古川綾子のレビュー一覧
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チョ・ナムジュさんといえば、著書「82年生まれ、キム・ジヨン」がベストセラーとなり、多くの国で翻訳、映画化にもなったのでご存じの方も多いと思います。
私も韓国ドラマから韓国の文化に興味を持ち始め、音楽とともに文学作品として読んだのも彼女のこの作品が初でした。
今回は不動産ブーム、過熱化した教育熱、所得格差を、連作短編集という形で書かれています。
登場人物もソヨン洞のマンションを介してつながっており、意外な場面で意外な人物が再登場する。
「訳者あとがき」抜粋
このつながりと登場場面により、登場人物の人物像が変化するあたりも秀逸です。
そしてこの作品以降、彼女の作品の翻訳本が出るたび、読 -
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“答えられなかった。言ったところで、あなたに理解できるだろうか。大学を卒業もしないうちから、ソウルの超高層複合型マンションの一室を所有することになったあなたに、叔父さんのレストランから伯父さんの会社に転職したあなたに、家族のグループトークに親が載せる海外旅行の写真に、何も考えずスタンプを押せるあなたに、そのすべてがごく当たり前で自然なことだと思っているあなたに理解できるだろうか。”(p.64)
「理解できるだろうか」は絶対に理解されないことを深く思い知っている人の反語表現だ。だから親近感をおぼえた。あなたの孤独や諦念に似たものをわたしも知ってるよ、と。読んでいて悲しくなったがこの部分がいち -
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いろんな、若者が出てきた。
それぞれが、その状況を生きていて、
人間の醜さ、弱さ、頼りなさ、幼さ、やるせなさ、、、
大人になる中で、大人になっても自分は不完全のままだと気づく経験と重なったり。
付き合う人との関係、兄弟姉妹関係、親子関係、
後になって勝手に感じる相手の心の痛みとか、
繊細な心の動きを感じながら、自分の心も動かされる。
タイトルの無害な人、ってなんなんだろう。
傷つかない、と思っていても傷ついていたり、
傷つけない、と思っていても傷つけていたり、
それは本当に自分勝手でもあり、意識ではコントロールできないこともあるからこそ癒えるのにとても時間がかかったり、
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離婚をし、心に深い傷を負った私は、9歳の頃に祖母の家で十日ほど過ごした思い出の地ヒリョンに住む。
祖母と思いがけない再会をした私は、祖母と曾祖母の生きてきた時代を知ることになる。
日本の統治下を生きた曾祖母は、被差別民の白丁出身であり、その娘に生まれた祖母は朝鮮戦争時の避難民だった。
母は、曾祖母と祖母の歴史の被害者となった挙句、今も婚家から軽んじられている。
身分の違いや女に生まれたという理由だけで、ありとあらゆる差別と侮蔑を受けていた時代。
曾祖母や祖母、母、私へと繋がる百年の物語。
我慢すれば事は治ると母は言っていたことを思い出した。
今はそんな時代ではないけれど、それでも婚家と -
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『あの夏』想い合っててもどうしょうもなく育ってきた家や生きてる環境が違うことが浮き彫りにされる感じつらい気持ちになる レズビアンバーでの夜のいたたまれなさ…
『六〇一、六〇ニ』始終むかむかするし暗い気持ちになる終わり方だったな… こういう話見る度に新鮮に憤りを覚えるけど、一方でこういう家庭はありふれてたんだろうなと思う(なぜなら同じような話を映画でも小説でも何度も見かけるから…) タイトルはマンションの部屋番号かな
『告白』ジニにカミングアウトされるくだりのミジュの反応や後悔の内容が自分が書いたんか?ってくらいそのまま自分の経験だったので胸が苦しくなった………