加藤周一のレビュー一覧

  • 日本文学史序説 (上)

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    2008年12月5日、加藤周一氏死去。
    この日、日本の知性は、その頭分だけ低くなった。

    20年ほど前、生涯ベスト本を3冊あげたとしたら、と考えたことがあった。この本は、その一冊であって、今も考えは変えていない。
    基準は何か。
    気づきは数多く、表現が素晴らしいということは前提である。
    今年、数多くのリスペクト作家の忌み日レビューをした。その人たちは、間違いなく私の人生に影響を与えた人たちだったけど、
    一冊の本が、自分の信条に決定的に影響を与えたということで、この本のインパクトは絶大だった。
    そういうことが20歳の夏に起きたのである。


    論理は明晰。氏の論理展開が、どれほどわたしの文章の中に息

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    2024年12月05日
  • 日本文学史序説 (上)

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    名著。ただ書を読むだけでは得られない角度から、日本とは何かを文学から考えることができる。ただ文学史を学ぶだけではなく、日本の土着的価値観について理解できた。

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    2024年05月08日
  • 日本文学史序説 (下)

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    近代日本文学を一通りおさらいしたいと思い読む。
    各作家について、コンパクトにエッセンスが整理されており重宝になる。
    また、文化史といえども、政治、社会の動向とは切っても切り離せないものでり、その観点もうまく織り交ぜている。

    日本近代文学の名著を読むたびに、常に手元において振り返りたいバイブル的な文学評論本。

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    2024年04月08日
  • 都鄙問答

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    都鄙問答(とひもんどう)
    著:石田 梅岩
    訳:加藤 周一
    中公文庫 968

    都鄙とは、都会と田舎ということです

    本書は石門心学の祖である、石田梅岩が、問答という形でその教えを広めるために使ったテキストです。
    宋学(=朱子学)をベースとしていて、神・儒・仏を日本の古典を読み、まとめ上げた書であるが、その根底には 心を知るという、三教を共に悟る教えが中心になっている

    いままで、全集の中ぐらいにしかなく、文庫になってようとはおもってもいませんでした。
    2021に中公文庫の古典シリーズの1つとして発行されていました。
    丹波の山村で生を受けた梅岩は、隠遁の学者、小栗了雲に出会って、性理の蘊奥を極め

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    2024年01月17日
  • 日本文化における時間と空間

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    時間と空間のとらえかたについて、日本の文化(絵画、和歌、俳句、演劇)からその特徴を捉えようとする本です。まず時間について、世界には(1)はじめと終わりのある時間(ユダヤ教)、(2)円周上を無限に循環する時間、(3)無限の直線上を一定の方向に移動する時間、(4)始めなくおわりのある時間、(5)始めがありおわりのない時間、の5類型がある。そして古事記から始まる様々な例をひもとき、例外はあるものの、日本は(2)(3)の無限の時間の概念が主流だと主張しています。そこでは時間の分節化が難しく「いま」の連続で時間が流れゆくとのこと。

    ついで空間についてですが、こちらは(1)開かれた空間、(2)閉じられた

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    2023年05月06日
  • 文学とは何か

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    20世紀最大の評論家、加藤周一氏の名前が受験国語で頻繁に登場したのは、少し前の時代のこと。『雑種文化』で、文学史の教科書にも名前が載る氏が31歳での執筆のこの書は、1971年に出版された。センター試験では、1991年度の追試験の評論の問題として、この本の最終章である「文学の概念についての仮説」から引用され、出題されている。先日、書店で眺めていた書棚にこの本の背表紙を偶然見つけ、入試問題として授業で何度も扱った一節を含む同書の全体に、あらためてふれてみた。そして、少なからず驚かされた。
    それは、氏の文章が、広汎な知識の引用と、鋭い論理展開に特徴づけられながら、実際には、ひどく読み易く平明だという

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    2022年09月05日
  • ひとりでいいんです ―加藤周一の遺した言葉

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    憲法、戦争から始まり、政治、経済、財政、映画
    芸術、民族などなど。様々な話題を縦横無尽に語り尽くす内容です。とにかく話題の守備範囲は広く、それに対する深度が感じられます。

    一方で東南アジアなど理解が浅いと自認する内容には深入りしない思慮深さがあり、知性というか伝聞ではなく自分で見聞きした中で得た知識や経験に基づく話に説得力を強く感じました。まさに論語の「わからないことはわからないとし、知らないことは知らないとし、知ることを知るとす」を体現されています。

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    2021年11月07日
  • 夕陽妄語1 1984‐1991

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    加藤周一は、昭和・平成をまたがり「日本を代表する知性」と呼ばれていた。その加藤が、50年代から数えると約50年以上「時評」を描き続け、08年に自らの死亡によって終わるまで延々と書いていたのだから、時評に並々ならぬ情熱を持っていたのは間違い無いだろう。自らを「非専門の専門家」といい、文学評論家の枠に収まらない批評活動をしていた全体像が、このまとまった「夕陽妄語」全3巻(84年ー08年)の中にあるだろう。これはそのうちの一巻目。

    話題は文学はもちろんのこと、文明遺跡、演劇、音楽、映画、国内と国際政治、歴史一般に及ぶ。古今東西の総てのイシューを関連つけて、一つの説得力ある言葉を提示する。実は、私に

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    2020年12月01日
  • 日本文学史序説 (上)

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    名著。
    生まれた時から日本で過ごしている自分の文化的思想を客観視できる感覚。
    気づけていない自分のパラダイムに気付ける。

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    2020年08月26日
  • 海の沈黙・星への歩み

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    映画にもなりましたが、終始静かな作品で心に残ります。レジスタンス、運動に加われなくとも、私達に出来る、出来たのは、海よりも深い沈黙を徹すこと。

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    2020年06月17日
  • 日本文学史序説 (下)

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    文学史を高校生や大学生の時にやった時には、ただ暗記していたように思う。特に近代以降のところは、ごちゃついていて、よく理解できなかった。歴史をきちんと理解した上で、読めば、なるほど、そういう経緯でこういう文学ができたのか、と眼から鱗が落ちるかのようにはっきりと分かった。それにしても加藤周一の博学には驚かされる。

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    2020年02月12日
  • 日本文化における時間と空間

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    第2部以降を読んで
    2部は空間の話。古来よりムラ社会である日本において、内部の人とは対等だが、外部の人に対しては上に見て従うか、あるいは見下すかの二択であったことが例示される。例えば、ムラにおいて官吏は従う対象で、旅芸人は見下す対等だったように。あるいはかつては属国として従っていた中国を、アヘン戦争後は急に見下したように。
    前に仕事で話した大企業のお偉方が、外国人のコミュニケーションと日本人のそれを比較して言っていた、「結局日本人は対等な話はできないんですよ。目上が目下に論説をぶつ。目下はうんうん頷いて聞く。それしかできない。」という話と重なる。
    外交の場面でも、日本は包括的な問題解決において

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    2019年09月29日
  • 日本文学史序説 (上)

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    豊富な知識に裏打ちされた、良質な文学史。
    中でも、竹取物語の位置づけが、高畑勲の竹取物語とだぶって見えてとても興味深かった。高畑勲がいかに古典を良く研究していたかもわかる。
    高校までに学習したこてんのうらで生きていた人たちの息づかいを感じさせてくれる文学史。

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    2019年09月21日
  • 日本文学史序説 (上)

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    ばらばらに読んできた本がつながる。
    この本を一冊読むだけで日本史、思想史、文学史
    全てが網羅出来る良書。

    「社会にーその社会が小さくても、大きくてもーよく組み込まれた作家は、その社会の価値の体形を、批判することはできないし、批判を通じて超越することはできない。」
    (引用)

    文学とは何か、読書とは何かを考えさせられる。

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    2016年09月10日
  • 海の沈黙・星への歩み

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    フランスを愛し、フランスに憧れた他国人が、戦争という非常時において挫折し、希望を失って去っていくまでを、抑えた筆致で描いている。これは、「暗殺された愛」という言葉で表現されている。「星への歩み」では、主人公を殺すのは敵国人ではなくフランス人である。それが一層悲壮である。
    (2016.2)

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    2016年02月23日
  • 日本文学史序説 (上)

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    著者があげている日本文学の主な特徴で、印象的だったものは、3つある。

    1つは、体系だった思想を持たず、部分から入る。

    2つめは、新を取り入れる場合、旧を新に変えるのではなく、新をアレンジして旧に加える。

    3つめは、求心的で、都会で起きたことを都会にいる作者が書いて、その読者も都会で享受する。

    ああ、やはり日本人は昔から、理屈ではなく、周りの雰囲気や空気で行動するのだと思った。
    さらに、私が全体を見通すのが苦手なのも、都会と田舎なら都会に惹かれるのも、日本文学・読者の何よりの証拠なのかもしれないと感じた。

    本書は歴史の教科書のように、丁寧にその時代の状況を述べ、その時に表された文学作品

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    2011年08月12日
  • 日本文学史序説 (下)

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    日本文学を通史で把握している数少ない人物。作品を当時の歴史や思想と深く関連づける。「上」から読み始めても挫折しそうなので、馴染みの深い近代文学を扱う「下」から読み始める。

    また、農民による一揆やおかげ参りを彼等の表現方法として捉える柔軟さは、アニメや漫画がもはやマイナーではない今日において重要かもしれない。

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    2011年03月26日
  • 日本文学史序説 (上)

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    難しそうだと思い読み始めたのだが、案外読みやすく、そしておもしろい。歴史的な背景や人物、主要な作品に関する基礎知識はやや必要だと思うが、それとても高校で学んだ程度、「そんなのあったな〜」「そんな人いたな〜」、つまりは聞いたことがあるくらいのレベルで十分ついていけると思う。
    さすがは20世紀を代表する知の巨人で、扱う内容が高度で複雑でも、なぜかすんなりと読めてしまうから不思議だ。きっとその理由は主題の明快さにある。「日本固有の土着世界観」という観点が最後までぶれない。この明確な主題に導かれて、読者は安心して知恵の大海に漂うことができる。

    分厚いし、一見難しい文字ばかり並んでいるけど、敬遠せずに

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    2010年02月13日
  • 海の沈黙・星への歩み

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    かなり前に古本屋でこのタイトルかっけーみたいなノリで買ったんだけど(ちゃんと当時の岩波の帯もついてる!)寝かせに寝かせて今読みました。たぶん抵抗文学は初めて読むかもしれない。

    海の沈黙を読んだ時に、切ない最後だが最後に姪がご機嫌ようと返事をしたところで少しは彼の光になったのではないかと思った。
    星への歩みはわたしにとっては少し難解で、一度読んでえ??と思い再度読んだらやっぱりそうでとてもとても悲しかった。星への歩みってそういうことかー。

    悲しいにしても、対照的な2作品だと思った。
    わたしは日本人だし西洋人の感性を持ち合わせていないのできっと読み取れていない情報や意味が沢山あるのだろうとは思

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    2025年07月23日
  • 最終講義 挑戦の果て

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    戦前から戦後、現代に至るまで各分野の知の巨人らが述べた良書である。
    多様な著者の文学研究以外の物理学や法学、社会学など様々な研究で得られた知見と知のバトンを次世代に受け継ぐ本である。
    興味があれば、中学生からでも読み始めている人は多いだろう。研究者とは「研究しない自由はない」と本著で述べている通り、全ての学問に対する研究に責任があると説く。第一線で活躍していた研究者の言葉を聞き、現代の価値観や様式、世界規模での情勢をその時の生きた時代の研究者へバトンは渡され、人類は発見と修正を繰り返しながら前に進んでいく。世界は広い、本著でも紹介されきれない研究者は山ほどいるだろう。そして、今生きる現代の次世

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    2025年07月19日