中島義道のレビュー一覧
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評するのに適していないと捉える人もいるのだろうが、私にはとてもおもしろい本だった。解説内に、「毒」や「薬」の表現があったが、私には「薬」だった。色々もやもやと思っていること、それが世間に歓迎されないだろうことがすごく楽になった。
この本は、よくあるような「命は尊いからどんな理由があっても無駄にしてはいけない」というようなことを説くものでは決してない。節々に、それは筆者がこれまでに金銭的に困ったことにならないから考えられることではないか....と現実を考えると簡単に言ってくれるなと感じる部分も多々ある。が、生きることに楽しさはないと明言している中で、ある種の諦念と開き直りは清々しい。2章の章題が -
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ネタバレ自分の日々の世間に対する苛立ちを言葉にしてくれた本。
常識、習慣に従う人(=マジョリティー)が良しされる一方で、それに従えない人(=マイノリティー)を非社会的とする風潮を作者は嫌う。
自身では何も考えず、盲目的にマジョリティを良しとする人を筆者は嫌う。
常に笑顔でいる人は、時に自分の負の感情を隠しているので嫌い。負の感情も自由に表現するべきである。
自分はバカだと言う人は、そのレッテルを自身に貼ることで、考えないことを正当化している。
俳優や国会議員はやたらと「 皆様のお陰です」というが、その人に役に立っていない人にも感謝の気持を示すのは、明らかな嘘である。
世間的に良し -
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トレンディなキーワードを切り口に有識者が語る。親ガチャ、無敵の人、ルッキズム、キャンセルカルチャー、反出生主義など。読めばバランスの取れた意見が多く、一つ一つはあっさりとした内容だが、考えさせられる。
室井佑月が、性的搾取という言葉に対し、同性間でも意見が分かれる事を書いている。グラビアやホステスみたいな職業の是非を問うもので、女性にも賛成派と反対派がいるという事だ。こうした設問に対し、いちいち決着をつける必要はない。世の中に、両方の意見があって良いのだ。にも関わらず、正義バカと池田清彦が言うような、ポリコレの名を借りた、匿名のルサンチマンが奇妙な正義感と責任感で世直しを演じ、どちらに絞ろう -
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ネタバレ大勢に語りかけても意味がない。名指しで注意すべき。
私語をするのは言語道断。みんなに人の話を聞く権利がある。
聞くふりをすることだけ上手くなることは無意味。抗議すること、聞きたくないと主張すること、自分の言葉に責任を持つことが大切。
「わからない」と発言することを我慢してしまう。など理由を伝えるのは大切。
彼らは自分の言葉を信じていない。
自分の言葉に威力があるなんて思っていない。
いつも和の精神を重んじられている。
だから黙っているし、それが当たり前。
規則さえ守っていれば安全が保障されている。
自分から働きかけることを忘れている。
定型の意味のない言葉が溢れすぎていて、聞き流すことに慣 -
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哲学書はおおよそこういうことが書いてあるという理解ではダメで、これ以上読み込めないというところまでいかないといけない。
ただ一つの真理がありそれを言語化できると信じる者が哲学者である。
ロックはあらゆる物事は経験により得られるとするウルトラ経験論者である。経験により得ることすら生得的ではないとする。
カントは神や不滅の魂に関する判断を認識から排除した。カントについて考えるのではなく、カントと共に考える。素朴な疑問を徹底して考えることは、教えられるものではなく体質のようなものだ。
ベルクソンは誰しも実在を見る目を備えながら、社会、能率、利益によってかき消されるとする。安直な図式に従った方が社会は -
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①100人いれば100通りの考え方がある
・著者中島義道の考え方は非常に独特だと感じた
・少なくとも自分とは異なる
・人と群れるのが嫌い、勉強やテスト好きなど
・そしてあまり共感できるものは多くなかった
・しかし、マジョリティが単にマイノリティを制圧するのは良くないと感じた
・100人いれば100通りの考えがあって、それを知った上で合意を取っていく必要があるのではないか
②人が抱える闇を綺麗に文章化している
・誰もが陥る闇を文章に落としている
・それも、難しい表現や哲学用語を使わずに
・なぜ自分が闇を抱えなくなったのかも分かる気がした
・きっと歳を重ねる中で、鈍感さ、という技を磨いたからだ
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◯日々年老いていって、死を意識しないことがない。そういえば学生時代に机にへばりついてプロレゴメナ、純粋理性批判、道徳形而上学原論などを読んだな、と思いながら読み進めたが、書かれた頃のカントの焦りや環境などは当時全く気にしてなかった(なんでこんなに分かりづらいのか!という思いでいっぱいだった)ので、大変興味深い内容だった。
◯カントの伝記を、晩年にフォーカスして再構成しているが、著者の年齢が近くなってきていてるからか、文章の中に反面教師的な親近感のようなものを感じた。
◯コロナによって死を意識することが多くなったこの時代に、死を前にした日々のあり方に対する示唆も感じる。
◯自分にできることをコツ -
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世間でよく聞くが内容がよく吟味されていない、半ば欺瞞的な言葉を分析する本。
著者の中島義道氏がこうした分析を行う理由は「いつでも生き生きとした自分固有の感受性を保っていたいから」であり、「定型的な干からびた感受性に収まって安心したくないから」だそうである。
特徴としては、彼の嫌いな10の言葉の持つ意図や暴力性あるいは傲慢さを、著者の体験と鋭敏な言語感覚を元に議論を展開しているところ。
嫌いな言葉を見つめるとつい、感情的になってしまうが、著者はアカデミックな立場に身を置いていたことがあるおかげだろうか、嫌いな言葉を論理的な思考によって考える立場を放棄していない。なので、彼の主張には納得してしま