他の人の名前は全く覚えてません
翻訳ものを読むときに名前が読みづらいとか覚えにくいって人にたまに聞かれます「どうしてるの?」って
お答えしましょう!
ちゃんと読んでないし、ちゃんと覚えてません
そんなもんです
はいはい、本編ね
相変わらずの重〜いテーマです
人間の果てのない欲望と止まらない暴力についてです
そして傲慢野郎は傲慢野郎なりに「警察官」だったということでした
彼もまた『黒い空』の下、絶望に飲み込まれそうになりながら、必死に「青い空」を手繰り寄せようとする「警察官」だったのです
頑張れ!闘う「警察官」たち! -
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★5 恐喝から発展、重なり合う凶悪事件… 背後にあるのは、欲望の黒い空と少年の叫び #黒い空
■あらすじ
アイスランドの犯罪捜査官、シグルデュル=オーリは友人から相談を受けていた。妻の姉夫婦が猥褻な写真をとられ、恐喝にあっているというのだ。彼は恐喝者である女性に話をつけに家に行くが、なんと女性が血を流して倒れていて…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 北欧ミステリーの雄、エーレンデュル捜査官シリーズの最新作。
とはいえ本作ではエーレンデュル捜査官は休暇中のため登場せず、シグルデュル=オーリ捜査官が視点人物になります。これまでのシリーズ作を読んでなくても楽しめますのでご安心を、前作までのネタバレもありません(ちなみに私も未読です)。
まず声を大にして言いたいのは、主人公のシグルデュル=オーリの人間性ですよ。ヤな奴! でも愛おしすぎる!
警察官であるにも関わらず、自分の思うような行動をし続けるという剛腕&破天荒っぷり。周囲に気が利かず、常に自分の価値観が正しいと思い込んでる昭和のおっさんですよ。そりゃ仕事仲間からも嫌われるし、元妻からも嫌われるっつーの。
でもね、こんなオヤジでも言い放つセリフは筋がとおってるんです(同意できるかは別として)。正論を吐かないよりは、吐くほうが絶対いいと思うんですよね。時折、反省する様子も可愛いですし、私は結構好きです。まぁ友達にはなりたくないけど。
そしてヨーロッパの警察小説ってシブくていいのよ。次々と場面展開するようなエンタメ性は少な目だけど、じっくりと捜査をして、事件を読み解いていく感じがたまらなくイイ。
本作は恐喝から発展した殺人、マネーロンダリング、児童虐待と3つの事件が重なり合って展開していく。人間性は微妙でも、捜査官としての経験はあるシグルデュル=オーリの捜査は粘り強かったですね。
不真面目でいい加減な性格の私だったら、とてもじゃないけど彼みたいに根気強く行動できないと思った。やるじゃん、シグルデュル=オーリ! ちょっとカッコイイかも。
後半、事件の全体像が見えてきたあたりからはもう完全に夢中ですよ。そして終盤、思わず目が開かれるような真相が… いやー読み応えがありました。
前作もそうでしたが、人間の欲望って何故こんなにも尽きないんでしょうか。幸せの分量を人から奪っても、その分だけ自分の幸せに追加されることはないと思うんだけどなー。本作ではその強欲っぷりを見事に描いていて、どれだけ人が人でなくなるか悲しいほどよくわかるのです。
今回も読み応えたっぷりのミステリー、次回作も期待しています!
■ぜっさん推しポイント
この小説を読んでいて一番心臓に突き刺さったテーマ。それは児童虐待がもたらす不幸。この行為がどれほど罪なことかよくわかるし、社会福祉や保護施設の重要性も納得できてしまう。
本作では被害者の痛切な叫びが描かれるのですが、彼の行動や価値や判断基準を見てると、どこまでもどこまでも泣けてくる。人ひとりの人生をまるごと狂わせてしまうんです。
親になったら子どもを大切にするのは当たり前。でもまずそれ以前に、自分自身がまっすぐ生きることが大前提なんすよね。だって影響与えてしまうのは子どもなんだもの。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ一人の女性とその家族が暴力に苦しめられた一生と犯罪に至る様子を描いていた。
あぁ、読後がなんとというか。
苦しい。
「ドメスティックバイオレンス」はどうしたら解決できるのか。周りや警察に助けられて、はい終わり。とはならないのだなとこの本で再認識。
「被害者が犯罪者より悪人であることもある」という作者の言葉(あとがき)がとても印象的だった。
この世からなくなることのない問題。トマスが同じような人生を送ってしまったことや、シモンの一生が父親の影響で180度変わってしまったこと。それが悔しいし、切ない。
非常に考えさせられる一冊であった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ原作は2000年、日本語版は2012年、そしてこの文庫が2015年。そこから約10年経って読んでいる。なんか勝手に歴史を感じる。
でもまあ、舞台が2001年のアイスランドなのはなにか理由があるのかと思ったら単に書かれた時期だったというのが分かったので、調べて良かった。
アイスランド文学を読んだのは初めてかもしれない。翻訳自体はアイスランド語 > スウェーデン語 > 日本語らしい。アイスランドとスウェーデンがどのくらい違うのか似てるのか知らないが、通貨であるクローネはアイスランドとスウェーデンどちらでも通用するので、英語とかよりはニュアンスがキープされやすいのかもしれない。
あとがきにもあったが、著者自身もスウェーデン語翻訳のクオリティは高いのでそこから翻訳されるのは良いことだと喜んだらしい。
ミステリー小説ではあるが、大どんでん返しとかあっと驚く展開とか、刑事と犯罪者のライバルとかそういうのが出てくるわけではなく、中年のタバコを吸いまくる刑事が、同僚に皮肉や文句を言われ、麻薬中毒の娘と喧嘩をしながら淡々と着実に調査をしていき、しっかりと結果をあげていくという作品。
この著者の作品は安心して読めそうだな。
というわけで本編ネタバレ感想。
アイスランドが舞台なので、登場人物の名前がかっこいい。シグルデュル、エーレンデュル、エリンボルク…
ただ、地名も名前と似たような響きに聞こえて、地名なのか名前なのかいまいちわからないときが多い。
死体のそばに置かれていたメモに書いてあった3つの単語、という、作品の根幹を為す重要キーワードに思えたが、最後が「あいつ」というだけで他がわからない。なぜ隠す?単語自体がネタバレになってしまうとかかな?
それとも自分の読み方が単に斜め読みすぎて読み飛ばしたのか?と何度か最初あたりを読み直したが、やっぱりなくて、真ん中あたりでようやく出てきた。「おれはあいつ」。3つじゃねーじゃねーか!まあ、そこは翻訳なのでしゃーない。
というか、確かにこの単語は色々と彷彿させてしまう。
犯罪者が山ほど出てくるが、保険金詐欺と殺人に関与して刑期4年とか、なんか短い気がする。他の犯罪者もなんか処罰が軽いし、女性被害が泣き寝入りというのが多い模様。これが00年代のアイスランドだったということか?そしてあとがきにもある通り、女性への暴行描写がやたらと詳しい。いや、やり方とかではなく、心理的に。でもこれは著者があえてやっていることらしい。こういうやり方をすること絵、問題定義も含んでいると。女性たちが救われるわけではないが、主人公はとにかく大事に丁寧に対応していて、逆にクソ男どもにはそれなりの対応をしてくれるので読んでて安心する。
ちょうど半分くらいでタイトルの「湿地」が出てきた。が、最後まで読んで思い返すと、あんまり事件には関係なかったのではという感じ。でも、この事件自体がなんか湿度高めというかじゅくじゅくしているニオイがするので、良いタイトルなのかもしれない。
合間合間で主人公とその娘さんの、全く穏やかではない日常が挟まれるので、この娘さんも実は事件に関与があるのか…?と途中までは思っていたが、単に主人公についての深堀りをさせるためだけの存在なんだろうなというのが途中でわかった。でも麻薬中毒で、悪い奴らと付き合いがあり、借金もしているこの娘さん、なぜか憎めない…
そして主人公自体もタバコ吸いまくりでずっと真顔なイメージがあり、部下が言う通り確かに事件と全然関係なさそうな調査ばかりさせてる感じはしたけど、どの調査も外れがなく、着実に真実に突き進んでいるため、少なくとも読者側としては信頼度がバンバン上がっていく。ただ、もうちょっと部下に説明はした方がいいんじゃないかな… 市民にはだいぶ優しいけど、部下との会話では突然話を終わらせてどっか行ったり、上から命令を押し付けたりしがち。危うい。
まあ、そんなのが吹き飛ぶくらいの悪徳警察官も出てくるから気にならんけど。
事件自体は最初の方の流れでは想像できなかった、遺伝子欠陥の話で、最後で一気に回収される。すんなり理解できて読書体験的には気持ちいいが、真相はとても切ない。小さい子が病気で亡くなるのはきついよー。
主人公と娘さんの関係性は良くなったっぽいが、続編でまた悪化してたりしそうだな。 -
Posted by ブクログ
残酷な子供時代
それは、殺された男の過去でもあり、
三作目にして次第に明らかにされる、主人公の弟の失踪当時の状況。
クリスマス前のにぎやかなホテルのざわめきと比較して、サンタの姿で地下で殺された男はなんて静かで寂しい。
心配されて誘われるほど嫌いになるクリスマス休暇、突然、主人公エーデンデュルは事件のホテルに泊まることにする(捜査のためではない)。
「あの時から、私は何かを失ったまま……」
殺された男の子供時代と歯車の狂った人生が次第に明らかになっていくにつれ、エーデンデュルは、弟の失踪から何かが狂ってしまった自分を責めて追い詰めてしまう。
そして、問題を抱えたままのエーデンデュルの娘は、自分なりの方法で父に近づき、捨て得られたわけを探り、自分の子供時代を埋めようとする。
事件そのものとエーデンデュルの物語が交差して、解決後も、あとを引きずる。
お気に入りのこのシリーズ
他のミステリーにあるような組織的な犯罪や派手な事件はなく、こじんまりとしたアイスランドの人々の生活の中で現れる事件そのものを、地道な捜査で解決するスタイル。
前二作もそうだったが、今回も家族、特に父と子の物語。
さらに、なんといってもスパッと明瞭な文章で、どんどん情景が頭に入ってくる。
引き続き「お気に入り」に入れておくことにした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレアイスランドを舞台とした社会派ミステリーのこのシリーズ、毎回テーマがあってしかも、刑事たちの個性が引き出されつつあり、また、続けて読んでしまった。
今回のテーマは移民問題に絡めて、尚かつ異常児童性愛や教育問題と現在の世界のどの地域でも起こりうる問題なのでストーリーが進み展開してゆくと目が離せない。
並行して行方不明の女性(夫婦間のいざこざ)も気になるところで、これもまた、万国共通のネタ。
ページが残り少なくなって行くのに解決の方向性が見えず読者的にはハラハラしてしまったけれど、まさかの犯人像。そしてお粗末すぎる動機と結果。
これからもこのシリーズ、続きが気になります。 -
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「家族」とは何か……。
子どもの拾った小さな骨から、次第に表われていく数十年前の白骨死体(徐々に、であることがとても効果的)。
主人公エーデンデュルの捜査とその娘の出来事と並行して、ある家族の過酷な過去の出来事が語られていく。
登場する刑事たちは淡々と調べ、コツコツと人から話を聞き、少しずつ進む道を探る。
そこには、組織犯罪も国家間の軋轢も紛争もなく、派手なカーチェイスや銃撃戦、名探偵の謎解きもないが、確かに「ドラマ」がある。
「ドメスティック・ヴァイオレンス(DV)」という名称のつく前からあった「家庭内暴力」。
「家族」という閉鎖環境の中、DVを見たり受けたりする日常の中で育つ子供たち。
読み進めることすらつらくなるような描写に、訳者は日本語にすることを一度はためらったものの、作者の「表現者としての義務」という強い意志を受け入れることで、そのまま翻訳したとのこと(訳者あとがき)。
現実の事件で「力と言葉の暴力による支配」を、細かく文章化し公表をするのは、ためらいが生まれる。きっと「DV」という名を得るに至った陰に、この作者のような「強い意志」があったことだろう。
アイスランドの厳しい自然の中、寒い冬の海や吹雪の中に消えたといわれる人々。
主人公エーデンデュルにも消すことのできない自責の念と悲しみがあった。
これらのことは、自然の一部のように「すべてがあきらかになることはない」と……。
「家族」という問いかけと「神隠し」の正体も漠然とする横溝正史的な物語に、日本人の心に残る何かがある気がする。 -
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ネタバレ読み始めるまでに気合いがいる。
クリスマスの話なのに、誰も楽しそうではない。
それでも一度読み始めると、最後まで一気に読んでしまうのは、ストーリーの上手さと、このシリーズは家族再生がテーマであろうから、きっとはじまりより終わりの方が状況が良くなっているだろうと信じているから。
レイキャビクで2番目に大きいホテルの地下室で、サンタクロースに扮した元ドアマンの刺殺死体が発見される。
何十年もそのホテルで働いているのに、彼の私生活を知る者は誰もいない。
捜査をしていくうちに明らかになる被害者の過去。
心が痛くなる。
親は子どもを希望にしてはいけない。
自分の夢を子どもに託してはいけない。
子どもの少年時代を奪い取ってはいけない。
楽しい子ども時代を過ごすことの出来なかった少年は親を恨み、親は期待に応えられなかった息子を無視する。
何十年も。
どうしてそのままの子どもを受け入れることができないのだろう。
そして少年の姉もまた、誰からも顧みられないという辛さを抱えていた。
エーレンデュルは娘から、自分たち家族を捨てた理由を何度も問い詰められる。
エーレンデュルもまた、壊れた家庭で育ってきたのだ。
けれど最後、エーレンデュルとエヴァ=リンド(娘)は、一緒にクリスマスを過ごすことにする。
互いを思いながら、不器用におずおずと近づいていく彼らは、次作でまた少し親密になっていればいいと思う。
あと、あまり姿を現さない息子もそろそろ出てこないかなあ。 -
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インドリダソンもう1つの傑作、これも面白い!もはや推理小説の域ではない。現代の日本の小説は私小説のような書き方をする。登場人物が何を考えてるのか、心の内を書き尽くす。これがまだるっこしい。海外の小説の描写は簡潔だ。心の内なんて書かない。映画を観てるようだ。芥川龍之介のような文章の簡潔さが好きだ。さて、この話。赤ん坊がしゃぶっていたものは人間の骨だった。人骨は古いもので、発見現場近くにはかつてサマーハウスがあったらしい。誰の骨なのか。証言者が語る緑衣のいびつな女とは誰か。エーレンデュル捜査官は捜査を始める。麻薬中毒で身重の彼の娘は血だらけで意識不明の重体で病院に運ばれた。幸せにしてやれない自分の子供との悲惨な関係と彼は対峙する。そしてこの地で封印されていた哀しい事件が明らかになる。一方で妻や子供に肉体的精神的に残虐な暴力をふるう男の家族の物語が進む。親に虐げられた子が大人になって同じように自分の子を虐げる例がある。そして不幸から抜け出せない人たち。エーレンデュルのシリーズは家族の崩壊と再生の物語だ。そしてラストは切なく優しい。今回も希望の中で話は終わるがエーレンデュルと家族の問題が解決するわけではない。これもまた繰り返すのだが少しずつでも光の方へ進んでいると読者が信じたくなる余韻を残す。そこがいい(≧∀≦)