古川綾子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「わたしに無害なひと」とはどういう人なのか。
それは時々ふと思い出すような人だと考えます。
多くの人がそうであるようにわたしも中学校や高校の友達とは既に疎遠になってしまっています。
少し悲しくなる時もありますが、人は変わるのは当たり前でたとえ今連絡を取り合ったとしても共通点が無い限りまた頻繁に会うようになることは中々ないでしょう。
しかし、会わずとも時々その時の記憶を思い出して相手の健康と幸せを願うことがあります。
たとえその相手との記憶が少し苦いモノであっても、わたしの人生において印象に残った人としてずっと忘れることはない相手です。
少なからず私を成長させてくれたり、私に新しい感情を与えてくれた人達です。
私自身も大それた才能は無い人間ですから、誰かに大きな影響を与えることは一生かけてもないかと思います。毎日誰かに思って欲しいなんてことも全く思いません。
しかし、ふと誰かに思い出してあわよくば私の幸せを願ってもらえるようなそのような人間になりたいと思います。 -
Posted by ブクログ
自分の人生を変えたと思える大学講師との出会いと別れを描いた『ほんのかすかな光でも』、同じ校内誌をつくっていた尊敬した書き手であったのに、道が分かれてしまった同級生のことを綴った『役割』、気持ちが通じたと思えたのに、裏切る形になってしまったインターンの子の話『一年』、自分のせいで会うことも叶わなくなってしまった姪へ宛てた懺悔の手紙『返信』、死んでしまった兄を慕う娘の気持ちに気づいた『種まき』、厳しい姿しか見せなかった伯母の人生をひもとく『伯母さんへ』、アメリカ人と結婚した娘の新居を訪ねていく『消える、消えない』。なんと、かなしい話ばかりだろうか。中でも『返信』は、年の離れたお姉ちゃんが、高校生の時に、10歳以上も年長の教師によって手なずけられ、結婚し、DVを受けるようになったことについて、私は怒りを抱き、行動に出るが、その結果が、誰をも幸せにしなかった。お姉ちゃんの尊厳さえ、奪った。
女として、尊厳をもって生きることの難しさ。そして、そうできなかった人に対するやるせなさ。それに対抗する力としての、文章。全ての作品が、身を削り、血を流しながら書いたものだと思う。
以下、いくつか抜き書き。
「ぼんやりと浮かび上がってくるセンテンスを自分の声として紙に書き出していく時、あなたはもう以前のような人前でもたもたする臆病者ではなかった。熟考した思いを書き進めた文章の中では自分なりの力を感じることができた。そういう瞬間が与えてくれる驚異と幸福を、この先もずっと経験したかった。こんなに弱々しく見えるあなたの中にも、誰かの心を刺激して揺さぶる力があると、書いたもので示したかった。あなたも、大したことない人間に見えるあなたも、感情や考えを持つ人間なのだと、せめてこういう手段で証明したかった。」
「彼女はがっかりした気持ちを悟られないようにした。がっかりという感情には暴力的なところがあるから。お前は私の思い通りに反応するべきだという心。がっかりは恨めしいよりは薄く、憎らしいほどストレートではないけれど、そういう感情と密接な距離にある。ダヒに対してそんな思いを抱きたくなかった。」
「自分の好き嫌いもわからないまま、言われるままに引っ張り回され、みんなの欲求を満たすために自分の欲求からは目を背ける。当時一番不安だったのは、がっかりされること。私は絶対に、絶対に、誰かのお荷物にはなりたくなかった。」 -
Posted by ブクログ
ネタバレかつて心に負った傷や、生きることの苦しみを強く思い出させる作品ばかりだった。登場人物と同じ経験はしていないはずなのに、なぜだか痛みを感じた。
主人公たちには、人を傷つけないようにと刃を抱えているうちに自分自身を傷つけてしまったかのような印象を持った。でも人を傷つけないで生きていくことはほとんど不可能ではないか。どれだけ考えてもきっと自分も誰かを傷つけているという、この認識から始めなければならないのだと思った。
我慢強い人ばかりが出てきてみんな内省的だったことが浮かんでくるけれど、誰しもがそうやって生きているのかもしれない。ただ表には出さないだけで。
短編集だけれど軽く読める類いのものではない。繊細に深く深く潜っていく視点を読むには少し覚悟が必要。
特に「差しのべる手」が好みだった。この話には苦しみの中にもなんとなく希望が感じられたから、そこに救われる思いがした。 -
Posted by ブクログ
初めてチェウニョンさん作品。K-BOOKフェスでサイン本が売ってたから買おっかなと思ったらけど、まだ文章を読む前にサイン本を手に入れるのは憚られてとりあえず最新作を読んでみた。
血縁だけに限らず「仕方ない縁」みたいなものがついて回る感覚で、迎合してないけどこびりついたまま生きていく薄暗さを感じた。
この暗さは嫌いじゃないから、他の作品も読んでみたい。
・心の奥では理解しているのに、言葉で表現できずにいた数々が言語化されると幸せを感じた(略)
・生まれたときに貧しいのは罪じゃないけど、死ぬときに貧しいのは本人の罪だろ。
・記憶することは、愛する人たちの魂を、自身の魂を証明する行為だと。
・すでにこの世から消滅してしまった人や、彼らの頭の中に描かれていた世界のほうが、自分が生きている世界よりも、いつも身近に感じられる。そういうときは広がった傷に光が差しこんでくる気がした、
・どこに向かうのかはわからないけれど、少なくとも消えずに進み続けることはできると教えてくれる、そんな光を追いたかったのかもしれない。
・冬は人間の息が目に見える唯一の季節だから。
・がっかりという感情には暴力的なところがあるから。お前は私の思いどおりに反応するべきだという心。
・ダヒの傷を、自分の視点で釈明したくはなかった。
・誰ひとり、苦しいかとは尋ねてくれなかったからだろうか。だから自分自身にも苦しいかとは訊けなかったのだろうか。
・記録しないと毎日が同じ日に、一つの塊になっていっぺんに消えてしまいそうな不安に襲われるの。
・私は大人で、もう保護者が必要な年齢ではなかったけれど、だからって自分で自分を守れるわけでもなかった。
・結局は破り捨てるのに手紙をしたためるという思いも、この世には存在するんだね。