あらすじ
11月に著者来日! 『わたしに無害な人』のチェ・ウニョンが贈る珠玉の短篇集
友達との心の距離に揺れる10代特有の感情(「無理して頑張らなくても」)。大人たちの理不尽や偏見に気づいてしまった幼い日の痛み(「良き時代」)。まっすぐに生きる他者に感じる劣等感(「デビー・チェン」)。誰もが知るほろ苦い感情を掬いあげた珠玉の十四篇
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『無理して頑張らなくても』
中学校3年生の時に、母親が新興宗教にはまってしまう。両親は離婚。合格した高校に行けなくなり、ソウルの高校に転校した。友達ができるか不安だったが、人気者らしいユナが話しかけてくれてほっとする。彼女になら自分の秘密を打ち明けてもいいと決心するが。
信じた相手に裏切られた事を後で知るパターン。読者も、どこかで体験したことがあったのでは。その時どう自分の中で腑に落ちるようにできるのか。
「当時の私たちは愛と憎悪、羨望と劣等感、瞬間と永遠を、星の数ほど取り違えていたから。心臓を差し出してもいいと思った相手を傷つけたくなることが、矛盾だとは感じていなかったから。(p26)」
『デビー・チェン』
ナミがイタリアで逢った同郷人デビ―は、女優のマギー・チェンに逢ったことがあると言う。デビ―は映画レビューを書いているブロガーだった。吊り橋効果で恋に落ちても不思議ではない二人だったが、その後二人は別々の人と結ばれる。時に一方に嫉妬しながらも、形を変えて続いていく友情。
『夢うつつ』
ジョンミンは、うまくいかなかったユニとの関係を考える。彼女とは、父親が音楽家という縁で知り合った。
「あなたを愛している。両思いじゃなかたら、もっと楽だっただろうに。そうしたら、すべてはもっと簡単だっただろうに。ここまで愛していなかったら、こんな事態にもならなかったはず。(p51)」
好き同志なのに、ずっとすれ違い続ける二人。
『森の果て』
20年ぶりにフィンランドにいるジホに逢うために空港に向かったが、ロックダウンで韓国に逆戻りすることになった私が、出されることのない手紙の態で、ジホに心情を吐露する。フィンランドにわたり、言葉がわからない私をフォローしてくれたジホのことを、私は好きだった。ある日二人で待ち合わせをしたが、出会えなかった。ジホは待ち合わせの場所にいなかったといい、私はちゃんといたのに、と思いながら、その事についてはずっと話せないままでいた。これをきちんとする時は、果たしてくるのか。この手紙は出されるのか。オープンエンド。
『良き時代』
近所に引っ越してきたミンソンさんの一家はとてもいい人たちだったが、ある日姉が彼等を無視する場面に出くわす。母が「全羅道出身の人に気をつけろといったから」 というのだが、私には納得できない。私にはもっと我慢できない叔父がいたが、彼については母はノーコメント。それでも母に逆らえない。やがてイギリスに移住した私は、今度は韓国人として英国人から差別を受ける。世の中にある思い込みに踊らされる人たちと、私達は対峙しなければならない。決して思いを変えない人たちと。
『一時預かりボランティア日記』
捨て猫らしき猫を拾ったユンジュは、飼い主を探すが、子供がいない夫婦の申し込みに難色を示す。いずれ子供ができたら、猫はないがしろにされるのではないかと危ぶんだのだ。しかし夫妻から再度手紙が来て。結末がわかっていながらも、もう一度始めようとしている強さに涙するユンジュ。
他
『漢南洞の屋上プール』『夕暮れの散歩』『ブランコに乗って交わした言葉』『ムンドン』『手書きの手紙』『一時預かりボランティア日記』『アンニョン、クク』『無給休暇』収録。
Posted by ブクログ
どの短編も余韻を感じる終わり方でした。
時と場所は違っても、似た思いを感じたことがあるかもと思うものもありました。そして訳者のあとがきに書かれていた「寛大になれない大人たちの生きる国」という社会をこの小説で垣間見ることができたように思いました。それと共にチェ・ウニョンさんも心の機微の表現が優れているなと思いました。
友人関係が全てのように思える
学生時代の心の揺れ
旅先で出会った友人への思い
フィンランドで知り合った友達に
伝えたかった思い
友達から気づかされた自分の気持ち
善意が伝わらなかったもどかしさ
大人の秩序に翻弄された頃の自分を
思う気持ち
など、自分が無理をしていたことを振り返ったときのことが、うまく表現されていました。それぞれの主人公に、「あの時の自分、頑張ってた」と思える今であってほしいと思いました。
〈目次〉
著者の言葉
無理して頑張らなくても
デビー・チェン
夢うつつ
森の果て
私たちが学べないもの
漢南洞の屋上プール
夕暮れの散歩
ブランコに乗って交わした言葉
ムンドン
良き時代
手書きの手紙
一時預かりのボランティア日記
アンニョン、クク
無給休暇
訳者あとがき