古川綾子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読んでいて何やら胸がチクチクするものの、言語化できない感じがあり、しかし最後まで読んでも結局言語化できないのでは、と思いつつ読み進めた。
本書の感想になるのかならないのかよくわからないが、私自身は自分があまりメンタルが強くないと感じており、しかし長年の人生経験から(?)自分のメンタルを平穏に保つための、適度な人間との距離感を維持できているように感じる。
感じてはいるのだが。しかし一方で他人を(自分勝手な)枠組みの中に閉じ込めていないか。他人を閉じ込めることで自分の平穏を保っているという面が、絶対に無いとは言い切れない気がする。本書には様々な関係性の枠組みが出てくるが、その中であっち側とかこっち側とか、上とか下とか、そういう枠組みが出てきて、物語としてみると確かに「それって少しおかしいんじゃないか」とか感じたりするんだけど、私自身が今まで生きてきた中でそうしたこと(あっち/こっち、上/下)を思ったことが無かったとは言えず、むしろある程度そうした枠組みを(心の中で)保つことで自分の精神を保たせてるのではないか、という疑念が湧いてしまって「チクチク」したのだと思う。
救いだったのは、チャニのママ/ギョンファ/院長先生の言葉
「でも完全な他人事なんて、この世にはないのよ。歳をとると、そういうのが増えていく。それが正しいことでもあるし」(p.202)
きっとギョンファが抱えている問題は何も解決していないのだろうけど、最後にこの言葉が聞けたのは救いだった。そういうふうに歳を重ねていければいいなあと思う。 -
Posted by ブクログ
チョ・ナムジュさんといえば、著書「82年生まれ、キム・ジヨン」がベストセラーとなり、多くの国で翻訳、映画化にもなったのでご存じの方も多いと思います。
私も韓国ドラマから韓国の文化に興味を持ち始め、音楽とともに文学作品として読んだのも彼女のこの作品が初でした。
今回は不動産ブーム、過熱化した教育熱、所得格差を、連作短編集という形で書かれています。
登場人物もソヨン洞のマンションを介してつながっており、意外な場面で意外な人物が再登場する。
「訳者あとがき」抜粋
このつながりと登場場面により、登場人物の人物像が変化するあたりも秀逸です。
そしてこの作品以降、彼女の作品の翻訳本が出るたび、読んできましたが、
この小説を書いている間はずっとしんどく、つらく、恥ずかしかったです。
「作者の言葉」より抜粋
と書かれていて、韓国の中間層の苦悩を著者自身が深く感じていることが窺えます。
「私が伝えたかったのは、個人ではどうすることもできない時代と社会の不幸を前に、我々はどんな選択をできるのか、どんな態度をとるべきかという悩み、さらには人間らしさを失わずに生きる方法に対する問いかけでした」
「日本の読者のみなさんへ」より抜粋
バブルがはじけて以降、地方では感じませんが、日本でも都市部では想像を超える金額のマンションが売り出され、子どもの教育も保護者の所得と比例していると聞きます。こういう問題提起が得意な著者ならではの作品は今後も楽しみです。
本書は2022年1月に韓国で刊行された作品です。
今年ハン・ガンという韓国の作家がノーベル文学賞を受賞しました。今文学の世界でもアジアの中で一歩先を行っている気がしますね。 -
Posted by ブクログ
“答えられなかった。言ったところで、あなたに理解できるだろうか。大学を卒業もしないうちから、ソウルの超高層複合型マンションの一室を所有することになったあなたに、叔父さんのレストランから伯父さんの会社に転職したあなたに、家族のグループトークに親が載せる海外旅行の写真に、何も考えずスタンプを押せるあなたに、そのすべてがごく当たり前で自然なことだと思っているあなたに理解できるだろうか。”(p.64)
「理解できるだろうか」は絶対に理解されないことを深く思い知っている人の反語表現だ。だから親近感をおぼえた。あなたの孤独や諦念に似たものをわたしも知ってるよ、と。読んでいて悲しくなったがこの部分がいちばん好きだった。 -
Posted by ブクログ
いろんな、若者が出てきた。
それぞれが、その状況を生きていて、
人間の醜さ、弱さ、頼りなさ、幼さ、やるせなさ、、、
大人になる中で、大人になっても自分は不完全のままだと気づく経験と重なったり。
付き合う人との関係、兄弟姉妹関係、親子関係、
後になって勝手に感じる相手の心の痛みとか、
繊細な心の動きを感じながら、自分の心も動かされる。
タイトルの無害な人、ってなんなんだろう。
傷つかない、と思っていても傷ついていたり、
傷つけない、と思っていても傷つけていたり、
それは本当に自分勝手でもあり、意識ではコントロールできないこともあるからこそ癒えるのにとても時間がかかったり、
きっとそういうことを知っていくのが大人になることでもある気がしてきたり。
社会は理不尽だ、という一言で片づけられない、
私たち一人一人が持つ、不完全さ。
ついつい流れてしまいそうな、楽な方向があることに気づいたとき。
「…悪い大人、悪い作家になるより簡単なことはないと時々考える。…」(あとがき)
2018年年に韓国で刊行された本。著者の2作目とのこと。
抱えきれなくなりそうになった時、分かち合うことでなんとかまた前を向いて生きていきたいですね。 -
Posted by ブクログ
離婚をし、心に深い傷を負った私は、9歳の頃に祖母の家で十日ほど過ごした思い出の地ヒリョンに住む。
祖母と思いがけない再会をした私は、祖母と曾祖母の生きてきた時代を知ることになる。
日本の統治下を生きた曾祖母は、被差別民の白丁出身であり、その娘に生まれた祖母は朝鮮戦争時の避難民だった。
母は、曾祖母と祖母の歴史の被害者となった挙句、今も婚家から軽んじられている。
身分の違いや女に生まれたという理由だけで、ありとあらゆる差別と侮蔑を受けていた時代。
曾祖母や祖母、母、私へと繋がる百年の物語。
我慢すれば事は治ると母は言っていたことを思い出した。
今はそんな時代ではないけれど、それでも婚家とのつりあいだとか、どこの出身だとかは気にしていたような気がする。
母娘の問題も時代は変わらずあるものだと思った。
ただ祖母や曾祖母の生きてきた時代を聞くことがなかったのは今更ながら残念だった。
-
Posted by ブクログ
『あの夏』想い合っててもどうしょうもなく育ってきた家や生きてる環境が違うことが浮き彫りにされる感じつらい気持ちになる レズビアンバーでの夜のいたたまれなさ…
『六〇一、六〇ニ』始終むかむかするし暗い気持ちになる終わり方だったな… こういう話見る度に新鮮に憤りを覚えるけど、一方でこういう家庭はありふれてたんだろうなと思う(なぜなら同じような話を映画でも小説でも何度も見かけるから…) タイトルはマンションの部屋番号かな
『告白』ジニにカミングアウトされるくだりのミジュの反応や後悔の内容が自分が書いたんか?ってくらいそのまま自分の経験だったので胸が苦しくなった………