古川綾子のレビュー一覧
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ネタバレとてつもなく繊細な心の機微を描いている。私の気持ちを言葉にしてくれたと感じられる場面も、そういう世界の捉え方があるのかと学んだ場面も多くある。
弱い人たちが生きていくにはあまりにも痛みを感じさせてしまう世界。平凡な人々が、どれだけ傷ついても、自分にしかない人生を必死に生きている。
「人生とは仕方なく受ける罰のようなものだと捉えることが多かった」「欠乏感を抱きしめ、それを必要以上に憎んだり、哀れんだりすることもなく、ただ一日一日を生きていく」
なんでこんなにも、人生を言葉として表現できるのだろう。作家の言葉が体中に沁みわたり、涙を堪えながら読んだ。
「日本の読者の皆さんへ」を読むだけでも、 -
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ネタバレ原作「親密な異邦人」ドラマ「アンナ」(アマプラ、ディレクターズカット版)面白くてどちらも一気見。8話しかないので無駄なく没入感MAXでした。
"些細な嘘から始まり全く別の人生を歩み始める女性のストーリー"
✏︎✏︎✏︎原作あらすじ
まず登場するのは書けなくなった女性作家。
ある日彼女は新聞を見て驚く。若い頃近所の印刷所に頼んで二十部だけ刷ってもらった自費出版『難破船』。その一部が載っており、「これを書いた人を探しています」という広告があった。
会いに行ってみると、相手は二十代前半か半ばの女性で、「これは半年前に失踪した夫が書いたと言っていたものです」と本を差し出す。 -
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スギョンは30代、わけあって失業中。そして家にはなんと六人家族のうち、稼いでくる大人が一人もいないという。スギョンの父のヤン・チョンシク氏と母のヨスクさん。夫のウジェ、ウジェの兄(行方不明)の子のジュヌとジフ。スギョンは定職についていた時にセクハラをされてそのショックで会社を辞めた。ウジェは友達に進められて個人投資家になって先物取引をやっているがいつも赤字だ。ヤン・チョンシク氏はうまいこと言われて詐欺にあい家を取られてスギョン夫婦の家に間借りしている。なんとかしなければと仕事を探すがうまくいかず、今はやりのギグワーク、プラットフォーム労働をやりだす。スマホにアプリを入れて、アプリの指示に従って
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高校生の時に購入したが途中で離脱してしまったものを数年ぶりに読み返した。今だから理解できるシーン、共感できる心情が多くあったように感じる。
友人、恋人など人との関わりの中で、「愛ほど不公平な感情はない」という。どんなに愛し合っていたとしても、相手よりたくさん愛している人と、相手の方がたくさん愛している人が存在してしまう。愛とはそういうものなのだ。しかし、私も含め多くの人はら自分がこんなに尽くしたのに相手から同じ対価が返ってこないと、知らないうちに不満を感じ始めてしまう。こうした、日常に起こり得る気づきが散りばめられた作品だったと思う。
自分は絶対に人を傷つけるわけがない、と思っている人にぜ -
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今はもう会えない人や帰らない時間を思いつつ今を生きていく人たちの短編集。
著者の「この本を読むことで、私たちのあいだに存在する普遍的な何かに触れると同時に、私たちの違いについても具体的に経験してくれればと思っている」という願いがまさに当てはまった本だった。
名前の覚えづらさや、過去と現在を行き来する構成などもあって、何度も「んん?」となりつつも最後まで読みたくなる、そんな話が多かった。
身近な人に素直に優しくできなかったり、酷いことを言ってしまったり、そういう後悔ってきっと誰にでもあるんだろうな、と感じる。
読み終わってこっちの世界に戻ったときに、外からは分からなくても、誰だっていろいろ乗り -
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ネタバレその力が誰かを救ってる。
長女ジェインは研究職で奮闘、2番目のジェウクは砂漠に派遣が決まり、末っ子のジェフンはジョージア州に留学。3きょうだいは突然自分に不思議な現象が起こることに気付き、またそれぞれ「Save 1.」「Save 2.」「Save 3.」というメッセージを受け取る。
優しさとと希望のある物語。超能力があっても、最終的に人を助けるのは勇気を出すかどうかだったり、その力をうまく使う知恵だったり、助ける人を見出す観察力だったりする。それなら超能力がない者にも、誰かを助けられるかもしれない。なにより自分は1人じゃない。隣の人の力を借りれば、誰かを助けられる。そして、誰かを助けたとい -
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ソヨン洞のマンションを舞台にした連作短編集。
書評家の三宅香帆さんがこの作品を韓国版タワマン文学だ!と言っていて、興味が出て読みました。
もっと下世話な話なのかと勝手に想像していたのですが、実際読んでみるとソヨン洞という架空の都市を舞台にして人の感情の機微を繊細に描いた作品でした。とても面白かったです。
作者のチョ・ナムジュさんは日本の読者への後書きの中で「私が伝えたかったのは、個人ではどうすることもできない時代と社会の不幸を前に、我々はどんな選択をできるのか、どんな態度をとるべきかという悩み、さらには人間らしさを失わずに生きる方法に対する問いかけでした」と述べています。
作中でテーマになっ