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『ショウコの微笑』『わたしに無害なひと』などで人気を博し、数々の賞を受賞してきた実力派作家の最新短編集!
手をのばし、すれ違う、
二人に差しこむひとすじの光。
人間関係の感情の機微を卓抜した力で描くチェ・ウニョン。
〈書くこと〉を使命とする強い意志。問い直される女性への差別。
【収録作】
大学で研究者を目指す私と女性講師を描く、表題作/基地村での女性殺害問題と校内誌編集部を描く、「役割」/雇用形態の異なる二人の車中での会話を描いた、「一年」/DV問題を扱った、「返信」/「夫と妻と子ども」という「一般家族」を超えた繋がりを描く、「種まき」「伯母さんへ」「消える、消えない」
2018年から2023年までに書かれた中短編全7編。
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Posted by ブクログ
女性どうしの関係を扱った短編が多い。いずれも、近づいては、離れていく。共通点を見出したと思ったのに、ふとした事で、違いに気づく。かといって、断ち切った関係にはならず、どこかで相手の事を覚えている。そんな曖昧な関係が多く登場する。
『ほんのかすかな光でも』
ヒウォンは、社会人編入で大学に入った。英文でエッセイを書く講座を担当する女性と、ひょんな事から親しく話をするようになる。ところが、ある一言で二人の間に隙間風が。
社会の中で、まだまだ女性が軽んじられているのは、韓国も日本も変わりない。共闘して、それぞれの地場を固めていくのが理想だが、その理想を汲んだ、分かり合って終わり、という終わり方ではなく、分かり合えない所もあるが、それでも分かり合おうとする思いがある、という話。そのきっかけとなるのが、ヒウォンが求める光である。
『役割』
こちらも女性対女性の話。語り手があなた、と呼びかけるのは大学時代の友人ヘジン。彼女は大学の先輩ジョンユンを慕っていた。ジョンユンは校内誌の編集で、女性問題に鋭く切り込んでおり、ヘジンもそこに惹かれた。もう一人の学生ヒヨンも、ジョンユンを慕っており、次第にジョンユンはヘジンよりヒヨンに目をかけるようになる。ところがジョンユンとヒヨンの間もまた、疎遠に。
女性と女性同士ならばよくても、そこに男性が割って入ると関係性が変わる。関係を断ち切っても残る相手への切ない思いが心に沁みる。著者の自伝的作品というから、ヘジン=著者なのか。それとも、本編の語り手で、全く行動が見えない、名前のない人物=著者なのか。
『一年』
私は、病院で、かつて同じ会社でインターンとして働いていたダヘと再会する。正社員の私のアシスタントとしてダヘと接するうち、同い年でもあり、プライベートを知る機会も増えて、互いに親近感を持つ。ところが、ある時、私はダヘが「無理をしている」と感じるようになり、ダヘは私のある言動に傷つく。
うまくいくように見えた関係でも、思いがけないきっかけで、相手への見方が変わる。修復の道筋が見えればいいが、こじれていく一方ならば、それぞれに諦めるしかない。全てをありのまま語るだけが解決の道ではない。
『返信』
『役割』同様、語り手の語り掛け形式。
「あなたは今、どんな暮らしをしているのかな(p110)」
という言葉から、届くはずのないメッセージだとわかる。母が出ていき、父は子供に関心はなく、大叔母の元で姉妹は育つ。優秀だった姉は銀行員を目指していたが、高校時代の恋愛により結婚、主婦となる。しかし夫となった男性は支配的で、語り手は不満を抱く。
語り手に向かって言っていることは、全てもう一人の女性に対する話だった。しかしその女性とは絶対に分かり合えないだろうということも、語り手はうっすら感じている。相手をわかり過ぎているからこその切なさが伝わる。
『種まき』
「私たち」から始まる本篇も、やはり女性どうしの話。今度は親子関係。娘ソリが疲れていることを、教師から知らされたミンジュは、かつて自分を救ってくれた兄を思い出す。これは珍しく、登場人物どうしがお互いを理解して終わる話。
『伯母さんへ』『消える、消えない』も女性同士の微妙な関係を描いた話。
Posted by ブクログ
チェ・ウニョン(최은영)さんの短編集。「ほんのかすかな光でも」(아주 희미한 빛으로도)どれも女性が主人公で、男性や世間からの直接の、あるいは遠回しの差別を受けたことで生きずらい思いをしている女性たちを描く。
「ほんのかすかな光でも」:大学で研究者を目指す私は、社会人編入した25歳の大学三年生だった。ある女性講師の授業を取った。毎回彼女が選んだ英文のエッセイを読んで、それについて自分の意見や感想を書いてくることで進められた。男性の学生は、講師が女性だというだけで、少し軽くみているような感じがした。その女性講師とは、ある個人的な出来事で世話になり、それからも帰り道が龍山(용산)で同じ方向だというので話をする機会があった…。その後、大学院に進み、講義をすることで彼女の気持ちを身近に感じられた。<もっと進んでみたかった>と彼女は書いていた。私も、もっと進んでみたかっただけだった。自分と似た誰かが灯火を掲げて前を歩いてくれ、これから足を踏み入れる場所は虚空ではない。そんな事実だけでも示してくれたらと願っていたのかもしれない。どこに向かうのかはわからないけれど、少なくとも消えずに進み続けることはできると教えてくれる、そんな光を追いたかったのかもしれない。
「役割」、「一年」、「返信」、「種まき」、「伯母さんへ」、「消える、消えない」
Posted by ブクログ
韓国人の女性作家の短編集って、どれも良くて大好きです。チェ・ウニョンさんも大好きな作家さん。
女性たちの生きる苦しみや悲しみが描かれていて、胸が締め付けられました。
あんまり日本人作家はここまでやり切れないような悲しみを書く人は少ない気がします。どこかに希望を残したり、ほっこりするような結末が多いような。韓国人作家さんはそこを厳しくも温かく見つめて描いてくれる。どちらが良いという訳ではないですし、どちらも好きですが。
どこにも持っていきようのない気持ちをすくい上げて悲しみに寄り添ってくれるような小説でした。本書を読んで救われた気持ちになりました。自分の苦しみを知っていてくれる人が世の中にいるということが何よりの救いなのかもな…と思いました。
Posted by ブクログ
自分の人生を変えたと思える大学講師との出会いと別れを描いた『ほんのかすかな光でも』、同じ校内誌をつくっていた尊敬した書き手であったのに、道が分かれてしまった同級生のことを綴った『役割』、気持ちが通じたと思えたのに、裏切る形になってしまったインターンの子の話『一年』、自分のせいで会うことも叶わなくなってしまった姪へ宛てた懺悔の手紙『返信』、死んでしまった兄を慕う娘の気持ちに気づいた『種まき』、厳しい姿しか見せなかった伯母の人生をひもとく『伯母さんへ』、アメリカ人と結婚した娘の新居を訪ねていく『消える、消えない』。なんと、かなしい話ばかりだろうか。中でも『返信』は、年の離れたお姉ちゃんが、高校生の時に、10歳以上も年長の教師によって手なずけられ、結婚し、DVを受けるようになったことについて、私は怒りを抱き、行動に出るが、その結果が、誰をも幸せにしなかった。お姉ちゃんの尊厳さえ、奪った。
女として、尊厳をもって生きることの難しさ。そして、そうできなかった人に対するやるせなさ。それに対抗する力としての、文章。全ての作品が、身を削り、血を流しながら書いたものだと思う。
以下、いくつか抜き書き。
「ぼんやりと浮かび上がってくるセンテンスを自分の声として紙に書き出していく時、あなたはもう以前のような人前でもたもたする臆病者ではなかった。熟考した思いを書き進めた文章の中では自分なりの力を感じることができた。そういう瞬間が与えてくれる驚異と幸福を、この先もずっと経験したかった。こんなに弱々しく見えるあなたの中にも、誰かの心を刺激して揺さぶる力があると、書いたもので示したかった。あなたも、大したことない人間に見えるあなたも、感情や考えを持つ人間なのだと、せめてこういう手段で証明したかった。」
「彼女はがっかりした気持ちを悟られないようにした。がっかりという感情には暴力的なところがあるから。お前は私の思い通りに反応するべきだという心。がっかりは恨めしいよりは薄く、憎らしいほどストレートではないけれど、そういう感情と密接な距離にある。ダヒに対してそんな思いを抱きたくなかった。」
「自分の好き嫌いもわからないまま、言われるままに引っ張り回され、みんなの欲求を満たすために自分の欲求からは目を背ける。当時一番不安だったのは、がっかりされること。私は絶対に、絶対に、誰かのお荷物にはなりたくなかった。」
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