加藤周一のレビュー一覧
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2部構成となっており、第1部は歴史学者の成田龍一が、加藤周一へのインタビューをおこなっています。第2部は、戦後思想家としての加藤の歩みを解説した成田の論考を収めています。
加藤の著者名で刊行される本の中で批判的なことを述べるのは難しいのかもしれませんが、成田の論鋒に甘さを感じるところがありました。第1部のインタビューでは、言語ナショナリズムの問題をめぐる箇所で、外国語を貪欲に取り入れ続けてきた日本の「雑種性」を強調する加藤に対して、成田は近代化における日本語の文体の問題を提出していますが、この両者の見方の違いが追求されることなく終わっているように思えます。
また第2部の最後で、成田は知識人 -
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評論家の加藤周一が、みずからの半生を振り返った自伝。上巻では、著者の少年時代から、敗戦を迎えた医学生時代までが語られています。
「あとがき」で著者は、「私の一身のいくらか現代日本人の平均にちかいことに思い到った」と、韜晦していますが、本書に描かれた著者の姿は、西欧の文明の香りを身にまとった祖父や、合理主義を報じる医師の父のもとで生まれ、文学や科学に対する早熟な関心を見せるなど、およそ「現代日本人の平均」とは言い難いものです。
若い早熟な知性が、知の世界への上昇を夢見るとともに、足下の人間関係や軍国主義の日本に対する思いを屈折させていく様子が見事に描かれており、優れた自伝文学になっているので -
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戦前、戦中、戦後と生き、また国内外で教育を受け、生活をしてきた著者の考察であり参考にすべきことを多々見い出すことができる。
1976年出版なので幾つかの考察は時代にマッチしていない感もあるが、その中でも普遍的な事柄に気づきがある。
類まれなる歴史を持ちながらも文化国家としては一流になれない。日本人として何を欲するのか明白ではない、という著者の問題意識は今も変わらないのだろう。
以下引用~
・他国民と比較してみるときに、日本人の特徴は、花鳥風月に事をよせてはその感覚的世界、殊に造型的な面が、鋭敏で洗礼されたものであった。
・芸術は進歩ではなくて、変化、変化を可能にする持続である。
「断絶 -
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海の沈黙
静謐な物語。
重く垂れ下がった空気が存在する。
そして、かぎりない 沈黙が。
ドイツ人将校が、私の家にやって来た。
そして 2階に住むようになった。
寒い夜に 暖炉にあたりに来た。
蜂の羽音のような声で、いろいろ語った。
かれは 作曲家で フランスが好きだった。
しかし、私と姪はひとことも 語ることはなかった。
ドイツ人将校は マクベスを読んだ。
『支配を受けているものは恐怖に従うだけで、愛には従わなくなっている。』
そして、将校は パリにいき ドイツ人たちと話をして来た。
かれらは フランスを叩き潰す つもりだった。
そんな使命を 受けていた。
そして、ドイツ人将校は い -
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[ 内容 ]
二〇世紀は日本にとって、アジアで最初の近代国家となりながら、そのアジア全域を巻き込んだ戦争を引き起こし、二度の原爆投下と未曾有の敗戦を体験すると同時に、近年では奇跡的な高度経済成長に続いてバブル崩壊とその後の十年を超える長期不況に直面するという、実にめまぐるしい百年間でもあった。
空前の豊かさと膨大な人的犠牲という強烈なコントラストに彩られたこの世紀は、その時代を体験した人間にどのように映ったのだろうか。
優れた文明批評家として知られる著者が、この百年を再考し、新たな混沌が予感される現代を診断する。
[ 目次 ]
プロローグ―私の二〇世紀(一九二〇年代の東京;劇的な科学技術の進