古川綾子のレビュー一覧

  • ソヨンドン物語

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    気が滅入るような重いテーマだが、登場人物が交錯するストーリーの展開がテンポよく最後まで読ませ、読後に課題を読者に置いていってくれる手法。さすがチョ・ナムジュ。
    不動産投資巡る話だが、その中の人間関係の描き方に奥深さを感じる。
    誰もがこの問題に対しての主人公であり、登場人物が変わるごとにこの問題の様々な課題をバトンを渡すように展開している。
    私は特に塾の経営者の生き方、そして生き方の変化がこの問題のシンプルな部分を表しているように感じた。

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    2024年11月27日
  • ひこうき雲

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    「裏切り。罪。喪失。悲しみ。
    韓国文学の旗手が贈る、
    哀切な8つの物語。」

    韓国で実際に起きた出来事、事件をモチーフにしているということで、一話読み終わる度に、心にずんと重いものが。
    生きるって苦しい、と思う。
    でも、登場人物は自分の人生をリアルに生きていて、その描写が重苦しくなりすぎず、テンポが良くて、すぐそばで起きていることのように自然に感じ、入り込めました。

    「この空の向こうに、幸せはきっとある」
    ‥とは私には思えないようなストーリーだったけど、そうであって欲しい。

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    2024年10月31日
  • ソヨンドン物語

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    ソヨン洞のマンションが舞台の連作短編集。

    不動産階級社会と言われる韓国。そんな韓国の不動産事情について知りたい時にタイムリーに出版された本なので読んでみた。

    マンションの価格高騰に乗じて不動産投資で資産増やす人、教育に力を入れるママ、貧困に喘ぐ若者などの欲望と苦しみと悲しみと不幸は誰にでも当てはまるリアルさで身近すぎてしんどい。それでも生きていかなきゃいけない人々の人間臭い魅力を感じてぐいぐい読んだ。

    連作短編なので登場人物は何度か登場するが、話によって人物像が違って見えるのも面白い。

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    2024年07月22日
  • ひこうき雲

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    どの短編も格差社会で必死に生きてきたけど、どうしても這い上がれないことを知りたくない気持ちが漂ってくる。「三十歳」:先輩にあててに書いた手紙。若いうちは人生はなんとか切り開いていけると考えていたが、三十歳になるころには、それは間違えだったと分かってくる。マルチ商法に絡めとらてなんとか逃げ出したが、後輩を誘ってしまい、その後輩が借金で自殺しようとした。自分は、家族の問題でもっと借金を抱えてしまった。人生を生きていくのは辛いな。

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    2023年07月23日
  • 明るい夜

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    大きな物語だった。
    苛烈な生涯に翻弄されながらも生きて、生きて、生き抜いた女性たちの物語。
    どの世代の彼女の物語にも「私は絶対に、なにものにも侵されない」という強い意志があり、静かな筆致ながらとてもパワフルだった。
    日本占領下の韓国のパートなど、読んでいて辛い部分もあるのだけど日本人こそ読むべきではないだろうかと思う。そこで生き抜いた人たちが存在していたこと。

    高祖母、曽祖母、祖母、母、そして私と、いろんな代名詞が出てきてそれが複雑に入り組むときがあるのでたまに今の話は誰?となるのだけどそのうち慣れる。

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    2023年07月23日
  • ひこうき雲

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    ネタバレ

    最終話の「三十歳」が強く印象に残る。必死に努力しているのに報われず、どうしようもなくなって最後にたどり着くネットワークビジネスの販売員という、過酷な仕事。そこでは人間性が奪われ、人間関係が壊れ、主人公は深い深い傷を負う。どうにかしてその状況を抜け出したものの、大きな罪悪感を抱えて生きる主人公が懐かしい「先輩」へ宛てた手紙で淡々と語る形式だが、その物語はとても胸を打つ強烈なものだった。
    実際の社会問題を題材にして、短編小説として鮮やかに切り取り、しかもあの結末は…とあれこれ考えずにいられない深い余韻を残す、印象深い物語だった。

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    2023年03月25日
  • わたしに無害なひと

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    ヒリヒリする本だった。執拗なまでに確固たるものとして現前する家父長制、そこで生じる理不尽な暴力。無関心を装った自衛に、心の内側に抱え込んだトゲのある気持ち。愛ゆえに互いに寄りかかれないもどかしさ、やり切れなさ。本当なら目を背けたい事実や感情が、淡々と活字を追うごとに剥き出しになっていく。自分の中で忘れたいような気持ちが、時おりグイッと引き出される感覚があった。

    近年の韓国映画のあらすじで見たような短編がいくつかあった。そこらへんの映画も観ようと思った。

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    2025年03月31日
  • トロナお別れ事務所

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    良くある個人事務所のドタバタ展開ストーリーかと思いながら読み進めていましたが、後半はクッと現実的な意外性のある展開もあり良い小説でした。

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    2021年12月12日
  • わたしに無害なひと

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    なかなかよかった。
    人と人は違う個体で所詮他人。近しく大切なはずの人と、本心とは別に望まぬともすれ違い、心に距離ができてしまう時がある。そんな瞬間を、あるいはその後を短編を繋ぎながら丁寧に描いていると感じた。韓国と日本。その感性も当然ながら違うところもあれば、同じところもあるね。

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    2021年12月11日
  • わたしに無害なひと

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    「ショウコの微笑」の著者とは。

    あとがきにある〝差別に物語で立ち向かいたい〟という姿勢のごとく強く沁みる短編7篇。

    ハンガン、ファンジョンウンに続き、ずっと追い続けたい作家がまたひとり。

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    2021年11月30日
  • 小さな心の同好会

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    小さな心の同好会、スンヘとミオ、四十三、ピクルス、善き隣人、疑うドラゴン、ドラゴンナイトの資格、ニンフたち、これが私たちの愛なんだってば、スア、歴史。心のすれ違いを描いた短編集。

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    2021年07月07日
  • 小さな心の同好会

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    『ダニー』で興味を持った作家。『ダニー』が思っていたより短かったので、ほかにどんなものを書いてるんだろう?と。
    『スンへとミオ』『四十三』○

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    2021年05月13日
  • わたしに無害なひと

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    繊細で切ない、映画のような描写。
    若くて、無知で、傷つけてしまった人たちへの祈るような思いに泣きそうになってしまった。

    まえがき、あとがきからも著者の誠実さが痛いほど伝わってきて、ファンになってしまった。

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    2021年01月22日
  • わたしに無害なひと

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    「わたしに無害なひと」とはどういう人なのか。
    それは時々ふと思い出すような人だと考えます。

    多くの人がそうであるようにわたしも中学校や高校の友達とは既に疎遠になってしまっています。
    少し悲しくなる時もありますが、人は変わるのは当たり前でたとえ今連絡を取り合ったとしても共通点が無い限りまた頻繁に会うようになることは中々ないでしょう。

    しかし、会わずとも時々その時の記憶を思い出して相手の健康と幸せを願うことがあります。
    たとえその相手との記憶が少し苦いモノであっても、わたしの人生において印象に残った人としてずっと忘れることはない相手です。
    少なからず私を成長させてくれたり、私に新しい感情を与え

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    2020年08月09日
  • わたしに無害なひと

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    「アーチディにて」◎
    真面目にではなく、自由に生きられたらどんなに楽か。人は簡単には変われない。真面目にしか生きられないハミンにも救いがあってほしい。

    「わたしに無害なひと」タイトルにとても惹かれました。人と関わる限り、自分に「無害なひと」はいない。それを受け入れること、乗り越えることのつらさ、尊さ。

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    2020年08月01日
  • わたしに無害なひと

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    この本で出会う人たちは「わたし」を慈しみ、守り、愛しこそすれ誰もわたしを傷つけなかった無害な人たち、そのひとたちを害してしまった「わたし」の物語たちなのだと気付くとき、書名に込められた深い祈りを見たような気がした。
    通り過ぎてきた過去の悔恨へ祈る静謐な文章。

    なかでも「あの夏」に一番心臓を掴まれたけれど、他の物語にもそれぞれの祈りがあって、程度の大きさはどうあれ誰しもに覚えがあるであろう過去の後悔の形が丁寧に丁寧に切り取られていた。
    疎遠になった人、もう会うことはないであろう人たちのことを思った。

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    2020年07月31日
  • わたしに無害なひと

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    "寂しさはどうすることもできないのだと考えていた。人に執着するようになると傷つくし、ぐちゃぐちゃになるし、ひねくれると思っていたから。ねちねちして歪んだ人間になるくらいなら、いっそのこと超然としている孤独な人間になるほうを選びたかった。"(p.122)


    "どうして理解しなきゃいけない側は、いつも決まっているんだろうか。"(p.131)


    "あんたになにがわかるのよ、あんたになにが。それは心のねじれた人間特有の誇示の仕方だった。"(p.140)


    "あなたはあなたの人生を生きるはず。"(p.333)

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    2020年06月13日
  • わたしに無害なひと

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    たまには韓国文学にも触れてみようと思って。スラスラと読めて面白い。ずっと心の奥でモヤモヤしていた若かりし頃の後悔や自己嫌悪が、ストレートに言語化されている。当時は自分で自分が何を考えているのか分からず、昔のことを思い出しては嫌な気持ちになってしまう背景には、こういう感情や思考があったからなのかも…と、遅ればせながら自己理解を深めている。

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    2025年10月19日
  • 親密な異邦人

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    嘘をつき続ける。本当の自分から逃げるため。「本当の自分」自体がもはや虚像なのに、空虚な自分を直視しないために過去も性別もそして日記ですら嘘をつく、彼女いや彼の足跡を追いながら空の自分に気づいてゆく物語。一度 空であることを認めないと満たせない。

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    2025年09月28日
  • ソヨンドン物語

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    読んでいて何やら胸がチクチクするものの、言語化できない感じがあり、しかし最後まで読んでも結局言語化できないのでは、と思いつつ読み進めた。
    本書の感想になるのかならないのかよくわからないが、私自身は自分があまりメンタルが強くないと感じており、しかし長年の人生経験から(?)自分のメンタルを平穏に保つための、適度な人間との距離感を維持できているように感じる。
    感じてはいるのだが。しかし一方で他人を(自分勝手な)枠組みの中に閉じ込めていないか。他人を閉じ込めることで自分の平穏を保っているという面が、絶対に無いとは言い切れない気がする。本書には様々な関係性の枠組みが出てくるが、その中であっち側とかこっち

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    2025年03月16日